職員室にクラスの催し物の内容書を提出しに行った帰り
「よし、提出完了っと」
いやぁ、織斑先生があそこまで爆笑するとは。確かにメイド喫茶の発案者がラウラなのは意外だったがな。
「あぁ、そう言えば今何時だ?」
一夏が時計を確認する。
時刻は16:02
「ヤベッ特訓の時間か!」
「おっと、それはまずいな。急ごうぜ」
そう言って、走って行こうとした時
「やぁ!」
聞き覚えの有る声を掛けられた。
「え?」
「ん?」
声の主が歩み寄って来る。
「あなたは確か・・・」
「生徒会長、さん?」
「水臭いなぁ、楯無で良いよ?」
「・・・何の用ですか?」
一夏がぶっきらぼうに質問する。
「私が当面、君のISのコーチをしてあげる」
「え?」
「ISのコーチ?」
「な、何でですか?突然。コーチは一杯居るんで、間に合ってます」
「でも、君は未だに弱いままだよね?」
痛い所を突いて来たな。
「っ!それなりには、弱くないつもりですが?」
一夏がムッとして返答する。
「ううん、弱いよ?滅茶苦茶弱い」
「なっ!」
彼が言い返そうとするが、制止させられる。
「だがら、少しでもマシになるように、私が鍛えてあげよう。と言うお話♪」
「そこまで言いますか!?じゃあ勝負です!俺が負けたら何でも従います!」
売り言葉に買い言葉。
一夏は挑発に乗ってしまった。
「ふふ、良いよ。君も来る?」
「俺もですか?」
どうやら、俺も巻き込まれたようだ。
▽
柔道場
柔道着に着替えた一夏と楯無が位置に着く。
「良い?一度でも私を床に倒せたら君の勝ち。逆に、君が続行不能になれば私の勝ちね。それで良いかな?」
一夏が呆れて苦笑する。
「随分と舐められたものですね・・・」
すると、楯無は不敵に笑った。
「私が勝つから大丈夫」
「・・・それじゃあ、本気で行きますよ?」
「何時でもどうぞ?」
一夏が彼女に掴み掛かった。
「うわぁ!?」
しかし、逆に一夏が倒された。
凄い、微動だにせず大の男を倒した・・・!
それでも諦めずにまた掴み掛かる。
「IS学園において、生徒会長の肩書きは」
「ぐっ!」
一夏に足を掛けて、また床に倒す。
「一つの事実を証明して居るんだよね」
「くっ!うおおおお!」
「生徒会長、即ち全ての生徒の長たる存在は・・・!」
今度は背負い投げで一夏を床に叩き付けた。
「ぐぅっ・・・!」
「最強であれ!とね?」
IS学園の生徒会長はとんでもない実力者だった様だ。さっきの余裕も頷ける。
「これで三回。まだやる?」
「まだまだ!」
「うふふ、頑張る男の子って素敵よ?」
「それは、どうも・・・!」
そのまま、一夏が楯無の胸ぐらを掴み、床に引き倒そうとした時。
ハプニングが起きた。
彼が掴んだ瞬間、勢い余って彼女の胸元を開いてしまったのだ。
「一夏・・・お前、そう言う体質なのか?それとも態とやってるのか?」
誰にも聞こえない様に呟く。
向こうでは、彼女の悲鳴と一夏の必死の弁明が聞こえる。
「・・・一夏君?」
部屋の温度が数度下がった様な気がする。
一夏・・・多分終わったな。
「お姉さんの下着姿は高いわよ?」
その後の事は、俺がラウラに受けた制裁の次に酷かった。とだけ言っておこう。
ヤベッ震えが・・・。
結局、一夏は生徒会長が保健室へ連れて行き、俺は先に指定された練習場所へ向かった。
▽
その後、一夏の特訓の為にシャルロット、セシリアと共にひたすら飛行しながらの射撃訓練を繰り返した。
ある地点を中心に円を描く様に高速で飛行しながら、相手の未来位置を予測して撃つ。と言う内容だ。
無論、安定性も必要となる。
俺も相手をしたのだが、やはりと言うか、彼は遠距離より近距離で叩き込む方が向いている。
俺も遠・中距離の攻撃は射撃管制に頼る時が有るが、一夏は近距離でしか真価を発揮出来ない様だ。
途中で何時ものメンバー達も観に来ていたが、皆同じ意見だった。
生徒会長はその事を考えて、特訓させた様だ。
因みに、生徒会長からの直々の指名で、俺も毎日の訓練に付き合う事になった。
▽
自室
「ハァ・・・それにしても、今日もまた内容の濃い一日だったなぁ」
俺は缶コーヒーを飲みながら、端末で映画を観ている。
今回はエイリアンが地球に攻めてきて、それを退けると言う、王道中の王道。
今は丁度、大統領が演説しているシーンだ。
すると、一夏の部屋の方から箒の怒声が聞こえた後、鉄と鉄がぶつかり合う音が聞こえたが直ぐに静かになった。
「まったく、今度は何なんだ?」
その真相を知るのは、現場に居た三人のみである。
▽
あれから数日
食堂のテーブルには、何時ものメンバーとテーブルに突っ伏した一夏と一言も喋らないウィリアム、という状況だ。
あれから毎日のスパルタトレーニングと度重なる生徒会長による自室での
正直俺も疲労が取れない。と言うのも、俺も少なからず彼女の被害に遭っているからだ。
そして、連日の猛特訓である。
空中戦に特化している。と言う理由で、俺も訓練に付き合っているのだが・・・まぁ、ひたすらしごかれた。
まるで、訓練生時代の様だ。
彼よりはまともに動けるがそれでも自分の弱点がボロボロ出て来る。
ISと戦闘機は勝手が違う。と言うことを改めて思い知った。
「二人共、大丈夫か?」
箒が心配なそうに声を掛ける。
「おう、なんとかな・・・」
「俺は大丈夫だが、一夏がな・・・」
「お茶飲む?ご飯食べられないなら、せめてこれだけでも」
「おう・・・サンキュー、シャル」
「それで?あの女はどうしたんだ、ウィル」
ラウラが聞いてくる。
てか、あの女って・・・。
「あぁ、彼女なら生徒会の仕事で来れないらしい」
「ま、下らない挑発に乗った一夏が悪いんだけどさ。何もここまで痛め付けなくてもねぇ・・・。ウィルも災難ね?」
「いや、実際に彼女の指摘は的を射ているんだ」
「・・・自業自得っつうか、楯無さんの言う通り、本当に弱いなって・・・早くマスターしないと・・・」
一夏が突っ伏したまま、ポツポツと語る。
「その、頑張ってる男子って僕は格好良いと思うな」
「そ、そうだな。お前はよくやっている」
「一夏。愚痴とかなら幾らでも聞いてやるし、お前は着実に伸びている。焦るな、マスターする事なんて目じゃないさ」
「コホン、一夏さん。もしあの部屋に居るのが辛いなら、仕方無く、人助けと言う事でわたくしの部屋にいらしても構いませんのよ?」
「っ!?ちょっとセシリア待ちなさいよ!一夏。アンタ、アタシの部屋に来なさいよ。トランプ有るわよ?」
「ウィル、お前もきつくなったら私の部屋に来ると良い。持て成すぞ?」
「あぁ、ありがとう。その内訪ねさせてもらうよ」
こう言う気遣いは本当に嬉しい。
「・・・さて、どうしようか?」
一夏を横目で見る。
「え?どうしたの?」
「シーっ」
鈴の問い掛けにシャルロットが人差し指を口に当てて制止する。
俺が彼を指差し、一同が覗き込む。
そこには、一夏が静かに寝息を立てていた。
▽
一夏を部屋に送り、自室の前まで帰ってきた俺は、ドアを開ける。
「お帰りなさい。ご飯にします?お風呂にします?それとも、わ・た・し?」
エネミーコンタクト。
今日は俺の番のようだ。
「・・・・・」
無言でドアを閉じる。
「勘弁してくれ・・・」
柄にも無く半べそをかいて、そう呟くウィリアムであった。