第二グラウンド
1組と2組がきれいに整列している。
「本日から実習を開始する」
「「「はい!」」」
ジャージ姿の織斑先生の声に、生徒達は元気良く返事をする。
やはり、ISの実習は織斑先生が主導で行うようだ。
「まずは、戦闘を実演してもらおう。凰、オルコット」
「「は、はい!」」
呼ばれると思っていなかったのか、少し気の抜けた返事になる二人。
「専用機持ちなら、直ぐに始められるだろう。前に出ろ」
「面倒臭いなぁ、何でアタシが・・・」
「ハァ、なにか、こう言うのは見せ物みたいで気が進みませんわね・・・」
愚痴を溢しながら前に出る。
そこへ織斑先生が近付いて行き、二人に何かを吹き込んだ。
すると、打って変わったように気合いが入る二人。
「やはり、ここはイギリス代表候補生、セシリア・オルコットの出番ですわね!」
「実力の違いを見せる良い機会よね!専用機持ちの」
やる気満々のようだ。
「今、織斑先生、何て言ったの?」
そう一夏に聞くシャルル。
「俺が知るかよ・・・。ウィルなら分かるんじゃないのか?」
「いや悪い、聞こえなかった。何て言ったんだろうな?」
三人で小首を傾げる。
「それでお相手は?鈴さんとの勝負でも構いませんが」
「ふふん、こっちのセリフ!返り討ちよ?」
「慌てるな馬鹿共。対戦相手は━━」
ヒューン と何かが墜ちてくる音。
音のする方に目を凝らすと・・・
「うわぁぁああぁぁ!退いて下さ~い!」
ISを纏った山田先生が落ちて来ていた。
落下地点は・・・一夏!?
「一夏、上だ!ブレイク!ブレイク!」
「へ?うわああ!?」
ズドォン!
軽い振動と共に砂煙がモクモクと上がる。
「一夏ぁ!大丈夫かぁ!?」
友人の無事を祈って、墜落地点を捜索する。
砂煙が晴れ始め、二人の人影がうっすらと見え始めた。
「そこか!?一夏!大丈、夫、か・・・Oh・・・」
そこには、山田先生の胸を鷲掴みにした一夏が倒れていた。
「あ、あの・・・織斑君?」
「う、うん・・・?・・・え!?」
あ~あ。やっちまったよ、こいつ・・・。
「そ、そのですね。困ります、こんな・・・。あ、でもこのまま行けば、織斑先生が義理のお姉さんということで、それはそれでとても魅力的な・・・」
「う、うわぁ!?」
慌てて山田先生から離れる一夏。
次の瞬間、彼の鼻先を二本のビームが掠めた。
「おほほほ。残念です、外してしまいましたわ」
ニコニコ顔(黒)のセシリア。
ガギンッ!と後方で金属音。
音のした方角へと振り返ると、巨大な刃物を繋ぎ合わせ、それを彼目掛けて投げる鈴。
「いぃちかぁ!!」
殺しに掛かってるだろ!
後、少しで一夏に当たる。という寸前で、二発の銃声が聞こえた。
今日は顔をあちこちに振り向かせてばかりだな。と思いながら音の発生源へと首を動かすと、山田先生が腹這いになって銃を構えていた。
彼女があれを狙撃したのだ。それもピンポイントで。
「織斑君?怪我は有りませんか?」
「は、はい・・・。ありがとう、ございます」
騒動はなんとか治まった。
「山田先生は元代表候補だ。今くらいの射撃は造作もない」
マジかよスゲェ。人は見た目に依らないとはこの事だな。
「昔の事ですよ。候補生止まりでしたし・・・」
そう謙遜するがあの腕は本物だ。という事は、彼女のピーク時はもっと凄かった可能性も?
「さて、小娘共。さっさと始めるぞ」
「えぇ?あの、2対1で?」
「いやぁ、流石にそれは・・・」
セシリアと鈴が困惑する。
「安心しろ、今のお前達ならすぐ負ける」
二人がムッとした表情になる。
「では・・・。始め!」
三人は上昇していく。
戦闘が開始される。
先手はセシリアだ、しかし攻撃はいとも容易く回避される。
鈴が衝撃砲を発射するも難無く回避。
攻撃が全く当たっていない。
「凄い機動だな・・・」
思わず感嘆の声が漏れる。
「デュノア、山田先生が使っているISの説明をしてみせろ」
「は、はい」
そう言うと、シャルルが説明を始める。
「山田先生のISは、デュノア社製、『ラファール・リヴァイヴ』です。第二世代開発時の機体ですが、そのスペックは初期第三世代にも劣らないものです。現在配備されている量産ISの中では、最後発でありながら世界第三位のシェアを持ち、装備によって、格闘、射撃、防御の切り替えが可能です」
シャルルの説明が終ると同時に、上空で爆発。二人が悲鳴と共に墜ちてきた。
どうやら終わったようだ。
「うぅ・・・。まさか、このわたくしが・・・」
「アンタねぇ、なに面白い様に回避先詠まれてるのよ!」
「鈴さんこそ、無駄にバカスカと撃ちすぎですわ!」
「これで、諸君も教員の実力が理解出来ただろう。以後は敬意を持って接するように。次はグループに別れて実習を行ってもらう。リーダーは専用機持ちがやること。では、別れろ」
案の定、生徒達は一夏、俺、シャルルに特に集中した。
「織斑君、一緒に頑張ろう!」
「ホーキンス君のISってどんなの?て言うか変わったスーツだね」
「デュノア君の操縦技術を見たいなぁ」
「勝手にあちこち触っちゃ駄目よ。怪我しても知らないからね?」
「まずは、順番に装着してみて下さいな」
鈴とセシリアのグループも順調の様だ。
一方一夏のグループはと言うと━━
「それじゃあ、出席番号順にISの装着と起動、歩行までやろう。一番目は・・・」
「はいはいは~い!出席番号一番、“相川清香”ハンドボール部、趣味はスポーツ観戦とジョギングだよ。よろしくお願いします!」
そう言って、右手を差し出す。
「・・・はぁ?」
一夏はついて行けてない様子だ。
「ああ!ズルい!」
「私も!」
「私も!」
「「「第一印象から決めてました!」」」
三人から右手を差し出されている。
「「「お願いします!」」」
向こうでは、シャルルが七人から手を差し出されていた。
「ワッツ・・・?」
「「「ホーキンス君!」」」
あぁ、こっちもか・・・。
「あ、あぁ、え~っと?」
ヤバいどうすれば良いんだ!?
困惑する俺達を他所に、一夏の班は既にIS操縦まで進んでいた。
「そうそう、上手い上手い。よし、止まってみて。オッケー、じゃあ次の人に交代だ」
「ふぅ、緊張したぁ」
そう言って、ISから降りる清香。
「次は誰?」
「私だ」
そう言って箒が前に出る。
「しかし、これではコクピットに届かないのだが・・・」
「あ」
「ああ、最初の内よくする失敗ですね。織斑君、乗せてあげて下さい」
そう言いながら、山田先生が歩いて行く。
「な、なに!?」
「織斑君、白式を出して下さい」
「は、はぁ」
一夏が白式を展開する。
「そ、それで私をどうする気だ?」
「勿論、運んでもらうんですよ?コクピットまで」
「「「ええええええ!?」」」
何でそこまで驚くんだ?運ぶだけだろ?
「は、運ぶ、のか?私を」
「しょうがないなぁ」
そう言いながら、箒の元に向かう。
ん?待てよ?運ぶ・・・どうやって?
まさか・・・!
「ずり落ちないように気を付けろ」
何の躊躇いもなく、一夏が箒をお姫様抱っこした。
「乗り方は分かるな?じゃ、起動と歩行までやって交代する」
箒は顔が完全に弛んでしまっている。
「・・・ハッ!?い、一夏!」
「ん?何だ?」
「その、だな、今日の昼は予定が有ったりするのか?」
「いやぁ、特には」
「そうか!では、たまには食事を一緒に取ろう!うん、それが良い」
「あぁ、別に良いぜ」
嬉しそうにする箒。
端から見れば、微笑ましい光景だ。
・・・一夏を見つめる女子の視線+こちらを見てくるギラギラした視線が無ければ。
「デュノアく~ん」
「ホーキンスく~ん」
ハァ、ISを展開するか・・・。て言うか、シャークマウスが描かれたISが少女を姫様抱っことかシュール過ぎるだろ・・・。
この後、色々有ったがなんとか無事に終わることが出来た。