エスパー少年とオカルト少女   作:ジョン・N

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2. 船での話

 

 

 

 船は波を立てながら海上を進む。

 港を出発した直後は、船の周りに【キャモメ】や【ペリッパー】がたくさん飛んでいたけど、沖に出たせいか、もうその姿は見なくなった。

 出港してしばらく、俺とヒトミはラルトスとヒトモシと一緒にデッキを散策したり、船の周りにいた【ホエルコ】や【チョンチー】、【ジュゴン】などのポケモン達を眺めたりしていた。

 そして今は船内に入って、客室スペースに設置されたソファーに腰かけている。周りでは他の乗客も、パンフレットを読んだり備え付けの大型テレビを見たりして、のんびりしていた。各乗客の手持ちと思われる【チリーン】や【ルリリ】、【エネコロロ】や【ヘイガニ】、【オオタチ】や【アメタマ】なんかも、その静かな空間に溶け込んでいる。

 

「ラルぅ!」

「ん?」

 

 周りのゆったりした空気を感じながら休んで間もなく、ふと膝の上にいたラルトスが俺の顔を見上げて鳴き声を上げた。

 

『あっちも見てみたい!』

 

 そういって、ラルトスは船内の窓の方を手で示した。はじめての船とあって、まだラルトスは色々と見て回りたいようだ。

 

「あぁ、けどあまり遠くには行くなよ?」

「ラルー!」

「モシモシモー!」

 

 ラルトスの後を追って、ヒトミのヒトモシも『ボクも行くぞー!』と遊びに付いていった。

 好奇心旺盛で、遊び回るのが大好きな二人だが、ちゃんとしているし、いざって時はラルトスの【テレポート】で帰ってこられるから、迷子になることもないだろう。

 

「ムロタウンの港に着いたら、まずポケモンセンターに行って一泊するのよね?」

「うん。混んでなければ、明日にはさっそくジム戦かな」

「いきなりジム戦……大丈夫なの?」

「うん。スクールで何度もバトルについて学んだし、ムロタウンのジムは、かくとうタイプ専門だから、とりあえず負ける気はしないかなぁ」

 

 ラルトスは、エスパータイプとフェアリータイプ。かくとうタイプとは相性が良い。

 初のジム戦とはいえ、他のジムより有利に戦えるだろう。

 

「そっか……その後は、どこ行くの?」

「次は……えーと」

 

 俺はリュックサックの中からホウエン地方の地図を取り出して、目の前に広げた。

 

「とりあえず、トウカシティかな。ジムもあるし、そのままミシロタウンに行くこともできるし……」

 

 ミシロタウンからは、北上して103番道路を通れば、キンセツシティに行ける。トウカシティに戻って、カナズミシティに行くのも良いかもしれない。

 

「んー?」

 

 俺が地図を広げてルートを考えていると、手に持った地図を覗き込むように、隣に座っていたヒトミが体を寄せてきた。

 横を見ると、ヒトミの綺麗な顔があと少しで触れてしまうくらい近くにあった。

 

「……ヒトミ、近い近い」

「えっ!」

 

 ヒトミは驚いた表情でこっちを見た。

 目と目が合い、お互いの距離が近いことを理解すると、ヒトミは顔を真っ赤にさせて、「あっ!」と慌てて顔を離した。

 

「……ご、ごめん!」

「い、いや、別に謝んなくても……」

 

 悪い気はしなかったし……じゃなくて。

 

「と、とりあえず簡単に説明すると……!」

 

 俺はヒトミに見せるように地図の半分側を差し出した。

 

「ここがムロタウン。そしてココとココが、トウカシティとミシロタウン……」

「うん……うん……」

「ムロタウンからトウカシティまでは、ムロタウンの港からトウカシティの近くにある港まで船で渡って、港から歩いてトウカシティに行く。それで……」

「うん……」

 

 お互いの顔の火照りを誤魔化すように、俺はトウカシティ周辺の地図を示しながらミシロタウンまでのルートを説明した。最中、ヒトミはその説明を聞きながら、小さく頷いていた。

 ルートの説明自体はスラスラ言えたけど、俺の一個一個の説明に、可愛く……もとい丁寧に頷くヒトミが気になって、チラチラ見てしまったのは内緒だ。

 

 

 

 

 これからの予定について一通り話し終え、俺達は手持ち無沙汰になった。船の中とあって、特にやることもない。

 

「……ふぁぁ」

 

 ふとヒトミが手元を隠しながら大きなアクビをした。

 

「眠いの?」

「……う、うん。少し」

 

 ヒトミは眠気を払うように片目を指で擦る。もう片方の目は半分閉じており、アクビの涙で潤んでいた。

 

「寝ても良いよ。どうせ夕方までは船の中だし。ヒトモシ達が帰ってきたら、俺が見ておくから」

「……うん。じゃあ、そうさせてもらうわ」

 

 そう言って、ヒトミはソファーに背をあずけて目を閉じた。

 しばらく一人で大型テレビに映った番組を眺めていると、やがて、隣から静かな寝息が聞こえてきた。

 

「……すぅ……すぅ」

 

 目を向けると、案の定、ヒトミが穏やかな表情で眠っていた。

 

「ラル?」

「モっシシー」

 

 ヒトミが眠りについて間もなく、ラルトスとヒトモシが帰って来た。

 ラルトスは俺の隣で寝ているヒトミを見て手を口元に当てて首をかしげ、ヒトモシは『やっぱりなー』となにか納得したように首を振る。

 

『ヒトミ、寝ちゃったの?』

『御主人、今日カズヤっちと旅に出るのがよっぽど楽しみだったみたいで、昨日あんま寝てなかったからなぁ』

 

 またヒトモシが、ヒトミが隠しておいて欲しそうなことを、サラッと暴露する。

 彼のこのクセは、俺も反応に困るので少し控えて欲しい……。

 

「とりあえず、二人とも静かにな?」

「ラルぅ!」

「モシぃ!」

 

 俺の言いつけに、二人は元気に揃って返事をした。

 ホントに分かってるのか?

 

「ラル!」

 

 えっ、なに?

 

「ラぁぁルぅぅ!」

 

 いきなりラルトスが【ねんりき】を使って、ヒトミの身体を動かし始めた。

 一体なにをするつもりだ、と思ったのもつかの間、ラルトスが操るヒトミの身体は、頭をソファーの背もたれから俺の膝の上へ来るように移動した。

 

「えっ、ちょ、ラルトス何してるの?」

『こっちの方がヒトミが寝やすいと思って!』

「それは……まぁ、そうかもしれないけど……!」

 

 そりゃあ、座って寝るよりか横になった方が寝やすいだろうけど、恥ずかしいから勘弁してくれ……。

 俺はラルトスにたしなめようとしたが、百パーセント善意でやっているラルトスと膝の上で寝ているヒトミを見て、自然と口を閉ざしてしまった。

 

「ラールルー!」

「モシシー!」

 

 満足げにやりきった顔をしたラルトスは、またヒトモシと一緒に楽しげに何処かへ遊びに行った。

 

「すぅ……すぅ……ん、えへへ……」

 

 体勢を変えられながらも、ヒトミはそのまま気持ち良さそうに寝息を立てていた。けどふと口が緩み、やがて段々と口元がつり上がりニヤけた顔になった。

 

「笑ってる……楽しい夢でも見てるのかな?」

 

 多分、ゴーストタイプのポケモンの夢でも見てるのだろう。

 【ジュペッタ】でも抱いて、頬擦りでもしてるのかもしれない。あるいは、【ミミッキュ】かな……。

 

「……んー」

 

 ヒトミはスリスリと俺の膝を頬で撫でる。

 

「うぅ……もう、くすぐったいってば」

 

 その後、ヒトミの頭が動くたび、こそばゆい感触が襲う。小声で文句を言ってみたが、当の本人はあどけない顔で静かに眠ったままだった。

 普段は何を考えているか分かりずらい歪んだ表情で笑う彼女だが、こうして見ると、また違った角度で可愛く見える。

 

「えへへぇ……」

 

 幸せそうな顔……ホント、どんな夢を見てるんだろう。

 『マンインドコントロール』を使えば分かっちゃうけど、プライバシー侵害が過ぎる。普通にダメだ。

 

「んん……す、きぃ……」

 

 唐突なヒトミの寝言に、思わずドキッとした。

 

「……むぅ」

 

 いったい何が好きなんだよ。

 オカルト? ゴーストポケモン?

 

「まったくもう……」

 

 ヒトミに心を乱されて、イヤな気はしないが、俺の心は不思議とモヤモヤした。

 ちょっとした仕返しに、俺はヒトミの頭を撫でる。

 くせっ毛な彼女の髪は、ほとんど摩擦を感じないくらいサラサラしていた。

 ヒトミを撫でているうちに、心にできたモヤモヤは少しずつ小さくなっていった。

 

「……ふぁぁ」

 

 ヒトミの頭をやさしく撫でていると、どことない心地よさからか、俺も眠たくなってきた。

 

「…………スー……スー」

 

 しばらくウツラウツラしていたが、気がつけば俺は、頭を下ろして眠りに落ちていた。

 

 

 

 

 

 ーーつづく。

 

 

 

 

 






次回、新キャラ登場!


追記:
前5話にあるアンケートに加え、別のアンケートを設定しました。
ご協力、お願いします。

本作のイチャラブについて、皆さんの感想として当てはまるものを以下から選んで下さい。

  • ベタベタしすぎ。引くわぁ……。
  • 良いぞ、その調子。もっとヤれ!
  • まだ足りない。もっとイチャイチャしろ!
  • 人間は良いから、もっとポケモンを愛でろ!
  • イチャラブよりバトルだ!
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