空軍パイロットのIS転生記   作:Su-57 アクーラ機

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第63話

キャノンボール・ファスト当日

会場は超満員で、空には花火がポンポン上がっている。

 

「おー、よく晴れたなぁ」

 

秋晴れの空を見上げながら、俺は手で日差しを遮る。

今日のプログラムはまず最初に2年生のレースがあって、それから1年生専用機持ちのレース、そして1年生の訓練機組のレース。そのあと3年生のエキシビション・レースだ。

 

「ウィル、こんな所にいたのか。早く準備をしろ」

 

「おう、ラウラ。いやなに、凄い観客数だなと思ってな」

 

「ああ、例によってIS産業関係者や各国政府関係者も来ているからな。警備だけでも相当な数だ」

 

成る程、これは恥ずかしい失敗は出来ないな。

 

「こんな所で油なんて売ってないでさっさとピットに戻るぞ」

 

「そうだな、早めに用意しとかないとな」

 

俺達はピットのある方に歩いて行った。

 

 

わぁぁぁぁ・・・!と、盛大な歓声がピットの中まで聞こえる。

今は2年生のレースが行われている。どうやら接戦のようで、最後まで勝者が分からない大混戦らしい。

 

「あれ?この2年生のサラ・ウェルキンって人はイギリスの代表候補生なのか」

 

「そうですわ。専用機はありませんけど、優秀な方でしてよ」

 

わたくしも操縦技術を習いましたもの、と付け加えるセシリア。その姿は既にIS『ブルー・ティアーズ』の高速機動パッケージ『ストライク・ガンナー』を展開している。

やる気満々だな。

 

「俺も負けないようにしないとな」

 

そう呟きながら、ISの最終点検を済ませる。

ピットには俺とセシリア以外にも参加者である一夏、ラウラ、箒、鈴、シャルロットが控えている。

 

「一夏、どうだ?行けそうか?」

 

「おう!ウィルの指導のおかげでバッチリだぜ!」

 

「そうか。言っておくが」

 

「「イチゴジャムをぶち撒けるなよ」だろ?」

 

「分かってるじゃないか。お互い頑張ろうぜ」

 

「そうだな、手加減は無しだ!」

 

ふふっ、久しぶりに超音速でぶっ飛ばせる。テンション最高だな!

 

「ん?鈴のパッケージは随分とごついな」

 

「フフン。いいでしょ。こいつの最高速度はセシリアにも引けを取らないわよ。無論、アンタにもね?」

 

増設スラスターを4基積んでいる状態の高機動パッケージ『(フェン)』は、それ以外にも追加胸部装甲が大きく前面に突き出している。・・・まさか、あれで体当たりするつもりじゃないないだろうな・・・。あんなので突っ込まれたら冗談抜きに笑えない。

衝撃砲が真横を向いているあたり、妨害攻撃の為なんだろうと思う。

まさにキャノンボール・ファスト仕様だな。

純粋にこれ目的の装備をしている。という意味では、彼女が一番厄介かもしれない。

 

「それはどうかな?こっちだって速度には自信がある。それに・・・」

 

そう言ってウェポンベイを開けて、格納されたミサイルを見せる。

 

「俺だってタダで道を譲る気はないぞ?」

 

「ふん。戦いは武器で決まるものでは無いという事を教えてやる」

 

そんな格好いい台詞を言ったのは箒だ。

 

「戦いとは流れだ。全体を支配するものが勝つ」

 

三基の増設スラスターを背中に装備したラウラが話に入ってくる。

専用装備ではないとはいえ、新型のスラスターは性能的に十分らしく、今回のレースも自信があるらしい。

 

「みんな、全力で戦おうね」

 

そう言って締めたのはシャルロットだった。ラウラと同じく三基の増設スラスターを、肩に左右一基ずつ、背中に一基配置している。

元々カスタム仕様のシャルロットの機体はオーダーメイドのウイング・スラスターを装備しているが、そこに更に出力を足した形になっている。

 

「よし!やるか!」

 

風防を下ろして、APUを作動させる。

シュゴォォォ!という聞き慣れた音と共に左主翼の付け根から排気ガスが勢い良く噴射される。

 

「みなさーん、準備はいいですかー?スタートポイントまで移動しますよー」

 

山田先生の若干のんびりとした声が響く。

俺達は各々頷くと、マーカー誘導に従ってゆっくりとスタート位置へと移動を開始した。

同翼も火器管制も良好、今日は頑張らないとな。

 

『それではみなさん、1年生の専用機持ち組のレースを開催します!』

 

大きなアナウンスが響く。

 

キィィィィイイイイイン!!

 

エンジンの回転数が安定し始めたようだ。

超満員の観客が見守る中、シグナルランプが点灯した。

3・・・2・・・1・・・GO!

 

「ッ・・・!」

 

急激な加速で一瞬景色が吹き飛ぶが、直ぐにハイパーセンサーからのサポートで視界が追い付いた。

まずはセシリアが飛び出したか・・・!

あっという間に第一コーナーを過ぎ、セシリアを先頭に列が出来る。

俺も出力を全開にして追いかける。

 

「一夏、お先!」

 

「横、通るぜ!」

 

「あ、おい!」

 

そう言って鈴と俺は一夏を追い越す。

 

「もらったわよ、セシリア!」

 

「ファイア!」

 

鈴が衝撃砲を、俺は30mm機銃を発射する。

 

「くっ!やりますわね!」

 

「へへん!おっそーい!」

 

「よし!追い抜いた!次は鈴、お前だ━━」

 

「━━甘いな」

 

「「!?」」

 

鈴の加速に合わせてその背後にピッタリと付けていたラウラが前に出る。どうやらスリップ・ストリームを利用して、気を窺っていたようだ。

 

「しまった!」

 

「っ!!」

 

「遅い!」

 

機銃を発砲しようした瞬間、ラウラの大口径リボルバー・キャノンがわずかに早く火を吹いた。

 

「うおっと!?危ねぇ!」

 

俺はギリギリかわせたが、鈴が被弾し、大きくコースラインからそれる。

更にラウラの牽制射が後ろの者にまで及び、後続を大きく引き剥がす。

 

「ふっ、よくかわせたな」

 

「ありがとよ、何か褒美をくれても良いんだぜ?」

 

「ならこれをくれてやろう!」

 

そう言ってラウラはこちらに砲撃をしてくる。

 

「くっ!流石に手強いな!それなら!」

 

ウェポンベイを開放。

正面のラウラをロックオンする。

乾いた電子音と共にバイザー越しのラウラに赤いカーソルが重なり、『TGT LOCK』と表れた。

 

「ターゲットロック・・・ファイ━━!?」

 

瞬間、真横をオレンジ色の火の玉が通り抜ける。

シャルロットがマシンガンを発砲してきたのだ。

慌ててバレルロールで回避する。

 

「ウィル、お先に!」

 

「やるな・・・!」

 

そのままシャルロットは出力を上げて、ラウラにじわじわ肉薄していく。

直ぐ後ろでは一夏が箒と小競り合いをしており、そこへ復帰してきたセシリアと鈴が加わり、大乱闘となる。

ドンッ!と、目標から外れた衝撃砲の砲弾がコースの緩衝壁に当たって爆ぜた。

 

「レースはまだまだ!」

 

「これからが本番よ!」

 

セシリアと鈴がそう言って自身を奮い起たせる。

 

「よし!後ろに付いたぞ・・・!」

 

そう言って、今度はロックオンカーソルをシャルロットに重ねる。

白熱するバトルレース、それが二週目に入った時に、異変は起きた。

 

━警告 不明機よりロックされています━

レーダー上には、『UNKNOWN』と描かれた光点が一つ。

 

「!?」

 

慌てて機体を傾けると、そこを一本の光が通った。

 

「チッ!ビーム兵器か!」

 

正面に向き直ると、トップのラウラとシャルロットの両名にも襲い掛かり、二人を撃ち抜いた。

 

「何だあいつは・・・!?」

 

コースアウトする二人に視線をやることもなく、突然の襲撃者はこちらを見下ろしていた。

 

 

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