翌日
一夏、シャルルと共に1組に入室する。
教室では、数人の女子が固まって何やらコソコソと話をしていた。
「おはよう」
一夏が声を掛けると、目に見えてビクリとする女子達。
「ん?そんなに集まってどうしたんだ?」
俺の問いに、合わせてシャルルも質問をする。
「何の話してるの?」
しかし、女子達は散々狼狽した後、質問に答えずに悲鳴を上げながら走り去ってしまった。
「じゃあ、アタシ自分のクラスに戻るから」
「そうですわね。わたくしも席に着きませんと・・・」
鈴とセシリアもそそくさと去ってしまう。
・・・怪しい。
「ん?何なんだ?」
「さぁ?」
「さぁな、俺もさっぱりだ」
疑問を残したまま、朝のHRの用意を始めた。
▽
放課後、鈴は特訓の為にアリーナに来ていた。
「あら?」
横から聞き慣れた声が掛かる。
「ん?早いのね」
「てっきり、わたくしが一番乗りだと思っていましたのに」
ISスーツを身に纏ったセシリアだ。
「アタシはこれから学園別トーナメント優勝に向けて特訓するんだけど?」
「わたくしも全く同じですわ」
二人が睨み合う。
「この際、どっちが上かハッキリさせておくのも良いわね」
「よろしくってよ?どちらがより強く、優雅であるか、この場で決着を着けて差し上げますわ」
「勿論、アタシが上なのは分かりきってる事だけど」
「ふふっ、弱い犬程よく吠えると言うけど、本当ですわね」
「どういう意味よ?」
「自分が上だって、態々大きく見せようとしている所なんか典型的ですわよ」
「その言葉、そっくりそのまま返してあげる!」
その言葉を皮切りに、二人がISを展開。両者がぶつかり合う瞬間、何者かの砲撃によって妨害された。
「「っ!?」」
妨害した張本人は、ラウラだ。
冷たい笑みを浮かべながら、こちらを見下ろしている。
「ドイツ第三世代、シュヴァルツェア・レーゲン・・・!」
「ラウラ・ボーデヴィッヒ・・・!」
「どういうつもり!?いきなりぶっ放すなんて、良い度胸してるじゃない!」
「・・・中国の甲龍にイギリスのブルー・ティアーズか。ふっ、データで見た方がまだ強そうだったが」
構わず二人を挑発する。
「何?やるの?態々ドイツくんだりからやって来てボコられたいなんて、大したマゾっぷりね。それともジャガイモ農場じゃ、そういうのが流行ってるの?」
「あらあら、鈴さん。そちらの方はどうも共通言語をお持ちで無い様ですから、あまり苛めるのは可哀想ですわよ?」
二人も、ラウラの挑発に挑発で返す。
「貴様達のような者が私と同じ、第三世代の専用機持ちとはな。数くらいしか能の無い国と、古いだけが取り柄の国は、余程人材不足と見える」
二人の挑発をものともせず、更に煽るラウラ。
「っ!この人、スクラップがお望みみたいよっ!!」
「そのようですわね・・・!」
「ふん、二人掛かりで来たらどうだ?下らん種馬を取り合うような雌ごときにこの私が負けるものか」
「今、何て言った!?アタシの耳には、どうぞ好きなだけ殴って下さいって聞こえたけど!?」
「この場に居ない人間まで侮辱するなんて、その軽口、二度と叩けぬ様にして差し上げますわ!」
どうやら、二人は完全にキレてしまったようだ。
「とっとと来い」
そう言いながら、手を自身の方に向けて挑発のポーズをとる。
「「っ!!」」
ラウラの一言を皮切りに、二人が彼女に殺到した。
▽
「一夏、ウィル、今日も特訓するよね?」
「おう、トーナメントまで日が無いからな」
「限り有る時間は有効活用しないとな」
三人で何気無い会話をしながら廊下を歩いて行く。
行き先は勿論アリーナだ。
「第三アリーナで代表候補生三人が模擬戦やってるって!」
数人の女子がアリーナに向かって走って行った。
「「「えっ?」」」
俺達も第三アリーナへ急行し、そこに箒も合流した。
「ん?箒」
一夏が彼女に気付き、声を掛けたその刹那
「「きゃあああ!!?」」
物凄い爆発音と共に、聞き慣れた二人の悲鳴が聞こえた。
「っ!凰さんとオルコットさんだ!」
「ラウラ・ボーデヴィッヒも!」
どうやら、鈴、オルコット対ラウラで模擬戦をしていた様だ。
だが、二人が満身創痍なのに対し、ラウラは無傷。
「・・・何してるんだ、あいつら」
一夏が異変に気付く。
「あぁ、何か様子がおかしい。・・・ん?」
鈴が衝撃砲をハイパワーで発射する。
しかし、発射された砲弾は
「なっ!?あ、あれを止めた!?」
「あいつ、何をしたんだ!?」
「AICだ・・・!」
一夏と俺の驚愕の声に対し、シャルルがそう呟く。
「そうか、あれを装備していたから龍咆を避けようともしなかったのか!」
箒が納得する。
「AIC?何だそれ?」
「ああ、俺にも分かるように説明してくれ」
「シュヴァルツェア・レーゲンの第三世代型兵器、
「慣性停止能力とも言う」
シャルルの説明を箒が補足する。
「ふーん」
「」
ま、待て、慣性停止だと!?エスパーかよ!
て言うか一夏!お前絶対分かってないだろ!
「マジかよ・・・」
思わず声が漏れる。もはや科学の領域では無いような気がした。
「一夏、分かっているのか?」
箒も同じ意見の様だ。
「・・・今見た。それで十分だ」
戦いは尚も続く。
今度はラウラからの攻撃だ。
彼女のISからワイヤーの様な者が伸び、鈴を捕らえる。
そのままセシリアの攻撃をヒラリと回避しながら、鈴を振り回してセシリアにぶち当てた。
二人が墜落し、それを更に追撃するラウラ。
しかし、セシリアからの至近距離からのミサイルが爆発、二人はなんとかそこを離れることが出来た。
爆煙が晴れて行く。
だが、そこにはラウラが涼しい顔をして佇んでいた。
また、彼女のISからワイヤーが伸びて行き、今度は鈴とセシリアの首に直接絡み付く。
「おいおい、やりすぎだ・・・!」
そのまま二人を引き寄せ、思う存分殴る蹴るを繰り返し始めた。
もはや、一方的な暴力以外の何でもない。
「酷い、あれじゃシールドエネルギーが持たないよ!」
「もしダメージが蓄積し、ISが強制解除されたら二人の命に関わるぞ!」
ガンッ!
何か鈍い音がするのでその方向を見る。
「止めろ、ラウラ!やめろぉ!」
一夏が観客席のバリアを叩きながら叫ぶ。
ラウラの表情を見ると、優越感に浸った顔をしていた。
「あいつ・・・!」
「野郎・・・!」
一夏と共に数歩下がり、ISを展開。
「やむを得ん・・・二人共、少し下がってろ!」
そのまま、観客席のバリアを粉砕し、競技場に乱入した。