ラウラとの騒動の後
「一夏・・・!」
「あの方とあなたの間に何が有りましたの!?」
箒とセシリアが一夏を問い詰める。
だが、彼は険しい顔のまま黙ったままだ。
余程の事が無い限り、あそこまで彼に好戦的にはならないだろう。
一体、過去に何が?
更衣室でも俺達は無言のままだ。
そこへシャルルが話し掛けてくる。
「一夏、大丈夫?」
「?あぁ、さっきは助かったよ、サンキューな、シャルル」
「あぁ、あれは本気で一夏が危なかった。ナイスガードだったよ、シャルル」
あんなのが直撃したら、流石に笑えない。
「じゃあ、僕は先に部屋に戻ってるね?」
ISスーツの上から制服を羽織ったシャルルがそう言って帰る支度をする。
「え?ここでシャワー浴びて行かないのか?お前いつもそうだよな」
「まぁ待てよ、一夏。あれだよ自分の部屋じゃないと落ち着かない事って有るだろ?」
俺が弁護するも一夏は聞く耳を持たない。
「それでも何か俺達を避けてるように見えるぜ?何で俺達と着替えるの嫌がるんだよ」
「べ、別に、そんな事無いと思うけど・・・」
シャルルが慌てながら否定する。
「そんな事あるだろ、たまには一緒に着替えようぜ?そう、つれない事言うなって」
そう言いながら、逃げようとするシャルルの手を掴み肩を抱き寄せる一夏。
すると、シャルルが顔を真っ赤にしながら、悲鳴と共に走り去ってしまった。
「シャルル?・・・何だ?」
「一夏、男同士でも一人で着替えたい奴も居るだろ?」
「え?そうなのか?」
こいつ分かってないな、まったく・・・。
着替えを終えて寮に戻る途中。
一夏は何かを考えているようだ。
恐らく、ボーデヴィッヒの事だろう。
俺が彼に声を掛けようとした時、別の声に遮られた。
「答えて下さい、教官!」
この声は、ボーデヴィッヒか?教官・・・つまり、織斑先生も居るのか?
俺と一夏は無意識に近くの木陰に隠れる。
「何故、こんな所で!」
「何度も言わせるな、私には私の役目が有る。それだけだ」
「こんな極東の地で、何の役目が有ると言うのですか!お願いです、教官。我がドイツに戻り、再びご指導を!ここではあなたの能力は半分も活かされません!」
「・・・ほう?」
「大体、この学園の生徒は教官が教えるに値しません!危機感に疎く、ISをファッションか何かと勘違いしている。その様な者共に教官が時間を割かれるなど━━」
「そこまでにしておけよ。小娘」
織斑先生が語気を強めて遮った。
「っ!?」
「少し見ない間に偉くなったな。15歳でもう選ばれた人間気取りとは、畏れ入る」
「わ、私は・・・!」
「寮に戻れ、私は忙しい」
「!・・・くっ!」
そのまま、ラウラは走り去ってしまった。
「・・・そこの男子二人、盗み聞きか?異常性癖は感心しないぞ?」
「し、失礼な、自分にそんな性癖は有りませんよ!」
「そうだよ、何でそうなるんだよ、千冬n「学校では、織斑先生と呼べ」は、はい・・・」
「下らん事をしている暇が有ったら実施訓練でもしていろ。このままでは月末のトーナメントで初戦敗退だぞ?」
「分かってるよ」
「はい、問題有りません」
「そうか・・・。なら良い」
そのまま立ち去ろうとする織斑先生。
「ま、待ってくれ!」
それを一夏が制止した。
「さっきの、ラウラって奴が言ってた事・・・千冬姉の弟とは認めないって・・・あれってやっぱり、俺のせいで千冬姉が、二度目の優勝を逃した事「終わった事だ」」
一夏の言葉は、織斑先生に遮られる。
「お前が気に病む必要は無い。ではな」
今度こそ、彼女は去って行った。
後で、さっきの話しの意味を一夏に教えてもらった。
織斑先生が現役の操縦者だった頃、第二回モンド・グロッソISの世界大会。その決勝戦の日、一夏は何者かの手によって誘拐、監禁されたらしい。
目的は不明だ。
だが、それを助けたのが決勝戦を放り出して駆けつけた織斑先生らしい。
決勝戦は彼女の不戦敗。誰もが二連覇を確信してただけに、決勝戦放棄は大きな騒ぎを呼んだそうだ。
そして、彼の監禁場所に関する情報を提供したドイツ軍に借りを返すために、一年程ドイツ軍IS部隊の教官を勤めたらしい。
成る程な、これで辻褄が合った。
▽
アリーナ
ラウラ・ボーデヴィッヒは一人、佇んでいた。
教官の顔に泥を塗った張本人、織斑一夏。そして、私の邪魔ばかりする目障りな男、ウィリアム・ホーキンス。
彼女が自身の左目を覆う眼帯を外す。
露になった左目は、赤い右目と違い、金色に輝いている。
「排除する、どのような手段を使ってでも・・・!」