エスパー少年とオカルト少女   作:ジョン・N

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7. 精神統一の話

 

 

 

 

「……はぁ」

「ラルゥ?」

 

 【いしのどうくつ】を散策してから1日がたった今日、俺とヒトミはトウカシティを目指してムロタウンから出港した船に乗っていた。

 けど、俺とヒトミは別行動を取っていて、俺は甲板で一人、ボーっと海面を眺めている。

 【いしのどうくつ】でヒトミに、その……倒れ込んでからというもの、俺もヒトミもお互いに顔をあわせられなくなってしまった。顔を合わせると、あの事を思い出して、お互い顔が真っ赤になり、うつ向いて、まともに声を掛けられなくなってしまう。

 今朝も「……じゃあ、行こうか」とか「……うん」とか「今日も良い天気だよね……?」とか「えぇ……!」とか必要最小限な受け答えやよそよそしい会話しかしていない。

 

「あぁー! どうすれば良いんだよー!」

「ラルラぁー?」

 

 なんとかして、いつもみたいに話そうとするけど、ヒトミの顔を見ると、どうしても顔が赤くなって胸がドキドキする。そして、あの、柔らかい感触を思い出して………。

 あぁぁぁ、落ち着けぇ俺ェ!

 

「とりあえず、心を落ち着けて……!」

「ラルラル?」

 

 眼を閉じて、いつもの瞑想の時みたいに、心を落ち着けるんだ。

 少しも波打ってない水面のように、清く穏やかな心を意識して……。

 

「ラルラぁー?」

 

 周りの音……船のエンジン音とか波の音とか、聴こえなくなるくらい、集中、集中……。

 

「ラルラールぅ……!」

 

 なんか頬がペチペチされてる気がするけど、この感触がなくなるくらい、心を落ち着けて、精神を研ぎ澄ますんだ。

 

「……ラールーラルラルラぁぁ!」

「おい、そこのガキ!」

 

 服を引っ張られようと、声を掛けられようと、動じない精神を持つんだ。

 

「ラぁぁ! ラぁぁ!」

「ちっ……ポチエナ、あのガキに軽く【かみつく】!」

「チィー!」

「へっ?」

 

 あれ、なんか足に変な感触が……?

 ……って!

 

「イッタァァ!」

 

 俺は痛みに悶えて、思わず甲板上を跳び跳ねた。

 

「ツゥゥ、なんだァ!」

「なんだじゃねぇ!」

 

 語気の荒い声が聴こえて周りを見てみると、すぐ近くに金髪の(少しだけ頭頂部が黒い)女の人と【ポチエナ】がいた。

 女の人は鋭い目つきに黒いジャージ、青色の口紅と、見るからに怖そうなお姉さんだった。お姉さんのそばにいる【ポチエナ】も俺を見て、牙をあらわにして威嚇している。

 

「え、えぇーと……?」

「テメー、さっきからそこのラルトスが必死に声かけてんのに、無視しやがって、どういうつもりだァ?」

「へっ?」

 

 えっ、ラルトスが?

 

「ラルぅぅ!」

 

 お姉さんが指で示した先を追って目線を下に向けると、ラルトスが涙眼で俺を見上げていた。

 

『ひどいよカズヤぁ! さっきからずっと呼んでるのに、どうして無視するのぉ!』

「あっ、ご、ごめんラルトス! わざと無視してたわけじゃないんだ!」

『うえぇーん、バカぁー!』

 

 俺が慌てて謝ると、ラルトスは俺の胸に飛び込んで泣きついてきた。俺は跳んできたラルトスを優しく受け止めて、彼女の頭を撫でる。その間、ラルトスは『バカ、バカ、バカぁ!』とペチペチと俺を叩いていた。

 

「……ちっ」

 

 お姉さんはラルトスをあやす俺を細い眼で見ながら、小さい舌打ちをして【ポチエナ】と一緒に立ち去ろうとした。

 

「あ、あの!」

 

 お姉さんの背中に向けて俺が声をかけると、お姉さんは歩みを止め、顔だけ向けてこっちを見た

 

「……なんだよ?」

「どうもありがとうございました」

「別に大したことしてねぇーよ。それよりテメーも飼い主ならポケモンの世話くらいちゃんとしな!」

「はい……」

 

 お姉さんにぐうの音もでない正論を解かれ、俺は申し訳なく返事をした。

 ホント、パートナーポケモンの呼び掛けに気づけないなんて、トレーナーとして失格だ。

 

「ごめんな、ラルトス」

『……いっぱい遊んでくれたら、許してあげる』

 

 改めて謝ると、ラルトスはうつ向きながら、甘えるように顔をスリスリと寄せてきた。

 そういえば、ここ数日、あんまりラルトスにかまってやれていなかったな……。

 

「……じゃあ、遊ぼうか?」

「ラルゥ!」

 

 ラルトスは元気の良い鳴き声で返事をすると、俺の腕から飛び下りて、『モンスターボール投げしよ!』と甲板の広いところへ走り出した。

 

「……あん?」

 

 ラルトスの後を追う前に、俺はお姉さんの方を向いて小さく頭を下げた。お姉さんは怪訝そうな表情をしていたけど、お姉さんがいなければ、俺とラルトスの間に大きな溝ができていたかもしれない。

 お辞儀でお礼をした後、俺は頭を上げてラルトスを追った。

 

「……ちっ!」

 

 俺は背にして気がつかなかったが、俺がラルトスの後を追い始めた時、お姉さんは頬を赤らめ、不機嫌そうな顔で大きな舌打ちをしていた。

 

 

 

 

 

 ーーつづく。

 

 

 

 

 






はーい!
そんなわけで、また新キャラ登場です!

本話より新しいアンケートを追加していますが、本日中にもう一話(お昼頃に?)投稿しますので、よかったら、その投稿した話を読んだ後に行ってみてください。

よろしくお願いします。

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