オカルトマニアこと、ヒトミの
※ほぼ日記形式です。
〇月α日 晴れ
パパのお仕事の関係でカロス地方から、ここホウエン地方に引っ越してきて、今日で3日目。
私の住むことになったトクサネシティは、ホウエン地方本島から少し離れた小島にあって、前に住んでいたミアレシティよりもだいぶ田舎な町。だけど、来る途中で見た海の景色や町の様子は綺麗に澄んでいて、とても気に入った。
ポケモンの種類も、カロス地方とは違うこの地方特有のポケモン達がたくさんいるから、見ていて楽しい。
ヒトモシなんて、昨日さっそく家の近くにいた野生のポケモン(【ジグザグマ】という名前らしい)と仲良くじゃれあっていた。
私も、あんなふうに友達ができたら良いなぁ……。
よし、頑張ろう!
――数日後。
〇月β日 晴れ
ここ何日かずっと、新しい部屋の片付けとかママと一緒にお買い物に行ったりとか、新しいお家で暮らす準備に忙しくて、全然遊べなかった。
でもその準備も、昨日ようやく終わった。だから今日は近所にある公園にヒトモシと遊びにいくことにした。
公園に行けば、私と同い年の子あるいは年の近い子にたくさん会えるかもしれないし、友達もできるかもしれない。
そう思って、いざ公園に行ってみたら、公園には私と同い年くらいの子達が5、6人いた。
でも皆、すでにそれぞれの友達や自分のポケモン達と仲良く遊んだりおしゃべりしたりしていて、とても私が話しかけるような雰囲気じゃなかった。
しばらくベンチに座って話しかけるチャンスが来ないか待っていたけど、そんなチャンスは来なかったし、向こうから声をかけてくることもなかった。
それどころか皆、ベンチに座っている私を見ると、すぐに遠くにはなれて行ってしまう。
ひょっとして、私が他の地方から来たから避けられてたのかな……?
だけど、一緒にきたヒトモシは公園にいたポケモン達(【プラスル】と【マイナン】って名前のポケモンみたい)と仲良く遊んでいたし、そういうわけでもないみたい。
少し悔しいけど、まだ始まったばかり……。
絶対、友達作るもん!
〇月γ日 晴れ
お昼過ぎ、今日も昨日と一緒で公園に遊びに行った。公園には昨日と同じく、年の近そうな子が4人くらいいた。
今日は勇気をもって、遊んでる子たちやおしゃべりしている子たちに話しかけてみた。
だけど、みんな私が声をかけると「ひっ!」とか「きゃ!」とか顔を引きつらせて逃げていった。
どうしてだろ……?
私ってそんなに怖い顔してるかな?
途中からなんだか胸がモヤモヤして、悲しい気持ちになった。
今日は、早めにお家に帰った。
〇月δ日 曇り
今日も公園に行った。けど今日は、ずっと公園のベンチに座りっぱないしだった。
昨日みたいに遊んでる子たちに声をかけようかとも思ったけど、逃げられるのが怖かったから、やめた。
今日もヒトモシは、着いてそうそう公園にいる野生のポケモンたち(【ネイティ】と【エネコ】って名前みたい)と遊んでいた。
どうすればヒトモシみたいに友達ができるんだろう……。
そんなことをずっと考えていたら、すっかり日が暮れてしまった。
私、このままずっと友達できないままなのかな……?
〇月ε日 晴れ
今日、はじめて友達ができた!(やったー!)
その子はカズヤという名前の男の子で、【ラルトス】っていう小さなポケモンを連れていた。
カズヤは、私が昨日みたいに公園のベンチに座っていると、隣に座って話しかけてきてくれた。最初は私もビックリしてうまく話せなかったけど、そんな私に、カズヤはイヤな顔ひとつしなかった。
それから私とカズヤはお互いのことを話し合った。
カズヤはサイキッカーで、物を浮かせたりヒトやポケモンの心を読んだりできるみたい。「やって見せて」ってお願いしたら、本当にモンスターボールを浮かせたり、私の考えてることを当ててみせてくれた。(ずっと心を覗かれてるのかと思ったけど、普段は心を読まないようにしてるみたい)
このトクサネシティではサイキッカーは珍しくないってカズヤは言ってた。そのお陰か、カズヤは私が霊能力が使えるって言ったときも、すぐに信じてくれた。(また嘘つき呼ばわりされるんじゃないかって思ったけど、受け入れてもらえて、すごく嬉しい!)
カズヤは他の子達みたいに私を怖がったりしない。「どうして?」って訊いてみたら、カズヤは「別に怖いとは思わないよ」って言ってくれた。次に「どうして、みんな私を怖がるのかな?」って訊いたら、カズヤは少し考えた後に「前髪で顔がよく見えないからじゃない?」だって……。(でもそれって、ラルトスとあまり変わらないような……?)
そう言われたから、ためしに前髪を上げてカズヤに見てもらったら、カズヤは「うん、可愛いよ」って言ってくれた。(嬉しかったけど、なんだか少し恥ずかしかった……)
帰るとき、『また明日も遊ぼう』と言おうとしたら、カズヤの方から「明日も一緒に遊ぼうよ」って約束してくれた。(あまりにもタイミングが良かったから、ひょっとして心を読んだのかな? でもどっちにしてもスゴく嬉しかった!)
明日は何して遊ぼうかな?
明日がすごく楽しみ!
――数週間後。
□月α日 晴れ
今日はママと一緒に美容院に行った。はじめての美容院で少し緊張した。
前にカズヤから前髪を上げたときに『可愛い』と言ってくれたのを思い出して、美容師さんに目元を見えるようにしてもらった。(美容師さんと眼が合ったときに「ひっ!」ってビックリされたけど、アレは何だったんだろう?)
そして、帰りにママからカチューシャを買ってもらった。そのときママが「これで愛しのカズヤ君もイチコロよ!」って親指を立てて言ってたけど……そうだったら嬉しいな。
明日、カズヤに会うのが楽しみ。
□月β日 晴れ
今日、カズヤに髪型を褒めてもらった!
カズヤは会ってすぐに「髪型、変えたんだ。可愛いよ」って言ってくれた。やっぱりカズヤに褒めてもらうと、とっても嬉しくて、胸がポカポカする。
どうしてかは、分からないけど……。
□月γ日 晴れ
今日、また友達ができた。しかも、一気に2人も!(やったね!)
その子達は、フウとランっていう双子の姉弟で【ルナトーン】と【ソルロック】っていう珍しいポケモンを連れていた。(ランがお姉さん、ルナトーンのパートナー。フウが弟くん、ソルロックのパートナー。けど双子とあって、二人ともあまり姉とか弟とか意識していないみたい)
二人とはお互いのポケモン(ヒトモシとラルトス、ルナトーンとソルロック)がじゃれあって、その流れで色々話すようになり仲良くなった。
最初、フウとランは私を見て皆みたいに「ひっ!」と怖がって距離をあけていて、私もビクビクしてうまく話せなかったけど、カズヤが仲介に入ってくれたおかげで、次第に話しかけてくれるようになった。フウとランはお互いに以心伝心ができるみたいで、しゃべる時は『二人でひとつの言葉を交互に話す』という変わったしゃべり方をしていた。
カズヤは同じエスパータイプ使いとあって二人とは波長があったみたい。
二人(特にラン)とお話して笑っているカズヤを見ていたら、なんだか胸の奥がチクリとした……気がした。
あのチクチクした感じは、一体何だったんだろう?
□月Ω日 晴れ
昨日の夜、フウとランと友達になったことをママに話したら、ビックリすることが分かった。
なんと二人はこの街のジムリーダーだったらしい。
それを今日、カズヤに教えてあげたら、カズヤもビックリしていた。
――数日後。
□月δ日 晴れ
今日はカズヤと“伝説のポケモン”と“幻のポケモン”について調べた。
もともとは「いつか仲間にしたいポケモンは何?」っていう話をしていたんだけど、それがいつの間にか伝説のポケモンのお話になって、急遽、図書館に調べに行くことになった。(ちなみに、前半の話題の答えは、私が【ミミッキュ】、カズヤは【ニャオニクス】だ。図鑑で調べた結果、お互いにホウエン地方にいないポケモンだと解って少しガッカリした)
カロス地方だと【ゼルネアス】や【イベルタル】、【ジガルデ】っていうポケモンの伝説を聞いたことがあったけど、ホウエン地方には【カイオーガ】と【グラードン】、【レックウザ】と呼ばれるポケモンの伝説があるみたい。
そして、なんでも宇宙センターの近くに置かれている『白い石』には幻のポケモンが隠れているなんていう噂話もあるらしい。
いつかじっくり調べてみたいな。
できれば、カズヤも一緒に……。
――数週間後。
×月ζ日 晴れ
今さらだけど、カズヤと会ってからというもの、ずっと二人で遊んでばかりだ。
たまにフウとラン達とも一緒に遊んだりするけど、それでもカズヤと遊んでる日数と比べたら、4人で遊んでる日は(二人がジムリーダーであることもあって)とても少ない。
昨日カズヤと別れてから、ふとそのことが頭を過って、なんだかちょっと不安になった。
『遊ぶ時やトレーナーズスクールに行く時、図書館や本屋にオカルト本を探しに行く時とか、その他にもいろいろ……カズヤはずっと私と一緒にいて、イヤに思ったりしてないのかな?』
そんな小さな疑問を心苦しく感じた私は、今日、思い切ってカズヤに訊いてみた。
そして不安そうに訊いた私とは反対に、カズヤは「え、全然。むしろヒトミがイヤになったりしてない?」って言ってくれた。
私は、『このままカズヤと一緒にいて良いんだ』と、思いっきり(そしてこっそりと)喜んだ。
――半年後。
◎月a日 晴れ
今日はカズヤと一緒に、前から気になっていた宇宙センター近くにある『白い石』を調べに行った。
事前に調べたところ、『白い石』には私が聞いた伝承以外にも色々な伝承があって、あることをすると【ジラーチ】というポケモンが現れて願いを叶えてくれるだとか、宇宙から来たポケモン(ロンドという博士はこのポケモンを【デオキシス】と名付けていた)が現れるだとか言われている。
けど実際に調べた結果、特に何もなかった。宇宙センターの人にも話を聞いたが、宇宙飛行士たちの安全を祈願に置いたものらしくて、ホントにただの白い石だったらしい。
期待した結果がなくて少し残念だったけど、『白い石』を調べている途中、ダイゴさんという妙に身なりの良い石マニアの人と会った。ダイゴさんは、ホウエン地方各地を飛び回って『石の研究』をしているらしく、『白い石』を調べていた私たちが気になって声を掛けたらしい。地質学者かと思ったけど本人が「珍しい石が大好きなだけ」って言ってたから、ホントにただの趣味みたい。
オカルト好きの私が言うのもなんだけど、少し変わった人だと思う。
それから私とカズヤは、ダイゴさんといくつかおしゃべりをした。(といっても、私は人と話すのが苦手だから、ほとんどはカズヤが喋ってた)
ダイゴさんは石だけじゃなくてポケモンについてもかなり詳しくて、ホウエン地方にはいないヒトモシのことも知っていた。
別れ際、ダイゴさんはカズヤと私を見て、「君たちはいつかきっと良いトレーナーになるよ」って言ってくれた。
なんでか分からないけど、ダイゴさんのその言葉には、とても説得力があった。
ひょっとしてダイゴさんって…………占い師?
――数日後。
▽月λ日 曇り
今日、カズヤからポケモントレーナーとして旅に出ることを聞いた。
いつ出るのって訊いたら、『あと3ヶ月後には、出ようと思ってる』ってカズヤは答えた。随分と急だと思ったけど、トレーナーになって旅に出ること自体は、ずっと前から考えていて、旅に出る日は昨日決めたみたい。
10歳(成人)になった子がポケモントレーナーとして旅に出るのは、そう珍しくない。でも、私はゴーストポケモンの研究者になりたいから、ポケモントレーナーとして旅に出るつもりはない。それに、パパとママが許してくれるかどうかも分からない。
ということは必然的に、私とカズヤはあと3ヶ月後には離ればなれになってしまう……。
なんでだろう……そう考えた途端、まるで心臓に重りでもついたように胸がモヤモヤした。(ここ最近ずっと胸が重いなぁって思ってたけど、そのことを考え始めた時を境に、もっと強く感じるようになった)
カズヤが旅に出て、カズヤと別れるのは寂しい。でもそれもカズヤがトレーナーとしてホウエン地方を巡る一時だけのはず……。
けどそう考えても、なお胸のモヤモヤは無くなるどころか、時間が進むにつれて大きくなってくる。
なんでだろう……?
まだ3ヶ月先のことなのに……。
カズヤは帰ってくるって解ってるのに……。
一生の別れでもないのに……。
また会えるって解ってるのに……。
……カズヤと離れたくないよぉ。
――数日後。
▽月φ日 曇り
カズヤが旅に出る日まで、あと2ヶ月と少しとなった。
それまでに、何とかしてカズヤとずっと要られるように対策を考えないと……。
▽月ω日 曇り
今日、ヒトモシの火を使った縁結びのおまじないについて書かれた本を見つけた。
まだ詳しく読んでないけど、これならカズヤと離れても、また一緒にいられるようにできるかも。
明日は、このおまじないについて徹底的に調べよう……。
▽月α日 曇りのち晴れ
今日は、とても幸せな一日になった……。
***
「えっと……この後どう書こう、かしら……?」
何年か前から書き始めた日記。その日記の今日のところのページに一言書いて、私のペンを持つ手が止まった。
ここ最近、ずっとカズヤのことで心が暗くなってたけど、今日はその不安が一気になくなって……いや、むしろその不安が幸せに変わったというか……なんというか、こう……。
とりあえず、今日は、とぉーーってもに、幸せな一日だった。
そのことを日記に書こうとするけど、暖かい気持ちに満たされて、うまく言葉が出てこない。
「……えへへへ」
「モシ!」
私が今日の出来事を振り返って言葉を探してると、すぐ隣まで来ていたヒトモシから声をかけられる。
ヒトモシは私の顔を覗くように見上げていた。
「……顔、ニヤけてる?」
「モシモシ」
ヒトモシは顔をおもいっきり縦に振って頷いた。
「うぅ…………えへへ」
恥ずかしくなって顔を戻したのもつかの間、すぐに口元がつり上がる。
私はヒトモシを抱きかかえ、膝の上にのせた。
「カズヤがずっと私と一緒にいたいって言ってくれたの!」
「モシモシ!」
その場にいたからヒトモシも知ってるだろうけど、ヒトモシは『よかったな』って言ってるみたいに頷いてくれた。
「それに一緒に旅に出ようって……!」
「モシ!」
「パパとママも、許してくれたわ……!」
「モシ」
「カズヤはジムに挑戦、私はフィールドワーク。二人でホウエン地方を回るの……!」
「モシモシ?」
「もちろん、あなたも一緒よ……!」
「モシー!」
膝の上にのせたヒトモシは、私の一言一言に楽しげに反応してくれる。
カズヤと違って私にはヒトモシの言葉は分からないけど、ヒトモシも旅に出るのを喜んでるのは理解できた。
「えへへへ」
「モシシシ」
薄暗くした部屋の中で、私はヒトモシと笑う。ひんやりとした部屋の空気とは反対に、私の心はとても暖かい気持ちで満たされていた。
あの時、公園でカズヤと会っていなかったら、私は今こうやって笑っていられたかな……?
フウやランと友達になってたかな……?
ホウエン地方の伝説のポケモンや幻のポケモンについて調べてたかな……?
幽霊が見えるってパパやママ達以外に話してたかな……?
髪型とか洋服とか、オシャレしてみようって思ったかな……?
きっと、どれもやれていなかった、と思う……。
今まで私の心に幸せをくれたのは、全部カズヤのおかげ……。過去に、そのことについて不安を感じたりしたけど、それでもカズヤは「気にすることないよ」って言って、それからもずっと私のそばにいてくれた。
「そういえば、私、勢いでカズヤに抱きついちゃったんだ、よね…………ぁあ、うぅ、顔、あついぃ」
顔が熱い。胸がドキドキする。でも、どこか心地良い……。
この気持ちが何なのか、数日前までは分からなかった。
けど今なら、分かる……。
きっと、これが、『好き』っていう気持ち……。
そう……いま私の心にあるのは、たったひとつの、シンプルな言葉。
『……大好きだよ、カズヤ』
とりあえず、これにて完結とします。
お読みいただき、ありがとうございました。
以下のポケモンの中から、直感で選んでください。
-
ケーシィ
-
ゴース
-
ニャスパー
-
ミミッキュ