1年戦争外伝、-HAPPY WEDDING-   作:三流FLASH職人

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プロローグ「HAPPY WEDDING」

『・・・』

 

祝福の鐘の音が、群青の空に高らかに鳴り響く

花びらが舞い踊り、風が歌い、太陽が祝福の輝きを降らせる

穏やかで、晴れやかで、爽やかで、温かい、幸せに満ちた空間

どこまでも続く緑の絨毯、その世界の中央にあるのは純白の教会、幸せの集まる場所。

 

神父が聖書を広げ、神に報告する。今日、ふたつの魂が一つの結晶となる、その幸を報告する、顔のない神父が。

見守る大勢の人々、ある者は幸せを、ある者は焦燥を、またある者は悲しみを胸に、顔のない人々が。

 

父親に手を引かれ、少女がヴァージンロードを歩き出す、顔のない父親に手を引かれて。

ブーケの下になびく髪は、鮮やかな淡い金緑色、風に揺れて波を作る。

白い肌と桃色の唇、そして純白のウェディングドレスに緑に輝く髪、

向かう先には、誰よりも愛しい人。永劫の、そして一瞬の未来を共にする伴侶。

 

『・・・ヤメロ』

 

顔のない神父の横で、少年がその人を待つ。優しさと愛しさと、そして悲しさをたたえた瞳で。

何よりも、今この瞬間に自分がここにいる、彼女がそこにいる幸せをかみしめて。

 

やがて顔のない神父を挟んで少年と少女が、新郎と新婦が対峙する。二人の間には無限の愛と想いが溢れる。

神父が誓いの言葉を促し、新郎が力強く誓う、新婦がその身を投げ出すような柔らかい言葉で応じる。

神の前で、二人は向き合ったまま寄り添う、少年が少女のブーケを上げ、顔を近づける。

 

少年、そう呼んでいいほどの幼さを残した新郎、顔を赤らめ、凛々しさと優しさをたたえた黒い瞳で、少女を見つめる

少女、そう呼ぶには神秘的な、金緑の髪と琥珀色の瞳を持つ、まるで森の妖精のようなその姿を晒し、少年に委ねる。

 

二人の周囲には誰もいない。神父も、聖書台も、ステンドグラスに掲げられた十字架さえも。

寄り添う二人の間から光が輝き、やがて光の輪が二人を包み、光芒のシルエットとなる少年と少女。

周囲の人間全てと同じく、黒い影となった二人が今、誓いのキスを交わす。

 

そして抱擁。

もう離れない、もう離さない、誰にも分かつことは出来ない、運命だろうと、神様だろうとー

 

祝福の鐘が高らかに鳴り響き、花も、風も、鳥も、周囲の人々も、この幸せを祝福する

そして世界は、光に包まれ輝きに消える。

 

-二人は歩んでいく、この一瞬の永遠を-

 

『やめるんだあぁぁっ!』

 

がばぁっ!!

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」

男はベッドから飛び起きる、全身に脂汗をかき、呼吸は乱れ、心臓は早鐘を鳴らし続ける。

なんという悪夢を見たのか。

あのおぞましい光景、身震いが止まらない。幾多の困難や死線をくぐってきた男が、心底恐れたその悪夢。

汗をぬぐい、呼吸を整え、心臓の収まりを待つ。それらがようやく安定してきたとき、彼はやっとベッドの傍らの

モニターから呼ぶ声に気付く。

 

「艦長!どうなさったのです、大丈夫ですか?」

通信士の女性の心配そうな声と表情を認め、男はようやく冷静さを取り戻す。

「ああ、心配するな、今ブリッジに行く」

 

軍服に着替え、気を落ち着けて艦橋に向かう。着いたとたんに艦橋にいる全員が心配そうな眼差しを向ける。

「艦長!なにがあったんです?」

「いきなり大声で叫ぶなんて、何事ですか?」

皆、一様に不安な顔をしている、それだけの理由がこの艦長にはあるのを、皆知っているから。

 

「ああ、大丈夫だ。ちょっと夢見が悪かっただけだよ」

その一言に全員から緊張が走る。この艦長が悪い夢を見た、それだけでこの艦のクルーにとっては

ただ事ではすまされないのだ。

 

「なにか異常の報告はないか?」

艦長の質問に副長が答える、

「いえ、『今はまだ』何も」

「そうか」

それだけを言うと彼は艦長席に腰を下ろした。

 

-それにしても-

 

彼は思う。なぜあの夢が悪夢に思えたのか、少年も少女も知らない人間だ、決して少女が初恋の相手でもなければ

少年が恋敵というわけでもない、なのになぜ、あの幸せな光景が、あれほどの悪夢に思えたのか・・・

 

そんなことを考えていると、通信士がコンソールを睨みつつ、耳のヘッドフォンを押さえて叫ぶ。

「艦長、本国からの通信ですが、ノイズが多くて・・・拾いづらいです」

「・・・どれ」

席を立ち、通信士の傍らに行き、ヘッドフォンを当てる。

そして「見る、聞く」のではなく、発信者の意図を「読み取る」つもりで画面と音を受け入れ、解釈する。

キーを叩き、その意図を文章にする。打ち出された文章レシートを通信士が読み上げる。

 

「我ら公国、本日1月3日、地球連邦軍に宣戦を布告せり」

艦内に「やっぱりか」という空気が流れる。この艦長が悪夢を見て、ロクなことが起こるはずがない。

1月3日、つまり7日前に本国は連邦と、ついに戦争に突入したのだ。長年の確執を経て。

 

ここは遠路の旅を祖国に向かう軍艦の中。ジオン公国木星エネルギー船団の先頭を走る、護衛艦ムサイの艦橋。

未開の宇宙を旅する彼らが、何より頼る艦長の乗る艦。

艦長は幾多の危機や予期せぬアクシデントを、その常人離れした直感や予知で切り抜けてきた超常の人。

彼が示した航路はまるで危険な場所を縫うように抜け、ヘリウム採取の際彼が指示した時間帯は

フレアが上がるタイミングをことごとく外し、彼が見た夢はその日の艦の故障部分を先読みしていた。

 

シャリア・ブル

後に「木星帰りの男」「最初のニュータイプ」と呼ばれ、連邦軍ガンダムのパイロット、アムロ・レイと

死闘を演じる男である。

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