仮面異聞禄ペルソナ   作:ふくつのこころ

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実はペルソナ3でも主人公勧誘の時点でそうなったんじゃないか、とのIFの可能性を妄想して書いた今回です。
不定期更新のタグ通り、メインとなるのは奇妙な英雄のほうかと。


思惑

ペルソナ、ギルガメッシュの急所の一太刀が怪物の『スピンナックル』を回避して切り伏せると怪物は形成を崩して動きを止める。シュウウ、と音を立てて黒い噴霧状になって消えていくと視界を蒼が包み込む。四つの選択肢と目の前の選択肢を『選ぶor選ばない』の選択が浮かぶ。脳裏に響くのは眠る赤ん坊に話しかける母親のような優しい声。

 

『それは戦闘後に貴方が掴む者ぞ、人の子よ。敵は貴方が力となり血となり肉となる。一つとして無駄はあらぬ。さぁ、恐れるな。掴め、好機を。そして(おの)が力といたせ』

 

蒼い視界に浮かぶ四つのカードにはそれぞれ『Experience(経験)』、『Gold(金銭)』、『Force(力)』、『Persona(仮面)』と書かれている。この視界がなくなる制限時間が何時になるかは分かっているくせに選択肢が多いと迷ってしまう。見かねた『声』による力なのか、まるで傀儡人形のように身体が上から糸で操作されているように左手が動き出す。ちょうど、ペルソナが左手に篭手をして()を振るうように。

 

『ほう、貴方が目覚めたペルソナは倒した敵を力へと変える力を持つのか。原初の英雄、ギルガメッシュらしい強欲な能力。ならば選ぶものは一つ也。はじめは『Persona』のカードを選ぶと良い』

 

左手が『Persona』カードに触れると、手のひらに見たことがない絵柄と言うのにそれが自分の仮面(ちから)(じぶん)だと分かる。気がつけば消えていた、ギルガメッシュが心の奥底で勝利の雄叫びを上げているのを感じる。勝利を喜ぶギルガメッシュは太古の戦士に相応しく、一度目の勝利で良い結果を上げられたことを喜んでいるようだ。その光景が脳裏に浮かび、どこか『雇い主』の一面のようなモノを思わせる。

 

「あんたは……誰だ?」

 

『貴方に未だに語ることは少ない。時が来れば語ってしんぜよう。人の子よ』

 

オマケ、と言うように手に握らされた『Gold』のカード。親戚が小さな子に小遣いを握らせるような動作は素早く、最期まで優しい口調と共に『声』は語って徐々に景色が晴れてゆく。深夜の真っ只中の現時刻は一時半。早く寮に戻ろう、と急いで足をせわしなく動かして寮に戻ったときは二時を回っていて、そのときはすでに寮に住む者達はみな眠っていた。

 

こうして平坂真尋の鳴麓市に来た一日目の夜は終了した。

 

翌朝、昨夜のことがあって真尋は珍しく目が早く醒めた。新しい土地での学校生活がはじまるのもあり、余裕を持って九鳴高校に向かおうと思っていたからだ。部屋に備え付けのベッドから起き上がってパジャマから九鳴高校の制服へと着替えていると誰かが部屋のノックをする。

 

「平坂、起きてるかー?入るぞー」

 

「ああ、どうぞ」

 

ノックした主は人懐っこい茶髪でニット帽、そしてピアスが特徴的な須藤慎太郎だった。真尋の了承によって許可が下りると未だに寝巻き用なのか、Tシャツとジャージ姿の慎太郎は真尋が起きてすぐに着替えているのを見て目を丸くした。

慎太郎は転校初日からこんなにも積極的に行動する真尋に良い印象は最初から抱いていたものの(しかしノリは悪い)、これほど真面目には見えなかったのだ。昨夜、真尋とある意味似たような『出来事』に遭遇して寝つきが悪かったのもあってまだ寝ぼけていた。

 

「お前、朝起きてすぐに着替えるタイプ?」

 

「まあな。といってもすぐに着替えるわけじゃない。洗面と歯磨きはすでに終了してるさ」

 

「気合入ってんねえ。まぁ、用意できたら部屋の前に来てくんな。学校まで案内するわ」

 

すぐに着替えが終わりそうな真尋に自分もそろそろ用意しなければ、と慎太郎は部屋に戻っていった。昨日に見た、あの『奇妙な世界』と目覚めた(ペルソナ)、誰かが説明してくれればいいがペルソナについて事情を話しても大丈夫そうな人物はベルベットルームの“イゴール”くらいだろう。稲羽で担任だった一ノ瀬に連絡するのもいいが、この時間だと一之瀬は授業の用意をしているだろうし、なんせ一ノ瀬にもプライベートがあるだろうから聞きに行きようにも行けないだろう。

行くならゴールデンウィークで学校が休暇に入ったときだろう。

 

九鳴高校から支給されていた、制服に着替え終わって付属の学生鞄に筆記用具とノートを詰める。

白いフリータロットが自分の中に消失し、首から提げる必要がなかったので新しい学校で迎える新生活は変なものをネックレスにしているヤツ、という印象ではじまらずに済んで良かったと思う反面、あの留め具代わりの金具を無駄にしてしまったのが心残りだった。

レイラや仁藤、桐谷とは別々で学校の方に向かうらしく、慎太郎に言われたとおりに彼を迎えに行って彼に連れられ、九鳴高校に向かうこととした。

 

九鳴高校寮・特別室

 

九鳴高校寮の中に設計された、その特殊な部屋は各部屋に置かれたカモフラージュされた状態で部屋の中を見通すために設置された監視カメラを通して送られる映像が映し出されている。

これが保護者に知られれば、寮に住む生徒の個人情報が尊重されていない!と批判が来るだろうが、そもそも此処は月光館学園の姉妹校で桐条グループ系統の学び舎付属の寮である。

モニターを眺める仁藤や桐谷のように“素質アリ”と見られた生徒を監視する名目は伏せた上で寮に住まわせている。

 

「仁藤、昨日のペルソナ反応には気づいたか?」

 

「ああ、とてつもない力を秘めているヤツだった。普段なら奴らの気配を感じ取ってすぐに俺が分かるはずなんだが、全く知らないヤツのペルソナが発現するのと同時にソイツを倒しちまった」

 

仁藤がつけている“ゴーグル”こそ、真尋が倒した敵を己のペルソナとする副次能力のようにペルソナ使いかペルソナ使いでないかを判別する分析能力(アナライズ)に特化した副次能力を所有するもので仁藤のペルソナの副次能力によって発現した代物だ。

一方の仁藤と反対的に桐谷は談笑する慎太郎や真尋の様子を眺めており、自身のペルソナが持ち得ない分析能力による結果を待っている。

 

『平坂真尋:ペルソナ:ギルガメッシュ/?/副次能力:?』

 

『須藤慎太郎:ペルソナ:未覚醒(覚醒確率高め)』

 

これが仁藤のゴーグルに掛けられているので見えている光景だ。通常ならばギルガメッシュの名前の後にギルガメッシュの所有するスキルも浮かび上がる。それが浮かばず、クエスチョンマークであることと副次能力の詳細が浮かばないのは真尋のペルソナが仁藤の持つソレよりも強大である印だ。

ご丁寧な事に真尋の名前の左横には若葉マークが浮かんでおり、それが目覚めたてのペルソナ使いにつけられるものであるから昨夜の『いつか』に覚醒したと言うのが見て取れる。

一方の慎太郎はペルソナが未覚醒であることと、まだどのような副次能力やスキルを持つかが現れていないことがあって詳細は未明である。

 

「須藤に平坂、そしてラインハルトか。この三人は果たして我々の側に来てくれるかな?」

 

「嫌でも来させる。力がある上に協力しないのはおかしいからな」

 

ゴーグルを外し、意志の強い目を覗かせる。仁藤の目は桐谷の誘いを断れば(ペルソナ)を使うのも辞さないといった風でこれはいわゆる恐喝に近いものだろう。彼らの持つ目的の為には少しでも戦力があって困ることはなかった。仁藤のペルソナは平坂のギルガメッシュよりは劣るものの、それはあくまでも潜在能力としての面を見たときだけだ。実戦経験は仁藤が上だし、目覚めたての平坂には負けない自信がある。それに須藤の方を引き込めば真尋は孤立するので自然と入らねばならないだろう。それにラインハルトはおかしな趣味を持っている。一般的に厨二病と言われる、彼女のその力に対する貪欲さや求めるものは桐谷と仁藤の目的のうちで満たしていけるだろう、と思いラインハルトの方は別段、特に断られた時の対策措置をとっていなかった。

 

「ラインハルトはおそらく、こちらに来るだろう。アイツの変な趣味からすれば高確率だ。力がどうしただの、闇がどうしただのとネジがぶっ飛んでいるがな」

 

「だね。それに仁藤、力で押し付けようとしたら駄目でしょう?前のように折角の適合者を壊すかもしれないじゃない」

 

ラインハルトに向けられた偏見に桐谷は頷き、桐谷の漆黒のローブに青ざめた足をロングスカートから出している、ペルソナ・「ヘル」を顕現させて過去にあった仁藤による『説得』の被害者の礼をあげる。仁藤のやり方は言う事を聞かず、二人の申し出を断った者を力で無理矢理了承させるといった力任せな手段だが、それは桐谷に比べればマシな方だ。

『疾風女帝』の名に違わず、ヘルは疾風魔法を得意としてペルソナを出現させられる『空間』を無理矢理作りだす副次能力を持つ。それによって一方的に平坂や須藤にラインハルトの三人に了承をさせる、と言ったものだ。人為的に『空間』を作り出せる上、ペルソナの素養があってこそ動き回れるし、ペルソナを持たないものは二〇〇九年に起きた無気力症と一度だけ、一夜だけグロテスクな風景の広がる光景が夜に出現したのを目撃した者は多く、その空間では黒い棺に通常の人間は入れられていたとされる。

 

しかし、この鳴麓市にある『世界』は二〇〇九年に港区で起きた影時間のように素養のない者はそもそも認識すら出来ない。わずかに認識できるものはみなペルソナの素養を持っているからだ。

九鳴高校でかつて真尋の一つ前の世代で九鳴高校に通っていた者達はペルソナの素養を秘めた者は多かったが、そのペルソナが熟達する前に仁藤や桐谷の申し出を理解する前に『タイムリミット』が来てしまい、桐谷のペルソナのヘルと仁藤のペルソナに“食われて”しまった。

 

「さぁ、今回のはどうかな?」

 

玄関に出るまで真尋と慎太郎をカメラで追いながら、桐谷の背後でヘルは新たな獲物を前にして興奮を抑えられない様子で唸り声を上げていて仁藤のペルソナもわずかにうっすらと姿を顕し、ペルソナ使いの仁藤本人のように逞しい肉体を持つペルソナが姿を見せて唸っていた。

 

***

 

「ようやく終わったか」

 

自己紹介を職員室で終え、その後は担任の教師に連れられて教室でクラスメイトに向けての自己紹介。真尋本人はすでにやり慣れていたことだったが、これは何度やっても面倒くさいことこの上ない。七歳まで各地を点々としていたことからいろんな人に幼少から自己紹介をしてきていたので、特に差しさわりのないもので済ませていて目立った特徴が見当たらない真尋はクラスでもすぐに馴染めた。

というのも、慎太郎がしつこく話しかけてくることや、休み時間に共に九鳴高校内の食堂に向かって親睦を深めていた。内装が綺麗なことや、値段が他校より安いことを除くと普通の食堂だった。

 

「俺としちゃあ、もうちっと何か欲しかったなあ。アレは本当に質素すぎて特徴ないよ」

 

『八十稲羽から来ました、平坂真尋です。宜しくお願いします』

 

「質素でいいだろ。須藤、思ったんだけどさ。よくクラスには満遍なくクラスメイトに話しかけるリア充はいるけど、お前みたいに転入生にべったりなやつはいないぞ。なかなか」

 

当たり障りがなく、そして波風も立たないような地味すぎる自己紹介は茶髪ピアスにニット帽を学校でもかかさない慎太郎には不満足だった。あれやこれや、と自分ならこーする、との意見を述べてゆく慎太郎を食堂のクラスメイトは誰も気に留めないということは慎太郎の性格は学年中に知れ渡っているんだろう。軽薄でノリも軽そうで容姿もちゃらそう、というところも。

九鳴高校イチオシ!と食券販売機にあった、大盛エビピラフを頼んで舌鼓を打ちながらエビピラフの大きなぷりっぷりのエビの歯応えを楽しむ。ほどよい塩加減と白米のパラパラ具合から食堂のおばちゃんはそうとうな手練と見た。やはり私立の高校は授業料やらが高いだけに食堂の料理のレベルも高い。

 

「チッチッチ。わかってないねえ、平坂はさ。同じ寮のよしみ、ってのもあるだろ?あと、お前に特徴をつけてやろうと思ってな。地味だし」

 

慎太郎は上から下へと真尋を自分と見比べる。特に特徴もなく制服の前を開けてアクセサリーを大量につけ、尚、ニット帽で茶髪とキャラが『立っている』慎太郎に対し、ブレザーの前を開けているのと髪が両サイドに寝癖ではないような跳ね方で跳ねている以外は……特徴はない。

 

「地味じゃねえよ!?おいおい、そんな理由で俺とメシ食うのか?須藤は」

 

「おいおい、学生時代と言えば特徴は大事だぜ?写真に載ってても後でコイツ誰?とか言われたらイヤだろ?」

 

「まぁ、そうだな……」

 

実際、中学時代は卒業アルバムの集合写真を撮るのを信じられないことだが知らされず、一人だけ後で思い出されて空白の欄に顔写真入りだった。あまりにもひどく信じられないだろうが、これは事実である。慎太郎にも何かあったんだろうか、真尋の様子からかつてあったであろうことを汲んでいるのか、ほらみろ、と得意気に笑っている。こんな軽薄な人付き合いが得意そうなコミュニケーション能力が高そうなヤツに同情はされたくない、と反抗する気持ちよりも慎太郎が中学生時代の真尋と同じ経験をしましたよ、という雰囲気を出していることから、どんな経験をしたのかが逆に気になったのだった。

 

「おいおい、そこの同胞二人よ。このレイラ・ラインハルトを置いて昼餉を楽しむとはどういうことかね?許されたことではないぞ?」

 

そんな慎太郎と真尋の中を割って席に侵入してきたのは、ロリータファッションに身を包んだレイラだった。ヨーロッパ系の顔立ちでスタイルもよく、目立つ容姿の上にロリータファッションと言うと大勢の生徒がレイラに視線を向ける。この学校のアイドル的存在だろうか、と真尋が考えていると一つの野次が飛ぶ。

 

「うわ、魔女キタわー。また痛々しいこと言ってるし」

 

「ホントだわー。アイツに呪いをかけられたら、たまったもんじゃない」

 

「おい、さっさと行こうぜ?魔女とその同胞に報復食らっちゃ笑い事じゃねえからな」

 

「早く行こうよー」

 

去り際に誰かが思わぬ方向から紙コップにジュースを含んだまま、レイラに向けて投げつけた。回避する以前に的確に狙われた、その紙コップはレイラのロリータファッションのドレスに当たって中身を思いっきり汚した。慌ててハンカチを取り出してレイラのドレスについた、ジュースがシミにならないうちにふき取ろうとすると、レイラに野次を飛ばす生徒に対して慎太郎が立ち上がる。

 

「おい、別にリィちゃんがどんな趣味していたっていいだろうがよ!謝れよ、リィちゃんに対して!そんでもってクリーニング代を全部出せや!」

 

後方の方に居た野次を飛ばしたヘアバンドの生徒の胸倉を掴み、慎太郎は凄い剣幕で捲くし立てる。

大丈夫、と笑って示すレイラとともに真尋は止めらたので自分のミニタオルを渡してレイラに任せることにした。

今にも慎太郎はヘアバンドの生徒に殴りかかりそうだ……。

 

「うわ、同胞壱号が俺を襲おうとしてるぅ♪」

 

「おい、かっちん、その辺にしとけよ。魔女の同胞が炎を放つかもしれねーぜ?」

 

「テメェ……、ブッ飛ばす!」

 

渾身の一撃を込め、慎太郎は空いた手で振りかぶってヘアバンドの生徒の頬を吹っ飛ばす。武術をやっていることもあってか、力任せに殴ったことで勢いでヘアバンドの生徒の仲間ごと倒した。

あわてて仲間の一人がヘアバンドの生徒を起こすと、周囲にざわめきが広がる。どうやら、一連の出来事を食堂に居た全員が注意を向けているようで、慎太郎や真尋とレイラを注目している。

 

「テメェ、何年何組だァ?俺のツレにんなことするなんてこたぁ、それなりの代償を負うってことだよなぁ?」

 

「ひ、ひいい……!」

 

力任せに殴ったことと、慎太郎の目がヘアバンドのかっちんと呼ばれた生徒はバッジのようなものからして上級生のようだ。レイラのドレスにシミをつけたのは袖の濡れ方からして新しく、おそらくヘアバンドの生徒が犯人だろう。歯をむき出しにしてヘッドバットをかまそうとしているので、周囲の人間は誰も慎太郎を止めようとしなかった。

 

「須藤、んなヤツを殴るのは無駄だ!それ以上やると、そいつら以上の屑になるぞ!」

 

「……興が冷めちまった。よかったじゃねえか、あいつのお陰で助かったな」

 

慎太郎をどう止めたらいいか分からなかったが、気がつけば口を割って出てきていた。それに慎太郎の一発のパンチですでにかっちんと呼ばれた上級生はすでに傷跡が腫れあがっていて、どれだけ慎太郎が力任せに殴っていたのかが分かる。レイラに向けてジュース入りの紙コップを投げつけ、それからの報復にしてはあまりにも理由にならない。真尋の言葉で我に返り、ヘアバンドの上級生たちは走って逃げ出していった。ざわめく中で仁藤の姿が見えたので、わずかに涙を目に溜めているレイラを引き連れて去ろうとするが、仁藤に捕まってしまった。

 

「お前らの仕業か?」

 

「仁藤先輩、ラインハルトが紙コップにジュースが入ったままで投げつけられたんです。それに須藤が怒って……」

 

「そう!仁藤上官、茶髪ピアスは私のためにしてくれたんだ。だから……」

 

「どんな例外もあり得ない。食堂、それもたくさんの生徒が利用する場所で暴力事件を起こしたんだ。そこで須藤が騒ぎを起こしたというならば、今夜、寮に帰ったときに話がある」

 

「チッ……」

 

仁藤は三人をそれぞれ一人ずつ目を見て、最期に慎太郎の目を見る。当の慎太郎は先ほどの軽薄さや明るさはなくなり、まるで不良のソレである。ニット帽に包まれた後頭部をガリガリ指先で搔きながら面倒くさそうに答える。そんな四人の様子を生徒の一部は見ているが、さきほどの慎太郎が掴みかかった時ほど人数はそれほど居なかった。仁藤が去っていくと途端に拍手が沸き、それに乗じて仁藤は爽やかに手を振って去っていった。明らかに慎太郎が騒ぎを起こしたのに乗じて、印象を良くしようとやってきたように真尋は思えた。仁藤から感じた、ギルガメッシュと同じような存在の“共鳴”。

 

『先ほどのあの青年、我と同じ者を宿しているようだな?』

 

心の“海”でギルガメッシュが真尋の思考を読み取った。ギルガメッシュが喋れることに驚いたものの、それを表にはしなかったのは仁藤の思惑への疑惑だった。寮に帰ったときに仁藤からされる話とは何か?そればかりが膨らんでゆく。ギルガメッシュとはまた違う、もう一つの反応を感じるが、その反応は未だに眠ったままだ。ギルガメッシュに話しかけるのは、また就寝前にするとして今は二人と共に食堂を去ろう。仁藤が騒ぎを収めたものの、教師が来ないとは限らない。この点は雇い主だった巽から教わったものだ。

 

「行こう、二人とも。自販機に菓子パン売ってなかったっけ?二人のオススメ教えてくれよ」

 

「あ、あのさ!その……止めてくれてありがとな!」

 

「私からも。ミニタオルありがと」

 

元に戻った慎太郎と普通の口調になったレイラに礼を言われ、頷いた後に三人は食堂の横にある菓子パンが売っている自販機に向かうことにした。食べ切れなかった料理はもったいないが、この場で食事を続けられるほど図太くはない。返却口にトレーを置いた後、三人は自販機を目指して食堂を後にした。




中二病生徒への世間の眼差し、そして慎太郎の正義感、先輩二人の外道なところが見えた今回でした。
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