まさかの准将からの突然の頼み事で半日が潰れた次の日
一夏と何気無い話をしながら教室に向かうと、1組が何やら騒がしい。
「おはよう、みんな。何を盛り上がっているんだ?」
「何か面白い話しでもしてるのか?」
「「「!?」」」
「い、いや、何でもないよ?」
「「?」」
なんか誤魔化された気がする・・・。
入り口に突っ立っていると、織斑先生が入ってきた。
「席に着け、HRを始める」
その声を聞いて、俺達は席に着いた。
クラス全員が席に着いたのを見計らって、山田先生が教卓に立ち、HRを始める。
「今日はなんと、転校生を紹介します」
また転校生か?こんな時期に?
すると転校生が教室に入ってきた。
容姿は細身の身体に中性的な顔立ち。
そして何より“男物の制服を着ている”
「“シャルル・デュノア”です。フランスから来ました。皆さん、よろしくお願いします」
笑顔でそう挨拶をするシャルルと名乗る青年。
「お、男・・・?」
「はい、こちらに僕と同じ境遇の方々が居ると聞いて、本国より転入を━━」
「「「「キャーーー!!」」」」
み、耳がぁ・・・!?
「え゛!?」
当の本人であるシャルルも驚いている。
「男子、本物の男子!」
「しかもウチのクラス!」
「美形!守ってあげたくなる系の!」
「地球に生まれて良かった!」
女子生徒達が思い思いに騒ぐ。
そこに織斑先生が一喝する。
「騒ぐな!静かにしろ!」
途端に鎮まる教室。
やはり、この1年1組のボスである彼女の力は絶対なのだ。
「今日は2組と合同でIS実習を行う。各人は着替えて、第二グラウンドに集合。それから、織斑、ホーキンス」
「はい」
「何でしょう?」
「デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子同士だ。解散!」
先生の号令と共に俺も一夏の元に行く。
「君が織斑君とホーキンス君?初めまして、僕は━━」
「あぁ、いいからいいから。とにかく移動が先だ。女子が着替え始めるから」
一夏がシャルルの声を遮るように言う。
「そうだな、続きは更衣室で、だ。行くぞ」
一夏がシャルルの手を掴む。
「!?」
シャルルが顔を赤くした。
「?」
とにかく急ごう。
移動中
「俺達は、アリーナの更衣室で着替えるんだ。実習の度にこれだから、早めに慣れてくれよな」
「ハハッ、まぁ、男が居ることを想定してなかったからな」
一夏の説明に、俺が笑いながらそう継ぎ足す。
「う、うん・・・」
「何だ?そわそわして。トイレか?」
「あぁ、トイレなら、そこを曲がって━━」
「ち、違うよ・・・」
そうシャルルが小さな声で否定する。
その時
「あ!噂の転校生、発見!」
「しかも、織斑君とホーキンス君と一緒!」
しまった、もう見つかったか!
「居た!こっちに居た!」
「者共、出合え出合え!」
「ジェントルマンがこんなに集まるとは、壮観だな」
か、囲まれた・・・!
「手を繋いでる~!」
「織斑君の黒髪やホーキンス君の焦げ茶の髪も良いけど、金髪も良いわね・・・!」
まずいこのままだと遅刻する。
織斑先生の授業に遅刻したら・・・!
「ここは遠回りするしか・・・」
「こっちから行けるぞ!」
「よし、ナイスだウィル。行くぞシャルル!」
「え?う、うん!」
一夏がシャルルの手を引き、俺が殿となって廊下を走る。
「それにしても、何でみんなあんなに騒いでるの?」
「そりゃ、ISを操縦できる男って今のところ俺達しかいないからだろ」
「なに、お前もその内に慣れるさ」
慣れるまでが大変だけど・・・。
「とにかく走れ!」
更衣室
「ハァ、ハァ、ハァ、なんとか振り切れたな」
「あぁ、授業前の準備運動はバッチリだな」
「ごめんね、いきなり迷惑掛けちゃって」
「良いって、それより助かったよ。学園に男二人ってのは辛いからな」
「あぁ、全くだ。あれから少し経ったが未だに慣れないな」
「そ、そうなんだ・・・」
「これからよろしくな?俺は織斑一夏。一夏って呼んでくれ」
「俺はウィリアム・ホーキンス。俺の事もウィルで良い。よろしくな」
「よろしく。一夏、ウィル。僕の事もシャルルで良いよ」
何気無く時計を見る。
「うわ!時間ヤバイな!ウィルもシャルルも直ぐに着替えちまおうぜ!」
「あぁ、遅れたら地獄を見るな」
急いで着替え始める俺達。
「うわぁ!?」
シャルルが顔を真っ赤にして後ろを向いてしまった。
「?早く着替えないと遅れるぞ?うちの担任はそりゃあ、時間にうるさい人で・・・」
横で俺もウンウンと頷く。
「うん・・・着替えるよ。だから、あっち向いてて」
「いやぁ、別に着替えをジロジロ見る気はないけど・・・」
「俺達にそんな野郎趣味は無いよ」
と冗談混じりに言う。
「何でも良いけど、急げよ?」
一夏が振り替えると、既に着替え終えたシャルルが居た。
早い!なんと言うワザマエ!
「な、何かな?」
「着替えるの超早いな・・・!なんかコツでもあんのか?」
「俺達にも教えて欲しいぜ・・・」
「い、いやぁ?何の事かな?アハ、アハハハハハ・・・」
はぐらかされた。
「これ、着るときに裸っていうのが辛いんだよなぁ。引っ掛かって」
「ひ、引っ掛かって・・・?」
顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「あぁ、そう言えばウィルのスーツは他のと違うよな?なんか作業着みたいだ」
俺のスーツはオリーブ色で皆のと比べてピチピチではなく、体の各所のみを締め付けるような構造になっている。
戦闘機パイロットの対Gスーツのような作りだ。
「俺のはISが相殺しきれなかった分のG、つまり加速度を軽減するためだな。これで血管を態と圧迫して、脳の虚血状態を防ぐんだ。着けるのが少し面倒くさいけどな」
だが、俺はこのスーツの方が良い。色んな意味で落ち着く。
あんな格好、恥ずかしくて出来るかっ!
「へぇ・・・。お?シャルルのスーツは着易そうだな?」
「デュノア社製のオリジナルだよ」
「デュノア?」
「もしかして、シャルルはデュノア社の関係者か?」
俺の問いにシャルルが丁寧に答える。
「父が社長を勤めているんだ。一応、フランスで一番大きいISの会社だと思う」
「へぇ、社長の息子なのか。道理でな」
一夏が納得する。
「道理でって?」
「いやぁ、なんつーか気品て言うか、良いところの育ちって感じがするじゃん」
「確かにな、礼儀もしっかりしてるし」
するとシャルルはどこか悲しそうに俯いてしまった。
「「?」」
着替え終えた俺達はグラウンドに出た。