ラウラに止めの一撃を放った後。
「ふぅ、やったか?」
少しやり過ぎたな・・・大丈夫か?
「ウィル!大丈夫か?」
「あぁ、なんとかな・・・。流石にあれだけ喰らったんだ。大丈夫だと思うが、試合終了の合図まで気を抜くなよ?」
「分かってるさ」
▽
私は、負けられない・・・!負けるわけにはいかない・・・!
ラウラは忌々しい過去を思い出す。
『遺伝子強化体C-0037、君の新たな識別記号は“ラウラ・ボーデヴィッヒ”』
私はただ、戦いの為に造られ、生まれ、育てられ、鍛えられた。
私は優秀だった。
最高レベルを維持し続けた。
しかしそれは世界最強の兵器、ISの出現までだった。
直ちに私にも、適合性向上の為に、肉眼へのナノマシンの移植手術が行われた。
しかし、私の身体は適応しきれず、その結果、出来損ないの烙印を押された。
そんなとき、あの人に出会った。
彼女は極めて有能な教官だった。
私はIS専門の部隊で、再び最強の座に君臨した。
『どうして、そこまで強いのですか?どうすれば強くなれますか?』
『私には弟が居る』
微笑みながら彼女は答える。
『っ!!』
・・・違う。
どうして、そんなに優しい顔をするのですか?
私が憧れるあなたは、強く、凛々しく、堂々としているのに・・・!
ラウラの胸にドス黒い感情が芽生え始める。
・・・だから、許せない、教官をそんなに風に変える男を!そして私の邪魔ばかりする、目障りなあの男も・・・!!
・・・力が、欲しい。
『願うか?汝、より強い力を欲するか?』
寄越せ、力を、比類なき最強を!!
Damage Level・・・・・・D.
Mind Condition・・・・・・Uplift.
Certification・・・・・・Clear.
《Valkyrie Trace System》・・・・・・boot.
▽
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「「!?」」
突如ラウラの叫び声がアリーナに響いた。
彼女のISからはスパークが発生し、みるみる形状が変化していく。
「な、何だ!?」
あまりに突然の事態に一夏が慌てる。
「俺が知るかよ!って、おいおいおい・・・!何なんだあれは!?」
そう言いながら、俺も思わず後退りしてしまう。
ラウラのISはまるで意思を持った液体の様に蠢き、肥大化して行き、もがき苦しむ彼女をも呑み込んでしまった。
「っ!!」
彼女が呑み込まれる寸前、俺と目が合った。その目は酷く寂しそうと言うべきか・・・言葉では言い表せないものだった。
ソレは段々と巨大な人の形へと成りはじめる。
アリーナの警報が鳴り始める。
『非常事態発生!全試合は中止、状況はレベルDと認定。制圧の為、教師部隊を送り込む!』
観客席と特等席のシャッターが閉鎖する。
「あの剣・・・?千冬姉と同じじゃないか・・・!」
一夏がそう呟く。
「おい、何を言っているんだ?」
俺は箒をISから降ろしながら一夏に聞く。
だが一夏は、「俺がやる」
そう言ってブレードを構える。
「おい、待て!一人で言ったら━━」
言葉を続ける間は無かった。
奴がとんでもない早さで一夏に斬りかかったのだ。
「がっ・・・!?」
対処しきれず、ブレード落としてしまった。
だが、そんな事相手はお構い無しに巨大なブレードを振り下ろした。
「ぐぁっ!」
一夏は吹き飛ばされた。
腕に諸に命中したのか、血が出ている。
ISの装甲に救われたようだ。
一夏は怒りと悔しさの入り交じった顔で敵を睨む。
「この野郎ぉぉ!!」
あの馬鹿っ、生身で・・・!
止めようとした時、箒が彼の腕を掴んで引き留めた。
「馬鹿者!何をしている、死ぬ気か!?」
「生身で突っ込むなんて、正気の沙汰じゃねぇぞ!?」
それでも彼は振りほどこうとする。
「離せっ!あいつ、ふざけやがって!ぶっ飛ばしてやる!!」
一夏は完全に頭に血が昇ってしまっていた。
「離せっ、箒!邪魔するなら━━━」
「ぶっ飛ばされるのは、お前だ!」
「ぐっ!」
一夏は俺に殴られ、目を白黒させている。
俺は一夏の胸ぐらを掴み、怒鳴った。
「いい加減にしろ!何がお前をそこまで怒らせたかは知らんが、作戦は!?勝算は!?それでお前が死んだらどうする気だ!?」
「っ・・・・・」
どうやら、少しだけ冷静になったようだ。
「・・・あの技は、千冬姉だけの技なんだ・・・!」
「今のお前に何が出来る?白式のエネルギーも残っていない状況でどう戦う!?」
箒が一夏を説得する。
・・・教師部隊が到着したようだ。
「見ろ、お前がやらなくても、状況は収拾される」
「・・・違うぜ箒、全然違う。俺がやらなきゃいけないんじゃない、これは俺がやりたいからやるんだ!」
「っ!ではどうすると言うのだ!」
箒が一夏の言葉に声を荒げる。
「そうだぞ一夏。IS無しじゃ余りにも無謀だ」
そこへ別の声が掛かった。
「エネルギーが無いなら、持って来れば良いんだよ」
そこにはシャルルが立っていた。
「・・・持って来る?どう言う意味だ?」
「大丈夫、任せといて」
そう言いながら彼女はISからコードを取り出し、一夏のブレスレットに接続する。
「リヴァイヴのコアバイパスを解放。エネルギーの流出を許可」
「成る程、そんなことが出来たのか」
戦闘機同士のバディ給油と同じだ。
彼女の言葉の意味を理解した。
「なら、一夏一人に任せる訳にもいかないな」
俺は一夏に向き直り、ニッと笑う。
「ウィル・・・」
「友人を一人で危険に向かわせるなんて、男が廃るぜ。それに、ボーデヴィッヒも助けてやらないとな?」
「約束して、絶対に勝つって!」
シャルルが俺達に言ってくる。
「勿論だ、負けたら男じゃねぇよ」
「ああ、まったくだ」
俺達は自信満々に答える。
「ふふっ、じゃあ、負けたら明日から女子の制服で通ってね?」
「え゛!?」
シャルルのえげつない一言に箒が若干引く。
「い、良いぜ」
「お、おぅ、ノープロブレムだ」
・・・言質は録られた、負けられないな。
「・・・これで完了だ」
「ありがとよ」
一夏が白式を展開する。
教師部隊が突然後方に下がり始めた。
「織斑先生か・・・」
どうやら彼女が指令を飛ばした様だ。
「一夏、ウィリアム、絶対に死ぬな!」
箒からの激励が贈られる。
「信じろ」
一夏が箒に言葉を返した。
「俺を、ウィルを、信じて待っていてくれ。必ず勝つ」
「ふっ、何だかテンションが上がるな」
俺達は敵ISの前に立つ。
「で、作戦は?」
「あぁ、俺が零落白夜でアイツを斬って、ラウラを引っ張り出す。その間、ウィルは気を惹いてくれないか?」
「単純な作戦だが、乗った!下手に複雑なのよりよっぽど良い」
「行くぜ、偽者野郎!」
「よっしゃあ!やったろうぜ!」
敵ISに向けて攻撃を開始した。