放課後
今、俺達はアリーナに居る。
「どういう事ですの?これは」
セシリアが不満そうな声を漏らす。
「訓練機の使用許可が降りたのだ。今日からこれで特訓に付き合う」
箒がISの腕の動作確認をしながら答える。
「『打鉄』・・・日本の量産型ですわね。まさかこんなにあっさりと使用許可が降りるなんて・・・」
そして確認を終えた箒が、虚空からIS用のブレードを取り出して構える。
「では一夏。始めるとしよう」
「お、おう」
一夏も構え直す。
「お待ちなさい!一夏さんと特訓するのはこのわたくしでしてよ!」
そう言いながらセシリアがISを展開する。
「さぁ、一夏練習開始だ!」
「お相手しますわ一夏さん!」
「うわぁ!?待て待て、2対1かよ!ウィル、手を貸してくれ!」
「オーケー、ちょっと待ってろ」
俺もISは展開していたので、エンジンを始動させながら一夏の加勢に向かった。
空も大分暗くなってきた頃。
「ハァ、ハァ、ハァ」
一夏は完全にダウン。地面に仰向けになり、肩で息をしている。
正直言うと、俺も結構疲れた。
「今日はこのくらいにしておきましょう」
「お、おう」
「ふん、鍛えてないからそうなるのだ」
「いや、代表候補生と剣道部員が相手じゃこうなるって・・・」
「だからウィリアムが加勢してくれていただろう」
「いや、これは一夏の特訓だからな。俺はここぞという時以外は手は出してないぞ?だが一夏、確かに少しばかりスタミナが心許ないな」
「確かにな・・・俺も鍛えるか」
「では一夏さん、また後程」
そう言いながら、セシリアが去っていく。
「何をしている、早く我々も帰るぞ?」
「あぁ、悪い、先に帰っててくれ。俺はまだ動けない・・・」
「仕方無い奴だな、シャワーは先に使わせてもらうぞ?ではな、一夏、ウィリアム」
そう言って彼女も帰って行った。
「おい、一夏、立てるか?こんな所に何時までも居たら汗が冷えちまう。風邪ひく前に戻るぞ?」
「・・・そうだな。戻るか」
二人で更衣室に向かって歩いていった。
「これからクラス対抗戦までずっとこの調子かよ・・・」
「そう言うなよ一夏。俺も手伝ってやるから・・・」
なんて話をしていると、声が掛かる。
「お疲れ、一夏、ウィル」
鈴がスポーツドリンクを持って入ってきた。
「飲み物はスポーツドリンクで良いよね?はい」
そう言いながら、笑顔で手渡してくる。
「あぁ、サンキュー。いただくよ」
気配りの出来る娘だなぁ。と、染々思う。
「何だ?お前ずっと待っててくれたのか」
「ふふん、まあね」
おっと、これは邪魔しちゃ悪いか?
本能で察する。
「っと、じゃあ俺はこれで。一夏、またな。鈴、スポドリサンキュー」
そう言いながら、俺は更衣室を後にした。
▽
帰りに缶コーヒーを買って自室でゆっくりしていると、一夏の部屋の辺りから声が聞こえてきた。
「騒々しいなぁ、一夏が居るところは何時もこうなのか?」
まぁ、一夏は良い奴だし、退屈もしないし、これ位が丁度良い。
そう思いながら、部屋を出て何事かと見に行く。
「と言う訳だから、部屋変わって?」
「ふざけるな!なぜ私が・・・!」
そこでは、ちょっとした女の闘いが繰り広げられていた。
「いやぁ、篠ノ之さんも、男と同室なんて嫌でしょ?」
「べ、別に嫌とは言っていない。それに、これは私と一夏の問題だ!」
「大丈夫、アタシも幼なじみだから。ねぇ、一夏?」
「お、俺に振るなよ・・・」
箒と鈴が言い合っている隙に一夏に事の成り行きを聞く。
「おい、一夏、どういう状況だ?これ」
「さ、さぁ?俺にも何が何だか・・・」
本人も理解出来ていないのか・・・。
「とにかく、部屋は替わらない。自分の部屋に戻れ!」
「・・・ところでさぁ、一夏?約束覚えてる?」
話を無理やり曲げやがったよこの娘!
「約束?」
「そう!小学校の時の」
「~~~!無視するな!!こうなったら・・・!」
箒が竹刀が立て掛けてある方に向かう。
・・・まさか!
「ストップ!やり過ぎだ!」
「お、おい、箒!馬鹿!」
「はぁぁっ!」
竹刀を振り下ろす。
不味い、間に合わん・・・!
そう思った瞬間、鈴がISを右手だけ展開してそれを防いだ。
「部分展開、早い・・・!」
一夏が驚いて声を漏らす。
危なかった・・・。
「・・・今の、生身の人間なら本気で危ないよ?」
「ッ!?」
鈴に言われて、ようやく我に還る箒。
「ま、良いけどね」
なんとか、落ち着いたようだ。
「そ、そうだ!約束がどうとか言ってたよな?何の話だ?」
一夏が場の空気を戻そうとする。
一夏、ナイスだ。
「あぁ・・・あのさ、えっと・・・覚えてる、よね?」
「えっとぉ、あぁ、あれか?鈴の料理の腕が上がったら毎日酢豚を━━」
「そう、それ!」
鈴の顔がみるみる明るくなってくる。
・・・だが。
「━━━奢ってくれるってやつか?」
「・・・はい?」
「だから、俺に毎日飯をご馳走してくれるって約束だろ?いやぁ、一人暮らしの身にはありがた━━━うわぁ!?え?」
一夏の左頬に鈴の平手打ちが炸裂した。
「最っ低!」
「あの、だな、鈴?」
「女の子との約束をちゃんと覚えて無いなんて!男の風上にも置けない奴!犬に噛まれて死ね!!」
「何で怒ってるんだよ。ちゃんと覚えてただろうが」
「約束の意味が違うのよ意味が!」
意味?どういう事だろうか?俺にもそう聞こえるんだが・・・。何かの言い回しか?
「そこ!意味が分からないみたいな顔しない!」
えぇ・・・俺もとばっちり?
「だから、説明してくれよ。どんな意味があるってんだ!」
「俺も気になるな」
「せ、説明って・・・そんな、出来るわけ無いでしょうが。・・・じゃあ、こうしましょ?来週のクラス対抗戦、勝った方が負けた方に何でも一つ言うことを聞かせられる」
「おぅ、良いぜ。俺が勝ったら説明してもらうからな?」
「そっちこそ、覚悟して置きなさいよ!?」
そう言い残し、帰って行った。
「一夏・・・」
「お?何だ?」
「馬に蹴られて死ねっ」
「え!?」
「一夏、お前やっぱり何かしたんじゃないか?」
「な、何かって何だよ?」
「さぁ?俺にもよく分からんが・・・。まぁいい、俺も帰るよ。スィーユー」
「あぁ、お休み」
自室のベッドに寝転び電気を消す。
・・・それにしても、あれはどういう意味なんだ?
まだまだ、日本文化?に疎いウィリアムであった。