『で、電池切れだ・・・』
『・・・切れたらさっさと入れ換えろ、間抜けぇ』
『ト、トラックの中に・・・予備の電池が・・・』
一夏と別れて自室に戻った俺は、まだ飯まで時間が有ったので、端末でお気に入りの映画を見ていた。
すると、ドアがノックされる。
「はいはい、何か?」
ドアを開けると、一夏が真剣な表情で立っていた。
「?一夏か、どうした?」
「ウィル、ちょっと俺の部屋まで来てくれないか?」
特に用事も無いので了承する。
一夏の奴、どうしたんだ?
彼の部屋に入ると、ジャージ姿のシャルルが居た。
だが、様子がおかしい。その、何て言うか・・・胸の辺りが何時もより膨らんでいる様に見えるんだが・・・。
無言で椅子に座る。
「・・・それで?何か遭ったのか?」
敢えて、この質問をする。
すると、シャルルの肩がビクッと跳ねた。
「そうだな、先ずはウィルにも説明するか。シャルル、良いか?」
「う、うん・・・」
シャルルの了承を得たので、一夏が俺に説明する。
なんでも、一夏が偶然彼女のシャワーシーンを覗いてしまったらしい。
一夏・・・お前何やってんの?
「・・・成る程、事の発端は分かった」
「で?何で男のふりなんかしてたんだ?」
一夏が彼女に問う。
「実家から、そうしろって言われて・・・」
「お前の実家って言うと、デュノア社の?」
「そう、僕の父がそこの社長、その人から直接の命令でね」
「え?」
「僕はね・・・父の本妻の子じゃ無いんだよ・・・」
「「っ!?」」
本妻の子じゃ無い・・・つまり、愛人か。
「父とは、ずっと別々に暮らしてたんだけど、二年前に引き取られたんだ。お母さんが亡くなった時、デュノアの家の人が迎えに来てね、それで色々検査を受ける過程でIS適性が高い事が分かって、非公式ではあったけど、テストパイロットをやることになってね。でも、父に会ったのはたったの二回だけ、話をした時間は、一時間にも満たないかな」
「そんな事が・・・」
「その後の事だよ、経営危機に陥ったんだ」
「え?だってデュノア社って量産機のISシェアが世界第三位だろ?」
「そうだけど、結局リヴァイヴは第二世代型なんだよ、現在ISの開発は第三世代型が主流になってるんだ、セシリアさんやラウラさんが転入して来たのも、そのデータを取る為だと思う。あそこも第三世代の開発に着手しているんだけども、中々形にならなくて・・・。このままだと、開発許可が剥奪されてしまうんだ」
「それと、お前が男のふりしてるのと、どう関係が有るんだ?」
「あぁ、そんな事して一体何の特が・・・っ!」
「そう、今ウィルが思い付いたことで合ってると思う。簡単な話だよ、注目を浴びる為の広告と、それに、同じ男子なら日本とアメリカに出現した特異ケースと接しやすい。その使用機体と本人のデータも取れるかもってね。・・・そう、君達のデータを盗んで来いって言われているんだ。僕はあの人にね」
そう自嘲気味に話すシャルル。
「・・・本当の事言ったら、気が楽になったよ、聞いてくれてありがとう。それと、騙していてごめん」
こんな酷い話が現実にあるとはな・・・。
彼女は本当に反省している様だが、何とかしてやれないだろうか・・・?
俺と一夏は顔を見合せ、頷く。
そして、一夏が口を開いた。
「・・・良いのか?それで」
「え?」
「お前はそのままの人生で終わって良いのか?って事だよ」
理解が追い付かない彼女に俺が補足する。
「それで良いのか?・・・良い筈無いだろう!」
そう言って彼女の肩を優しく掴む一夏。
「え、一夏?」
「親が居なけりゃ子は産まれない。そりゃそうだろうよ。でも、だからって、そんな馬鹿な事が・・・!」
「一夏・・・」
「俺と千冬姉も、両親に捨てられたから・・・」
「・・・あぁ、俺も捨て子だ」
過去を暴露する。
まともな記憶は二人に拾われてからだが、俺だって木の股から生まれて来た訳でも、SFみたく光の粒子から出来た訳でも無いだろう。
「一夏、ウィル・・・」
「俺の事は良い。今更会いたいとも思わない」
「そうだな俺もだ。育ててくれた親が俺の大切な家族だ」
「・・・それで、これからどうするんだ?」
「どうするって・・・女だって事がばれたから、きっと本国に呼び戻されるだろうね・・・。後の事は分からない。良くて牢屋行きかな?」
諦めた様な顔でシャルルはそう言う。
「だったらここに居ろ!」
「・・・え?」
「俺達が黙っていれば、それで済む」
「でも、そんな事してもいずれは・・・」
「っ・・・」
シャルルの一言で一夏は黙ってしまう。
ネガティブだなぁ・・・。まぁ、この状況じゃ仕方無いか?
でもどうやって・・・ああ、そうだ!
「おい一夏。一つ大事な物を忘れてないか?」
ニヤリとした顔でそう言いながら、本を捲る仕草をして見せる。
「!」
気付いた様だ。察しが良くて助かる。
「そうだよ!もし、仮にお前の親父や会社にばれても、お前には手出し出来ない筈だ」
そう言って引き出しから一冊の本をだす。
「IS学園特記事項。本学園の生徒はその在学中において、ありとあらゆる国家、組織、団体に帰属しない。つまりこの学園に居れば、少なくとも三年間は大丈夫って事だ。その間に何か方法を考えれば良い」
「あぁ、時間はたっぷりと有るんだ。解決方法なんて直ぐに見つかるさ」
「よく覚えてたね、特記事項って五十五個も有るのに」
少しずつシャルルの顔に笑顔が戻りつつある。
「こう見えても勤勉なんだよ、俺は」
ドヤ顔で決める一夏。
「おいおい、さっきまで特記事項の存在すら忘れてた奴のセリフか?それは」
「ちょっ!?ウィル、今は言うなよ!」
二人で軽口を叩き合う。
「ふふっ」
やっとシャルルが笑った。
「一夏、ウィル。庇ってくれて、ありがとう」
「い、いやぁ」
「気にするな、友達だろ?」
真っ向からそう言われると正直照れるな・・・。
しかし一夏が思いもよらぬ発言をする。
「む、胸、胸が見えそうだって・・・!」
彼の言葉に不覚にも反応してしまった俺は、一夏と共にある一転に集中してしまいそうになり、慌てて目を反らす。
「え?あぁ・・・!」
やっと意味に気付き胸を隠す。
「そ、そんなに気になる?」
「あ、当たり前だろ!」
「煩悩退散、煩悩退散・・・!」
日本ではこの言葉を言うと、邪な感情を抑える事が出来るらしい。前に友人が言っていた。
「ひょっとして、見たいの?」
「「なっ!?」」
し、しまった、集中が途切れた・・・!
「二人のエッチ」
「違うって、何でそうなるんだよ!」
「待て、シャルル。一夏は知らんが俺は違うぞ?違うからな!?」
「ウィル!?お前何言ってるんだよ!」
全力で否定する。
その時、部屋のドアがノックされた。
「一夏さ~ん、いらっしゃいますか?夕食をまだ摂られていないようですが、お身体でも悪いのですか?」
急いでシャルルをベッドに隠す。
声の主はセシリアか、一夏を心配して見に来た様だな。
「一夏さん?入りますわよ?」
そう言って返事する前に入って来た。
「あら?ウィリアムさんも、何をしていますの?」
「いや、シャルルが何だか風邪っぽいって言うから。布団を掛けてやってたんだ、ア、アハ、アハハハハ」
「ご、ゴホッゴホッ」
「そ、そうだ、それで俺も心配で見に来たんだよ~」
なんとか誤魔化しを入れる俺達。
「それはお気の毒ですわね・・・。一夏さんをお連れしてもよろしいですか?」
セシリアが心配そうに尋ねる。
「ご、ゴホッゴホッどうぞ」
「わたくしも偶然、夕食がまだなんですの。ご一緒しませんこと?」
モジモジしながら一夏を誘うセシリア。
「お、おう」
「あ、そうだ、俺も飯食ってなかったな」
「ゴホッゴホッ、ごゆっくり・・・」
「さぁ、参りましょう!」
「あ、ああ。って、おい!」
そう言ってセシリアは一夏を強引に連れていき、その後をウィリアムが追って行くのだった。。
因みに余談だが、三人で夕食に向かう途中に箒と遭遇、軽く修羅場った後、一夏の不用意な発言で彼自身が物理的に痛い目に遭うのを、ウィリアムが同情と少しの羨みの籠った顔で眺めていた事。
もう一つは夕食から帰った一夏にシャルルが、はい、あーん を所望したらしい。
あの三人に知られたら、一夏はどうなることやら・・・。