エスパー少年とオカルト少女   作:ジョン・N

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7月に突入!
そして『夏はポケモン!』
……というわけで更新です。





14. ゲットの話

 

 

 

 

 

「僕はヒデオ。よろしくね」

「俺はトクサネシティのカズヤ」

「お、同じく、ヒトミです。よ、よよよ、よろしくお願いします。ヒヒヒっ」

「う、うん。よろしく、ね」

 

 俺とヒトミは少年と簡単な自己紹介をして、ラルトス探しを開始した。不気味な愛想笑いを浮かべるヒトミに、少年は頬を引きつらせて苦笑いで返す。

 

 探している途中で話を聞いたところ、なんでもヒデオはトウカシティに住んでいて、先日、親から手持ちのポケモンを持つことを許され、最初の一匹に憧れのラルトスをゲットするため、時間を見つけてはこの辺りを散策しているらしい。遊ぶ時間はもちろん、“塾帰り”なんかにもこの辺りを歩き回っているとのことだ。

 

 だが流石に一人だけで林の中に入るのは危ないため、おじさんから手持ちのポケモンを持たされた。そして必要なら、ラルトスを持っているトレーナーと、そのポケモンを交換しても良いと言ってくれたらしい。

 そのポケモンが【ケーシィ】だ。

 

「それにしても、手持ちにだけじゃなく交換に出しても良いなんて、随分と気前の良いおじさんだな」

「ラルトスを持っているトレーナーなら、きっと心の良いトレーナーで大切に育ててくれるだろうから大丈夫だって言ってた。それに、ケーシィは危なくなったらテレポートで家に帰ることができるからね」

「……そっか」

 

 俺は話を区切り、なんだか照れくさくなって頬を指先で掻く。

 

「そういえば、手伝ってくれるのは僕としてはありがたいけど、カズヤはゲットは得意なの?」

「うーん……実はまだやったことないんだ。けど、知識としては知ってるし、相手がラルトスなら習性もよく知ってる。他のポケモンよりも上手くやれると思う」

 

 そもそも、【ラルトス】がゲットしにくいってのは、遭遇することが少ないせいであって、ゲットの方法そのものは他のポケモンと変わらない。

 ラルトスについて熟知している俺なら、むしろ簡単にできるだろう。

 

「習性?」

「【ラルトス】はきもちポケモンと言って、生き物の心を敏感に察知するんだ」

「うん」

 

 俺の解説に、ヒデオは頷く。

 

「つまり、ラルトスを探す時は『見つけてやるぞー』とか『バトルするぞー』とか好戦的になったり敵意を向けるのはダメだ。見つけるには心穏やかにすること。これが第一。そしてこれは、ゲットするトレーナーだけでなく一緒に行動する仲間も同じだ。一人でも心に敵意や暗い感情があると見つけることは難しい」

「えっ、ゲットするのを考えるなってこと? でもそれじゃあ、どうやっても見つけられないんじゃ……?」

「そうでもないよ」

 

 そう言って、俺は足を止めて頭の上にのせていたラルトスに手をやって前に抱く。

 ヒデオは一瞬不思議そうにラルトスに目をやったが、すぐにまた俺に目を戻す。

 

「ヒデオはどうしてラルトスをゲットしたいんだっけ?」

「それは……小さい頃に見た【エルレイド】がカッコ良くて、僕も一緒にいて欲しくて」

「そう、その気持ちを持って探すんだ。明るく前向きに、『友達になって欲しい』って願いながらね。そうすれば、向こうもきっと答えてくれる」

「そう、なの?」

「あぁ。納得いかないっていうなら、試しに【ラルトス】をゲットした時のことを考えてみな? あるいは、もしも【エルレイド】に進化したらぁ、とかな」

 

 俺が促すと、ヒデオは目を閉じて「うーん」と腕を組んで考え始めた。最初は眉間にしわを作っていたヒデオだが、徐々に力が抜けていき、やがて穏和な顔つきに変わっていった。

 

「ラルー!」

「えっ!」

 

 やがてラルトスが明るい声で鳴き、ヒデオは驚いて目を開ける。

 

「ラル、ラルラルラー!」

「ほら。俺のラルトスも、今のヒデオの気持ちが気に入ったみたいだぞ」

 

 俺の言葉に賛成するようにラルトスが鳴く。『うん、今の気持ち好き!』と言ってくれている辺り、間違いない。

 

「そうなんだ……わかった。やってみる」

「よし。それじゃあ、続けてこの辺りを歩いてみよう」

「ラールー!」

 

 引き続き野生のラルトスを見つけるため、俺達は散策を続けた。

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 それから二時間後。

 

「うーん」

「見つからないねぇ」

 

 ここまでずっとラルトスと遭遇しないことに、いよいよ俺とヒデオは足を止めて、ため息をついた。

 

「どうだ、ラルトス?」

「ルーぅ?」

「何かイヤな感じとかする?」

 

 俺が訊ねると、頭にのっていたラルトスはツノで何かを察知するようにして周囲を見る。そして、とある方向に目を向けた。

 

「ラールー、ラルラルラルラルぅ!」

「えっ!」

 

 ラルトスの言葉に、俺は思わずラルトスと同じ方へ顔を向けた。

 そこには、ヒトモシとミミッキュを抱えたヒトミが立っている。俺の反応を見て、ヒデオも不思議そうにヒトミを見た。

 

「えっ! な、なに?」

 

 急に視線を向けられ、ヒトミはピクリと一瞬背筋を伸ばし、オロオロと慌てだす。

 

「いや、そのぉ……ごめん、ちょっとタイム」

 

 俺はヒデオに頭を下げ、ヒトミの手を取って少し離れた位置まで連れていった。

 

「な、なに? どうしたのカズヤ?」

「それが、ラルトスが言うには、野生の【ラルトス】が出てこないのはヒトミが怖がってるのを察して警戒されてるのかもって……」

「えっ!」

 

 極度な人見知りのヒトミは、他人や初対面の人の前だとすぐに縮こまってしまう。ラルトス曰く、その恐怖心を察知して野生の【ラルトス】が姿を見せなくなっているらしい。

 

「うぅ……ごめんなさい」

「あーいや、苦手なものは仕方ないよ。でも、そのぉ……今だけでもなんとかできないかな?」

「う、うん……私も、できればそうしたい。でも……」

 

 それができれば、苦労はしない……か。

 ヒトミは視線を下にやって胸の前で指をツンツンと合わせる。けど、やがて何かを思い付いたのか、俺の方へチラチラと目をやる。

 

「その、えっと……方法が無いわけじゃないの」

「えっ! それは、どんな?」

「そのぉ、ポケモンの技でいうところの【アロマセラピー】、みたいな?」

 

 顔を赤く染めながら言うヒトミの言葉が、いまいち理解できず、俺は首を傾けた。

 

「そのために、カズヤにお願いが、あるの」

「う、うん。なに?」

 

 そのヒトミのお願いを聞いて、俺は更に混乱した。

 

 

 

 ***

 

 

 

 

「……ねぇ、カズヤ」

「何?」

 

 隣を歩くヒデオに声をかけられ、俺は辺りを観察しながら返事をする。

 あれこら十分ほど歩いたけど、まだ【ラルトス】は見つかっていない。

 

「ヒトミの“アレ”、一体なんなの?」

「……う、うん。“アレ”ね。アレは、その、なんというか……」

 

 ヒデオは後方を指さして訊ねる。だが俺は、なんと説明していいか分からず、頬をポリポリ掻いた。

 

「いわゆる、安心毛布ってやつ」

「毛布? でもあれって“カズヤの服”だよね?」

「う、うん。でもヒトミが言うには、あーすると安心するんだって」

「ふーん」

 

 背後には、俺のお気に入りの紫色の作務衣を持ったヒトミが、ヒトモシとミミッキュを連れて歩いている。

 ヒトミは両手で俺の作務衣を自分の口元に当てて、ゆっくりと大きく深呼吸する。その顔は火照っているように赤く、締まりがない。目線は少し上へ向いているが視点も定まっていない。

 

「スンスン……んー、至福ぅ!」

 

 いくら昨晩洗濯したとはいえ、自分の服をクンクンと嗅がれるというのは、かなり恥ずかしいし、なんだかむず痒くもある。

 だが実情はともかく、これでさっきのようにヒトミが人見知りしてオドオドすることはないし、野生の【ラルトス】に警戒されることもなくなるだろう。

 

「ラルー!」

「ラルトスも、大丈夫だって」

「そう。まぁ、二人が良いなら、僕は別にそれで良いんだけど……」

 

 そう言って、ヒデオはヒトミから俺が抱えているラルトスに目を移す。

 

「そういえばカズヤ、さっきから気になってたけど、君、ラルトスの言葉が分かるの?」

「えっ! あっ、あぁ、まぁね」

「へぇー、すごいなぁ。良いなぁ。僕にもできるかな?」

「俺とラルトスはもうずっと前からの仲だからな。ヒデオもゲットしたポケモンを大切に思えば、きっと心を通わせられるよ」

 

 俺の場合は超能力で言葉を正確に理解しているけど、超能力なんて使わなくてもラルトスの言いたいことはなんとなく分かる。

 

「ふふっ、そうだと良いなぁ……あっ!」

「ん?」

 

 ヒデオが期待に胸を膨らませた笑みを浮かべていると、突然、声を出して足を止めた。視線を辿ると、そこには林の中の一本の木が生えている。そして、その影には一匹の小さなポケモンが顔をのぞかせて立っていた。

 顔といっても目元はおかっぱ頭のような緑の頭部によって見えないが、緑の頭に赤いツノと、種族としての特徴は一致している。

 

「ラルぅ」

「あっ、あれは!」

 

 野生の【ラルトス】が俺達の様子を伺っていた。そのラルトスは興味混じりで、こっちを見ている。

 

「いた!」

「ちょっと待て! 落ち着け!」

 

 ラルトスを見つけて早速モンスターボールに手を伸ばそうとするヒデオを俺は止めた。ここで捕獲欲を見せると、多分あのラルトスは逃げてしまう。

 

「ここは慎重に行こう」

「慎重にって、一体どうやって?」

「まぁ、見とけって」

 

 そういうと、俺はヒデオをその場に残して、少しずつ木の影に隠れているラルトスに近づいていく。

 相手に警戒されないギリギリの距離まで近づくと、俺はその場でしゃがみ、腕に抱えていたラルトスを地面に下ろした。

 

「ラルトス、頼むな」

「ラルー!」

 

 ラルトスは俺の考えを察して『任せて!』と深く頷いた。

 

「ラルラル!」

「ラ、ラルラル」

「ラルラー? ラルラルぅ?」

「ララル。ラルラルラー」

 

 ラルトスはゆっくりと歩み寄ると、木の影に隠れた野生のラルトスに声をかける。野生のラルトスは首を傾げたが、俺のラルトスの明るい様子に、警戒しつつも木の影から出てきてくれた。

 雰囲気から察するに、どうやらオスのラルトスらしい。

 

「ラルラル、ラルラルラー」

「ラル。ラルラル」

「ラーラル。ラルラルル」

「ラル? ララルー」

 

 俺のラルトスと野生のラルトスがコミュニケーションを取る。

 通訳すると、こんな感じだ。

 

『こんにちわぁ!』

『こ、こんにちわ』

『どうしたの? 私達に何か用?』

『ううん。なんだか心地の良い波長を感じたから、ちょっと見に来てみただけ』

『そうなんだ』

『あの人間の女の子、すごく幸せそうだね』

『うん、そうだよねぇ』

 

 ラルトス二人が揃ってヒトミを見るが、本人は気づかない。

 

『あなたは、この辺りに住んでるの?』

『うん』

『他に家族や友達は?』

『ううん。いないよ』

 

 へぇ、それは珍しいな。野生の【ラルトス】はキルリアやサーナイトと一緒に生活しているイメージがあったけど、そうでもないのかな。

 

『じゃあ、ひとつ提案があるんだけど』

『なに?』

『実は、あそこにいるヒデオっていう子が仲間を探してるんだって』

『へぇー』

『良かったら、どうかな?』

『ボクが?』

『うん』

 

 俺のラルトスがヒデオを指し、野生のラルトスもヒデオを見る。ヒデオは「な、なんだろう?」と首を捻るが、やがて野生のラルトスは俺のラルトスに向かって大きく頷いた。

 どうやらヒデオは、あのラルトスのお眼鏡にかなったらしい。話を終えると、ラルトス達はこっちにゆっくり歩み寄ってきた。

 

「ラルラール!」

「あぁ、ありがとう。お疲れさま」

 

 俺は自分のラルトスを再び抱え上げ、頭を撫でた。ラルトスは嬉しそうに口許を緩める。

 

「ラル」

「あっ、え、えーと……」

 

 もう一方のラルトスは、ヒデオの足元まで来ると、彼の顔を見上げた。ヒデオの顔を覗き込み、内にある感情を探るようにジーっと顔を向ける。見られ続けるヒデオはどう反応して良いのか分からず困惑していたが、やがてラルトスが握手するように手を前に出した。

 

「ラルラル」

「えっ?」

 

 どうやらヒデオは、このラルトスのお眼鏡にかなったらしい。

 

「よろしく、だって」

「えっ、あぁ、そうなんだ……こちらこそ、よろしくね」

 

 俺の通訳を聞いて、ヒデオは腰を下ろしてラルトスの手を取ると、お互いに信頼を置くように握手をする。

 

「よし。じゃあ早速、ラルトスをモンスターボールに入れるんだ」

「うん。そうだね」

 

 ヒデオはポケットからモンスターボールを取り出してラルトスの額にコツンと当てた。するとラルトスの身体がモンスターボールの中へ吸い込まれる。

 しばらくヒデオの手の中でユラユラと揺れていたが、ラルトスの入ったモンスターボールはすぐに大人しくなった。

 

「やった! これでゲットできたってことだよね?」

「あぁ。おめでとう」

「カズヤのおかげだよ。ありがとう!」

 

 ヒデオはラルトスの入ったモンスターボールを、喜びと期待のこもった目で見る。

 初ゲットかつ初めての自分のポケモンとあって、感慨深いものがあるのだろう。

 

「それじゃあ御礼に、約束通りケーシィをあげるよ」

 

 そう言って、ヒデオはラルトスのモンスターボールを仕舞い、代わりにケーシィのモンスターボールを取り出して俺に差し出す。

 

「はい。大切にしてあげてね」

「あぁ、ありがとう。大切にするよ……よし、出てこいケーシィ!」

 

 モンスターボールを受け取って、念願のケーシィを手に入れた俺は、早速中にいるケーシィを外に出した。

 ボールの中からの閃光と共に、ねんりきポケモンのケーシィが姿を現す。

 空中に座るような体勢で浮遊するケーシィを見ながら、念願のポケモンをゲットした感激に、思わず抱きつきたくなる衝動をなんとか抑えた。

 

「俺はカズヤ。こっちは相棒のラルトス。今日からよろしくな、ケーシィ」

「ラルラルぅ!」

「シィ!」

 

 俺とラルトスが声をかけると、ケーシィは鳴き声を出しながら、その細い目で俺とラルトスを見る。

 

『今日から君がボクのご主人様か。まぁ、よろしくね』

 

 このケーシィ、まさかのボクっ娘である。

 出会ったばかりとあって少し素っ気ないが、それでも感じの良い言葉を返してくれた。

 

「ラルラルー!」

 

 ラルトスも初めての仲間が出来て嬉しそうだ。

 明るいラルトスとクールなケーシィとで、性格的にも相性は悪くなさそうだ。

 

「それじゃあ僕はウチに帰るよ。おじさんにも報告しなきゃいけないから……ケーシィ、元気でね」

『あぁ、君もね』

 

 そんな最後の言葉を交わしてヒデオはケーシィに別れを告げると、俺達に改めて御礼を言って、その場を後にした。

 こうして俺は今日、二匹目の仲間、ケーシィをゲットしたのだった。

 

『ところで、あの女の子は?』

「あぁ、旅の仲間のヒトミだ。そばにいるヒトモシとミミッキュは、彼女のパートナーポケモン。仲良くしてくれ」

『へぇ、手に持ってるのはカズヤの服かい?』

『そうだよ。あれがヒトミの安心毛布なんだって』

『ふーん、なんだか変態みたいだね』

「こらこら」

 

 思ったよりも毒舌なケーシィに、俺は口で軽く叱りながら苦笑いした。

 

 

 

 ーーつづく。

 

 

 

 

 







というわけで、クーデレボクっ娘『ケーシィ』が仲間になりました。
彼女の将来が楽しみですね。

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