千の恋より万の花を(仮題)   作:れーわ

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導入(二話)がいらない人用のまとめはあとがきにて

導入なので早めに


第2話

 

 

「将臣くん。将臣くん? 大丈夫かい?」

 

 繰り返すように「将臣くん」と呼ぶ医者。怪訝そうにこちらを窺う彼に思わず顔をしかめてしまう。将臣? 誰だそれは。俺の名前は…………思い出せない。まるで霧がかかったように自身の名前や友人関係や家族構成、自身がどんな環境で育ち、そもそもなぜ、体が縮んだ(、、、、、)などと思ってしまったのかさえもわからなくなる。

 

 元々俺はこの体だった(ありちまさおみ)だろう。と同時に思い出されるのはこれまでの記憶。自身の名が有地将臣で母親の名は有地都子(みやこ)。父親の名は有地幸弘(ゆきひろ)。祖父に鞍馬(くらま)玄十郎(げんじゅうろう)を持ち従兄妹には鞍馬廉太郎(れんたろう)とその妹である小春(こはる)がいて……。

 

 ちゃんと覚えている。……はずだ。だというのに、何故か胸の奥がざわつく。

 今日は川でと言っても足がつく程度の浅いもので芦花姉(ろかねぇ)や廉太郎達と川遊びをしていたはずだ。

 それで……? どうなったんだっけ? そうだ! 足を()って溺れかけたんだ。でも、誰かが……そう、芦花姉が助けてくれたんだっけ。……? どうして芦花姉が助けてくれたなんて断定できるんだ? 確かにあの場では芦花姉が一番年上だけど、近くには廉太郎もいたはずで、芦花姉だと決めつけるのはおかしいのではないか?

 

「……すぐに迎えに来てくれるそうだ。よかったね将臣くん」

 

 どっぷりと思考の水底に沈んでいた俺はその言葉を理解するまでに少しの時間を要した。考えてもわからないことはとりあえず後回しにして今を見据えるべきだろう。

 場所は変わらずここ穂織唯一の診療所。駒川(こまがわ)先生の診察室だ。

 

 普段は穏やかな雰囲気を放つ駒川先生だがいつだったか行われた玄十郎(じいちゃん)との剣道の立ち会いはまさに烈火のごとくそれはもう凄まじいものだった。その先生に負けず劣らず祖父(じい)ちゃんも時に激しく攻め立て、受けに回ったかと思えば苛烈に攻め立てる先生の剣を柳のようにしなやかに流し柔も剛も併せ持った大立ち回りを繰り広げたのだ。

 達人やサムライと言うのは正しく彼らのような存在を指すのだろうと幼心ながらその命を削るかのような激しい攻防に魅入られた。――それでも彼らでは(、、、、)祟り神を完全に祓うことはできない。

 

 ドクン。と大きく心臓が跳ねた気がした。夏だというのに寒気がして体中に鳥肌が立つ。祟り神。……祟り神とはなんだ? 知らないはずなのにもしかしたらと己に問いかける。問いかけてしまった。そうしてまるで最初から知っていたことのように想起させるは祟り神とはどういう存在であるか。その発生原因とは。そして――

 

「「将臣!」」

 

 突如として発生する衝撃と叫ぶように自身を呼ぶ声が聞こえた。

 違和感は、すでにかき消えていた。うつむいていた顔を上げるとそこには両親がいた。泣きはらした顔は本当に心底心配していたようで目は充血しており涙の後も残っていてとても人様には見せることができないそんな有様だった。何故かはわからないがひどく罪悪感が心に重くのしかかる。と、同時にこんなにも自身のことを心配してくれたのだ。と心がぽかぽかと暖かくなる。

 つい、思わず出た言葉は。「ごめんなさい」だった。何故かそう言わなければならないと思ったのだ。――奪ってしまって。「ごめんなさい。」

 

 その一言とともに両の目から涙が溢れ出す。自身では止められないそれを見て両親は頭を撫でたり背をさすったりともう大丈夫だと。無事で本当によかったと涙ながらに口にしては将臣が生きていることに嬉しさと深い愛情を示すかのごとくしばらく有地将臣の生存を心から感謝した。

 

「すみません。駒川先生。うちの子が大変お手数をおかけいたしまして」

「いえいえ。もし、将臣くんになにかあれば玄十郎の奴に殺されかねませんからな」

「そ、それはええと……」

「ほっほ。冗談ですよ。私も将臣くんが助かって本当に良かったと心から思っておりますからな。それに彼が生きているのは彼自身が生きたいと思ったからこそ。私はその手伝いを少しばかりしたに過ぎませんよ」

「それでもっ駒川先生。うちの将臣を助けてくれて本当にありがとうございました!」

「ほら、あんたも先生にお礼しな」

 

 そう言って母は手を取って立たせると早くしろと言わんばかりに後頭部を掴んで少々乱暴に下げさせた。俺は母の照れ隠しだろうとクスリと小さく笑って大きな声で「ありがとうございました」と感謝を述べた。続けて両親もまた繰り返すように「ありがとうございました」と何度も口にした。その声はやはり、少し震えていた。

 

「何はともあれ無事で良かったよ将臣くん。だけど、いくら足がつくからと言って川をいや、水を甘く見てはいけないよ。たとえ人は膝くらいの水であったとしても溺れて死んでしまうこともあるんだからね? 今後は気をつけるように」

 

「はい」と素直に返事を返し、川とは関係のないはずの風呂では絶対に寝ないようにしようと固く決意するのだった。「よろしい」と満足気に頷く駒川先生はすっかり夜になってしまった外を見て、「今日はゆっくりと家族ですごしてください」と言って続けて「問題ないとは思いますが」と念押しして「また明日念の為検査をします」と一時帰宅を勧めてくれた。

 

「それじゃあ将臣くん。くれぐれもお風呂で寝たりしないようにね。お大事に」

 

 と。ダメ押しするかのように釘を刺されて俺たちは家路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




導入がいらない人用

平成最後のゴールデンウィーク。

久々に与えられた長期休暇を積みゲー崩しに使う主人公。

寝る間も惜しんでゲーム三昧をした彼だったが徹夜続き故か風呂で眠りに落ちてしまう。

しかし、次に目が覚めたときには見知らぬ病室で体が縮んでいた。

医者と思わしき老人(男)は主人公のことを何故か将臣くんと呼んだ。(一話)


将臣くんと呼ばれることに違和感を覚える主人公。

しかし、違和感を覚えていられたのは数分かあるいはほんの短い間だけだったのかもしれない。

まるで忘れていたことを思い返すかのように有地将臣として暮らしてきた記憶を再認識した将臣。

だが、そこでも違和感を覚える。断定できない事象を分かりきっているのことのように知っているのだ。

駒川先生(時系列的に『みづは』は医師ではないために出したオリキャラ)は戦闘力が玄十郎と同等に渡り合えるくらいに強いようだ。ライバル関係らしい。

祟り神とは。なんぞやと己に問うが――?

有地将臣は両親にとても愛されている。と認識した。

水は危険。膝くらいの水でも溺死する可能性がある。風呂で寝るなんぞ言語道断である。と己を戒めた。

明日また来てください。検査は念の為。(二話)









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