犬吠埼紅葉は勇者である   作:仙儒

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番外編
犬吠埼紅葉の章 NEW


「ッチ! あーあ、くだらねー人生だった」

 

 落ちながらそんなことを口にする。

 

 目はもう光を映していない。耳はもう音を捉えていない。

 

 全ての終わり―――。

 

 結局、自分は最後まで自分勝手だった。

 

 どこまで行っても「クズ」だった。

 

 俺に与えられた役目はわかっていたつもりだ。

 

 それは、転生何て体験して、神様に圧倒的力を与えられても変わりはしなかった。気持ちだけ大きくなっていた。

 

 それでも―――、

 

 踏み台だと理解はできていた。誰に言われたわけでもないけど、自分が己をそう定めていた。…自分以外の転生者に会ったこと無いけど。

 

 主人公に憧れた。

 ハーレムに憧れた。

 力に憧れた。

 全てに憧れた。

 

 

 

 でも、転生したからと言って俺そのものが素晴らしい物に代わるわけではない。世界が俺を中心に回るわけではない。まぁ、転生特典のスキルのおかげで権力とお金については問題なかった。大国相手に一人で正面切っての殴り合いで余裕に勝つくらいの力は持っていた。

 

 変に一般常識と前世の自分という反則もいいところのアドバンテージとも、ある意味呪いとも取れるもののおかげで「神童」なんて言われもした。

 

 記憶を引き継いで転生できたのは感謝している。そうでなければ、とっくにくたばっていただろう。

 そのことで、妹たちにはつらい思いをさせたと思う。

 正直、恨まれているんだろうな~、何て漠然と思っていた。

 

 怖くて、直接聞くことはできなかったけど。

 

 そんな、張りぼての「臆病」で「泣き虫」で「情けない」、正真正銘の「クズ」だと思っている。

 格好良いところなんて、親譲りのこの顔だけだ。

 

 いや、マジで今世の父さん母さんテラ美形。妹たちも身内贔屓抜いて美少女。

 

 成長するにつれて、メインで使う転生特典にモロ影響を受けて容姿は英雄王そのものとなっていた。幼少期はどこからどう見ても美少女で、性別をいつも間違われていた男の娘。…あれ? なんでだろう? 涙が。

 

 贅沢だってわかっている。でも、どうしてもこの容姿を褒められても誇ることはできなかった。

 前世ではいじめにこそなってはいなかったものの、「キモイ」と言われ続けてきた。

 

 自分でも、確かに可哀想なほどブサイクでは無いけど、イケメンかと言われれば首を傾げる位の微妙な顔立ち。自称「微少年」だ。

 後は年齢よりもだいぶ幼く見られている童顔だった。身長も平均よりも低かった。

 

 容姿については、こんなもん。才能も全てにおいて平均以上にできるかわりに、これと言った強みも無い。器用貧乏と親友に言われた。凹む。

 

 異性の友達は多かったが、それだけだ。モテたことなんて一度もない。

 

 そんなコンプレックスだらけの自分。

 

 転生特典で確かに頭は良くなった。それこそ、数千年に一人いるかいないか位の(扱いきれるとは言っていない)。出そうと思えば常人の何千倍の力も出せる(扱いきれるとry)。

 

 長々と語ってきたが、結論を言おう。俺「テラ凡人」。

 

 骨の髄まで染み込んでいる自己否定。

 

 ためいきがでる。

 

 

 元々生き方は器用な方ではなかったけど、さ。

 

 もうちょっと、こう、なんとかならなかったのかね~。

 

 恋愛にも憧れこそあれど、それらしいことはしてこなかった。今世も前世もDTだし。凹む。

 キスだってしたこと無いし。

 

 あ、妹たち(風と樹)妹分(園子)はノーカンね。あいつら、事あるごとにしてくるんだよな。最初は微笑ましかったけど、流石に10歳超えてからもキスしようとするのは心配だ。

 

 それから、恋愛できないなら、せめてDTくらいは捨てようとしたんだよ? 風俗で。

 

 金はあったし。

 

 でも、何でだろうな……。行こうとするたびに妹たちか、勇者部メンバーと出会い風俗には行けなかった。ハイライトの消えた素敵な笑顔で見つめられ続けて離れない。怖くて、引き剝がすことができなかった。

 

 意地になって強行作戦を何回か決行したが、なぜか途中で意識を失い自室のベッドの上で目覚めるという謎現象が多々あった。その後、大抵は誰かが傍に待機していて、何があったか聞くと「寝てたよ?」的なことをハイライトの消えた素敵ないい笑顔で言ってくる。

 

 どうしているの? いつからいるの? なんて怖くて、聞けない。

 

 同上の理由でAVにも手を出せない。流石に、買ってまで欲しいとは思わないので、レンタルビデオショップまで行くのは良いが、18禁コーナーに入ろうとすると自室のベッドの上で目が覚めるまでが様式美。

 

 エロ本も最初は買っていた。一応隠してはいるつもりだったが、いつの間にかパツキン妹ものに変わっていたり、年下ものに変わっていたり……。

 

 春信パシリに使って、ボインのチャンネーもの買いに行かせたら青い顔して年下ものしか買ってこない。本人曰く「これしか売っていなかった」らしい。ガタガタ震えていたのは気になったが、追及するのは気が引けた。

 

 取り敢えず、エロ本も買うのはやめた。

 

 勇者部のメンバーの肉食獣のような眼差しが怖い…。スマホもPCも論外。前に、美森がナチュラルに内容をボソッと言ってきて以来そういうのをスマホやPCで見るのをやめた。パスワードは毎回変えてるんだけどな~(´・ω・`)。ナンデ、ワカルンダロウナ。フシギダナ。

 青坊主だか、海坊主だかって名前の卵型? の精霊が時折背後から眺めているようなような気がするけど気のせいだろう。後、牛鬼と青い烏がやたらと絡んでくる。

 

 牛鬼は友奈の所にカエレ! 前世ではネット掲示板とかで色々論議の種になっていたが、正体には気が付いてるからな! 「た」で始まって「な」で終わる人。初代勇者の一人。神殺しの大偉業によって神の座まで上り詰めた脳筋少女。

 

 青い烏! テメェの正体もわかってんだからな! 若葉ードとユウキ(ひなた)! 風呂場にまで侵入してくるんじゃない!

 

 何で精霊に好かれてんの? 精霊の加護A+のせいか? 神樹の力によって具現化してる人口精霊とは言え「精霊」と付いてるだけあって効果があるのかね?

 

 謎だわ。しかも、どちらも正確には英霊に近い存在だし……。

 

 

 

 

 

「はぁ、あんだけカッコ付けたのに結局はこのざまだもんな」

 

 王律権ダムキナと言う名の王の財宝のバックアップ。今回は、禁じ手の中の禁じ手「カレイド・ステッキ」まで使って平行世界全ての天の神を一か所に天の鎖(エルキドゥ)で固定。乖離剣エアの力を使って「ありとあらゆる攻撃無効の何か」と「不老不死」とか言うチート権能を文字通り乖離…切り取って無理矢理無効化するという力技をぶちかました。

 

 ごめん、俺も大概脳筋だわ。

 

 それでも倒れないとか、頭がイカれてやがる。

 

 

 

 ―――だが、もう天の神の全能性は破堤した。

 

 後は友奈の全乗せ勇者パンチでとどめさせるだろ。

 

 仕込みも上々。後のことは乃木の叔父さんと春信に安芸が何とかしてくれる。

 

 神代を経て、人間は神と袂を別った。

 

 親離れをしたのだ。

 

 それを、紆余曲折ありすぎて、神の庇護下に一時的に戻ったが、あくまでも人間と神樹の共同戦線。

 

 神樹が人の力を恐れて、天の神と同じ末路を辿らないように俺が死んだ後も起動するとっておきのサプライズプレゼントが神樹の懐で発動するように細工を施してある。

 

 神はこの星の安全装置である以上、必ず人間の敵に回るのが目に見えてますし、おすし。それが速いか遅いかの違いだけ。キャス狐の言葉を借りるなら、神は人間のことなんて「アウトオブ眼中」って言ってたし。そう言う意味でならば、言葉は悪いが神樹の勇者を使い捨てにするようなおこないも理解できる。

 

 ここら辺は、種族の違いと言うか価値観の違いと言うか。とにかく、人間にはわからない感覚だよね。

 

 どちらに転ぼうが、神が人を導く時代は終わりを告げた。神が人の心の拠りどころであるのならば、それはそれで構わない。だが、あくまでも少し休む休憩所としてだ。物語の主人公になってはいけない。

 

 人がメインでならなければならない。

 

 そう言う考えになるのは英雄王の主観が混ざっている故なのか…それとも。

 

 敬意は払おう、理解も示そう、その来歴も悼もう。 ──だが、死ね!

 

 おおっと、電波デンパ。

 

 俺には人の愛がこういうものではないか? と推理はできるが、理解はできなかった。今振り返ると、前世はどこか機械的であったし、今世はだいぶ人間的であったが、どこか嚙み合っていなかった。

 

 

 落ちる。落ちる。落ちる。落ちる。落ちる。

 

 

 涙が次々と流れる。

 

 強がるんじゃなかった。柄でもないことするんじゃなかった。

 

 もっと、皆と一緒に時を過ごしたかった。妹たちが選んだ素敵な人と顔を合わせて見たかった。妹たちをくださいと頭を下げる未来の義弟を前に机を叩きながら「妹はやらん‼」と言う台詞を言ってみたかった。それで妹たちに「あんた(お兄ちゃん)は、あたし(私)の父親か!」って突っ込み入れられて、父さん母さんに酒瓶持ちながら報告に行って。

 

 妹たちの晴れ姿を見たかった。

 

 くだらねー惚気話聞いて、痴話喧嘩仲裁して。いずれ生まれる甥や姪の顔を見て。取り敢えず、甥や姪ができる度に祝福しながら義弟を殴るのがテンプレ。

 勇者部のメンバーや防人達で時々集まって昔話に花を咲かせて、とっても辛い感じの思い出だったはずの事を笑い話にして。

 正月には、皆の子供がお年玉せびりに来て。イベント好きな奴らだから、年中大騒ぎできっと楽しいだろう。

 

 そんな事を父さん母さんに「羨ましいだろ」て、報告兼自慢に行く。

 

 俺は結婚できそうにないし。

 

 

 自傷気味な笑みが浮かぶ。

 

 これが、俺への罰か。

 

 

 

 強い衝撃が襲う。

 

 別に痛みがあるわけではない。

 

 心眼(笑)が発動する。心眼(笑)は意外と便利で、視力を無くしても周りを見ることができ、一種の透視能力みたいな状態になる。服は透けないし、壁があればその向こうは見えないけど。

 

 耳が聞こえなくても、見えているのであれば口の動きで何を言っているか理解できる。まぁ、それを逆手に取られて皆の散華を肩代わりしていたのがばれて、皆に泣きながら説教をくらった。

 

 どうやら、あの灼熱の業火の底まで落ちたらしい。

 

 この体が特別製なのもあって、即死はしてない。ああ、感覚、痛覚、温感。凡そ人間の感覚殆どが機能していない状況。この状態がばれれば、間違いなく今度こそ監禁生活待ったなしだろう。

 

 

 今は、その感覚がない事に感謝だけど。

 

 

 まだ、終われない。

 

 保険は何十にもかけて置く。

 

 不発なら不発に越したことはない。

 

 魔術回路を開き、魔力を流す。天の神の追撃が迫る。

 

 敵さん、相当お冠らしい。

 

 無理もないか…、最早神の権能は無い。配下の神は俺の殴り込みでほぼ全柱、ご神体事砕いて葬った。立て直しは不可能。おまけに退路なし。

 

 高天ヶ原? ああ、なんかあの空間。一種の固有結界判定らしくて、エア使ったら崩壊した。いや~、マジでビビった。腐っても対界宝具。全力で使えなくても余波だけで疑似世界と言えど消し飛ばすとは。本気の天の理verで使えたらどれほどの力になるのか想像すらできない。

 

 さて、残りはあなただけですよ? 天照大御神。日本神話にて、頂点に立つ女帝。

 

 例え、神の権能を失おうとも神であることを失ったわけではない。

 

 例え、配下が、忠臣がいなくなっても、天照大御神一柱いれば偉業を達成できる。

 

 「創世光年」。それが天照大御神の目指した大偉業。地上の一切を滅し、また、一から全てをやり直す。

 

 今度こそ、失敗しないように無駄な物は全て削ぎ落す。自らの思い通りに運営できる気持ちのいい星造り。抵抗することは許されない。その考えが入り込む余白すら与えない。

 

 原罪の一。

 

 『憐憫』の理を持つビーストと人間を滅ぼすと言う同じ結論に至った「天の神々」。

 

 ただ、原罪の一とは違う。『憐憫』のビーストは「終わりある命の最後の悲しみ」に終止符を打とうとした。

 

 天の神々は「自らに並び立つ人間の進化の力に恐怖」した。

 

 愛故の暴走か、保身故の立ち回りか。

 

 天の神々の理由は実に「人間らしい」理由だ。正直な話、俺にはガキがおもちゃ買ってもらえなくて駄々をこねてるようにしか思えない。それで人類が滅びそうになってるんだから始末が悪い。

 

 加えて、悠久の時を存在し続けてきた故の自我の肥大化。人間なんぞよりも優れていると言う自負。

 

 

 頭の中にノイズと砂嵐まみれで碌に認識できない映像のようなものが流れる……。

 

 

 かつてあった圧倒的な力を振りかざした災厄に一方的に蹂躙された負の記憶。

 

 自分よりも上から見下ろされる恐怖。

 

 プライドも何もかもを捨てて、命乞いをした光景。

 

 今まで、自分たちに向けられてきた畏怖の念が無くなる。気持ちの良い、当たり前の光景が崩れる。

 

 人間なんてちっぽけな取るに足らない存在が神である我々に見向きもしない。

 

 そんなのダメだ、間違っている。

 

 気に食わない。

 

 もう一度、我々神の力を見せつけよう! 惨めに命乞いさせよう! その上で笑いながら殺そう。お前らのような奴らはいらないんだよと言ってやろう。

 

 

 

 

「ずいぶん、人間らしいな。天の神ってのは」

 

 全知なるや全能の星(シャ・ナクパ・イルム)にて、わかった真実に思わず漏れた言葉。

 

 つーか、アウトオブ眼中のくせに自分を無視するのは許さないとかどんだけかまってちゃんなんだよ。

 

 火鼠の衣と火避けの杖で、やり過ごしていたその攻撃がピタリとやむ。

 

 仙女を思わせるすまし顔を真っ赤に染めて震えている。

 

 配下を葬っり、神の権能すら無力化され、虫の息にも拘わらずとどめを刺しきれない苛立ち。

 

 そこに、神の頂点たる己を…、”人間らしい”と言ったか? そんな下等生物と同列に扱われる何て認められない。

 

 自尊心が許さない。

 

 最早、言葉は出なかった。許さない。

 

 その感情だけが、天照大御神を動かす。

 

 恐怖を振りまき惨めに命乞いをさせて、嘲笑いながら殺そう。そう思っていた余裕が無くなる。

 

 目の前にいる不敬を今すぐに消そう。

 

 天照大御神は切り札たる「鉾」を出す。日本神話に置いて、最初に地上に大地を創り出した創世の「鉾」。星を創る魔鉾。国造りの原型。

 

 本来、創り出すものだが、そこに込められた純粋な力は測り知れない。

 

 その星を創る魔鉾が俺に向かって”投擲”される。

 

 開放される神の一撃。

 

 避けることは叶わない。余波で神樹の結界を容易く貫き、残りの四国大陸だけならば簡単に消し飛ばせる。

 

 あれを無力化しなければ、これまでの死闘の意味が無い。

 

 後一秒後には俺を貫き、全てが無に帰る。

 

 どうする? あれを受け止めるのは今の俺では不可能だ。

 

 天之瓊鉾自体の原型は俺も持っている。国造りの原型としてのものと、支えるものとしての原型のものを。前者を取り出してぶつけて相殺するのはいいんだが、その場合神樹の結界も四国も一緒に余波で跡形もなく吹っ飛ぶ。

 

 後者は完全にアンティークであり、武器としては使えない。

 

 エアを握れない今、投擲された創世の一撃を相殺だけでなく、その圧倒的な破壊エネルギーを上回るだけではなく完全に打ち砕き呑み下す力が必要だ。

 

 そして、この宇宙にある限り必ず二面性が生じる。

 

 「創る」と言うことは、「壊す」までがセットとして扱われる。何かをすると言うことは最終的に否定されて終わるもの。

 

 それに相当する宝具は絶対数こそ少ないものの、それでも軽く万は超える数が王の財宝にはある。

 

 問題なのは、それをぶつけた時の余波が想像できない事。

 

 場所と被害を考えなければ悩まずに行動に移せた。

 

 そこまで考えて、小さな違和感に気が付く。

 

 ……そう言えば、プリズマ☆イリヤで子ギルがアンジェリカに王の財宝で攻撃して来た敵に対して、自分の宝物庫を全開にして宝具を取り戻すと言う荒業をやっていた。

 加えて、宝物庫の中は時間と空間…広さと言う概念が存在しない。入れようと思えばそれこそ、この星の質量を軽く上回るものも入れられる。と言うか、既に入っていて、現在進行形で増え続けている。

 

 目の前の空間が歪み、黄金の波紋が浮かぶ。

 

 投擲された魔鉾はその波紋の中へと消えていった。

 

 天の神は両目を見開いて驚いている。ハハ……、ワロス。

 

 今の天の神には神樹の結界を一撃で壊すほどの力は無い。とは言え、時間をかければ結界を侵食して神樹を倒しに来るだろうが…、それまで猶予はそこそこある。

 

 取り敢えず天の神を再び天の鎖で縛って一時撤退する。

 

 うへぇ…、しんどい。体が動かないので転移符で仮住まいに戻る。

 

 この戦いに赴くにあたり、自宅にある俺の使っていた物は全て捨ててきた。

 

 多分、此処へは戻ってこれないだろうと思っての行動。仮住まいはもし、生きて帰ってこれたらそこでひっそりと暮らそうと思って、芽吹の親父さんに依頼して造ってもらった。

 

 なぜか、国土さん家の亜耶さんが完成当初から掃除に洗濯、料理を作っては冷蔵庫に入れて行くという通い妻をしているのは気にしないことにする。

 

 いつの間にか芽吹のプラモとかが置かれて居たり、防人達の日用品がさも当然のように置かれているのは目を瞑ることとする。

 

 此処、合宿場じゃないんだけどな~。防人全員+アルファで寝泊まりしても余裕で布団と部屋とか余るけど…。

 

 そのことについて、亜耶が珍しく”皆さんだけズルいです”とむくれていた。

 

 巫女は適性があるとわかれば、大赦が引き取り面倒を見ることとなっている。そのために、巫女のほとんどがその余生を大赦内で隔離に近い形で過ごしている。下手したら学校とか行ったことがないんじゃないかな?

 

 実のところ、樹にも巫女としての適性があったりする。樹の占いが良く当たるのはこれの恩恵が大きかったりする。大赦が引き取ろうとしたが、樹が神樹の神託を受け取ることができなくて使えねぇ~な、いらね。と言う具合で普通に家で過ごせていた。

 

 万が一の時のために、樹には神託受け取れないように細工はさせてもらったけど。

 

 まぁ、それがあったとしても勇者としての適性の方が断然高いので、とんぼ返りになっていただろう…、巫女も勇者も凄く貴重な存在であるが、勇者は直接戦うので殉職者がほとんど。そのために、両方の適性がある者は余程、巫女としての適性値が振り切れていない限り勇者に回される。

 

 美森なんかがいい例だろう。美森は巫女としての適性もかなり高かったから、適性検査後、どちらにするかで意見が結構分かれていた。それでも、勇者の適性の方が高かったために長考の結果勇者に回された。

 

 勇者として選ばれた者の九割九分九里がお役目を終えることなく、その短い生涯を終える。

 

 それを考えると、精霊バリアがあったとは言え、生き残った勇者部のメンバーが如何に凄いかが浮き彫りになる。

 

 精霊バリアが無い時代から戦い生き延びた美森、園子、銀(原作ではお役目中に亡くなったが)とかチート通り越してバグキャラの領域だから。防人も同様。

 

 特に盾ぶん回して「助けてメブゥゥゥーーーー!!」とか叫びながら戦場を駆け回る異能生存体(加賀城雀)とか何なの? むしろ、此方が助けてほしいんだけど……。

 

 ドンッ、と言う音を立てながら背中から床に熱烈な挨拶を交わす。

 

 結構ふざけているが、体はボドボドダ! をガチで行っている。指一本動かせる気がしない。

 

 ここで孤独死とか、ちょっとしまらないな~。

 

 エリクサーを宝物庫を開けて、自分にぶっかける。一応、外傷は全て治った。

 

 …精神的消耗はどうしようもないが。

 

「どうしたんで……! 大丈夫ですか!!」

 

 噂をすれば何とやら。

 

 原作では今頃、千景砲の回路の一部になっているはずなんだけど……。俺が結界の外に出てから、どの位時間が経過したのかがわからんから、状況がわからない。

 

 まだ乾ききっていない俺の血とエリクサーで汚れるのも構わずに俺を介抱しようとする国土さん家の亜耶さん。

 

 そんなことよりも、

 

「亜耶、何でここにいるかはこの際どうでもいい。速くシェルターに入れ」

 

 俺の隠れ家は四国内で一番強い霊脈の上に建てられている。無論、外界と遮断する結界も張ってある。

 

 神樹が破壊され四国の結界が消滅しようと、四国の地が滅ぼうとこの家は存在し続ける。

 

 一種の世界として成り立っていたりする。

 

 その中でも地下シェルターにはまた別の対、神霊用の結界を張り巡らせ、空間を湾曲させ、広さだけならオーストラリア大陸よりも広い異空間となっている。

 

 電力も、ヴィマーナのエンジン取り出して発電機として使用している。時折、燃料となる水銀を投入せねばならないが、一回の稼働時間で四国が年間に使う電気の数千兆倍の電量を生成し、それを半永久的に貯蓄しておける電池も予備を合わせれば千を超えている。

 

 因みに電池の寿命は、使い始めてから500~600年前後。使わない状態ではこれまた、半永久的というあらゆる分野に喧嘩を売るスバラな品々になっている。

 

 食料に関しては北欧における”北風のテーブル掛け”を入れようと考えていた人数分は用意した。

 

 盗難防止用術式と、劣化、破損修復式も施しておいた。

 

 食料危機の心配は無い。一応、家庭菜園(世界規模)用に様々な植物の種も用意した。

 

 名付けて”地底都市四国犬吠埼支部”である。

 

 地価の結界は神樹よりも強固なもので、神、心霊の力ではどうあがこうと傷一つ付けられない。

 

 滅びは、シェルター内の人間同士が殺し合いの末共倒れする以外になかったりする。

 

 そのせいで、半神半人(現人神)である俺も地下シェルターには転移装置なしでは入れない。

 

 その転移装置は地下シェルターに設置してある一機と王の財宝の中にしかない為、俺が死ねば神、心霊の類は入る方法が未来永劫無くなる。

 

 宛ら、現代に置けるノアの箱舟なのだ。船じゃないけど。

 

 そんなわけだから、速くシェルターに入りんしゃい。危ないゼ☆。

 

「嫌です! 皆で生きて帰るんです! 待っててください。今、救急車を呼びます!」

 

 スマホを出して電話をかけようとしている亜耶。

 

 この隠れ家に張っている結界には認識妨害も含まれている。俺の認めた人が先導しない限り、この家に辿り着ける者はいない。

 

 他にも、悪意に反応して悪意の元を消す術式も作動している。もし、そう言った類の輩がそいつらを人質にとって案内させるかもわからんからだ。

 

 特に風。樹を人質に取られれば従わざる終えない所があるし。

 

 俺はスマホで救急車を呼ぼうとしている亜耶の頭の上に門を開く。

 

 そこから落ちてきた黄金のおもちゃのハンマー。

 

 そのハンマーは重力に従い、亜耶の頭に当たり”ピコッ!”と気の抜ける音を立てる。

 

 亜耶がスマホを落とし、目を回しながら俺の上へと倒れる。

 

「も…みじ、さん」

 

「……許せ、とは言わん。恨んでくれて構わない」

 

 人型オートマトンを王の財宝から出して、亜耶を運ばせる。

 

 英霊ですら、受けたら一瞬であっても行動不能になるピコハンを受けたのだ。半日は何もできないだろう。

 

 

 

 決着の時が近い。

 

 千里眼……、世界を見据える目によって友奈たちが動き始めた。

 

 もう、俺の出しゃばるところはなさそうだが、千里眼による未来予知に不確定要素が多すぎる。所々乱れて見えないのだ。

 

 後は若いのに任せて、俺は眠り耽るには不穏すぎる。直感もこのままでは大変なことになることを告げてきている。

 

 猶予は…、無いか。

 

 結局、戻ってきた意味なかったな。

 

 

 

 

 はぁ、とため息がでる。

 

 この戦いの勝利を以て、神との訣別の儀とする…か。その神の中には無論、現人神である俺も含まれている。

 

 この戦いで死のうが生き残ろうが、俺があいつらに生きて会うことは無い。

 

 

 王の財宝の中にある時返りの秘薬を頭から被る。

 

 戦いに挑む前の肉体状態に強制的に戻される。

 

 精神消耗による気怠さを除けば、何ともない。

 

 

 もう一度、家の中を見渡す。

 

 

 ―――さよなら、皆元気でね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザシュッ!

 

 胸を中心に焼けるような熱が支配する。

 

 フラグなんて立てるもんじゃねーな、つーかタイミングが悪すぎる!

 

 何で、転移してきたところで敵の攻撃にあわにゃならんのよ。

 

 魔術を行使して、痛覚を遮断する。心臓を今の一撃で潰された。

 

 即死すぎて逆に生きている状態だ。

 

「「おっ、お兄ちゃん……」」

 

 樹はともかくとして、風が俺をお兄ちゃんと呼ぶのは久しぶりだ。思春期に入ってからは兄さんか兄貴と呼んいた。

 

 樹も家族だけになると俺のことをお兄ちゃんではなく、紅葉さんと呼ぶし。

 

 園子は、(俺が)嵌められて見合いをしてからは、俺のことを旦那様~♡と呼んでいる。旦那様の後に絶対に余計なものが付いているような気がするけど、気のせいと割り切る。(それまではお兄さんと呼んでいた)

 

 そんなどうでもいいことを考えていると、勇者部のメンバーが俺の名を叫びながら駆け寄ってくる。

 

「ハ! 気にするな、致命傷だ! それよりもお前らだ、ばかもの! 無事か! 無事だな! ならば良し!」

 

 絶対魔獣戦線での賢王の迷台詞(誤字に非ず)を口にする。

 

 戦線維持のため、治療に戻ることはできない。

 

「俺のことは気にせず、その心を示すのだ! お前らの一時の感情で千載一遇のチャンスを見過ごすのか! たわけが!」

 

 カリスマA+が猛威を振るう。

 

 既に魔術・呪いの領域まで達している命令に、此方に駆け寄ってきていた勇者部のメンバー達が足を止める。

 

「成すべきを成せ」

 

 潤んだ14の瞳がこちらを見た後、攻撃後、俺を警戒して距離を取った天の神の元へと勇者の力で飛んで行く。

 

 「必ず戻って来ます」と微かに聞こえた気がした。

 

 皆と入れ替わるように若葉ードが此方にやって来て、人であったころの姿へと戻る。勇者の章最終話の光のシルエットとして現れた姿ではなく、ちゃんとした人間の姿になって。

 

 俺に肩を貸してくれる。

 

 若葉は全盛期の時の姿で現われている。俺の身長は182cmで若葉との身長差は19cm。身長差で逆に少し辛いのだが…、黙っておこう。

 

 

バード(若葉)、俺を神樹の元へ運んでくれ」

 

「……良いんですか」

 

 その質問にどれだけの思いが込められているのだろうか。重苦しく響く。

 

 その問いに対して、俺は体を支えるために俺の脇腹へと回されている手に自分の手を添えるだけ。

 

 添えた手から、若葉の細くて柔らかい手の感触を確かめつつ、

 

「頼む」

 

 それだけを告げた。

 

 若葉は何も言わず、

 

 俺を小脇に抱えるようにして神樹への最短ルートを全力で走ってくれる。

 

 俺を抱えている若葉が微かに震えているのは、きっと気のせいでは無いだろう。

 

 

 辛い役目を押し付けてしまったな。

 こんなに小さな手に重すぎる荷物を持たせてしまったことに強い罪悪感を抱く。

 

 

 やはり、こいつらは俺と違って、敵を倒す勇者ではない。その良き心を世に示すために選ばれた。

 

 

 

 心眼(笑)でちらりと友奈たちを見る。

 

 

 

 

 幻想的な虚空の花が咲き誇る。

 

 原作と違って最初から戦いに参加していたから少し心配したが、ここからは原作通りに事が運ぶようだ。

 

 神樹は原作通り人を信じて、自らを供物として友奈に全ての力を委ねた。

 

 友奈の神威の力が花弁として虚空に舞う。

 

 これは一つの神話の終わり。

 

 傷つき、泣きわめきながら託された未来へのバトンを次の世代に渡すマラソンがここに終着する。

 

 

 

 

 そのクライマックスを前にし、頬が吊り上がる。

 

 全乗せ勇者パンチが天の神を捉える。

 

 天の神はその神殺しの力に恐怖を覚えたのだろう。必死に抵抗し、反らそうとしている。

 

 ―――そんなの、我が許すわけないだろう?

 

 ここで仕留めそこなえば、次は無い。

 

 宝物庫が開く。

 

 黄金の波紋が天の神の後方に展開され、そこから鎖が天の神を縛り上げる。

 

 天の鎖。

 

 どこかの世界にて創世神をも縛り付けた大偉業を成し遂げた粛清の英雄。その体の一部を宝物庫に入れて武具として使っている神聖を罰する粛清宝具(神造兵装)

 

 その真価が遺憾なく発揮される。

 

 天の遺児は死して尚、英雄王の支えとなり続ける。その友情を、絆を羨ましく思う。

 

 

 友奈のパンチが天の神を貫く。

 

 天を覆っていた曇天に大穴が開く。それと同時に耳を劈く大声が木霊する。

 

 その力の限りで天の神を縛っていた天の鎖の圧力(物理)により、天の神は御神体ごと粉々に砕かれた。

 

 曇天に亀裂が入り、硝子が割れるような音と共に、青空が顔を覗かせる。

 

 神と言う強靭な器にてコントロールされていた膨大力が、本来の姿である自然エネルギーへと還っていく。

 

 

 まぁ、その自然エネルギーは神樹に吸収されているけど。

 

 

 

 けちのつけようが無い、完膚なきまでの完全勝利だ。

 

 

 

 戦いが終わり、樹海化が解けずに色を失っていた世界に色彩が戻っていく光景に驚いているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ありがとう。そして、お疲れ様。おめでとう。友奈(愛の神)

 

 天の神との戦いにおける、ターニングポイントに必ず現れていた友奈(彼女)

 

 その宿命がここに幕を閉じた。

 

 もう誰も彼女(友奈)を求める事はなく、誰も彼女(友奈)()を背負う必要もなく、誰もこれ以上の助力・成果を彼女(友奈)に求める事はない。

 

 これより先の未来に友奈(愛の神)が現れることは二度とはない。

 

 

 

 

 

 

 

 体に伝わる振動が止まる。意識を目の前に戻す。

 

 

 綺麗な桜の花が咲き誇っている。

 

 

 ……もう、侮称として”神樹”と呼ぶのは止めよう。

 

 

 

 ()名は”重桜”。

 

 

 まだ、土地神の集合体と言われ、統合される前の真の姿()。天の神の子孫の邪馬台国を納めた女帝たる巫女、卑弥呼が先祖たる天の神の”御姿(みすかた)”として祀った日本のシンボルたる桜の原型。

 

 

 嘗て、全ての大陸が地続きだった頃より数多の命を見守り続けた母なる大樹よ。

 

 桜は「豊かさ」、「知性」、「覚悟」、「潔白」、そして「潔さ」と日本人の精神的美学(主柱)の象徴。

 

 今でも、日本人に強く根付いている風習。彼岸。

 

 古代の日本人は四季の節目を彼岸(死後の世界)とした。(因みに、現世のことを此岸と言う)

 

 その節目()を辛気臭い顔で居るよりも笑って終えよう(送り出そう)という日本人の精神性を体現した行事。

 

 それが、永い永い時を刻み人間の出会いと別れにも結び付いていく。

 

 古代の日本人は人生を花に例えた。

 

 元来、花見=花看であって、花を”見て”雅に耽るのではなく。花を”看取る”ことを指す。

 

 そう―――神の御姿たる桜。その誕生を祝い、死を看取る神事。それが、形だけで現代まで残ったのが”お花見”。

 

 日本人にとって桜は一番身近な満開()散華()なのだ。

 

 それを今生の別れとし、次の生でもまた会おうねと言う使い古されたお涙頂戴設定。

 

 約束の原型。

 

 契約や、制約の原型はあれど、約束の原型は王の財宝に入っていない。

 

 その楽しくも切ない宴の締めくくり(別れ言葉)は、確か―――

 

「花や、またね」

 

 最大限の敬意を以てこの言葉を口にする。

 

 これ程似合う今生の別れ(言葉)は無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それはそれとして、逝く前に身包み剥ぐけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「若葉…、ありがとう」

 

 支えていた手をやんわりと、外し、自らの力だけで大地に立つ。

 

 もう二度とは味わえない感覚だ。忘れないように一歩一歩、何時もよりもほんの少し力ずよく踏みしめる。

 

 これが、この足跡だけが英雄王や英霊、この星の力を扱うものではなく、俺自身が俺だけの力で、この世界に残せる唯一の行為。

 

 生きた証。

 

 例え、次の瞬間にこの仮初の世界から消えるとしても。

 

 何かが落ちたような音が聞こえた。

 

 心眼(笑)で振り返らずに後ろを見る。

 

 若葉が涙を流し、唇を噛み切り、それでも瞳は反らすことはしていない。

 

 

 ならば、俺が歩みを止めて振り返ることはしてはならない。

 

 若葉はここまで自分の意思を捻じ曲げて、俺をこの場へと運んできた。

 

 歩みを止めること。それは、ここまで連れてきてくれた若葉への最大の侮辱だ。

 

 

 黄金の波紋から武器を取り出す。

 

 英雄王しか持ちえない究極の一。

 

 乖離剣エア。

 

 神の権能が形になったもの。と言うか、人格がないだけで神そのもの。

 

 星の原初を模る全能の権能。刀身は三つの円管に分かれていて、それぞれにビッグバンが起こる前の原初の星が入っている。

 

 最早古すぎてどの伝承に於いても名前すらない、原初の神であり、死の国の原型。

 

 真名開放は、ビッグバンにより生じた破壊エネルギーを刀身より放出して敵にぶつける。

 

 シンプル故、最強で最恐、そして頂点。

 

 全力で使うことは、この宇宙に定着した概念を含めて全てを破壊し白紙に戻すことと同義。

 

 それは勘弁してつかーさいと抑止力が全力で介入してくるので英雄王ですら宝具の疑似展開しかできないのだ。

 

 使えば、問答無用で敵は死ぬ。何をしようが敵は死ぬ。を体現した天の理verですら疑似展開でしかないのだから開いた顎が塞がらない。

 

 ありとあらゆる概念すらねじ伏せて喰らい尽くす一撃。アーサー王の持つ聖剣の鞘以外は防ぐことは愚か、凌ぐことすら不可能な代物。

 

 と言うか、概念を反射する概念とかズルすぎない?

 

 エアの力はこの宇宙のありとあらゆる概念に至るまで、全ての法則の指針になったもの。

 

 聖剣の鞘はこの宇宙とは全く”別の法則で成り立っている”のだ。それもこの宇宙で生まれながら。

 

 意味がわからない。

 

 まぁ、それでも6次元以降の攻撃は通るんだけどさ。それを考えると、世界最古の電脳端末であるムーンセルはバグの領域だ。

 

 攻撃から、防御に至るまで現段階で8次元まで可能であるらしいし。

 

 そのムーンセルですら、干渉できない領域に行く手段を持っている英雄王も大概だが……。

 

 

 ここから先は、英雄王であろうと、否、英雄王だからこそ行わなかった偉業(愚行)

 

 神代に見られる神の領域の奇跡。

 

 その最奥、死者蘇生。

 

 単純な死者蘇生では、人間の知性による物理法則に決定され定着した現代において抑止力が全力で介入してくるために行えない。

 

 しかし、何事においても抜け道と言う名の例外が存在する。

 

 英霊の受肉がこれに当たる。

 

 蘇らせる魂は精霊として、神樹の中にある。

 

 それを神樹から切り離せば問題は無い。

 

 宝物庫から御神木でできた人形を西暦時代の初代勇者全員+α分取り出す。当たり前であるが、神樹の中にいる全ての魂の器は用意できない。

 

 故に、俺の独断と偏見によるエコ贔屓全開で引き抜きを行いう。

 

 なぜ、主要メンバーたちだけなのかと言うと、犬吠埼家の隠し部屋にてそいつらの名義での通帳と印鑑、カードが大切に保管してあったから。(ついでに、それらが使えるようにしてきた。流石に入っていた金額まではそのままとはいかずに、俺の個人資産から同額まで入れ直したけど)所で、通帳の中に”犬吠埼友奈”と”弥勒蓮華”って知らない名前もちらほら見かけたんだけど、誰なんだ?

 

 後、初代勇者ので高嶋さんちの友奈さんの相棒の郡千景の名が無かった。代わりに”犬吠埼千景”と言う名ならばあった。

 

 気になって調べてみたんだけど、でてきたのは何冊かの勇者御記と初代勇者たちの集合写真。

 

 何故か作中出会うことのない白鳥歌野と巫女の藤森水都の姿、それに秋原雪花とか、小波蔵棗とか俺の知らない人物たちが写っている。

 

 因みに、犬吠埼友奈と弥勒蓮華って娘の写真は出てこなかった。犬吠埼友奈に関しては、仮にも大赦の御三家たる犬吠埼家の名を名乗っているんだから写真位残せよ! と、思わなくもないのだが、一枚も残っていない所を見るに養子なのか、大赦にとって都合の悪い内容なので隠蔽されたのか。

 

 絶対に後者だと思うけど。その娘たちの時代にオカルト集団の集団自殺があったらしいけど、なにか関係があるんじゃないだろうな。

 

 例えば、ゴミ処理させていた…とか。

 

 今考えてもしょうがないことなので、これ以上考えるのはやめよう。

 

 それにしても、である。

 

 もしかしなくても、犬吠埼家の初代様(千景)は転生者だよね? だいぶ原作ブレイクして改変しちゃってるし。

 

 でも、家系図遡ってくと千景の前に俺と同じ漢字で”紅葉”って記してあるんだよね。誰だよ、マジで。

 

 性別が載ってないんだよね。俺以外の男の勇者が居た記録は残ってないし。

 

 

 

 それはそれとして。

 

 

 

 取り敢えず、通帳残すくらい繋がりの強い人物なのだろうと、先祖の意を汲んで蘇らせるリストに入れた。

 

 この御神木であれば、人間程度の体なら全てにおいて再現できる。

 

 後は、魂を入れれば勝手に馴染んで人間になる。

 

 

 

 乖離剣を神樹にぶっ刺して真名を解放する。乖離剣の間違った使い方である。

 

 何か、神樹の中の神たちが消滅を逃れるため挙って来たので、容赦なくエアで消し飛ばす。

 

 全知なるや全能の星(シャ・ナクパ・イルム)で確認をしつつ神は容赦なく消し飛ばす。さりげなく人形に入ろうとしていた神がエアの余波に当たって消滅する。

 

 ざまぁ。

 

 

 

 前代未聞の愚行を行いながら、俺は想いを馳せる。

 

 これまでの旅と、これからの旅を。

 

 自分がいた今まで(エピローグ)と、もう自分のいない、未来の夢(プロローグ)を。

 

 

 

 

 

 

 お目当ての魂たちを無事に回収し、人形に入れる。

 

 木でできた人形が人間の肌の色と、生命活動の証である呼吸が始まる。

 

 体は用意できたけど、着る服までは用意できなかった。

 

 それは流石に勘弁してほしい。

 

 俺は福眼以外の何物でもないけど。蘇りの料金と納得して頂こう。

 

 

 人形が一つだけ残っている。

 

 

 神樹を神樹たらしめる神々は消滅し、本来の姿である重桜へと戻った。

 

 

 俺の作った通帳、何故か一つ多く作っていた。俺自身は作った覚えはなかったんだが、間違いなく俺が終活の一環として作ったもの。

 

 自然と口が吊り上がる。

 

 どうやら運命は重桜を見捨てることをしないようだ。

 

 星の思惑通りに動くのは癪だが、散々滅茶苦茶をさせてもらった手前、最後位はその意に沿ってやるのも良いだろう。

 

 だが、ただその意思に従うのはむかつくのでちょっとした小細工はさせてもらう。

 

 天の鎖で重桜の核を縛る。

 

 そこにエアを向ける。

 

 

 ―――もう、これより先。神の力は必要ない。

 

 

 権能を削ぎ落す。

 

 重桜を神たらしめている力を削ぎ落す。

 

 世界を見据えている神の目の能力を奪う。

 

 世界との楔を破壊する。

 

 

 

 神樹の中に繋ぎ止められていた力がなくなったことで、そこにある魂たちが本来還るべき場所へと向かって旅立つ。

 

 良かった…、何とか全ての工程を神樹消滅前にやり終えた。

 

 

「な…ん、で?」

 

 その問いには答えない。

 

 流石は元神なだけある。他の皆よりも速く器に馴染んだようだ。

 

「門出祝いだ。”出雲神奈”と名乗るが良い」

 

 重桜の核たる女神は、神としての名は持ち合わせているが人としての名は無い。

 

 神格を失った少女に最早神の名は必要ない。

 

 重桜ではなく、神話にて、在り方を歪められた愛の神(■■■■)ではなく。友奈でもなく―――

 

 人として今ここに誕生した無垢なる少女に最初の指標を示す(名を与える)

 

 しかし、()()とは少し皮肉すぎたかと思うが、いいや。

 

 名のるか、名のらないかは彼女が決めることだ。

 

 力が抜け、崩れ落ちる。

 

 流石に限界らしい。

 

 それを神奈が抱きしめる形で、支える。

 

 唇に軽い衝撃が伝わる。

 

 驚いたが、それに抵抗する力はもう残っていない。

 

 何気に、ファーストキスだ。

 

 ファーストキスは涙を流す友奈と同じ顔の美少女。まぁ、悪い終わりではないかな。少女は全裸であることには目を瞑ろう。

 

 と言うか、神話に名高い女神として、女からそう言う行為に行くのは御法度じゃないの? 貴女、それで子供亡くしてますけど。

 

 あ、舌が入ってきた。

 

 どうでもいいが、胸部が美森並みだと記しておく。

 

 唇が離れると、抱きしめる力が更に強くなる。

 

 

 ―――おやすみなさい。

 

 

 少なからず感じていた死の恐怖が無くなる。

 

 心に響く優しい声音に答えるようにゆっくりと瞳を閉じ、永遠の眠りにつく。 




Q青い烏の正体

A皆大好き若バード。本来若葉一人だけだが若葉とひなたはセットだろうと言う作者の偏見により比翼の鳥として登場。比翼の鳥とか言いつつ、人間になって、主人公を支える役目をひなたハブってやってるとか言わない。後、比翼の鳥は仲睦まじい男女の夫婦を指す言葉だとかツッコミは受け付けないから。
 元ネタは日本神話で天皇の祖先を道案内した天の御遣いなので、実質天の神のパシリなのだが、ゆゆゆでは主人公たちを見守り導く立場をとっていたりする。調べてわかったときにパシリに嫌気がさして下剋上と思った作者は悪くない。



Qユウキにルビでひなたって書いてあるけどなんでなん?

A上里ひなたが、主人公が転生前の世界で見ていたSAOに登場した絶剣のユウキに似ているから。




Q主人公愛がわからんとか中二病?

A主人公は転生前、いじめにあっていた(主人公がいじめと認識していない)ため、他人に好意を寄せられることはまずないと童貞以外にも色々と拗らせている。転生後、千里眼と言う一種の神の目線を手に入れたことでその思考に拍車がかかりまくった。因みに転生前の人生に於いて、主人公は女顔で男子としては身長が低かったが、
同年代の少女から見れば高身長でスレンダーに見えたことと、なよなよして仕草が女よりも女らしく、男子に受けが良く嫉妬の対象となったことから、主に女からのいじめ対象になっていた。(悪口を言われる程度)




Q花見って…、あの花見?

Aどの花見かは知らんけど、春に咲き誇る桜を眺めるやつで合ってる



Q千景って転生者なん?

A主人公の勘違い



Q愛の神(友奈)と重桜って何?

A日本神話にて登場する女神。ネームバリューだけは凄いけど、結局なんの神なのかわかりずらい一柱。重桜は卑弥呼が先祖である天の神の御姿として祀っていたが、実際は天の神の親に当たるらしい。
 重桜=重ね桜。この場合、”重ね”とは、時間のことを指す。決して八重桜ではない。永い時を重ね(生き)た桜のことで、種類では無く桜の木の原型。そこ! アズールレーンとか言わない!
 どうでもいい補足として、桜は全て女性らしい美しさを示す美辞麗句として使われる。



Q”花や、またね”って?

A格好付けた別れ文句。花見の席で使われるらしい。本来の意味に習うなら「来世で会おう」になるんだが、文字通り言わぬが「花」だろう

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