なんやかんやと設定が似ていたりしますが、過去作を匂わせる発言が出ることもあり、P4やP3のネタバレとなる台詞を登場キャラクターが言うことがありますので、未プレイ者の方はご注意下さい。
なお、このSSでの番長の就職先は八十神高校で主人公の真尋の元・担任と言う設定で行きます。
その他、アドバイス等はコメントにてお願いします。
引越しの日の前日となって、
夢の内容は自分と同年代の少年が銀色の仮面に矛を持った巨人を従え、異形の怪物を巨人の力を用いて小さな電撃を発したり、その矛で異形の怪物を貫き、少年が手に持った日本刀で巨人の力、いわゆる“魔法”を用いて“魔法”で強化された刃で怪物を切り裂く夢だ。それから、巨人を従えた少年の仲間と思わしき少年少女達がチアガールを思わせる赤い衣装を纏う存在、カンフー映画を思わせる黄色いジャージにフルフェイスのヘルメットに薙刀を持った女性らしいシルエットを持つ者や、ヒーローを思わせる赤いマフラーを巻いた者を呼び寄せて、一番槍に異形の怪物に突っ込んだ少年に続いて、身を切裂く“疾風”、燃え上がる“炎”、凍てつかせる“氷塊”を繰り出して攻撃する。仲間の一人が傷ついたのならば、赤い衣装を纏う“召喚獣”(仮称)が回復魔法で回復する。最初に突撃した少年が戦況の様子を見て、仲間に任せても大丈夫、と判断したのか真尋の元へとやってきた。
「君、怪我はない?あとは俺たちに任せてくれ」
八十神高校の制服、襟にある学年を示すローマ数字の“Ⅱ”。アッシュグレーの短い髪と真意を感じさせないながらも、強い意志を感じさせる瞳。
“ヒーロー”と出会ったのは十年前のこの時だった。緑色のジャージを着た少女が自らの“力”と共に怪物を蹴り技で屠り、ヘッドホンの少年が目にも止まらぬ動きで両手に持った二刀流の武器で怪物の攻撃を抑え、“力”で起こした触れたものを切り刻む疾風攻撃が怪物を襲い、赤いカーディガンを着た少女は華麗に扇を動かし、自らの“力”で起こした炎でターゲットの敵全体を燃え上がらせる。
「センセイたち!今がチャンスクマー!」
アメコミのスーパーマンのようなカラーリングの着ぐるみが彼らに指示を出し、柔らかく一ノ瀬は真尋に笑みを見せた後、優しく頭を撫でてから、着ぐるみの指示に彼ら全員が頷いてダウンした敵全体へと攻撃を仕掛ける。
これが、平坂真尋の幼い頃に見た“夢”でありヒーローとの“邂逅”。よほど印象深かったのか、この夢を何度も何度も見る。もちろん、毎日この夢を見るわけではないが、高校に入学してからは頻繁に見るようになった。巨人を従える“ヒーロー”にそっくりな担任教師、“一ノ瀬大和”、たまに一ノ瀬と話しているのを下校時に見かける“ヘッドホンの少年”によく似た一ノ瀬曰く、『花村』なる人と刑事でかつての緑色のジャージを着た少女に似た“里中千枝”、そして地元の名物旅館の女将で赤いカーディガンの少女を連想させる天城屋旅館の“天城雪子”。
ささいなことをきっかけに、真尋は彼らと知り合いになった。皆、一ノ瀬のかつての同級生だったらしい。
そんな彼らともう少し仲良くなってみたかったが、この夢が覚めたら、朝がやってきて明日を迎える。日差しが部屋に差し込んできたら眩しかったにしろ、目を開けてしまうし、二度寝のできない性分の真尋は起床せざるを得ない。懐かしい夢を見るとき、決まって“何者か”の声がする。知人でもなければ、家族でもない。
けれども、どこか知っている気になる。そんな感覚が身に寄せる。
夢にはいくつかの種類があるとされるが、そもそも、夢と言うのは例えるならば、脳内にある棚の中を整理している、と考えてもらったら良い。熟睡している時は夢の内容を覚えていないが、そんなに疲れていなければ内容は覚えている。その中で明晰夢、というものがあり、これは『夢であると認識できる』もの。
《君は、何度も同じ夢を見ているんだな?》
「!?」
“あの声”がする。久方ぶりに聞いたが、相変わらず、落ち着きがあって優しげだ。夢の様子を“傍観者”として、“ヒーロー”達が戦うのを呆然と眺めている様子を見ている幼い自分を成長した自分が眺める。
不思議な気分だった。当事者の自分はすっかり成長した状態で、録画した古い映画を見ている気分。
“声”はまだ聞こえる。
「別に、何度見たって構わないだろ。俺の見ている“夢”なんだし」
《あまり、過去に囚われてくれるなよ?過去に囚われていては今の自分の“位置”が見えなくなる。》
不満げに漏らした真尋の呟きに“声”は軽快な口調でクックック、と笑った後、《確かに、君の意見も正しいがね》と優しく感情が篭った声で“声”が返答した。
まともに話したのは、今日ぐらいだろう。この“声”は。何度も何度も聞こえてくるのに、ほとんどノイズ混じりでまともに言葉が聞こえなかった。自分の言いたいことが伝わらないのは悔しいものだ。この光景の事だって、まわりの人たちは聞く耳を持たなかった。ただ、口を揃えてこう言うのだ。
『夢でも見てたんだろ』
動物の群れの中で異端な者は群れから追放される。直立二足歩行となって、火を自由に扱えるようになって、牙や毛皮や腕力に周囲の風景と同化する身体を持っていなくて、それでも文明を築けるまでに進化しても根本には人間は変わらない。進化したからこそ、それが顕著に見られて常識に当てはめようとする。一部の物好きなカルトマニアは別だろうが、一般人は妙な事に巻き込まれたくないがために『ありえないこと』はバッサリ斬り捨てようとする。こういうとき、物好きな大人がいて話を信じてくれるような人物が身近にいて、その人は現実と妄想の区別がついていない人、と周囲に認識されている様な人物がいてくれるものだが、真尋にはいなかった。頼り甲斐のありそうな担任の一ノ瀬に話せば聞いてくれるだろうが、たとえば生徒や教師陣に信頼を勝ち得ている彼であっても、話を信じやしないだろう。
「分かってるよ。けどさ、あんたは信じるか?こんな夢を見たことがある、と言われたら」
周囲の大人や知り合いは信じてくれなくとも、この“声”ならどうだろうか?ノイズ混じりに聞こえてきたことがあるし、“あの世界”で“ヒーロー”に出会った日から聞こえてきて、そして今はこうして話すことができている。面と面合わせて話せないのが辛いが、こうした嘘のような本当の話が出来る者が欲しかった真尋には丁度良かった。
《いやぁ、信じねえだろうな。馬鹿だろ、頭おかしいんじゃねえか?って思うのが普通だ。………おい、姿見せてやっから、網膜に焼き付けとけ》
真尋の思考を読み取ったのか、“声”は姿を現した。
黒髪は長く、ブラシを適当に通しているのが見て取れ、耳にはピアスのようなものを両耳につけているし、首からは勾玉を連ねたもの、纏う白い衣服は歴史の教科書に出てくる聖徳太子が着ているもののようで、腰の辺りを黒い帯で締めており、腰に片手で持って肩に担いだ鉄剣は歪な突起が何本もある。外見は二十代後半から三十代初めの男だろうか。見知らぬ者に警戒してしまいがちな真尋にとって、初対面で“心が許せる”とはじめて思った人物だった。
「そこは信じるよ、って言ってくれよ。初対面のあんたに一番言われて傷つくよ。………ってあれ!?」
男の言葉に呆れ、溜息をつくと周りには“あの世界”の一切合切を映し出していた夢が掻き消え、壊れた宮殿のようなものと大きな椅子のように使えそうなものが一つ。
そこに男は真尋の席を確認せず、さっさと座ってしまった。
《明日引っ越す、“マヨイゴ”の真尋に言うことがある》
軽快で明るい口調から一転、少年漫画の師匠を連想させるような鉄剣を自分の前の地面に突き刺し、そこで手を重ねる。親しみやすい近所のお兄さんのような、『花村さん』のような明るく親しみやし口調から一転して一ノ瀬が見せる真顔に近い表情へと変わった。そのとき、背後の壊れた宮殿が掻き消え、大きな湖が男の背後に現れた。宮殿が消えたことに十分突っ込みを入れたかったが、それ以前に名前を知っていることを問いたかった。
「なんで、俺の名前を知ってるんだよ………!?あんた、何者だ!?」
《何者だろーが、今はんなことどーでもいいんだよ。嫁がニンゲンに世話んなったからよ、今度はまた別のニンゲンに期待をかけてみよう、って思ってな》
嫁?彼に妻がいるんだろうか?己の言いたいことが伝わらず、歯がゆそうな男は長い黒髪をカリカリと搔いていて、癖なんだろうか、何度も何度も髪を漉いている。僅かに見えたが、彼の髪には櫛がヘアピン代わりに付けられている。
「それなら、他にあてもあるだろ!?なんで、俺なんだよ!?」
《そいつは、お前が
「何をだよ!?」
男はシリアスな顔を保つのが苦手ならしく、すぐに素に戻ってしまった。そして、鉄剣を引き抜いたかと思えば、また刺し直して気迫を放っている。ただ、そこに座っているだけで、今すぐにでも挫けてしまいそうになる。この場から逃げ出したくなる。この場から走り出してしまいたくなる。それほどまでに男が発するオーラは強く、肌に突き刺さってしまいそうで、そのまま心臓を貫きかねないほどに刺々しいものを思わせた。
《お前にこれから訪れる、災禍。そいつを跳ね除けなきゃ、お前は永遠に“マヨイゴ”から抜け出せないだろう。災禍を跳ね除け、力を振るう未来をつかみ取るか、それとも、》
「………それともなんてのは聞かないさ」
子供っぽい夢だ、と笑われる夢が真尋にはある。あの日、あの時、あの瞬間に見た邂逅した“ヒーロー”のようになりたい。
あんな風に“力”を持って、振るって何かを、カラッポでしかない自分の器を埋めれるように。強い意思を持って立ち向かう。あのときは“あの世界”で異形の怪物には敵わなかったが、もしも、その力を得て護れるのならば答えてやろう。そして、いつかは堂々とこの男の前に立つのだ。足が震え、生まれたての小鹿のように足元がおぼつかないが、それくらいはどうってことはない。
《なるほど、それがお前の答えか》
「ああ」
《ならば、“きっかけ”を与えよう。後はお前次第だ。これを生かすも殺すもお前次第だ》
獰猛な笑みを浮かべた男は粉塵のように身体を変化させ、周囲へと溶け込んでいく。消え際に男はかんざしを落としたが、そこには持ち主である男の名前なんだろうか、古代文字が書かれている。その文字がなんとあるのか読めなかったが、次に邂逅した時にでも聞いてみよう。部屋に差し込む日差しが真尋を夢から“うつつ”へと引き戻す。
そして、時間は三時間後へと早送りする。
電車に揺られながら、平坂真尋は周囲の風景がすっ飛んでいくのを眺め、頬杖をついていた。他の荷物は先に送ってあり、他の僅かな荷物をオレンジ色のボストンバッグに詰めて、今は座席の下に置いてある。ここまで見知らぬ駅を何個か過ぎてきたが、どれも初めてだった。八十稲羽にいたときは親戚が後見人となっていたが、中学校の頃の修学旅行を除いては稲羽以外の街へは隣町で漫画の最新作を買いに行くのを除けば外に出ることは無かった。
『○×▽□~、○×▽□~』
特徴的な車掌のアナウンスが車両中に響く。これから行く街は学園都市だそうで、あの月光館学園のように島を埋め立てた上に学園の殆ど自治区のようなものだという。資金は桐条グループが出したこともあり、月光館学園と姉妹関係にあり、互いに学生を交換し、交流するイベントがある、とパンフレットに書いてあった。
到着した駅で数名の乗客が降り、青いセーラー服の少女が前に座った。濃いブルーでリボンは黄色、水夫を思わせる首周りの襟はリボンと同じ黄色で膝丈程度のスカートは爽やかな水色だ。彼女にも何かしら電車に乗って向かうところがあるんだろうが、真尋と違って特に荷物を持っている様子は見られない。よほどの近場に向かうんだろうか、着の身着のままだ。
「別に座っても構わないでしょう?自然とまわりはこっちの席に座らないようだし」
少女は棒読みのまま、少し傲慢な態度を醸し出している。真尋は少女の言うことにも一理ある、と考えた。
自然と座席まわりには客がいなくて、立ち上がって見回してみると、乗客は誰も乗っていない。右隣と左隣の車両を行ったり来たりしてみても、人の気配が感じられない。電車は確かに目的地に進んでいる。ただ、乗客が少女と真尋だけしか乗っていなくて、偶然、両隣の車両に乗客がいないだけかもしれない。
「誰もいないよ、今は私と君だけ。大きな力を感じるけど、まだ私と手合わせするほどではないね」
「大きな力………!?なんのことを………!?」
「そう、気づいたようでよかった。君が異界に惑いし“マヨイゴ”か………、大きな力を持ってそうだし、やり甲斐がありそうね」
少女は新しいおもちゃを得た子供のように、楽しそうに口元を歪めるが、真尋は不気味に思った。言葉や口調、口元と比例して目が
「………ん、そろそろか。またね、“マヨイゴ”君」
立ち上がった少女は最初に唐突に座った時と同じように真顔のまま、スカートの裾をひらりひらりと黒髪と同じように揺らしながら、停車した電車から降りていった。まだ聞きたいことがあり、「おい、待てよ!」と真尋が追いかけたときには誰もおらず、ホームには人の気配一つしなかった。駅の名前も見慣れないもので、電車が発車する時刻が迫っていることに気づき、すぐに乗り込むと電車はまた走り出した。“あの世界”で見た光景を元にした“夢”の世界で出会った男、そして先ほどの少女。真尋自身が抱いた疑問に答えてくれる者が現れないまま、目的地・『鳴麓市』に到着した。