「━━というわけなのよ」
「はぁ・・・」
「成る程・・・」
夜、寮の一夏の部屋。
学園祭が終わって、俺達は生徒会長から説明を受けていた。
最近妙な組織がとある傭兵組織と手を組んだ事、狙いが一夏もしくは俺のISだった事、その予防線として俺達を監視していた事。
「で・・・その楯無さんは何者なんですか?」
「あら、優しいおねーさんよ?」
「そう言うのはいいですから」
「そうねぇ。更識家は昔からこの手の裏工作に関しては強いのよ。暗部って分かる?」
暗部━━つまり、けして表に出ることの無い、裏の実行部隊の事か。
「更識家は対暗部用暗部・・・お家柄ってやつね」
笑いながら扇子を開く。
そこには『常在戦場』と書かれていた。・・・まったくのっぴきならない人だ。
「しかし、これで当面の危機は去ったようだし、私は少し気が休まるわ」
だが、これで終わったわけではないだろう・・・。
「分かりました。では自分はこれで」
そう言って俺は部屋を後にした。
▽
部屋に戻る前に、叔父のトーマスに電話を掛ける。
『ウィリアムか?どうしたこんな時間に』
「おじさん。少し聞きたい事があるんだ」
『何だ?』
「ああ、実は━━」
今日の出来事を説明した。
『・・・亡国機業・・・まさか奴らが絡んでくるとはな』
「何か知ってるのか?」
『ああ、表向きはISを保有する傭兵会社を謳ってはいるが、その実質は犯罪者共の集まりだ。ギャングや元軍人まで引き入れている。要人護衛から盗み、誘拐、暗殺まで。金さえ積めば何でもやりやがる・・・規模はさほど大きくないらしいがな』
「・・・・・」
『発展途上国の内紛で何故か所属不明のISの姿を見た。という事例が後を絶たない。恐らく奴らが介入しているんだろう。それだけ裏の世界では重宝されているという事だ』
「成る程。分かった、ありがとう」
『気を付けろよ?』
「ああ」
そう言って電話を切る。
これで亡国機業の事は粗方分かった。後はそいつらを雇った組織だ。
「まあ、今悩んでも分からないものは分からんか・・・」
とにかく部屋に戻ろう。今日は疲れた。
「ただいま・・・っと」
誰もいない部屋で一人呟く。
「ああ、やっと帰ってきたか」
・・・ん?部屋を間違えたか?
一度外に出て、番号を確認する。
・・・間違ってはいない。
「っ!?また勝手に忍び込んだな!?」
俺は侵入者である少女。ラウラに詰め寄る。
「まあ落ち着け」
「これが落ち着いてられるか!勝手に入るなと何度言えば━━」
「いや、これは合法だぞ?」
「は?」
ニヤリと笑いながら、手に載っている
・・・鍵?どこのだ?部屋の鍵で無いのは分かる。
「それ、どこの鍵だ?」
「まだ分からないのか?」
待てよ?合法、部屋に侵入、鍵・・・
「まさか・・・!」
「そう、そのまさかだ。
「」
あの時に落としたままで、回収するの忘れてたぁぁぁ!!
自身の詰の甘さに絶句する。
「これからよろしく頼むぞ?」
「ハァ、よろしく・・・」
「む?随分と潔いな」
「抵抗したところで、どうせ生徒会長権限で揉み潰されるのがオチだ。やるだけ無駄だよ。それより眠くてな、もう寝ても良いか?」
神は俺に試練を与えているのか?それとも面白がってるのか?
「そうだな、早めに寝るとしよう」
ライトを消す。
「・・・お休み」
「ああ、お休み」
こうして、俺のハードな一日が幕を閉じた。
▽
次の日
「皆さん、先日の学園祭ではお疲れ様でした。それではこれより、投票結果の発表を始めます」
かくして、俺達の争奪戦の結果発表である。
「一位は、生徒会主催の観客参加型劇『シンデレラ』!」
「「「・・・え?」」」
生徒達から間の抜けた声が漏れる。
そして
「卑怯!ずるい!イカサマ!」
「何で生徒会なのよ!おかしいわよ!」
「私達頑張ったのに!」
楯無はまあまあと手で制し、言葉を続ける。
「劇の参加条件は『生徒会に投票する事』よ。でも、私達は別に参加を強制したわけではないから、立派に民意と言えるわね」
いや、グレーゾーンじゃないか・・・?それ。
それでもブーイングは収まるどころか、更に荒れる。
「はい、落ち着いて。生徒会メンバーになった二人には適宜各部活動に派遣します。男子なので大会参加は無理ですが、マネージャーや庶務をやらせて下さい。それらの申請書は、生徒会に提出するようにお願いします」
・・・はい?そんな事聞いてないんですが?
「ま、まぁ、それなら・・・」
「し、仕方ないわね。納得してあげましょうか」
「ウチの部活勝ち目無かったし、これはタナボタね!」
周りが納得し始める。
・・・俺達の意志は?
そして直ぐ様、各部活動のアピール合戦が始まった。
「じゃあまずはサッカー部に来てもらわないと!」
「たしかホーキンス君って泳ぎ上手かったよね?それなら手取り足取り教えてもらえないかな?グヘヘ」
「柔道部!寝技、あるよ!」
待て、話が勝手に進んで行くが、俺達は了承してないぞ!?
「それでは、特に問題も無い様なので、織斑一夏君とウィリアム・ホーキンス君は生徒会へ所属、以後は私の指示に従ってもらいます!」
彼女がそう締め括ると拍手と口笛がわき起こった。
「うっそだろ、おい!生徒会長の指示に従うとか!?」
「楯無さんの指示に従うなんて!?」
この先俺達はどうなるのやら・・・。分かるのは彼女に逆らっても無駄な労力を使うだけ。という事だけだ。
▽
「二人共、生徒会着任おめでとう!」
「おめでと~」
「おめでとう。これからよろしく」
会長である楯無を筆頭に“布仏本音”(通称のほほん)、そしてその姉の
にしても、まさかのほほんさんが生徒会メンバーだったとはな・・・。
場所は生徒会室。豪華な机が窓を背に鎮座しているのが印象的だ。
まさに権力の象徴だ。
「・・・何故こんな事に・・・?俺達を生徒会に入れるメリットは?」
「・・・ウィルと同じく」
「あら、良い考えでしょう?元は二人がどの部活にも入らないからいけないのよ。学園長からも、生徒会権限でどこかに入部させるようにって言われてね」
「おりむーとホー君がどこかに入ればー、一部の人は諦めるだろうけど~」
「その他大勢の生徒が『うちの部活に入れて』と言い出すのは必至でしょう。そのため、生徒会で今回の措置を取らせて頂きました」
三人の連携攻撃にぐうの音も出ない。
「俺達の意志が無視されてる・・・」
一夏が肩をガックリと落とす。
「あら、なぁに?こんな美少女三人もいるのに、不満?」
「そうだよ~おりむーは美少女はべらかしてるんだよー」
一夏の奴、酷い言われようだな。
「それにー、ホー君なんて前にキ━━━ムム~!」
慌てて手で口を塞ぐ。
「な、何でも無いですよ?」
「?まあ、美少女かどうかは知りませんが、ここでの仕事はあなた達に有益な経験を生むことでしょう」
まあ、事務は多少なら俺でも出来るがな。
取り敢えず今後の仕事を虚さんに訊いてみる事にした。
「当面は放課後に毎日集合してもらいます。派遣先の部活動が決まり次第そちらに行って下さい」
「了解しました」
「わ、分かりました」
「さあ!今日は生徒会メンバーが揃った記念と二人の新メンバーの就任を祝ってケーキを焼いてきたから、皆で頂きましょう」
「わ~。さんせ~」
「では、お茶をいれましょう」
「ええ、お願い。本音ちゃんは取り皿をお願いね」
「はーーい」
三人がてきぱきと準備を進めていく。
それから並べられたケーキは、悔しい事に非常に美味そうだった。
「それでは・・・乾杯!」
「かんぱーい~」
「乾杯」
「・・・乾杯」
「は、はは・・・乾杯。ハァ・・・」
こうして、俺達の生徒会所属が決まったのだった。