空軍パイロットのIS転生記   作:Su-57 アクーラ機

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第38話

帰還後

 

最悪の状況だ・・・。

なんとか浜辺まで帰って来た後、一夏はそのまま担架で運ばれて行った。

あの時のみんなの表情は忘れられない。

今にも泣きそうな顔で、運ばれて行く一夏を見ていたセシリア、鈴、シャルロット、そして俯いたまま一言も喋らない箒。

ラウラも冷静な風を装っているが、やはり落ち着かない様子だった。

・・・俺も見ている事しか出来なかった。

織斑先生の指示で一夏は応急手当てを受け、そのまま部屋で目を覚まさないままだ。

俺達は別命があるまで待機を命じられた。

・・・まさか、あんな所に密漁船がいたとはな。

 

後で箒に何が遭ったのかを確認した。

 

福音との交戦中、一夏が不審な船舶を発見。正体は密漁船だった。しかも、そいつらは戦闘に巻き込まれかけたので、なんとか離そうとしていたらしい。

しかし、箒は密漁船は放って福音との戦闘を優先させようとし、一夏に今の自分が専用機を持って浮かれていることを指摘され混乱状態に陥る。

その隙を突かれて箒が攻撃される瞬間、一夏がそれを庇って被弾した。

 

これが、俺がブラボーとの戦闘中に起きた事の成り行きだ。

 

 

シャルロットが本部の部屋の障子をノックする。

 

『誰だ?』

 

「失礼します、デュノアです」

 

『待機と言った筈だ、入室は許可出来ない』

 

無情にも却下された。困った様に顔を見合わせる三人。

そこでラウラが口を開いた。

 

「教官の言う通りにするべきだ」

 

「でも、先生だって一夏の事が心配な筈だよ。お姉さんなんだよ?」

 

「ずっと目覚めていませんのに・・・」

 

「手当ての指示を出してから、一度も会いに行かないなんて・・・」

 

「・・・だからどうしろと?」

 

「箒さんにも声を掛けませんでしたわ・・・。幾ら作戦失敗だからと言って、冷たすぎるのではなくて?」

 

「今は福音の捕捉に集中する。教官はやるべき事をやっているに過ぎない」

 

「それに今、仮に一夏が目覚めていたとして、織斑先生はどんな顔をしてアイツに会いに行けるんだ?先生は指示を出した手前、自分を責めている所もあるだろう。・・・俺だって随伴していたのに何も出来なかった。アイツに顔向け出来ない・・・」

 

一同が黙り込む。

 

「お前が気に病む必要は無い。ウィルの言う通り、教官だって苦しい筈だ、苦しいからこそ作戦室に籠っている。心配するだけで、一夏を見舞うだけで福音を撃破出来るとでも?」

 

ラウラが俺をフォローしてくれるが、それでも歯痒さが消えない。

 

「それよりも・・・」

 

ラウラは一夏が眠っている部屋を横目で見る。

 

 

箒は過去の自分と今の自分を重ねていた。

 

「私は・・・」

 

ただ、自分より弱い相手を叩きのめす過去の自分。

力を手にして浮かれて、犯罪者だからと言って見殺しにしようとしていた今の自分。

・・・何も変わっていないじゃないか。

一夏の言葉がフラッシュバックする。

 

『そんな寂しい事言うな。力を手にしたら、弱い奴の事が見えなくなるなんて・・・』

 

「違う、違うんだ。見えなくなった訳じゃないっ」

 

奴らが弱い奴だとでも言うのか?守るべき存在だと?奴らは秩序を乱している。なのにどうしてお前は奴らを許せる?それが、お前の強さなのか?だからお前は強いのか?お前に比べて・・・

 

「私は・・・力の赴くままに暴力を振るっていただけだったのだろうか・・・」

 

一夏にとって密漁船も私も、等しく守るべきものだったというのに、私は・・・。

拳を握る力が強くなる。

その時、部屋に誰か入ってきた。

 

「篠ノ乃さん」

 

山田先生が心配して見に来てくれたようだ。

 

「あなたも少し休んで下さい。根を詰めてあなたまで倒れてしまっては、みんなが心配しますよ?」

 

「・・・ここに居たいんです」

 

「いけません、休みなさい」

 

少し語気を強める先生。

 

「これは、織斑先生からの要請でもあるんです。良いですね?」

 

「・・・分かりました・・・」

 

そのまま部屋を後にする。

その後ろ姿を山田先生は心配そうに見つめていた。

 

 

部屋を出た後、箒は浜辺をひたすら走り続けた。

少しでも気を紛らわす為に。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

 

肩で息を継ぎながら箒は自身が小学生の時の事を思い出していた。

 

クラスの数名の男子が寄って集って自分の悪口を言う。

今日は前に着けていたリボンがネタだ。

その時、それを止めたのが一夏だったが、その結果、暴力沙汰に発展してしまった。

後で何故そんな事をしたのか聞くと、彼は

 

「許せない奴はぶん殴る。だからお前も気にするな」

 

と返して来た。

それどころか、自分のリボンを誉めてくれたのだ。

それ以来彼とはどんどん仲良くなって行き、気が付けば意中の男性となっていた。

 

箒は自分の腕に巻き付けた待機状態の紅椿を眺める。

 

「箒」

 

「?」

 

誰かに声を掛けられた。

声の主は鈴だ。

 

「あ~あ、分っかり易いわね~。あのさぁ、一夏がこうなったのってアンタのせいなんでしょう?」

 

「・・・・・」

 

何も言い返せない。

 

「で、落ち込んでますってポーズ?ざっけんじゃ無いわよ!!」

 

鈴が箒の胸ぐらを掴んで引き寄せる。

 

「やるべき事があるでしょうが!今戦わなくてどうすんのよ?!」

 

「・・・もう、ISは使わない」

 

「っ!!」

 

鈴が勢い良く箒に平手打ちをした。

 

「甘ったれてるんじゃ無いわよ!専用機持ちっつうのわね、そんな我が儘を許される様な立場じゃ無いの!それともアンタは戦える時に戦わない臆病者な訳!?」

 

鈴の言葉に何かが込み上げてくる。

 

「・・・どうしろと言うんだっ・・・!もう敵の居場所も分からない、戦えるなら私だって戦うっ!!」

 

「ふふっ、やっとやる気になったわね」

 

「え?」

 

気が付くと、ウィリアム、セシリア、シャルロット、ラウラが立っていた。

 

「あ~あ、面倒臭かった」

 

理解が追い付かない。

 

「な、何?」

 

その言葉にシャルロットが返事をする。

 

「みんなの気持ちは一つって事」

 

「負けたまま、終わって良い筈が無いでしょう?」

 

箒の表情が変わって行く。

そこには、もう暗い陰は射していなかった。

 

 

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