あれから十数年後
登校中に友人のマイクが話しかけて来た。
「なぁ、ウィル」
「何だ?マイク」
「つい最近、男のIS操縦者が見つかったって話知ってるか?」
あぁ、この間の・・・。
俺がまだ幼い?頃にISと言う物が開発された。
何でも、女性にしか扱えない代物らしい。
「テレビで放送してたな。女性しか扱えないISを男が動かしたのは俺も驚いたよ。思わず飲んでたコーヒーを吹くぐらいな」
「だよな。俺もしばらく放心してたよ」
ハハハと笑い合いながら学校に向かう。
この後、ウィリアム自身の未来が大きく変わるとも知らずに。
学校に着くと、先生から男子は全員体育館に集合と言われた。
何でも、日本で男性のIS操縦者が見つかったのならアメリカにも居るかもしれない。と言う事らしい。
並んでいる間に「これでもし動かせれば楽園に・・・ウヘヘヘ」とか聞こえたが気にしてはいけない。
そして、とうとう俺の出番になった。
検査員は女性で、心底面倒臭そうに見下した態度で「ISに触って」とぶっきらぼうに言う。
途中、「ふん、どうせ動く訳無いのに」とか聞こえた。
典型的な女尊男卑の思考の持ち主だな。と思いながらも、静かにISに触れる。
何だろうこの緊張感は。これで動いたらマジで笑えないな(笑)
何かの駆動音と共にISが薄く光る。
・・・起動してしまった。
周りが唖然となる。
あの女性検査員ですら、持っていたペンを落としてしまった。
当然、動かした本人は━━
「」
口をあんぐりと開けたまま、固まっていた。
この顔をかつての同僚達が見たら爆笑は不可避だろう。
「「「えええええ!?!?」」」
体育館中に生徒と先生達の声がこだまする。
待て、待て待て待て!これは何かの偶然か?それとも必然なのか?こんなにいる男子のなかで俺が当たったの!?すごい確率だよ!え?もしかしてこのままモルモットへ転職か!?俺この後、いったいどうなんのぉぉ!!?
▽
体育館での騒動の後、校長室に両親と共に呼ばれた。
やはり、ISを動かした男性は俺を含めて二人しかおらず、保護目的も含めてIS学園にぶち込まれるらしい。
正直、実験と称してクレイジーな学者共に腹をかっ捌かれて中身を弄くりたおされるよりかマシだが・・・。
今後のIS学園への入学手続きなどの話をしていると、軍服を着た大柄な男達と一緒に見覚えのある顔が現れた。
「トーマスおじさん?」
「兄さん?久しぶり」
「あら、トーマスさんお久しぶりです」
「久しぶりだな、ウィリアム、ジェームスにバージニアさんも」
「そうだ、何か用かい?兄さん」
「ああ。ジェームス、少し良いか?」
そのまま父さんとトーマスおじさんは奥の部屋へ入って行った。
手続きを終えると同時に父さん達も部屋から出て来て、その日は家に帰った。今日は叔父も泊まって家族で会議するらしい。
▽
「さて今後の方針だが・・・ジェームス」
「ああ。ウィル、IS学園に行くならこれを持って行きなさい」
何かを渡された。
・・・ドッグタグ?
「これは父さん達航空機開発部とIS企業、そしてアメリカ空軍が共同で開発した試作ISだ」
「政府からの命令でな、試運転も兼ねてお前に持たせろとな」
トーマスが補足する。
「・・・分かった。有り難く受け取るよ」
「すまない・・・」
「え?おじさん、突然どうしたんだい?」
「お前を守ってやれなくて・・・。お前の人生なのに」
「おじさん・・・。顔を上げてくれよ。俺はおじさんに今までたくさん世話になった。父さんも母さんも血の繋がっていない俺を本当の息子のように育ててくれた・・・」
「ウィル・・・!知っていたの?」
「あぁ、結構前からね。でも俺にとっての両親は父さんと母さんだけだ」
そしてトーマスと向き合う。
「トーマスおじさん、父さんと母さんが安心して生活出来るように守ってあげてくれ」
今のこのご時世、男性操縦者は“一部の団体”からは邪魔者でしかない。
何かしら仕掛けて来るかもしれない。
その思いを汲み取ったトーマスは静かに、しかし力強く頷いた。
▽
翌日
インターホンが鳴る。
扉を開けると、女性権利団体と名乗る女が現れ、俺をお国の為に実験施設に入れろだの散々言った後、最後には家族に対する脅しめいた発言をしたので、さすがに我慢の限界でキレそうになった時、おじさんが俺を手で制して、前に出て
「この家族は我々軍と政府が受け持っています。もし何かご用がございましたら、特別規定に
そう言い返した。当然、横槍を入れられた女は顔を歪めて言い返す。
「あなたは黙っていなさい。私は彼に話しているの。それで?あなたはお国の為に協力してくれるかしら?もっとも、決定事項だけど」
ニヤニヤ嗤いながら、俺の答えを聞いてくる。
お国の為に協力?決定事項?そんなの答えは始めから決まっている。
「お断りします。俺はIS学園に行かせて頂きます。決定事項も何も、それはあなた方が勝手に取り決めた事だ。お国の為?自分達の為でしょう。そんなにお国の為お国の為と言い張るのでしたら、まずはそのクソ下らない女尊男卑の思考をなんとかしてから出直して頂きたい」
思い切り睨み付けながら言い返してやった。
「なっ!?あなた、自分がどんな立場にいるか理解出来ていないようね・・・!あなたに拒否権なんてものは━━」
「少 々 面 倒 で は あ り ま す が 、 例 え
と、俺の腕を掴もうとしていた女を語気を強めて制止するトーマス。顔は柔和な笑みを作ってはいるが、彼の右手はしっかりと
そこには黒光りするハンドガンがホルスターに入っており「いつでも抜けるんだぞ」と全身で物語っている。
女性権利団体の女は、その右手の先に隠れて見えないナニカを察して若干後退った。
言い方はオブラートに包んでいるが、彼の心情も交えて訳すとこうである。
『俺の大切な家族に指一本でも触れてみろ。その時は女性権利団体だろうが何だろうが関係無い。有事の際という事で、その
見事に言い返された挙げ句、逆に脅し返された女は顔を赤くしたり蒼くしたりしながら「し、失礼するわっ」と言って出て行こうとする。
女性権利団体とはいえ、流石に政府と軍隊に刃向かうような事は出来なかったようだ。
「お帰りですか?お見送りしましょう」
「け、結構よ!」
そう言って逃げるように家を後にする女と、実に頼もしい叔父を見て、これなら安心出来そうだ。と思った俺は、改めてこれからの生活に意気込むのだった。