空軍パイロットのIS転生記   作:Su-57 アクーラ機

62 / 91
第60話

月曜日、俺は鬱屈した気分で柔道場の脇にいた。

というのも、今日からついに始まってしまったからである。『生徒会執行部・織斑一夏、ウィリアム・ホーキンス貸し出しキャンペーン』が。

 

「はぁぁぁ~」

 

因みに一夏はテニス部へ貸し出されている。

そして、俺がダウンな気持ちでいる理由。それは今目の前で勝手に行われている『ウィリアム・ホーキンスの個人指導権獲得トーナメント』のせいだった。

・・・そもそも俺は一応マネージャーなのでは?

 

「はぁぁぁっ!」

 

「負けないわよ!」

 

「ボーデヴィッヒさんが言っていた格闘術を『二人きり』で教えてもらうんだから!」

 

尚、本人の意志は無視である。

・・・ラウラ、なんて事をしてくれたんだ。

今この場にいない元凶に心の中で抗議する。

そもそも、俺はそんなに強くないんだが・・・。そう言うのはラウラに聞いた方が良いだろうに・・・。

そんな事を思っていると、決着が付いたようだ。

勝者以外の娘達が凄く泣きそうな顔でこっちを見てくる。

あぁ、頼むからそんな顔で俺を見ないでくれ・・・これじゃあ俺が泣かしたみたいじゃないか。

結局、交渉の末、一人ひとりに教える事になった。

皆めっちゃ目がキラキラしてる・・・。

 

「「「ご指導よろしくお願いします!」」」

 

おおう、凄いやる気だな。

 

「えーっと、まず相手が━━」

 

柔道やってる人にCQCとか教える必要あるのか?と疑問に思うウィリアムであった。

 

 

翌日

 

「「えええええ~っ!?」」

 

朝、食堂に叫び声がこだまする。

 

「しゃ、シャル!鈴!静かにしろって!」

 

「だ、だ、だって!だってぇ!」

 

「一夏ぁ!説明しなさいよ!」

 

「まあまあ、二人共落ち着けよ」

 

俺が二人を宥めるも効果は無し。

シャルロットは瞳を潤ませながら、鈴は目をつり上げながら彼に詰め寄る。

 

「「今朝セシリアが部屋の中からパジャマで出てきたってどういう事!?」」

 

この二人、絶対に誤解してるよな?

実は俺は既に一夏から事の経緯を聞いている。

しかし、弁護する隙が無いのだ。

 

「どういう事も何も、そういう事ですわ」

 

フフン、といった調子でセシリアが髪をさらっと横に流す。

セシリアよせ!これ以上火にガソリンを注ぐな!

しかし、彼女は尚も自慢気に話を続ける。

 

「一組の男女が一夜を過ごしたのですわ。つまり、そういう事でしてよ」

 

「そ、そんなぁ!」

 

「一夏ぁ!」

 

更にヒートアップする二人。

 

「ギャー!待て待て!昨日、セシリアにマッサージをしたんだ!そしたら途中で寝ちゃったから、部屋に泊めただけだ!」

 

俺が言う前に、彼が自ら消火したようだ。

二人も落ち着いてイスに座り直す。

 

「なんだぁ・・・」

 

「ま、どーせそんな事だろうと思ったわよ」

 

鈴さんや、どの口が言うのかね・・・。

そのまま朝食の続きに戻る。

 

「・・・何も正直に言う必要はありませんのに・・・」

 

セシリアが不機嫌そうに呟く。

 

「ん?何だ、セシリア?」

 

「何でもありませんわ!」

 

ぷいっとそっぽを向くセシリア。

わけが分からない。というような顔をしていた一夏だが、突如ビクリとした後、恐る恐る振り返る。

 

「一夏?どうしたんだ?・・・っ!?」

 

「・・・・・」

 

そこには腕を組み、仁王立ちした箒がいた。

 

「一夏・・・お前という奴は・・・!寮の規則を破ったのか!」

 

「ま、待て箒!話せば分かる!」

 

「ええい、うるさい!お前がそのつもりなら・・・い、いいだろう!わ、私が泊まって見張っておいてやる!」

 

箒が赤くなりながら、そう告げる。

 

「ええっ!ずるい!それなら僕も!」

 

「一夏!それなら幼なじみのアタシが泊まってあげるわよ!」

 

再度、出火する。

 

「騒がしいな、何事だ?」

 

そこへラウラも合流する。

 

「ああ、ラウラ。さっき起きたのか?」

 

「そうだ。だが、なぜ起こしてくれなかったのだ?」

 

「まだ時間はあったし、起こしたら悪いと思ってな?」

 

「別に起こしてくれても構わないぞ?」

 

「そうか、なら次からはそうするよ」

 

そんな話を横に一夏達は更にヒートアップしていく。

 

「ハァ、まったく。いい加減に落ち着いたらどうだ?規則違反なんだろ?」

 

「ラウラと同居してるアンタが何言ってんのよ!」

 

空かさず鈴にツッコまれる。

 

「ウグッ!し、仕方無いだろう!?生徒会長が勝手に取り決めて、それで決定したんだから!」

 

生徒会長の力強すぎだろ!あれじゃあ職権乱用と同じじゃねぇか!

 

「ウィル、この期に及んで何を言っている。あの勝負で勝ったのは私だ。故にあれは生徒会公認の特権なのだ!」

 

とうとう七人全員がギャー!ギャー!と喚き始めた。

 

「朝から何をバカ騒ぎしている」

 

「ん?げぇっ!暴力装━━ハッ!?」

 

ビシッ!と、空気が凍り付いた音を聞いた気がする。

組んだ腕の上でトントンと指を動かしているのは、漆黒のスーツがこの上なく似合う女性。織斑千冬先生だった。

 

「この馬鹿たれどもが」

 

スパパーンっと五人の頭を叩く織斑先生。因みに一夏には拳骨を、俺には拳骨の後に頭頂部をグリグリと捻られた。

・・・わあ、すげえ痛い。

 

「オルコット」

 

「は、はいっ!?」

 

「反省文の提出を忘れるな」

 

「は、はぃ・・・」

 

「それと織斑」

 

「な、なんでしょうか?」

 

「お前には懲罰部屋三日をくれてやる。嬉しいだろう」

 

「あ、ありがとうございます・・・」

 

「最後にホーキンス」

 

「はひっ!?」

 

「お前は放課後にグラウンドに集合しろ。みっちりと近接戦闘を鍛えてやる。ありがたく思え」

 

「い、イエス・ミス。恐縮です・・・」

 

くそぅっ!余計な事を口走ったばかりに・・・!

 

「さて!いつまでも朝食をダラダラと食べるな!さっさと食って教室へ行け!以上!」

 

食堂が慌ただしくなる。

俺もコーンスープをズズズっとすすった。

あれぇ?何で甘い筈のスープが塩辛いんだ?

これが涙の味ってやつだろうか。

そんな馬鹿な事を考えていると、今度は出席簿で頭を叩かれた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。