いつか【R-15】が付くかもしれない。
ジムリーダーの不在のためジム戦を見送り、サヤカというライバルができた日から翌々日、俺たちはムロタウンの外れにある【いしのどうくつ】へ、やって来ていた。
昨日のジム戦は、特に苦戦することなく終わった。もともと【エスパータイプ】を弱点とする【かくとうタイプ】のジムだったし、それに、俺にとってひとつ目のジムであることもあって、ジムリーダーのトウキさんも、それ相応に手を抜いてくれた。
そんなわけで、俺は無事に初のジム戦を突破し、『ナックルバッチ』を手に入れることができた。
ちなみに、最初に行った時に会ったメガネの事務員さん曰く、俺が挑戦するより先にサヤカもムロジムに来ていたらしく、無事に勝利したみたいだ。
そして初のジム戦から一日が経った今日、冒頭で言ったように俺たちは、【いしのどうくつ】にやってきている。
目的は【いしのどうくつ】にいるらしい【ヤミラミ】を見ることだ。
昨日の夜、偶然ポケモンセンターのジョーイさんから【いしのどうくつ】に【ヤミラミ】がいることを聞き、ゴーストポケモンが大好きなヒトミがその話に食いつき、俺が「行ってみようか?」と提案したら、即応で話が決まった。
てなわけで、今、俺とヒトミは目当ての【ヤミラミ】を探しながら【いしのどうくつ】の中を散策している。洞窟の中は本当なら光が届かず真っ暗だが、幸い、俺達はラルトスの【フラッシュ】とヒトモシの【おにび】のおかげで、辺りの様子を見ながら歩くことができている。
「……わくわく」
ヒトミはウキウキして、いつもより少しだけテンションが高い。表情はいつもの歪んだ笑顔だ。ヒトモシの【おにび】の光もあって、少し怖い。
「えへへへ」
「……気をつけてないと転ぶよ?」
「ちゃんと気をつけてるから大丈夫よ」
そう言いながら、ヒトミは足場の悪い洞窟の中を軽やかに歩いていた。ついていく俺の方が先に転びそうだ。
相変わらず、こういうときのヒトミの行動力は凄まじい。
「ラルラー!」
「モシシー!」
「……はぁ」
俺たちの足元では、ラルトスとヒトモシが辺りを照らしながら、仲良く手を繋いで歩いていた。そんな二人を見ながら、俺は少し遅れてヒトミ達の後を追う。
だがふと、ヒトミが立ち止まって、俺の顔を覗き込むようにして様子を伺っているのに気がついた。
「……なんだかカズヤ、元気ないわね?」
「あぁ、うん。ちょっとね……」
「大丈夫? 具合でも悪い?」
「ううん、そんなんじゃない。ただ洞窟の中を歩くのって初めてだから、いつもより気を使ってるだけ……」
「……そう?」
実際は違うけど、本当のことを言うとヒトミが気にしそうだから、俺はあえて“それ”を言わずに誤魔化した。
そして、“それ”っていうのが、何かというと……。
実は俺、【ヤミラミ】が苦手なんだ。
その苦手っぷりから、小さい頃に図鑑にのった【ヤミラミ】を見て、大泣きしたことすらある。
どうして【ヤミラミ】が苦手なのかは、俺自身にもよく分からない。
過去に【ヤミラミ】に襲われたことなんてないし、よくよく見ると可愛い見た目をしているとも思うんだけど、どうしても図鑑やテレビで【ヤミラミ】を見ると体が反応して、変な恐怖を感じてしまう。言葉ではうまく言えないけど……【ヤミラミ】を見ると、なんかこう、体の奥がゾワゾワってするんだ。
けど、そんなことをヒトミに言えば、彼女は気を使って、今からでも引き返そうとするだろう。せっかく、ヒトミが楽しみにしているのに、その気持ちに水をさすのは申し訳ない。
「あはは……」
だから、俺はできるだけナチュラルな作り笑いをして、何事もないように取り繕った。
「さっ、行こ?」
「え、えぇ……」
ヒトミはうすうす俺が作り笑いをしているのに感づきつつあったけど、それがバレる前に、俺は歩みを進めてヒトミを追いこして彼女の前を歩いた。
(……よし!)
この時、俺は前を向いて気づいてなかったが、後ろについてくる形で歩きだしたヒトミは、疑ったような顔つきから、何かを意を決したような面持ちに表情を変えていた。
「……えっ?」
すると突然、俺の左手が何者かに掴まれた。足を止めて横を見ると、ヒトミが俺の手をとって、こっちを見ていた。
「え、えーと、どうしたの?」
「その……転んだら、危ないから……」
少し顔が赤くして、上目遣いのヒトミ……すごく可愛い。
「そ、そっか……あ、ありがとう」
「……えへへへ」
二人揃って顔を赤く染めて、俺達は手を繋ぎながら洞窟の中を進んだ。
「ラールラー、ラールラー」
「モーシシー、モーシシー」
前を歩く二人の歌のような鳴き声もあって、物静かな洞窟の中だけど、まるでトクサネシティの公園にいたときみたいに賑やかだ。
こうして俺達は、洞窟の更に奥へと歩いていった。
時は少し進み、途中で野生の【マクノシタ】や【イシツブテ】に会いながら、目当ての【ヤミラミ】を探していると、俺達はまた一匹のポケモンを見つけた。
そのポケモンは、探している【ヤミラミ】ではなかったが、黄色と茶色の身体に、尖った耳としっぽ、細い目など……その見覚えのある姿に、思わず俺はテンションが上がった。
「おぉー、【ケーシィ】だ!」
コクリコクリと頭を動かして、まるで眠ったような様子で空中に浮いているそのポケモンは、ねんりきポケモンの【ケーシィ】だ。
1日の18時間を睡眠に費やし、眠ったままご飯を食べたりする、あの【ケーシィ】だ!
「見えるヒトミ、ケーシィだよ、ケーシィ!」
「うん、見えてる……でも、そんなに大はしゃぎしなくても」
「だって、ケーシィだよ、ケーシィ! 言うなれば、ヒトミにとって【ゴース】みたいなポケモンだよ!」
「うん、それなら仕方ないわね!」
さすがヒトミ、話が早い!
「ラルゥ?」
「モシモシ?」
ラルトスとヒトモシからはイマイチ共感を得られず、『何をそんなにはしゃいでるんだろう?』と言うように揃って首をかしげられた。
少し納得いかないけど、まぁ、ひとまず置いておこう。
今は、とりあえず……。
「レッツ、ケーシィ、ゲーット!」
「あっ、ちょっと待ってカズヤ!」
俺は空のモンスターボールを片手に、勢いよく飛び出した。
「シィ!」
「あっ!」
けど、俺がケーシィに近づいた途端、ケーシィは小さい鳴き声を残して姿を消した。
しまった、野生の【ケーシィ】といえば、逃げの達者なポケモンだった。
出会えた感動のあまり、すっかり忘れてた。
「逃げちゃったわね」
どうやらヒトミは、ちゃんと覚えていたらしい。
まったく……ヒトミにケーシィについての話をしたのは俺だってのに、話した当人が忘れてたなんて……みっともない!
「……はぁ」
ケーシィに逃げられた事とその習性をすっかり忘れていた事にガックリして、俺はため息をつきながら肩をおとした。
「……よし、よし」
そんな俺を、ヒトミは頭を撫でて慰めてくれた。
なんだか子供扱いされているようで少し恥ずかしいけど、不思議とイヤな感じはしなかった。
「なんか、ヒトミ、一昨日から……」
妙に触ってくるよね?
そう訊こうとしたけど、思わず俺は口を閉ざした。
「……なに?」
「いや、なんでもない」
撫でているヒトミのニッコリとした笑顔が可愛くて、俺は『ま、良いか』と、心にあった小さな疑問をどこかへやった。
***
「あれは!」
「【ヤミラミ】、だね……しかも二匹」
しばらく洞窟の中を散策していると、ようやく俺達は目当ての【ヤミラミ】を見つけた。
紫色の小さな身体に、輝く宝石のような眼……その姿は間違いなく、くらやみポケモンの【ヤミラミ】だ。
ついに、見つけてしまった。
生でヤミラミを見るのは初めてだが、やっぱり言い知れない怖さを感じる。
「かわいい……えへへ!」
俺がひっそりと怯える横で、ヒトミは見とれて怪しく笑っていた。
「ミー、ミー……」
「ヤラヤラ!」
ん?
なんだろう……なにか、様子がおかしい。
見つけたヤミラミの二匹は、洞窟の天井を見上げて、慌てたような鳴き声をあげている。
「あの二匹、何してるんだろう?」
「……そうね、どうしたのかしら?」
目当てのポケモンを見つけて眼を輝かせていたヒトミも、その異変を感じて、首をかしげた。
「ねぇ、カズヤ、訊いてみてくれない?」
「えっ!」
「……お願い」
「う、うん。わかった」
ヒトミの頼みとあって断りきれず、俺はラルトスと共に、警戒しながらヤミラミ達へ近づいた。
いきなり襲い掛かられることもないだろうが、野生のポケモンであるかぎり、可能性はゼロではない。
「こ、こんにちは」
「ミー?」
「ヤラ?」
できるだけヤミラミ達を威圧しないように、俺はヤミラミ達に近づくと、目線が低くなるように膝をつき穏やかな態度で接した。
『人だ!』
『どうして、こんな所に人が?』
どうやら二匹は俺(と後ろにいるヒトミ)に疑問は持っても、襲い掛かったりはしなかった。
「どうかしたの?」
「……ヤミー!」
俺に訊かれて、やや戸惑いつつもヤミラミ達は、腕を上げて天井を指した。
「ヤミぃ……」
見上げると、そこにはもう一匹のヤミラミがいた。そのヤミラミは、洞窟の天井にある岩の隙間に収まって、「ヤラぁ」と弱々しく鳴いて怯えている。
『あそこにいるのは、ボクたちの弟なんだけど、どうやら下りられなくなったみたいなんだ』
「下りられなくなったって……そもそも、なんであんなところに?」
『きっと、石を取るために上がったんだ。アイツ、この前、あそこに美味しそうな石があるって言ってたから!』
「美味しそうな、石……?」
どういうこと?
「……ねぇ、ヒトミ」
ヤミラミの言ってることがイマイチ分からず、俺は後ろを振り返って、詳しく知ってそうなヒトミを呼んだ。そしてヤミラミ達の言っていたことを伝えると、ヒトミは納得したようにコクっと頷いた。
「ヤミラミは宝石や原石を食べると言われてるの」
「へぇー」
なるほど。だから、“美味しそうな石”ってことか……。
俺が納得すると、ヒトミは心配そうな表情で上にいるヤミラミを見上げた。
「カズヤ……あの子、下ろしてあげられない?」
「……うーん、普通の【ゴーストタイプ】のポケモンなら、俺の『テレキネシス』やラルトスの【サイコキネシス】を使えば、簡単に下ろせるんだけど……。ヤミラミは、【あくタイプ】も持ってるから、エスパーわざが効かないからなぁ……」
「……じゃあ、私をあそこまで飛ばして」
えっ?
「カズヤが『テレキネシス』で私をあそこまでやってくれれば、私があの子を持って下りてくるから……」
「あぁ、なるほど」
ホント、ゴーストポケモンが関係すると、ヒトミは行動力もだけど頭の回転も速い。
「あっ……いや、ダメ!」
「……どうして?」
俺はヒトミの提案に納得しかけたが、あることに気づき、すぐに却下した。そんな俺の反応に、ヒトミは首を傾けた。
確かに良い考えだと思うけど、それには問題が
まずひとつ目の問題として、モンスターボールや軽いポケモンなら別だが、人を浮かせるとなると、それなりにパワーがいる。
洞窟の高さは三階建ての建物くらいの高さがあり、あそこまで
ラルトスは今【フラッシュ】を使ってるから、浮かせるなら俺の『テレキネシス』を使うしかない。
そして次にふたつ目の問題、これが決定的な理由なんだけど……。
「ヒトミ、その格好であそこまで上がったら……その……見えちゃうよ?」
「…………っ!」
俺がヒトミの服の下の方に眼を向けると、ヒトミは俺の言いたいことを察してくれたのか、ポッと顔を赤くしてうつむいた。
今のヒトミの格好は、黒っぽい色のワンピースだ。つまり、そのロングスカートのような服で、体を浮かせれば、当然、下からは……その、見えてしまうわけで。
「………」
「………」
ヒトミは顔を真っ赤にしたまま、動かなくなった。俺もなんと声を掛けていいか分からず、だんまりする。
二人揃って言葉を失い、なんとも気まずい空気になってしまった。
「ヤラヤラ?」
「ヤミー?」
「ラルぅ?」
「モシシ!」
ポケモンたちはトレーナー達を見上げて、不思議そうにして(ヒトモシだけ楽しそうに笑って)いる。なんか、高さ五十センチを境に明らかに空気が違ってる。
「と、とりあえず、ヒトミを浮かせるのはナシで!」
「う、うん……じ、じゃあ、どうするの?」
「……俺が行くよ」
そういって、俺は精神を集中できるように、息を深く吸って心を落ち着かせた。
苦手なものを取りに行くというのは、少し気が乗らないけど……仕方ない。
「……ふぅ。せーの!」
自分の体を覆うように念動力を送ると、俺の体はふわりと宙に浮いた。
そのまま天井まで浮き上がって、俺は岩の隙間にいるヤミラミの元まで飛んだ。
「さぁ、おいで」
「ヤミぃ……」
ヤミラミは警戒して、なかなか隙間の外へ出てきてくれない。
「ほら、下で君のお兄ちゃん達が待ってるから」
『……うん』
俺がそう言うと、お兄ちゃんと聞いてひとまず心を許してくれたのか、しぶしぶ出てきてくれた。
俺は出てきたヤミラミの子供をゆっくりと腕で抱えた。
(うーん、やっぱり怖いな……あっやべ!)
けどその時、ヤミラミへの恐怖で精神が乱れたからか、『テレキネシス』が弱まって体が落下しだした。
「カズヤ!」
運良く、落ちるスピードはゆっくりだけど、落ちる俺を見て、ヒトミが声を上げた。
ヒトミは俺を受け止めようとしているのか、俺が落ちる先で腕を広げていた。
って、えっ!
「ちょ、ヒトミ、そこどいてー!」
「キャ!」
いくら遅く落ちてるとはいえ、インドアなヒトミが俺を受け止められるわけもなく、俺はヒトミと共に地面に倒れ込んだ。
「イタタぁ……」
「うぅぅ。ヒトミ、大丈ぉ、ぶ……?」
俺は目の前で痛がっているヒトミに声を掛けた。けど同時に、なぜヒトミの顔が目の前あるのか、そして、ゆっくり落ちたとはいえ、どうして落下した衝撃が不自然に少なかったのかと疑問に思った。
「ふぇ! か、かかか、カズヤ……!」
「……あっ!」
仰向けに倒れたヒトミが自身の胸腹部にいる俺を見て、顔を真っ赤にしている。そして、俺は、頭の中にあった疑問の答えと、俺とヒトミが今どんな体勢になっているのか、気づいた。
……気づいて、しまった。
「……………ぐふっ!」
「カズヤ!」
顔に感じる柔らかい感触によって、急激に跳ね上がった心拍数と体温を感じたのを最後に、俺の意識はそこで途絶えた。
***
この時、抱えていたヤミラミに怪我はなく、その後、ヤミラミお兄ちゃん達と共に、自分達の住みかへと帰っていきましたとさ……。
めでたし。
めでたし。
ーーつづく。
もうすぐアンケートの総数が100に達しそうです。
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ベタベタしすぎ。引くわぁ……。
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良いぞ、その調子。もっとヤれ!
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まだ足りない。もっとイチャイチャしろ!
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人間は良いから、もっとポケモンを愛でろ!
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イチャラブよりバトルだ!