空軍パイロットのIS転生記   作:Su-57 アクーラ機

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第66話

パァン!!

 

「っ!?」

 

いきなり発砲だと!?ここは無法地帯かよ!?

弾丸が俺に向かって真っ直ぐに飛んでくる。

不思議な事にそれはゆっくりと、そして鮮明に見えた。

 

「チッ!」

 

目の前の襲撃者━━サベージが舌打ちする。次の瞬間、俺へと向かっていた弾丸はその軌道を止められていた。

弾丸が空中で静止している。これは(・・・)━━!

ラウラのAIC・・・!

 

「伏せろ、ウィル!」

 

言われるまま体を下げると、俺の頭上ギリギリをナイフが飛んでいった。ガランガランと、腕から落ちた缶ジュースが地面を跳ねる。

 

「邪魔が入ったか・・・!」

 

サベージは自身を狙ってきたナイフを紙一重で回避し、壁に刺さったナイフを抜き取って投げ返した。

しかし、動体視力、視覚解像度等を数倍に跳ね上げる左目『ヴォーダン・オージェ(オーディンの瞳)』の封印を解いているラウラにとっては、そのナイフをAICで止める事は造作もない。

金色の左目がナイフの次にサベージを追うが、既に襲撃者の姿は消えていた。

 

「くっ、逃げたか・・・!」

 

「大丈夫か、ラウラ!?」

 

「私を誰だと思っている。お前こそ無事か?」

 

「ああ、ラウラが助けてくれなきゃ死んでたよ。ありがとう」

 

「例には及ばん」

 

そう言いながら、ナイフを回収して仕舞う。それから眼帯を着け直すラウラ。

俺も服に付いた土を払いながら、地面に落ちたままの缶ジュースを拾っていく。

 

「あ」

 

「ん?何だ?」

 

「やっぱりラウラの目はキレイだなと思ってな。夜だと特にキラキラ光ってて、まるで宝石みたいだ」

 

「な、なんだと?」

 

「襲われたのは参ったが、良いものを見れたからプラマイゼロ━━おわっ!?」

 

「な、な、何がプラマイゼロだ、馬鹿者!」

 

ズズイッと俺に詰め寄ってから、思いっきり足を踏んでくるラウラ。

 

「いでぇ!?」

 

「ふ、ふん!帰るぞ!」

 

「お、おい、待ってくれ。ちょっとくらい缶ジュースを持つのを手伝ってくれ。冷たくて腕の感覚が麻痺してきたんだ」

 

「知った事か!」

 

ズンズンと、ラウラは足早に歩き出す。

 

「そう言えば、どうして俺が襲われている所に間に合ったんだ?」

 

「そ、それは・・・!」

 

「ん?」

 

・・・い、言えるわけないだろう、二人きりになる機会をうかがっていたなど・・・

 

「ふ、二人きり・・・!?」

 

ラウラの顔とボソリと放った言葉に、ドキリとする。

 

「っ!何でもない!え、ええい、このっ、このっ!」

 

「うわっ、何だよ!?痛い痛い!あ、足を踏むな!こら、馬鹿!」

 

「だ、誰が馬鹿だ!」

 

「グッハァ!?」

 

カーッと耳まで赤くなったラウラは、俺に思いっきり踏み込みの良いパンチをくれた。

 

 

「「「襲われた!?」」」

 

月曜日、夕食の席で一夏と箒と鈴が口を揃えて大声を上げる。

 

「ああ、昨日の夜にな。それに奴は一夏とも面識のある奴だ」

 

「俺も?」

 

「サベージだよ」

 

「サベージ・・・サベージってまさか!?」

 

「前に二人が会ったって言う、亡国機業の人間だよね?一体何が目的なんだろう。ウィルは何か思い当たる事、ある?」

 

「・・・ある。軽い予測、だけどな」

 

シャルロットの問いかけに対して、俺は答える。

 

「それは?」

 

「ああ、みんなも知ってると思うが、あの学園祭の日に奴と初めて交戦したんだ」

 

「俺が襲われていた時にウィルが駆け付けてくれたやつだよな?」

 

「そうだ。多分それが理由の一つじゃないかと思うんだ。俺とお前で奴のISをズタズタにしたろ?ああいう奴は自尊心の塊だからな、恨まれてる可能性は十分にあり得る。一夏も気を付けろよ?」

 

「分かった。けどそれを言うならウィルの方がヤバイんじゃないのか?」

 

「?」

 

「だってお前、あいつの事を散々煽ってただろ?」

 

「・・・ああ、あれか」

 

「なんで煽るなんて真似を・・・」

 

ラウラが呆れる。

 

「いやぁ、ああいう輩は頭に血が昇ると取り乱すからな。作戦だよ作戦。それに親友に手を出されて俺も少なからず頭に来てたからな。あれは愚作だったか。アハハ・・・」

 

ラウラにジト目で睨まれて苦笑する。

 

「一夏さん、次は卵焼きを頂けますかしら?」

 

「ん、分かった。ほら」

 

一夏は右腕を負傷したセシリアに食事を食べさせている。利き腕をやられたのは大変だったな。

 

「あ、あーん・・・」

 

パクっ。口を手で隠しながら咀嚼するセシリア。

さすがにみんなの視線が恥ずかしいのか、若干赤面している。

そして、箒、鈴、シャルロットの顔が怖い。

 

「・・・なによ、セシリアってば。態とらしく箸の料理頼んでさぁ・・・」

 

「・・・パスタを片手で食べれば良いだろうに・・・」

 

ジローッと睨む鈴と箒の視線を振り払う様に、セシリアは咳払いする。

因みにメニューは鮭の塩焼きにだし巻き卵、それにほうれん草のゴマ和え、ジャガイモの味噌汁、海鮮茶碗蒸しだ。

どれも箸を使わないと食べづらいものばかりだ。

 

「一夏、茶碗蒸しはスプーンで食べれるでしょ?ね、セシリア?」

 

ニッコリ、シャルロットが凄く威圧的な笑みを浮かべる。

 

「そ、それは・・・わ、わたくしは左手だと上手く食べられないのですわ!」

 

「そう、ならアタシが食べさせてあげるわ」

 

「り、鈴さん!?ちょっと・・・せめて冷ましてから・・・あつつつっ!」

 

グイイッと熱々の茶碗蒸しをのせたスプーンがセシリアの口にねじ込まれる。

よ、容赦ねぇな・・・。

 

「あらあら、楽しそうですね~」

 

「あ、山田先生。それに・・・」

 

織斑先生も一緒だった。二人ともその手に夕食のトレーを持っている。

 

「あんまり騒ぐなよ、馬鹿者が」

 

「わ、わたくしは怪我人ですのに・・・」

 

「ハァ、凰、怪我人にはもう少し丁重にしてやれ」

 

「は、はい・・・」

 

「ところで、お前達はいつもこのメンツで食事をしているのか?」

 

「あ、はい。大体は」

 

「そうか」

 

「あら?織斑先生、もしかして気になるんですか~?」

 

珍しい。あの山田先生が茶化すなんて。

 

「山田先生、後で食後の運動に近接格闘戦をやろうか」

 

「じょ、冗談ですよぉ!あ、アハ、アハハハ~・・・」

 

見事に自爆した。

 

「まったく・・・あまり騒ぐなよ。・・・と言っても、10代女子には馬の耳に念仏か。まあ、程々にな」

 

それだけ言うと、織斑先生は山田先生を連れて奥のテーブルに向かっていった。

 

 

「・・・で、ウィルとラウラは分かるが、他はなんでついてくるんだ?部屋反対だろ?」

 

寮の自室に向かう途中、一夏が後ろをゾロゾロついてくる一同に尋ねた。

 

「そ、それは・・・別にアンタの事を心配してる訳じゃないわよ!」

 

そう言って返す鈴。

 

「あー、えっと、ほら。たまには一夏の部屋でお話しようかなって思って」

 

続けてシャルロットがそう告げる。

 

「う、うむ!そうだぞ一夏、こうやって全員でコミュニケーションを取ることも大切だぞ」

 

箒もうんうんと頷きながら、彼を説得する。

 

「あの、一夏さん?よろしければ包帯の交換を手伝って欲しいのですけれど」

 

「おお、良いぜ」

 

一夏の言葉にパァッと顔が輝くセシリア。

 

「まったく。傷の手当てくらい一人で出来なくて何が代表候補生か」

 

相変わらずラウラは辛口だなぁ。

 

「この国では怪我に唾液を塗ると治るそうだ。丁度良い、そうしろ」

 

「ラウラ、確かに唾液を塗ったら極微少の効果があるらしいが、非衛生的だし、そもそもあれはまじないの一種だ」

 

「そうなのか?因みに私の唾液には医療用ナノマシンが微量だが含まれているぞ」

 

ワオ、そうなのか。なんかすごいような、あんまり突っ込んじゃいけないような。

ラウラはドイツの軍事研究所で生まれた試験管ベビーだって話だったよな。実際に俺自身もその光景を視た(・・)

戦う為だけの存在を生み出すという行為は━━どうなんだろうか。

正義感で否定する事は簡単だ。だが、それは彼女の存在自体を否定する事になる。

そもそも、彼女は兵器でも何でもない。立場はどうであれ、普通の少女だ。あの日、二人で出掛けた時に見せた顔を、人を殺す為だけ(・・)の『兵器』が出来る筈が無い。

勝手だが、これが俺の持論だ。

それに、日本に来て━━この仲間達と出会って、けしてラウラの人生は戦うだけのものでは無くなったんだと、そう思いたい。

 

「こら、聞いているのか。まったく、嫁の風上にも置けないやつだ」

 

「ああ、スマンスマン」

 

『嫁』の単語を彼女が発する度に、密かにキスの事を思い出してしまうのは黙っておこう。

俺自身、あの事を思い出す度に顔が熱くなってしまうのだから。

 

「ん?どうした?」

 

「い、いや、何でもない」

 

何時の間にか顔を寄せてきたラウラに内心ドキリとしながら、俺達は一夏の自室に入って、時間が経つのも忘れて談笑した。

 

 

「ハァー、今日も疲れた」

 

そう言って自分のベッドに倒れ込む。

 

「そう言えば、今度全学年合同のタッグマッチがあるんだったよな?」

 

「ああ、昨日のキャノンボール・ファストの襲撃事件を踏まえて、専用機持ちのレベルアップが目的らしい」

 

「確かに、あいつは並みの腕の操縦者じゃなかったな・・・」

 

「ISではない機体に乗る謎の男、か?」

 

奴が男だった事は取り調べの際、生徒会長に話した。機体━━『ターミネーター』と『トリニティ爆弾』については、存在は知られていたらしい。外見までは分からなかったそうだが・・・。

流石は更識家、この程度の情報収集は朝飯前、という訳か。

 

「・・・ああ。悔しいがあいつの方が俺より強かった。だから今回のタッグマッチで更にレベルアップしてやるさ」

 

「そうか、だが私達もいることを忘れないでくれ。お前は一人ではない」

 

「勿論分かってるさ。さて、そろそろ寝るか」

 

「そうだな、明日もまた早い」

 

「あ、そうだ。昨日セシリアから良いコーヒーを貰ってな、明日早速飲もう思うんだがラウラも飲むか?」

 

「頂こう。楽しみにしている」

 

「分かった。それじゃ、お休み」

 

「お休み」

 

電気を消して俺達は眠りについた。

 

 

「クソッ・・・!癇に障るガキ共だ・・・!」

 

薄暗い部屋で、サベージは自棄酒に浸っていた。

 

「おやおやぁ、こんな所に居たねぇ」

 

声のした方を見ると、中背、小太り気味で眼鏡をかけた男が立っていた。

 

「あ?てめぇ・・・。何の用だ?」

 

「そんな事はどうでも良いじゃないかぁ。それより、彼が怒っていたよぉ?勝手な行動は慎めとぉ」

 

「うるせぇ!あのガキにはたっぷりと礼をしてやる!てめぇらが何と言おうがな!」

 

「まったく・・・君達は我々に雇われているという事を理解してもらいたいねぇ」

 

「けっ!」

 

「まあ、君は休んでいたまえ。そろそろアレを投入する頃合いだしねぇ」

 

「ふんっ!あんなガラクタに何が出来る?どうせ前の『ゴーレムⅠ』と同じ事になるだけだ」

 

すると、男はニヤリと笑い、眼鏡をクイッと上げた。

 

「今回の『ゴーレムⅢ』は一味違うよぉ?それに随伴として、無人戦闘機『セイバー7』を2機投入しようと思ってねぇ」

 

「ハッ、IS相手に無人戦闘機だと?」

 

「セイバー7は人工知能を持つ最新鋭機でねぇ。高機動戦闘能力を備え、人間の様な失敗は犯さない」

 

「・・・・・」

 

「例えばぁ━━頭に血が昇って無様な失敗を起こしたり(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)・・・とかねぇ」

 

男がニヤァっと笑う。

 

「てめぇっ!!」

 

椅子を盛大に蹴倒し立ち上がるが、手で制された。

 

「まあまあ、少し落ち着きたまえよぉ。それにセイバー機は元からISを墜とす為にけしかける訳じゃないしねぇ」

 

「・・・報酬が手に入ったら、あのガキの次にお前を殺してやる・・・!」

 

「そうかぁい。楽しみにしているよぉ?」

 

男はそう言って歯を見せて笑う。部屋の明かりによって照らされた眼鏡が光を反射して、不気味に見えた。

 

 

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