翌日 1組 HRにて
「えぇっと・・・き、今日も嬉しいお知らせが有ります。また一人、クラスにお友達が出来ました」
山田先生が教卓に登り、そう周知する。
また転校生?最近多いな。
「ドイツから来た“ラウラ・ボーデヴィッヒ”さんです」
そう言って、彼女の左側に立つ少女を紹介する。
見た目は小柄だが、整った容姿に銀髪。
そして何より目を引くのは、彼女の左目を覆う黒い眼帯だ。
眼帯を除けばどこにでも居そうな少女だが、彼女が纏うオーラ(雰囲気と言うべきか?)は感じた事がある。
軍人のソレだ。
「どういうこと?」
「二日連続で転校生だなんて・・・」
「いくら何でも変じゃない?」
生徒達がざわめき始める。
「皆さん、お静かに!まだ自己紹介が終わっていませんから」
「挨拶をしろ、ラウラ」
山田先生が一喝、そして織斑先生がラウラに挨拶をするよう促す。
「はい、教官」
教官?織斑先生と顔見知りの様だが・・・。
すると、ラウラは踵を合わせて一言
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
まさか、あの娘も緊張して言葉が出ないクチか?
「・・・あ、あのぉ、以上、ですか?」
「以上だ。っ!貴様が・・・!」
「え?」
一夏と目が合った瞬間、彼女は早足で彼の元に向かい、腕を振り上げる。
一体何を・・・っ!?まずい!あれは一夏を引っぱたくつもりだっ!
一夏もハッと遅れて気付く。
止めに行こうとするも、ここからでは距離があって対処が出来ない。
そして━━
「馬鹿な真似は止めておけ」
言っちまったよ・・・。
咄嗟の判断が鈍るとは、俺もまだまだだな。
少しの間、現実逃避に走る。
「・・・ウィル?」
「何だ貴様は?」
冷たい目を細めてこちらを睨んでくる。
ほらぁ、こうなる。・・・シット!もう言い切るしかないか!
「その手をどうする気なのかは見れば分かる。一夏をはたくつもりなんだろ?だから止めろと言ったんだ」
彼女の眉がピクリと動いた。
・・・図星か。
「貴様には関係無いことだ、引っ込んでいろ」
「ハッ、悪いがいきなり友人を叩こうとしているのを「はいそうですか」で見過ごす程、腐っちゃいないんでね。それとも何か?ドイツじゃそれが挨拶なのか?だとしたら素直に謝ろう。生憎、国際知識には疎い方でね」
い、言ってやった・・・!言ってやったぞ!ついでに鼻で嗤った上に思い切り煽っちまったよ・・・。父さん、母さん、トーマスおじさん・・・ごめん。俺ここで死ぬかも・・・。
ウィリアムとラウラが睨み合う。
「ふん、まあ貴様の事などどうでも良い。・・・だが、織斑一夏。私は認めない。貴様があの人の弟などと、認めるものかっ!」
そう言って自身の席に座る。
そのまま非常に剣呑な雰囲気を孕んだ状態で午前の授業が始まった。
これが、俺と彼女のファーストコンタクトならぬ、ワーストコンタクトであった。
だが、まさかこれがあんな事になるとは・・・。
今のウィリアムには、到底分からない事であった。