仮面異聞禄ペルソナ   作:ふくつのこころ

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どうも、法王の緑です。

四月からの春アニメでは、ジョジョ三部が楽しみです。

ブチャラティと吉良のスマホ専用手袋がありますし、臨時収入はこちらに使おうか迷います。

ジョジョとD×Dのループ物を書いていた作者さん、実にリスペクトに値します。

英雄の方では、当初はジョースターに絡めるつもりなかったのに。

そうだ、もう一つ投下しよう!スタンド能力は持たせたい!


Velvetroom

「…ようこそ、ベルベットルームへ。はじめましてだね」

 

そこは、一面に青い部屋。カーペットも壁紙も何もかもが青一色に染まっている。全てが全て蒼いその部屋で蒼い大きなソファーに座り、リボンタイの燕尾服を着た蒼い髪のショートカットの中世的な印象を持たせ、肩には一昔前のウォークマンにイヤホンが繋がっていて、それをひとまとめにしている青年。僅かに顔の左半分を髪が覆っており、表情は無気力そうで真意が掴めない。けど、青年の瞳に宿る光は確かに強い“意思”が宿っており、線の細そうなわりに簡単に折れそうに見えない。

例えるなら竹林の竹だ。強風が吹けば折れないように風に身を任せ、風に揺らされることで折れるのを防ぐ。

 

「…僕は、ここの前任者の“代行”をさせてもらっている。他に助手がいるんだけど、彼らは今は前任者と外出中でね。助手も代行で一人いるんだけど、今は席を外させている。そうだね、前任者に倣って…“イゴール”と名乗らせてもらおうか」

 

青年ーー“イゴール”は恭しくお辞儀をした。ヘナヘナとやる気を感じさせない、緩やかな動作。待合室にある向かい合った、“イゴール”の座るソファよりは小さなソファに気がつけば真尋は座っていた。

ーー一体、どうなっているんだ?

真尋の表情から彼が何を言わんとしているかを“イゴール”は把握した。一面が蒼い部屋に来る機会は滅多にないだろう。一生のうちに青色だけが視界に広がる部屋はお目にかかれない。“イゴール”はそんな様子に心当たりがあるのか、驚く様子を見せなかった。

 

「ここは、精神と物質の部屋…だったかな。はじめまして、平坂真尋くん」

 

「…!?なんで、俺の名前を…!?」

 

真尋の疑問を解決するように、“イゴール”は問われる前に先回りをした。かつての“自分”と重なるところがあったんだろう、常に虚無であった“イゴール”の心は非常に落ち着くものがあった。

自分に続いて二人目の“仮面を付け替える者”を“天上”より見ていた、“イゴール”は“二人目”の同じ反応を見ていたこともあるし、自分の過去を思い出してみても自分の名を“人の形をした何か”に知られるのは恐怖を覚えるものだ。

 

「これに覚えはあるかい?」

 

“イゴール”は向かい合う真尋と二人の間にある、ガラスのテーブルに『しょうらいのゆめ』と書かれた作文を置いた。

 

「これって…小学生の頃に俺が書いた作文じゃないか。なんで此処に?」

 

過去に書いたとはいえ、小さい頃に書いた作文は内容や文字も拙く書いた本人である真尋も周知で一杯だった。九鳴高校寮に来る際、ダンボールに詰めて送った荷物の他に手荷物のボストンバッグに入れてきた数少ない品の一つ。確かにボストンバッグに入れておいたはずだが、“イゴール”と名乗る青年の手元にあると考えると、彼は“人間ではない”ことや、この部屋が特異な空間だと理解できる。

突然だが、真尋はよく学園異能バトル漫画を好む。小さい頃に出会った、“メガネのヒーロー”は学生服を着ていたこともあった。真尋にとって学生服はそういった経緯もあり、特別な思い入れがある種類の衣服となった。

 

「君の作文を勝手ながら読ませてもらったよ。占い、ってのは信じるかい?」

 

「都合のいいところだけは信じるさ。悪い箇所は気にするだけ無駄だから」

 

「結構」

 

真尋の答えを確認すると、“イゴール”は手のひらをテーブルの上に置く。白い清潔感ある手袋に包まれた、その手をどけると何枚かのタロットカードが現れた。そのカードを自由自在に操り、テーブルに広げた後、山札を作る。そして、そこから何枚かのカードを取った。

 

 

「久々にだから自信ないけど……、あ、塔のカードの正位置か。近いうちに厄災、だってさ」

 

一枚目。

 

最初に“イゴール”が引いたタロットは崩れゆく塔が描かれたカード。

 

塔(カードナンバー16)

正位置の意味:崩壊、災害、悲劇。

逆位置の意味:緊迫、突然のアクシデント、誤解。

 

「最初からいきなり、嫌なカード引いてるじゃないか。大丈夫か、本当に」

 

外見自体は自分となんら変わりないようだし、敬語を使うか否かを迷った真尋は“イゴール”に対して敬語を使わないことに決めた。どうも自身がなさげにタロットカードを使った占いをするし、いきなり嫌な意味のカードを引いたこともある。

 

 

「二枚目は…死神の逆位置。再スタート」

 

二枚目に“イゴール”が引いたカードは死神。

髑髏面の死神が描かれている。

 

死神(カードナンバー13)

正位置の意味:終末、破滅、決着、死の予兆。

逆位置の意味:再スタート、挫折から立ち直る。

 

「死神って、あんまり良いイメージないんだけど、逆位置とか正位置とかワケ分からない」

 

「…そうか、その説明もしなきゃいけないのか。それくらい知識で知っておけよ」

 

「おい、さりげなく俺に毒吐いたよな!?」

 

逆位置と正位置を知らない様子の真尋。真尋の呆けた様子に“イゴール”は毒を吐いた。“イゴール”に食って掛かるものの、それ以上はしなかった。“イゴール”から感じ取れる“影”。その“影”は確かにこの場に姿がないというのに、その存在感は圧倒的だ。本能から感じ取れる“根源的な恐怖”。

“イゴール”はそれを従えているようだった(、、、、、、、、、、)

 

「細かいことは気にするな。じゃ、最後のカード、行ってみよう」

 

「ああ、今度こそ、良い奴がくるのを期待してるよ」

 

結局、逆位置と正位置の説明は流されてしまった。見知らぬ空間、見知らぬ世界に馴染んでしまっている自分に驚愕を覚える。妙にこの空間、“ベルベットルーム”は安心感を覚えているようだ。

母親の胎内にいる胎児の気分、と言えばいいだろうか?実際に人間にその頃の記憶はほとんど失われてしまっているが…、その状態に近いとしか表現のしようがなかった。

 

「三枚目。……『世界(ワールド)』。時よ止まれッ!」

 

三枚目に“イゴール”が引いたのは世界のカード。

突然、真尋は彼が腕を広げてカッと目を見開いたので、一瞬、何が起こったのか分からなかった。

ローテンションで“イゴール”がボソッと呟いたので、よく耳を済ませていないと聞き取ることすら難しいだろう。

真尋の中で“イゴール”に対する印象が『クールな奴→毒舌腹黒根暗→変な奴』へと変化した瞬間だった。

 

「で、その意味はどうなんだよ?意味は凄そうだけど……」

 

「正位置で完全。最後の最後に引いたね、良い奴。よかったよかった…」

 

世界(カードナンバー21)

正位置:完全、総合、成就

逆位置:未完成、調和の崩壊

 

「これで占いは終わりだ」

 

“イゴール”はスライドさせるような動きで三枚のタロットカードを回収し、山札へと戻して燕尾服の上着のポケットに収納する。占いを終えた“イゴール”からは先ほどとは違う様子を見せる。引越し前の夜に見た、夢に登場した“古代人のような男”とは違った、神々しいような雰囲気を感じる。

 

「これから君は災害に出会うだろう。そして、力に目覚めるだろう。僕が見たところによると既に“きっかけ”は持っているようだね」

 

蒼い青年は真尋を値踏みするように瞳を覗き込む。気のせいか、彼の傍には獣のような髑髏面で幾つかある棺桶を背負っていて、腰にショートソードのような剣を差している“ナニカ”が見えた。

 

「その“きっかけ”はそのままだと“きっかけ”で終わってしまう。ダイナマイトの導線に火を点けてはじめて“意味”を為すように、君はこれを受け取らなければならない」

 

“イゴール”が真尋に差し出したのは表が真っ白で何も描かれていない、タロットカードだった。

“イゴール”がさっき、山札から引いた、塔、死神、世界の三枚と違って“絵”がないようだ。

 

「これは…?」

 

「それは“フリータロット”と呼ばれるものだ。かつては人ならざる者が気に入った人間に渡した希少な者だが…、“この世界”では存在しないものだね。本来ならば」

 

「じゃあ、なんで俺にそんな珍しいものを渡すんだ?」

 

真尋が手にとってどこまでも白い表面のカードを眺める。“イゴール”の真意を真尋は捉えられなかった。そんな珍しい物を自分に渡す理由がどこにあるんだろうか?あの日見た“ヒーロー”ならば、そんな珍しい物を渡される価値があるだろう。価値が示せるだろう。“イゴール”と“彼”が不思議と重なって見えたのは二人が似ている箇所があったからだ、人を不思議と惹きつける様な不思議な魅力が。

 

「その価値をベルベットルームの主の僕に君が示したからさ。“力”を勝ち得たのを確認できたなら、また君を呼ぶとしよう。そのカードを肌身離さず持っている事だ。きっと役に立つ」

 

“イゴール”は全てを見透かすような面持ちだった。自分が認めた。だから、それをやる。文句は聞かない、と頑として質問することを真尋に許さなかった。フリータロットをズボンの右ポケットに入れ、意識がどんどん遠のいてゆく。来る時は感じなかった妙な感覚。気がつけばベルベットルームに居たが、帰り方はまるで眩暈が襲ってくるようだった。

一人用の小さめのソファーだけが残り、“イゴール”は現実に文字通りの意味で引き戻された少年に対して一人、言葉を紡いだ。

 

「お客人の旅路が良い物になるよう、頑張らせてもらうよ。本当は凄くどうでもいいんだけどさ、正直」

 

***

 

目を覚ますと真尋は自分の部屋の開封されたダンボールがまわりにある状態でフローリングの上で眠っていた。やけに眠っているときに見る夢と違って内容をはっきりと覚えているし、あの空間にいた時に味わった安心感は忘れない。

ふと、ズボンの右ポケットに何かが入っているのを感じる。重みを感じさせないほど軽く、そんなに気にならないものだったが、手で形をなぞるように触れてみると少し大きめなカードだった。

テレホンカードなんてポケットに入れていたっけ、と取り出してみると、

 

「……え?」

 

表面が真っ白な、タロットカードだった。本来ならばイラストの上に数字が書かれている箇所には『Notitle』とあり、『Tower』や『DEATH』、『WORLD』と書かれたカードを示す名前欄は空欄で真っ白だ。

夢であって、夢ではない。

よく漫画で使われがちな言葉を、まさか自分が身を以って体感するとは思わなかった。大きめのタロットカードは財布の有名レンタルビデオ店のポイントカードが入っている財布のカードを入れる場所にも入らないし、紙幣を入れる箇所は大きすぎだ。

 

稲羽に住んでいた時のアルバイト先の雇い主の巽に影響され、簡単なアクセサリーは作れるようになっていた。市販のネックレスキットの丈夫な革紐とフリータロットのような、大きめのカードを留めれる金属製の留め具に革紐を通し、それにフリータロットを装着させる。引っ張ってみても、よほどのことがない限りじゃ外れないか試してみたし、九鳴高校は派手すぎてなければアクセサリーをしても良いとのことだから、肌身離さずフリータロットを持ち歩け、と言った“イゴール”の言葉は守れそうだ。

 

「おい、平坂ー。夕食が出来たってよ」

 

入っていいか、と慎太郎の声が扉越しに聞こえて「どうぞ」と真尋が答えると、慎太郎がニット帽に包まれた後頭部の後ろで腕組みをしていた。

慎太郎が真尋を呼びに来たのは、途中まで真尋の荷物を片付けるのに手伝っていたが、私物を置くのにこだわりを見せたり、「エロ本の好きなジャンルを教えろ。いや、ダンボールの中に!?」と勝手に妄想を膨らませる慎太郎に苛立った様子の真尋を察したのか、自分で慎太郎は部屋から飛び出した。

慎太郎のポケットから全体の大部分を覗かせる携帯ゲーム機を見ると、相川かレイラに真尋を呼ぶのを頼まれるまではゲームに勤しんでいたようだ。

 

「ああ、今行く」

 

「おう、早くしろよ。相川さんの料理はリィちゃんが褒めてたように、マジで旨いからな。仁藤先輩に全部取られないようにしろよ!」

 

相川の性格を見る限り、おそらく慎太郎の分以外は全員に渡るように取り皿に分けるだろうが、夕食を楽しみにしている様子が良く分かる慎太郎の気分を害したくなかったので、大人しく真尋は慎太郎について行ってリビングに向かった。

リビングには既に仁藤統、桐谷さとみが席についており、仁藤にいたっては既にがっついている。

普通、同級生同士の食事でも、早食いをするようにがっついていれば誰かが何か言うものだが、アットホームな様子のこの寮では、仁藤ががっつくのはいつもの光景のようだ。

桐谷は仁藤と対照的に丁寧に食事を口に運んでいる。

レイラはお玉で鍋をかき混ぜており、相川の姿はない。

 

「あ、来たようだな、同胞達よ。才華は帰ったぞ?『帰宅時間』だってな」

 

「そうなのかよ!?あの人のことだし、もっと平坂にベタベタしてから帰るもんだって思ってたぞ!?」

 

「須藤と平坂くん、だったかな?早く席についたらどう?夕飯が冷めるわ」

 

あのやけにファンシーな部屋にかけられた、看板のある部屋の主の“桐谷さとみ”は疾風女帝という厨二病のかほりがする異名と相反して世話好きとは言わないものの、常識的な人物のようだ。高校生らしく、ヘアピンは可愛らしいもので染物屋でありながらも編みぐるみやアクセサリーを扱っていた真尋はそれが市販のもので古いものとすぐに分かった。

 

「へっへーい!じゃあ、いっただきまーす!」

 

「こら、茶髪ピアス。あんまり騒ぐんじゃあいないぞ?食事と言うのは…なんというか、救われていなきゃいけないんだ。静かで、荘厳で…」

 

「須藤もラインハルトも静かに食え。くわねえんなら、俺が全部貰おう」

 

慎太郎とレイラのやり取りにオニオンスープとサラダ、バケットにチキンと言う洋食の典型でどこかの高級なレストランでありそうな取り合わせのメニューにがっつきながら、鋭い目の奥の光をギラギラと光らせて嗜める。

寮と言えば、食事の時になんらかの会話をするもんじゃないんだろうか、と思いつつ、慎太郎の隣に座って手を合わせ、慎太郎、レイラ、仁藤に桐谷がそうするように真尋もまた静かに食事をとりはじめた。

慎太郎のように誰も首からぶら下げた、真っ白な面が表で身に付けているものの中で最も目立つものとなっている、フリータロットがついたアクセサリーには誰も気づかない。

ただ関心を持っていないだけなのか、それとも本当に"視えていない"のか。

今は確かめる術もなく、目の前に置かれた暖かい夕食を味わうことにした。

鼻腔に入り込む良い香りをした食欲をそそる、よく煮込んだオニオンスープをスプーンで掬い、ときおりパンを口に運びながらスープを飲み終えた後、シャキシャキした生野菜が使われているサラダを味わった後、仁藤が真尋のチキンに視線を向けていたので、それを仁藤に譲渡して真尋は食事を終えた。

 

この寮は何かがある。

 

今日一日を通して真尋は引越しの疲れよりもまず先に胸の中で何かがつっかえているのを感じ、よくしてくれた慎太郎やレイラ以外の二名の上級生の雰囲気を察するに、何かを隠しているようだ。

 




とりあえず、ベルベットルームフラグは終了です。

けど、真尋がワイルド能力に目覚めるか?と言われれば、実はそうでもない。
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