空軍パイロットのIS転生記   作:Su-57 アクーラ機

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第31話

とある日の朝 自室

 

 

「・・・ん?ふぁああぁ」

 

俺は何時も通りの時間に目を覚ました。

良い朝だ。今日は何か良いことが有るかもしれないな。

そう考えながら、身支度を整える。

 

「よし、後は・・・」

 

朝のコーヒータイムだ。

俺は、朝に時間の余裕がある時はコーヒーを飲む。前世からの習慣だ。

 

「ふぅ・・・美味い」

 

インスタントだが、これが中々美味い。

そうホッコリしていると、自分のベッドに小さな膨らみがあるのに気付いた。

布団のシワにしては不自然なそれは、一定の間隔で上下にゆっくりと動いている。

まるで呼吸をしているかのように(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「・・・何だ?」

 

俺がコーヒーを片手にそう呟くと、布団がもぞりと動き・・・

 

「んぅ、もう朝か・・・?」

 

中から一糸纏わぬ姿のラウラが現れた。

いや、正確に言うと、眼帯とIS待機状態のレッグバンドは着けているが・・・。

 

「ブゥゥゥゥ!!」

 

高圧スプレーの如く盛大にコーヒーを吹き出す。

 

「ん?嫁か、おはよう。随分と早いのだな?」

 

が、彼女は俺の反応などお構い無しに話しかけてきた。

 

「ゲホッゲホッ!お前ここで何してんだ!?て言うか隠せ!!」

 

「?おかしな事を言う。夫婦とは包み隠さぬものだと聞いたが?」

 

キョトンと小首を傾げるラウラ。

っ!?今のはかなりドキッと来た。

だが、俺でも分かる。それは間違いだと。

 

「おい、誰だ!?お前に変な知識を吹き込んだのは!対艦ミサイルをぶちこんでやる!!」

 

「何を騒いでいる。周りに迷惑だぞ?」

 

「お前の事で騒いでるんだ!と言うか何なんだ嫁って。婿の間違いだろ?」

 

「?日本では気に入った相手を『俺の嫁』とか『自分の嫁』とか言うそうだが?」

 

誰だぁ?そんなアホな事を教えたのは?

 

「よし、ラウラ。そいつの詳しい位置を教えろ。マジでミサイルを撃ち込んでくるから。後、俺はアメリカ人だ」

 

「郷に入っては郷に従え、と言うやつだ。まぁ、そんな事は良い」

 

「いや、良くはないだろ」

 

「それにしても、昨晩は随分と激しかったな・・・」

 

頬を赤くするラウラ。

 

「話を聞けよ・・・は?昨晩?俺何をしたんだ?・・・まさか!」

 

「あ、あんなに激しく抱き付いてくるとは・・・」

 

あぁ、そっち?良かった。てっきり間違いを犯してしまったのかと・・・。

寝付きが良かったのはそれが理由か?

・・・待て、何してんの?昨日の俺。

 

「しかし、朝食までにはまだ時間があるな」

 

シーツを身に纏い、まだ少し眠そうな彼女の髪が朝の陽光を浴びて銀色に輝くのは、とても綺麗で、不覚にも見とれてしまった。

・・・それにしても、先月のトーナメント以降こいつはちょくちょくこういった事をするから困る。

食事中の同席は当たり前。この前は入浴中に現れ、その前は訓練後にISスーツを脱ごうとしたら現れた。

まあ、食事の同席は構わないし、スーツに関しては他のみんなと違い、素肌に直接着込む訳ではないので問題は無かったが、放っておくとどんどんエスカレートして行きそうだ。

 

「・・・・・」

 

ふむ、なんとか彼女の積極性を削げないものか・・・。

 

「どうした?・・・あ、あまりそう見つめるな。私とて恥じらいはある」

 

おいこら、嘘をつくな嘘を。だが、その嘘つきが頬を染めて視線を逸らすのは、不覚にもドキリとしてしまった。

う、うぐっ・・・えぇい!鎮まれ我が煩悩よ!それでもお前は“鮫”と呼ばれたファイターパイロットかっ!

ん?そうだ、ナイスなアイデアを思い付いたぞ!

 

「ラウラ」

 

「何だ?」

 

「俺は奥ゆかしい女性が好きなんだ!」

 

「ほう」

 

少し驚いた様にわずかに目を見開くラウラ。続けて言葉を噛み締めるように二回ゆっくりと頷く。

やったぜ!!ただ今をもって、オペレーション“シークレット・ウーマン”の終了を宣言する!

よくやったぞ俺君。君には特別報奨と勲章を授与しよう。イエッサー俺殿、感謝しますサー。俺が司令で、一般兵が俺だ。

 

「だがまあ、それはお前の好みだろう?」

 

なっ!?司令!敵はまだ健在です!!

 

「え?」

 

「私は私だ」

 

しっかりとした意志を秘めた瞳が真っ直ぐに俺を見つめてくる。

 

「・・・・・」

 

・・・えーと。

何なんだ?この胸の付いたイケメンは。そして、俺はどう反応すれば良いんだ?

 

「だ、大体、お前が言った事ではないか・・・」

 

・・・あぁ、言ったな。恥ずかしい事も一緒にペラペラと。

それにしても、何時もの堂々とした態度から一転、上目遣いに言って来る様は異様にも魅力的に見えてしまう。

これがギャップの差、と言うものなんだろうか。詳しくは知らんが。

そうなると、先程から胸に当てている手も、俺の視線から隠そうとしている様にも見えてくるから不思議だ。

・・・ホーキンス!貴様は後で腕立て200回だ!

い、イエッサー!

 

「か、隠せと言った割にはご執心の様だが?」

 

「なっ!?いや、そう言う訳じゃない!」

 

「で、では、見たいと言うのか?朝から大胆な奴だな、お前は・・・」

 

「話が変な方に進んでるぞ!」

 

シーツをゆるめたラウラに俺は取り乱す。

なんとか隠させようとするのだが、ヒラリヒラリとかわされて、俺はベッドの上や間をドスンドスンと大立ち周りを強要させられる。

彼は欧米人特有の少し大きめの体格の為、どうしてもどこかにぶつかってしまう。

現在時刻6:31分。・・・隣人の諸君、スマナイ。

 

「このっ・・・!」

 

ようやく捕まえたぞ、この子ウサギめ・・・。

しかしこのウサギ、対人格闘術を仕込まれたファイティング・ラビットだったようだ。

簡単に抜け出されてしまった。

“鮫”と“ウサギ”。両者は一歩も譲らない。

 

「ふむ、近接格闘が出来るのか」

 

「まぁ、多少はな。って違う!先月にあんな事をしておいて、反省点は無しか!?」

 

「あんな事、とは?」

 

「い、いや、だから、その・・・き、キスだよ・・・」

 

クソッこの前の事を思い出しちまった・・・!

あの日、俺は彼女に唇を奪われたのだ。しかも

 

「は、初めてだったんだぞ・・・」

 

向こう(・・・)でもこっち(・・・)でもな!

あ゛?初めてのキッスはどんな味だ?んなもん知るか!

おい、今茶化した奴はこっちに来い。

ちょぉっと高度10,000mまでフライトしようや・・・。

 

「そうか」

 

「そうかって、お前なぁ・・・」

 

しれっとした返事に呆れる。

 

「わ、私も・・・初めてだったぞ。うむ・・・嬉しくは、あるな」

 

頬を染めながら、そう言ってくる。

 

「そ、そうか・・・」

 

・・・こんな事を言われたら文句なんて言えない。

 

「「・・・・・」」

 

気まずい・・・何か言ってくれ。

ああ、暑い。そうだ、窓を開けて換気をしよう。

 

「うわっ!?」

 

立ち上がろうとした瞬間、ラウラが俺をベッドに押し倒した。

その細い腕のどこにそんなパワーが詰まっているんだ?と思う程、鮮やかかつスピーディーにキメられた。

これが実戦なら俺は死んでいるだろう。

 

「しょ、しょうがない奴だな、お前は・・・。どうしてそう、女の気持ちを煽るのが上手いのか、一度しっかりと聞きたいところだ」

 

な、何を言ってるんだこいつは!?ヤベッ、ガッツリとホールドされて腕が動かん・・・!

 

「お、おい、よせラウラ!お、おおお、おちちゅけっ!」

 

ラウラが頬を朱に染めながら、ゆっくりと俺に覆い被さってくる。

体は相変わらず動かせない。

いかん、このままでは違う意味で俺は死んでしまう!

メーデーメーデーメーデー!こちらホーキンス!現在危機的状況!至急増援を求む!繰り返す━━

そんなやり取りをしていると、ドアがノックされる。

 

「ウィル、起きてるのか?入るぞ?」

 

「一夏か!?エマージェンシー!手を貸してくれ!」

 

「もし良かったら、後で臨海合宿に向けて水着買いに・・・行かない・・・か・・・?」

 

その場で固まる一夏。

 

「一夏、そういう話は朝稽古が終わってからだ・・・ぞ・・・?」

 

そこへ袴姿の箒も入って来て竹刀を落とす。

・・・ヤベェ。

 

「むぅ・・・良いところだったと言うのに・・・。無作法な連中だな、夫婦の寝室に押し入るとは」

 

ほぼ全裸で俺に覆い被さるような体勢のまま、不満そうに言うラウラ。

 

「い、良いところって・・・な、ナニがなんだ・・・!?」

 

「ふ、夫婦ぅ!?」

 

一夏が若干後退り、箒がプルプル震えながら竹刀を拾って構え直す。

 

「待て一夏、これは誤解だ。そして箒、お前もせめて話を━━」

 

「天誅ぅぅぅぅ!!」

 

「ちょっ!?」

 

頭に当たる瞬間、ラウラがISの右腕を展開。AICによってその動きを止めた。

 

「勝手に嫁を殺されては困るのでな」

 

「くっ、貴様・・・!」

 

「た、助かった・・・。ん?ラウラ、眼帯外したのか?」

 

彼女の黄金に輝く左目が露になっているのに気付いて、ウィリアムは少し驚いた。

とある事故から左目が変色してしまった事に、ラウラは引け目を感じていた過去がある。その為、先月のトーナメント戦でも左目を封印した状態で挑み、結果として敗退してしまったのだ。

その左目にはISのハイパーセンサーを補助する特殊なナノマシンが注入されている為、使用すれば視覚能力を格段に上昇させる事が出来る。ISを展開していなくても、2km先の標的を狙う事が可能だそうだ。

 

「確かに、かつての私はこの目を嫌っていたが、今はそうでも無い」

 

「そうか、それは良かった。自分の体を嫌っても良いことは無いからな」

 

ニコリと笑いながら頷くとラウラの頬が桜色に染まる。

 

「お、お前が綺麗だと言ったからだ・・・」

 

照れて視線を逸らすラウラに、心なしかドキドキする。

しかし、箒はそれを見ても和みはしない。

 

「ちぇ・・・」

 

「ちぇ?」

 

「チェストォォォォ!!」

 

バシィン!

 

「ギャアアァァァァ!!」

 

朝からウィリアムの悲鳴が轟いた。

 

 

「・・・・・」

 

時刻は過ぎ、俺達は食堂で朝食を食べている。

隣にはラウラ、正面に一夏と箒が座っている。

メニューは俺が金平ごぼうと塩鮭定食。ラウラはパンとコーンスープ、一夏は納豆と塩鮭定食、箒は煮魚とほうれん草のおひたし。

皆の飯も美味そうで目移りしてしまう。

 

「ん?欲しいのか?」

 

俺の目線に気付いたラウラが、「分けてやろう」と言ってパンを口に咥えて・・・って、うおっ!

 

「ん?どうした、かじっていいぞ?」

 

「んな食いかた出来るかっ!」

 

そんなやり取りをしていると、シャルロットが慌てながらやって来た。

 

「わああっ!ち、遅刻っ・・・遅刻する!」

 

そのまま適当に定食を手に取る。

何か漫画のヒロインみたいだな。

 

「よっ、シャルロット」

 

一夏が声を掛け、手招きして自身の隣の席を勧める。

 

「あっ、一夏。お、おはよう」

 

そのまま談笑しながら朝食を食べる。

キーンコーンカーンコーン

ん?予鈴か・・・。予鈴!?

 

「うわぁっ!今の予鈴だぞ、急げ!」

 

一夏が慌てているなか、俺達は急いで食堂から走り去って行った。

 

「お、置いてくな!今日は千冬姉のSHRだぞ!」

 

遅刻即ち死を意味するのだ。

 

「悪いな一夏。俺はもうアレをされるのはごめんだ」

 

「私もまだ死にたくない」

 

「右に同じく」

 

「ごめんね、一夏」

 

そこまま猛ダッシュで走り去る。

 

「裏切り者ぉぉぉぉ!!」

 

すまんな一夏。お前の犠牲は無駄にはしない。

ん?シャルロットが引き返して行った?

 

 

なんとか間に合ったか・・・

そのまま肩で息をしながら、席に着く。

その後、一夏と共にやって来たシャルロットは二人仲良く出席簿で頭を叩かれていた。

なんでも、間に合わせる為に校内でISを使ったらしい。

 

 

放課後

 

俺達は今、モノレールに乗ってショッピングモールに向かっている。

一夏はシャルロットと俺はラウラとだ。

 

「いやぁ、朝から疲れるなぁ・・・」

 

モノレールの窓辺に肘を置き、頬杖をつきながら一人呟く。

 

「ん?どうした?嫁よ」

 

「・・・なぁ、その嫁って言うの止めないか?」

 

「何故だ?」

 

「いや、何かこう、むず痒いって言うか、普通にウィルとかウィリアムの方がしっくり来るんだよ」

 

そもそも結婚してないし、俺男だし・・・。

 

「む、そうか。なら次回からそうしよう」

 

案外アッサリと承諾された。

 

「おう、頼むよ」

 

ニコリと返すと、ラウラは赤くなって俯いてしまった。

それにしても、何でこいつは俺にこんなにベッタリなんだ?

 

自分の事には鈍いウィリアムであった。

 

 

ショッピングモールに着いてから、一端は別行動と言う事で一夏達と別れる事になった。

一夏の奴、シャルロットと手を繋いでいるな。

そう傍観しているとラウラもそれに気付き、赤くなりながら手を差し出して来た。

・・・繋げと申すか。

そんな事をしているとセシリアと鈴に捕まった。

 

「ちょっとウィル、あれ何?」

 

鈴が遠ざかって行く一夏達を指差す。

 

「あれ、とは?」

 

「一夏さんがシャルロットさんと手を繋いでいる様に見えるのですが。と言うことですわ」

 

セシリアが補足する。

 

「あぁ、確かに手を繋いでいるな。それより、二人共顔が怖いぞ?」

 

二人共声に抑揚が無く、顔に影が射して目のハイライトが消えているのだ。

 

「ふふっ、ふふふっ。そっかぁ、見間違いでも白昼夢でも無く、やっぱりそっかぁ」

 

「おいおい、マジで怖いぞ?」

 

「よし、殺そう!!」

 

「ちょっ!?」

 

この後、ヤンデレ気味な二人を止めるのにかなり手こずった。

 

 

結局あの二人とも別れて、水着コーナーへたどり着く。

 

「じゃあ、男用はあっちだから」

 

「分かった、後で落ち合おう」

 

俺は自分の水着を選ぶ。

そんなに派手な物はいいからなぁ・・・。

すると、灰色一色のトランクスを見つけた。

 

「これで良いか」

 

俺はその水着をレジへ持って行った。

途中で何故か正座させられている、一夏とシャルロットを発見、ガミガミと叱っているのは山田先生だ。すぐ横には織斑先生もいる。

聞こえて来た話によると、どうやら一夏とシャルロットが二人で試着室に入った所を山田先生に現行犯で取り押さえられたらしい。

・・・何やってんの?あいつら・・・。

 

「ちょっと、そこのあなた!」

 

そんな事を考えていると声を掛けられた。

 

「?」

 

何事かと振り返ると、女性が立っていた。

 

「これ、そこの棚に戻しておいて?」

 

うわぁ、見るからにこちらを見下した様な態度。正に、女尊男卑の思考に染まった人間だな。

まったく、こういった連中は極少数で多くは男性の立場を平等に扱ってくれるのにな・・・。無視だ無視。

そのまま、歩き去ろうとする。

 

「ちょっと!アンタに言ってんのよ!」

 

ハァ、しつこい・・・。

 

「Sorry I don't understand Japanese」

 

英語で返してやった。

 

「はぁ!?日本語で言いなさいよ!」

 

五月蝿いし、しつこい・・・!

 

「ワタシニホンゴワッカリーマセーン!」

 

無駄な騒ぎを起こさない為、最強の言葉を言い放った。

相手はポカンとしている。

ふっ、決まったな。

ラウラは水着選びにもう少し時間が掛かるか?それならあっちに言って暇潰しでもするか。

そのまま一夏達の方へ向かう。

少しずつ声が鮮明に聞こえてくる。

彼女を作らないのか。とか何とかかんとか。

 

「先生方、こんな所でなんて話をしているんですか・・・?」

 

「ん?ホーキンスか。ちょうど良い。お前はラウラの事をどう思っているんだ?」

 

「・・・は?」

 

何かとんでも無い事を聞かれた気がする。

 

「キスした仲だろう?」

 

ぐあっ、それを言いますか先生。

ここは黙秘権を行使する。

 

「・・・・・」

 

「ふっ、まんざらでも無い。か?」

 

「なっ!・・・自分にはよく分かりません」

 

「ふむ、容姿は好きな方か?嫌いな方か?」

 

「それは・・・確かに可愛いと思います」

 

「ほう」

 

「えぇ、ラウラは可愛いし、凛々しいし━━━って何を言わせるんですか!」

 

織斑先生がニヤニヤしながらこちらを見てくる。

まんまと誘導尋問に引っ掛かった様だ。

 

 

ウィリアムと別れたラウラは水着を探していた。

これが全て水着か・・・この世にはこんなにも沢山の種類の水着が有ったのか。

だが、正直これと言って興味が有るわけでもない。

冷めた瞳で水着を眺める。

適当にしていると、偶然他の客の会話が聞こえてきた。

 

「しっかり気合い入れて選ばなくっちゃね~」

 

「似合わない水着着てったら一発で彼氏に嫌われちゃうもの」

 

「他のは全部100点でも、水着カッコ悪かったら致命的だもんね~」

 

この時、彼女に頭を金槌、いや、ISのブレードで殴られた様な衝撃が走った。

そして、彼女を更に追撃する事態が起こる。

 

「えぇ、ラウラは可愛いし、凛々しいし」

 

いきなり、ウィリアムの声が聞こえてきたのだ。

どうやら、教官の質問に答えていたようだが・・・。

まさかの不意打ちを受けたラウラ。

褒めるが良い。と何度も彼に言っていたが、実際に褒められたことは無く、ましてや『可愛い』等と言われた事など一度も無い。

か、か、可愛い・・・?この私が、可愛い・・・可愛い・・・。

大急ぎで、何度も番号を間違えながらISのプライベートチャネルに掛ける。

相手は彼女が最も信頼する部下

 

『受諾、クラリッサ・ハルフォーフ大尉です』

 

「く、クラリッサ、私だ。緊急事態発生・・・」

 

『ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長?何か問題が起きたのですか?』

 

「あ、ああ、・・・とても、重大な問題が発生している・・・」

 

『部隊を向かわせますか?』

 

「い、いや、部隊は必要無い。軍事的な問題では、無い・・・」

 

『では?』

 

「クラリッサ。その、だな。わ、わ、私は、可愛い・・・らしい、ぞ」

 

『・・・はい?』

 

クラリッサから半オクターブ程高い声が返ってくる。

 

「うぃ、うぃ、ウィルが、そう、言っていて、だな・・・」

 

『ああ、アメリカ空軍に所属する、隊長が好意を寄せているという彼ですか』

 

「そうだ。お前が教えてくれた所の、所謂私の嫁だ。こういった場合、私はどうすれば良いのだ?」

 

そう、彼女クラリッサこそ、ラウラに間違った日本文化を吹き込んだ張本人である。

この事を知れば、ウィリアムは大量の対艦ミサイルや爆弾等で爆装し、ドイツに向けて巡航を開始するだろう・・・。

 

『そうですね・・・まずは状況把握を。直接言われたのですか?』

 

「い、いや、向こうは私が近くに居るとは思っていないだろう」

 

『━━━最高ですね』

 

「そ、そうなのか?」

 

『はい、本人の居ない場所でされる褒め言葉にウソはありません』

 

「そ、そうか・・・!」

 

さっきまで不安そうだったラウラの顔がパァッと明るくなる。

その合間にクラリッサは部隊員に召集を掛けて、【隊長の片想いの相手に脈アリ】と筆談で伝える。

 

「「「おおおお~!」」」

 

と部隊の乙女達が盛り上がった声を漏らす。

因みに、この部隊でラウラは人間関係に多大な問題を抱えていたのだが、例のIS暴走事件の後に『好きな男が出来た』という相談をクラリッサに持ちかけた時から、全てのわだかまりが解けて消えた。

その時の隊の反応は、正に10代乙女のソレだったそうな。

 

「そ、それでだな。今度、臨海学校に行くことになったのだが、どのような水着を選べば良いのか選択基準が分からん。そちらの指示を仰ぎたいのだが・・・」

 

『了解しました、この“黒ウサギ部隊”は常に隊長と共にあります。因みに、現在隊長が所有しておられる装備は?』

 

彼女のこの一言はとても安心する。

 

「学校指定の水着が一着のみだ」

 

何の気無しに答える。

 

『っ!何を馬鹿な事を!!たしか、IS学園は旧型スクール水着でしたね?それも一部のマニアからの受けは悪く無いでしょう。だがしかし、それでは・・・!』

 

彼女が突如声を荒げる。

 

「それでは・・・?」

 

恐る恐る聞き返す。

 

『色物の域を出ない!!』

 

「なっ!」

 

『『『おぉ・・・!』』』

 

無線越しに他の隊員達の感嘆の声が上がる。

 

『隊長は確かに豊満なボディで相手を籠絡というタイプではありません。ですが、そこで際物に逃げる様では“気になるアイツ”からは前に進まないのです!』

 

クラリッサの声に熱が入る。

 

「ならば、どうする?」

 

『ふっ、私に秘策が有ります。』

 

そう答える彼女の目がキュピーンと光った。

 

 

 

 

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