エスパー なトレーナーがいて、
かくとう なトレーナーが出てきて、
あく なトレーナーが現れて、
“トレーナー三すくみ”の出来上がり。
ギュゥゥっと俺の腕に抱きついて、ヒトミはお姉さんを睨んでいる。
自分の腕が柔らかいヒトミの身体に押しつけられて、少し恥ずかしいが、今、俺が感じていた気持ちは恥ずかしさよりも驚きの方が強かった。
「なんだ、テメー、彼女持ちだったのか?」
お姉さんが俺を見て訊いてくる。
「いや、そんな」
「彼女です! だから……」
お姉さんへの俺の返答を遮って、ヒトミは大きく息を吸った。
「だから、カズヤに言い寄るのは、やめて!」
「はァ?」
あぁ、これは……。
ヒトミは大きな勘違いをしてる。
「……クス、フフ、あはっはっは!」
ポカンとした表情が緩んでいき、やがて、お姉さんは愉快そうに笑った。
「言い寄るってぇ! あっはっは! アンタには、アタシがコイツをナンパしてるようにでも見えたのか?」
「……違うの?」
「違うよ……!」
お姉さんが爆笑してる様子を横目で見ながら、ヒトミはこっちに眼を向ける。ヒトミに訊かれ、俺はそのまま素直に否定した…………てか、顔近い!
「安心しろよ。別にナンパしてたわけじゃねぇ。ただコイツのポケモンの扱いがなってなかったからな、アドバイスしてやってただけだ」
扱いがなってないって……。
まぁ、ラルトスを泣かせるくらい無視しちゃったのは本当だから、否定できないけど、別にいつもあんな風にしてるわけじゃないんですよ?
「アドバイス……?」
「ほら、これ。さっき、お姉さんからもらったんだ」
「……これは、ポケじゃらし?」
「知ってるの?」
「うん、カロス地方ではみんな普通に持ってたから……けど、なんでそんなことに?」
「いやぁ、それは、なんていうか……色々あって」
さすがに瞑想に集中してラルトスを泣かせたから、とは言いづらい。それを話せば、なんでそんなに瞑想に集中したのかの話にも繋がりかねない。
「とにかく、別にお姉さんにはナンパされたりも脅されたりもしてないから!」
「……そーなの?」
「ソーナンス……じゃなくて、そうだよ!」
いかんいかん、つい爺ちゃんのポケモンギャグが……。
ちなみに、ここホウエン地方では、『そーなの?』と訊かれて『ソーナンス!』と答えるのは、鉄板ギャグだったりする。
「そんで、実際のところ、お前らはカップルなのか?」
気を取り直すように、お姉さんが腰に手を置いて訊いてきた。
「いや、まだ違いますよ!」
「ふーん、
なっ、しまった!
「あっいや、べっ、べつに今言った『まだ』ってのは言葉の綾というか、否定する上でのテンプレートというか、深い意味はないですから!」
「あぁーもう、良いって良いって。お前らの反応見たら、なんとなく分かったつーの!」
お前
ふと横を見ると、赤くなった顔を隠すようにうつむいているヒトミの姿があった。
……あぁーー、もう、可愛いなぁ!
「ったく、“まだ”とか言ってねぇーで、さっさと付き合っちまえば良いのに……!」
「うっ……だから、別にそんなんじゃ!」
「えっ」
否定しようとしたら、横から
再度横を見ると、ヒトミが潤んだ眼で俺を見上げていた。
「……カズヤは、私のこと、キラい?」
「いや、キラいなんてことはない。ないけど……」
キラいじゃない、むしろ大好き。
だけど、ここで正直に『好きだよ』って言うのは、めちゃくちゃ恥ずかしい!
「けど……?」
不安そうにヒトミはまっすぐ俺を見る。ヒトミの潤んだ眼に見られて妙な罪悪感を感じ、かつ胸の内にあるモヤモヤした羞恥心に耐えきれず、俺はヒトミから眼をそらした。
「だから、その……なんというか……ッ!」
眼を右往左往させて、なんと言おうか迷っていると、ヒトミの眼がますます潤んでいく。
「そうよね、私なんて……。こんな、暗くてトロくて、服もダサくて、ブサイクで、オカルト好きの変な子なんて……」
なんだか、ヒトミのテンションがどんよりと落ち込み、どんどん暗くなっていく。
そんなに自分を卑下しないで……!
ヒトミは充分かわいいし、魅力的だよ!
「それに、昨日からカズヤ、なんだか素っ気ないし……」
「いや、それは!」
それは……言えない。ヒトミと喋ってると【いしのどうくつ】でのことを思い出して、目線が胸元に行ってしまうなんて、絶対に言えない!
「うぅ、どうせ私なんて……グスッ……うぅ……ふえぇ!」
ヤバい、このままではヒトミが大泣きしてしまう!
そばにいるお姉さんも、『おい、なんとかしろよテメぇ』といった眼で俺を睨んでいる。
「あぁーー! だからさ、その……!」
ヒトミを泣かせるまいと、俺は意を決して、口元をヒトミの耳に近づけた。
「好き、だよ……!」
バクバク鳴っている心臓をどうにか意識の外に追いやり、かすれた声で囁く。
これが、今の俺ができる精一杯の告白だ。友達としてなのか、女の子としてなのか、その辺りの気持ちの差異はまだ解らないけど、心の中にしっかりとあるこの
「キラいなんてことはない。むしろ俺は、ヒトミのことが好き……」
「ッ!」
俺が囁くと、ヒトミの顔がポッと赤く染まった。
「けど、こんなこと……人前では、恥ずかしくて言えないからさ……」
「う、うん……!」
ヒトミの耳元から顔を離して、彼女を見ると、ヒトミは顔をうつむかせて組んだ両手をモジモジしていた。そんなヒトミの様子を見ていると、気持ちが惹きつけられ、胸が苦しくなる。
顔が熱い。心臓が騒がしい。ヒトミと同じで、きっと俺の顔も真っ赤だろう。
「ひゅーひゅー、妬けるねぇ!」
「なっ!」
声に反応して顔を横に向けると、ラルトス、ヒトモシ、ポチエナと並んで、お姉さんがニヤニヤした顔で見ていた。3匹のポケモンと合わせるため、御丁寧にしゃがんでこっちを見上げている。
俺が何を言ったのかは聴こえていないはずなので、雰囲気だけを見てからかっているのだろう。
「それで、次はキスでもすんのか?」
お姉さんの茶化す言葉に、ヒトミがピクッと身を揺らしながら「き、キスぅ!」と声を上げる。口にはしなかったけど、俺も同じような心境だった。
「か、からかわないで下さい! そんなんじゃないですって!」
「そんなに見惚れといて、よく言うよな」
べ、べつに見惚れてなんて……なんて……。
「……ぬぅぅぅ」
俺は口を結び、ニヤニヤしているお姉さんと言い返せない自分にヤキモキした。
あぁ! 確かに見惚れてたよ、モジモジするヒトミを見て、かわいいと思ったよ、綺麗だって、魅力的だって、大大大、大好きだって、思ったよぉ!
そんなことを八つ当たりするように心の中で叫びながら、俺はお姉さんを睨む。そんな俺を見て、お姉さんはニヤリと笑っていた。
「ラルゥ?」
「モシモシ?」
「チエ?」
俺がお姉さんへ無言のプレッシャー(効果がないみたいだ)を放っていると、ふとポケモン達が『あれぇ?』『ご主人?』『なんだ?』と首を捻って、それぞれヒトミの顔を覗き込んだ。
けどポケモン達に見られても、ヒトミはまったく反応しない。
「ん?」
「あん?」
そんなポケモン達と彼女の様子に、俺とお姉さんもヒトミへ眼を向けた。
ヒトミは顔をうつむいているため、前髪で顔が隠れている。
「ヒトミ?」
「………」
俺が呼び掛けても返事は返ってこなかった。
俺はお辞儀するように顔を下にして、ポケモン達のようにヒトミの顔を覗き込む。
すると……。
「……気絶してる!」
真っ赤になった顔のまま眼をぐるぐる回して、ヒトミは意識を失っていた。
ーーつづく。
アンケートの結果を活動報告でまとめました。
人気キャラランキングのアンケート受付は、20話くらいまで続ける予定です。
第一回キャラクター人気ランキング
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サイキッカーの カズヤ
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オカルトマニアの ヒトミ
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ジムリーダーの フウとラン
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バトルガールの サヤカ
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こわいおねえさんの ???