「ほう?遅刻した言い訳はそれか?」
織斑先生が目を細めながら聞いてくる。
大慌てで教室に入った俺達は今、入り口の所で顔面を蒼白させながら尋問を受けていた。
「い、いやぁ、その、あのですねぇ・・・み、見知らぬ女子生徒が・・・」
「・・・ホーキンス。こいつの言っている事は事実か?」
ギロッと、シャークマウスの瞳よりも恐ろしい目で睨まれる。
「は、はい!彼の言う通り、更衣中にその女子生徒が入って来まして・・・」
反射的に敬礼をし、冷や汗を流してガタガタと震えながら事情を説明する。
「成る程。つまりお前達は初対面の女子との会話を優先して、授業に遅れたのか」
「え?ち、違いますよ・・・」
「そ、そうですよ。別に遊んでいた訳では・・・ま、まさか!アレをする気じゃ・・・!」
「あ、アレを!?」
俺の言葉に一夏がビクリと反応する。
「いや、私が手を下すのでは無い。デュノア、ボーデヴィッヒ」
「「はい」」
「射撃の実演をして見せろ」
無慈悲な死刑宣告が発せられる。
無言で歩み寄って来る二人。
「「ひぃ!?」」
あ、あれ~?彼女達の目のハイライトがベイルアウトしてるぞ~?
「では、実演を始めます」
シャルロットがニコニコしながら、ISを展開する。
「あ、あのぉ・・・シャルロット、さん?」
ジャコッ
マシンガンの銃口が一夏に向けられた。
「何かな?織斑“君”?始めるよ、リヴァイヴ!」
「ギャアアアア!!」
真横で一夏がフルボッコにされている。
俺は目の前の惨劇を震えながら見ている事しか出来なかった。
待て、パイルバンカーはやり過ぎだろ!?そもそも射撃ですらないじゃないか!
静かになった。どうやら終わった様だ。
「何を余所見している。次はお前の番だぞ」
・・・あぁ、忘れてた。
ISを展開して待機していたラウラが前に出て来る。
俺は油の切れたブリキ人形の様に彼女に顔を向けると、眼前には彼女のISのレールカノンの砲口が迫っていた。
ふと、視線をズラすと、横には一夏が倒れている。
お、俺もこんな風になるのか?
「まぁ待て、考え直すんだ。そんなもの撃たれたら、ミンチよりもひでぇ事になっちまう」
「安心しろ、死なん程度にしてやる。その前に言い残す言葉は?」
成る程、辞世の句と言うやつか。
やっぱり俺は死ぬ運命なのか?いや、そんな筈は無い!悪いな俺はまだ死ぬ気は無いんだ!
「ハァ、分かったよ・・・それより、それ何だ?」
あくまで自然に、怪しまれない様に・・・。
「それ?」
「ほら、そこの・・・」
指を指して、注意を逸らさせる。
「?何も━━」
今だっ!
「
「なっ!?」
全力で教室から逃げた。
フッフッフッ・・・フ~ハハハァッ!この俺の脱出スキルを甘く見るなよ?ラ・ウ・ラ~。
そんな事を考えながら廊下を必死に走り続けるウィリアム。しかし彼は忘れていた。ラウラのISには敵を捕縛可能な兵装があることを。
突然、体がギュッ締め付けられる。
「うおっ!?・・・え?わ、ワイヤー?まさか・・・」
その先を見ると・・・
「そう簡単に逃げられるとでも思ったか?」
ラウラが黒い笑みを浮かべて立っていた。
「あ、あぁぁぁ・・・!」
冷や汗を滝のように流す俺を、彼女は自身の目の前まで引き寄せる。
「・・・覚悟は出来ているな?」
ガションッ
レールカノンの照準が向けられた。
「い、いや、まだ━━」
「これは終止疑問文だ。答えは要らん」
「
震えて上擦った声が漏れた。
「ヴェアァァァァアアア!!!」
その悲鳴を聞いて、クラスの生徒が彼に手を合わせたり、十字を切ったりしたのは言うまでも無いだろう。
それ程までに凄まじい絶叫だったのだ。
▽
ホール
「ハァ、死ぬかと思った・・・」
ラウラによる制裁を受けた後、俺達はホールに集められた。
『それでは、生徒会長から説明をさせて頂きます』
スピーカーから声が掛かると、それらしき人物が舞台の真ん中に立った。
「ん?」
「さてさて、今年は色々と立て込んでいて、ちゃんとした挨拶がまだだったね?」
「!?嘘だろ・・・!」
「私の名前は“更識楯無”。君達生徒の長よ。以後よろしく」
一夏と俺を見てウィンクして来た。
一夏に目を向けると、向こうもかなり驚いているようだ。
「では、今月の学園祭だけど、クラスの催し物を皆で頑張って決めるように。と言いたい所だけど、今回に限り特別ルールを導入するわ。その内容は」
舞台のディスプレイが浮かび上がる。
「名付けて『各部対抗織斑一夏、ウィリアム・ホーキンス争奪戦』!」
彼女が扇子を開くと同時に、俺と一夏の顔写真がデカデカと写し出された。
開いた口が閉じない。
「「「ええええええ!!?」」」
ホールに生徒達の声が響く。
・・・駄目だ。衝撃のあまりに言葉が入って来ない。
最後に聞こえたのは『俺達二人を一位の部活に強制入部』と言う言葉だけだった。
生徒達が血走った瞳で見てくる。
・・・ここは正にエネミーラインだ!
▽
「えぇと、ウチのクラスの催し物の案ですが・・・」
電子黒板を見る。
そこには・・・
『織斑一夏のホストクラブ』
『織斑一夏とツイスター』
『ウィリアム・ホーキンスとポッキーゲーム』
『ウィリアム・ホーキンスと王様ゲーム』
等々、実に多種多様な案が発案されている。
因みに、さっきの件で俺と一夏はクラスの催し物の纏め係りをやらされている。
まぁ、自分が悪いのだが・・・。
「全部却下!」
「「「「えええええ・・・」」」」
ブーイングされる。
「アホか!誰が嬉しいんだ?こんなもん!」
「まったく、一夏の言う通りだ!誰得だよ!?」
俺と一夏がこの理不尽な催し物の案を一蹴する。
しかし、勢力は衰えない。
「私は嬉しいわね。断言する!」
「「え!?」」
「そうだ!そうだ!女子を喜ばせる義務を全うせよ!」
「はぁ!?」
「んな理不尽な!」
「織斑一夏とウィリアム・ホーキンスは共有財産である!」
「「「そうだ!そうだ!」」」
「俺達は物かよ・・・」
「くっ!山田先生、駄目ですよね?こう言う様な企画は・・・」
最後の望みを山田先生に託す一夏。
「え?えぇと・・・私はポッキーなんか良いと思いますよ?」
「「嘘やん・・・」」
大変遺憾である!
最後の望みも破れて項垂れる俺達。
「と、とにかく、もっと普通の意見を出してくれ!」
「そ、そうだ、ウィルの言う通りこんなの認めないからな!」
その時、ラウラがとんでも発言をぶちかました。
「メイド喫茶はどうだ?」
「「「おおおお!」」」
クラス中の女子が感嘆の声を上げて、彼女を見る。
「ら、ラウラ?お前何を言って・・・」
「客受けは良いだろう。それに、飲食店は経費の回収が行える」
「うん、良いんじゃないかな?一夏とウィルには、執事か厨房を担当してもらえば良いしね?」
シャルロットが賛成した。
「「えぇ・・・」」
「織斑君、執事・・・良い!!」
「待って、ホーキンス君の執事も絶対に良いよ!」
「なっ!?」
「おいおい、冗談は止してくれ・・・」
もう、俺達の発言権は無いようだ。
どんどん話が進んで行く。
「メイド服どうする?」
「私、縫えるよ?」
「では、ご奉仕喫茶に決まりですね!」
「「「「さんせ~い!!」」」」
俺達、纏め役の存在は・・・?
「まぁ、変わった衣装の喫茶店だと思えば良いか・・・」
「なあ、一夏?俺達、精一杯抗ったよな?」
「あぁ、後はなるようになるさ・・・」
「「ハァ・・・」」
こうして、1組の催し物はメイド喫茶に決まった。