空軍パイロットのIS転生記   作:Su-57 アクーラ機

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第39話

空が暗くなり始めた頃。

 

「ラウラ、福音は?」

 

鈴がラウラに尋ねる。

 

「確認済みだ」

 

そう言って、ISの右腕を展開して付近の画像を見せる。

 

「ここから30km離れた沖合い上空に目標を確認した。ステルスモードに入ってはいるが、どうも光学迷彩は持っていない様だ。付近にブラボーも発見。衛星による目視で発見した」

 

「流石ドイツ軍特殊部隊、やるわね」

 

「お前達の方はどうなんだ?準備は出来ているのか?」

 

「当然!甲龍に攻撃特化パッケージをインストール済み」

 

「こちらも完了していますわ」

 

「僕も準備OKだよ、何時でも行ける」

 

全員準備万端の様だ。

そこへ箒が慌てて聞いてくる。

 

「ま、待ってくれ、行くと言うのか?命令違反では無いのか?」

 

「だから?アンタ今戦うって言ったでしょ?」

 

「だが、先生からの直接命令だろ?無視したら流石にまずいんじゃ無いのか?」

 

彼女達の気持ちは分かるが、それでも勝手に行って良い筈は無いだろう。

 

「何?アンタもしかしてビビってんの?」

 

鈴が茶化して来る。

 

「俺は仮にも軍属だ、ビビるビビらないの問題じゃあない」

 

「確かに、命令違反はまずいかも知れない。だが事の重大性の問題だ。放って置けば少なからず被害が出るかも知れない、そうなってからでは遅い。だが、お前の言いたい事は分かる。無理強いはしない、私はお前の意思を尊重する」

 

しばらくの間の沈黙。

 

「・・・・・・ハァ、分かった、分かったよ。俺も戦うさ。数は多い方が色々と有利だろ?」

 

仲間を見殺しにするのと、処罰されるのと、どっちが怖いなんてもう分かりきってる。

 

「後の処罰が怖くて、空が飛べるかっ!」

 

「ありがとう。箒、お前はどうする?」

 

「私、私は・・・戦う。戦って勝つ!今度こそ負けはしない!」

 

「決まりね。今度こそ確実に墜とすわ」

 

 

ラウラが空中で休止中の福音に向けて砲撃をする。

以前のISのそれと比べて今度は両肩にレールカノン。そして四枚の装甲が彼女を覆っている。正に人型の戦車だ。

 

「初弾命中!」

 

「すっげぇ、パットン准将が見たら狂喜乱舞しそうだ・・・」

 

思わずそう呟いてしまう。が、それどころではない。福音が再稼働した。

それに続いてブラボーがこちらに向かって来る。

 

「来たな・・・ラウラ、そっちは任せたぞ!俺はアイツと決着を着けてくる!」

 

「了解した!」

 

敵に向かって一気に加速する。

敵機が発砲して来た。

 

「チィッ!」

 

俺はそれを回避して後ろを取り、既に装備済みの短距離空対空ミサイル(AAM)のシーカーをブラボーに合わせる。

ロックオン完了になりミサイルを発射しようとした時、相手はフレアを放出しながら、コブラ機動で急減速した。

 

「やるな・・・!」

 

今度はこちらが追われる番だ。

電子警告音が後方に敵機が居ることを報せる。

その中でもより一層焦燥感のある警告音が鳴り響きミサイルの発射を報せる。

RWR警報が無かったと言うことは・・・熱源追尾か!

 

「フレア発射!」

 

紙一重でそれを防ぐが、敵はまだ逃がしてはくれない。

次のミサイルを発射するつもりだ。

飛翔体の接近警報が鳴り響く。またミサイルが発射されたのだ。

 

「またか!フレア発射!」

 

何とかフレアの放出が間に合った。

当たらない事に痺れを切らしたのか、ブラボーが今度は機関砲で撃ってくる。

だが、こちらもやられてばかりでは居られない。

 

「フッ!」

 

俺は背部のエアブレーキを動かし、そのままバレルロールをする。

流石の機械も突然の機動にはついて行けなかった様だ。

ブラボーはそのままオーバーシュートして行った。

 

「今度はこっちの番だ!」

 

30mm機関砲が火を噴く。

が、敵機も回避行動に移り、(すんで)の所で回避されてしまった。

 

「チッ!小賢しい・・・!」

 

苛烈なドッグファイトは尚も続く。

 

 

ラウラの放った初弾が命中した後。

爆煙が晴れるが、福音には殆ど効いていない様子だった。

 

「続けて砲撃を行う!」

 

発射、発射、発射・・・。

しかし、難なく回避され距離を詰められる。

 

「予想よりも速い!っ!?」

 

福音が眼前に迫ったその時。

 

「らぁぁぁ!!」

 

鈴がそれを妨害。

福音が体勢を立て直すが、今度はセシリアがライフルを発射し、福音に攻撃の隙を与えない。

 

「かかった!」

 

シャルロットが福音に向けて、ショットガンを発砲。

数発が被弾し、直ぐ様回避行動に徹っする福音。

彼女は逃げる福音を追って、今度はマシンガンを構えるがが、福音もやられてばかりでは無い。シャルロットに向き直り、弾幕を張り始めた。

 

「うっ、このくらいじゃ・・・墜とせないよ!」

 

 

???

 

 

青い空、波の音が聞こえて来る。

一夏は一人で、木の枝に座って遠くを見つめていた。

 

「あれ?」

 

遠くに何かを見つける。

そこには白いワンピースに白い帽子を被った銀髪の女の子が立っていた。

 

「呼んでる。行かなきゃ・・・」

 

女の子が透き通る様な声でそう言う。

 

「え?」

 

女の子が見ている先を見る。

そこには青い空が広がっているだけ・・・。

視線を戻すと、いつの間にか女の子は消えていた。

 

「あれ?」

 

探しても居ない。

すると、今度は辺りの景色が変わり、夕日が射したオレンジ色になる。

 

「力を欲しますか?」

 

「?」

 

声のする方向を見る。

そこには夕日を背に誰かが立っていた。

 

 

「てやぁぁぁああ!!」

 

箒が福音に斬りかかる。

しかし、二本のブレードはしっかりと掴まれて、箒はそのまま上へ上へと昇っていく。

 

「箒、武器を捨てて離脱しろ!」

 

「箒!」

 

「箒さん!」

 

ラウラ、シャルロット、セシリアが離脱を促す。

福音の翼の様な場所に光の粒子が集まって行く。

 

「くっ!」

 

箒は装甲を展開し、ブレードを出して攻撃を敢行する。

 

「はあぁぁぁああ!!」

 

攻撃が命中し、福音の左翼の切断に成功した。

バランスを崩した福音は真っ逆さまに墜ちて行き、水飛沫を上げながら海に沈んで行った。

 

「無事か?」

 

ラウラが近づいて安否を聞いてくる。

 

「私は大丈夫だ。それよりウィリアムは?」

 

「未だ交戦中だ。・・・ウィル、大丈夫か?状況は?」

 

ラウラが無線で呼び掛ける。

 

『あぁ、大丈夫だ。敵がなかなかしつこくてな、そっちは?』

 

「今片付いた、援護は?」

 

『いや、大丈夫だ。もうそろそろ終わりそうだから直ぐに片付けるよ』

 

無線から、特有のくぐもった声とジェットエンジンの音、そして、定期的に機銃の発砲音が聞こえる。

 

「分かった、無理はするな」

 

心配して、無茶な事をしないように念を押す。

 

『ああ、肝に命じておく。ありがとう』

 

そう言って無線が、プツンと音を立てて交信終了の文字が浮かび上がった。

 

 

「しかし、なかなかタフな奴だ。まぁ、機械にタフもクソも無いか?」

 

軽口を飛ばしてはいるが、正直に言うと少しきつい。

先程の無線での返答は自分の強がり、下らん意地だ。

さっきから敵に少しずつではあるが、命中弾を出している。だが、多少の被弾で機械は取り乱したりはしない。

絶妙なバランスで戦闘を続行して来る。

こちらも先程の機銃掃射で数発被弾した。つまりはイタチごっこをしているのだ。

 

「早めに片付けないとな・・・」

 

飛んで来る機銃弾を避けながら、そう呟くのだった。

 

 


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