空軍パイロットのIS転生記   作:Su-57 アクーラ機

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第8話

射出後、エンジンカバーを開き、ノズルを真下に向け、エアインテーク側面にも搭載されたVTOLノズルとPICを併用しながら空中に静止する。

 

「待たせたな」

 

「え、えぇ」

 

セシリアに一声掛けるも、様子がおかしい。

先程からチラチラと俺の後方━━一夏達が観戦している所を見ている。

 

「?」

 

いったい何なのか気になるが、まずは目先の事からだ。

試合開始のカウントが鳴る。

 

『5』

 

セシリアがハっとして、気合いを入れ直す。

 

『4』

 

俺も改めて集中する。

 

『3』

 

お互いの顔に緊張が走る。

 

『2』

 

マスターアーム、オン(安全装置解除)

 

兵装の安全装置を解除する。

 

『1』

 

機銃の持ち手を握り締める。

 

『試合始め!』

 

戦いの火蓋が切って落とされた。

 

始めに態とセシリアに上を取らせる。

予想通り、頭上からはビームの雨霰が降り注ぎ、俺は地面スレスレを飛びながら回避に専念する事にした。

 

 

「ウィル!あいつ何をやってるんだ?あれじゃあ一方的だ!」

 

一夏がそう言う。箒も同じ考えのようで、腕を組んだまま静かに頷いていた。

だが、ジョーンズの説明で二人は考えを改めることになる。

 

「いや、あれは態とだね」

 

「態と?」

 

「ああ。今、高度を上げると攻撃を諸に喰らってしまう。今はあのお嬢さんが上から一方的に攻撃してくるが、その内疲れと当たらないことからのイラつきで、自分から彼を追い回すようになる。そうなれば彼の独壇場だ。へばった所を狙って急所に数発叩き込む算段だろう」

 

まったく、本当に普通の15歳の青年が考えるような戦い方じゃないよ。と付け加えながら、ジョーンズは真剣な表情でメモ帳のようなものに文字を書き込んでいく。

 

「そんなにすごいんですか?」

 

「ああ。彼がまだ軍の基地でISの訓練中に戦闘機や教官のISの後ろを何度取ったことか・・・まぁ、教官には何度か反撃されてたけどね」

 

「軍の基地?何でアイツは軍隊に・・・?」

 

「彼はその存在上、彼自身を守る為に軍の所属と言う事になっているんだ」

 

「やっぱり、男だから・・・?」

 

「その通り」

 

箒の言葉にトレバーは短く答えた。

 

「それにしても、まだ訓練中にそんな腕前だったのか・・・すげぇぜウィル・・・!」

 

 

「最後のチャンスですわ。大人しく敗けを認めれば、許して差し上げてもよくってよ?」

 

無線から、セシリアが俺に降伏を促してくる。

 

「そう言うのは、まず一発でも当ててから言ってくれ」

 

ライフルやビットからのビーム攻撃を回避しながら言い返す。

こっちにだってプライドってもんがあるんだ。

 

「おっと、一機破壊だ」

 

正面に現れたビットを破壊する。

 

「どうした?降伏を促す割には掠りもしないぞ。これだけデカイ的だぜ?」

 

「くぅっ!ちょこまかと・・・!」

 

そろそろ我慢の限界か?

セシリアが高度を下げて、こちらの追撃に入った。

相変わらず後ろからは青いビームがこちらに目掛けて飛んでくる。

 

「っと、危ない」

 

飛んできたビームをバレルロールで回避する。

虚空を突き抜けたビームはアリーナのエネルギーシールドに命中した。

相変わらずビットからの攻撃がうるさい。ここがビルの建ち並ぶ摩天楼ならばもう少しマシだったかもしれんな。

 

「それならこれはどうですか?喰らいなさい!」

 

そんな事を考えていると、今度は誘導ミサイルが飛んで来た。

 

「おおぅ、ミサイルまで持っていたのか・・・」

 

乾いた電子警告音がそれの接近を知らせる。

後少しで命中する。

セシリアはそう思っただろう。

だが━━

 

「チャフ・フレア発射!」

 

ウィリアムのISの後方からオレンジに光る物体が多数射出され、ミサイルは目標をロスト。自爆した。

 

「なっ・・・!?」

 

だが、それだけでは終わらない。

彼は突然、水平飛行から一転して自身の体を90゜真上に傾けたのだ。

セシリアはフレアによるミサイル回避に気を取られ、彼を見失ってしまった。

 

「っ!?」

 

ようやく気付いてハッと振り替えると、そこには獲物を眼中に捉えた“鮫”がいた。

シャークマウスとウィリアム。4つの目に睨まれて思考が停止する。

ロックオン警報が鳴り響き、彼女は思考を無理矢理戻して回避行動に移った。

だが、どんなに動いてもどこに行ってもピッタリと喰らい付いてきて、全く放してくれない。

 

「くっ!いい加減離れなさい!」

 

そう言いながら後ろに向けてライフルのビームによる牽制射撃を行ってくるが、発射速度が遅い分、戦略爆撃機の後方機銃の方が脅威的だ。

いや、爆撃機はビットなんて代物は使ってこないから脅威度は変わらんか。

 

「離れて欲しかったら自力で引き剥がしてみろ。勿論、オーバーシュート狙いで減速した瞬間に蜂の巣になるがな。まあ、減速しなくてもどのみち撃ち落とさせてもらうが・・・」

 

広大なアリーナの中を縦横無尽に飛び続ける二機のIS。

 

「まさかここまで出来るとは・・・!」

 

「この手の事は得意な部類でね。男だって中々やれるもんだろ?・・・女尊男卑の世界の男でもプライドくらいは持ってる。現に一夏はブレード一本だけの戦力差でも果敢に挑んだ。無謀に見えたろ?お前に散々言われた事を見返す為だ」

 

「っ!!」

 

セシリアと会話しながら、ゆっくりと彼女を機銃の射程内に捕捉していくウィリアム。

 

「誰だってそうさ。自分を馬鹿にされてニコニコしていられる奴なんてそうは居ない。それは男女どちらも同じだ」

 

機銃の照準マーカーにブルーティアーズを完全に捕捉し、マーカーが緑から赤色に変色する。

そして

 

「フィナーレだ」

 

ジョーンズの呟きの後。

 

スプラッシュ1(敵機撃破)

 

機銃の掃射音と彼の撃墜コールがアリーナに響いた。

 

 

試合後

 

 

ウィリアムと彼のISがピットに進入してくる。

一夏が何か言っているが、エンジン音で聞こえない。

エンジンを停止してISを解除すると、ようやく声が聞き取れた。

 

「ウィル!お前すげぇよ!あれ何なんだ?」

 

「・・・あれ?」

 

「ほら、あの急減速!」

 

ああ、あれか・・・。

 

「あれはコブラ機動と言ってな、機体を無理矢理垂直にして空気抵抗を増やして減速する機動だ。機体を持ち上げた姿が蛇のコブラみたいだろ?」

 

そんな話をしていると、ジョーンズがやって来る。

 

「ウィリアム君、お疲れ様。君の戦いは目を見張る物だったよ」

 

「ありがとうございます」

 

「じゃあ、データも収集出来たし僕はこれで」

 

そう言って、忙しそうにアリーナを後にする。

それを見送っていると。

興奮冷めやらぬ状態の一夏が「今度、色々と教えてくれよな!」と言って来る。

 

「オーケー、また今度教えてやるよ」

 

と返事をし、俺達もアリーナを後にした。

・・・そう言えば一夏の持ってたあの本、何だ?えらく厚かったが・・・。

 

 

学生寮 セシリアの部屋 シャワー室

 

 

なぜ、こんな気持ちになるのかしら・・・?確かにホーキンスさんには負けた。あれは完全に自分の負けだ。その上、彼に諭されてしまったのだ。自分の考えが愚かであった事を。

そして何より、彼の事が頭から離れない。

ウィリアムの言った通り、圧倒的な戦力差があったにも関わらずブレードを構えて勇敢に突撃して来た、あの男性の事が・・・。

 

「織斑、一夏・・・」

 

彼女の心の中で彼の見方が変わった。

 

 

 

 

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