空軍パイロットのIS転生記   作:Su-57 アクーラ機

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第70話

タッグマッチ当日

 

 

「とうとう来たか・・・タッグマッチトーナメント」

 

「どうした?緊張しているのか?」

 

朝、自室でコーヒーを飲みながらラウラと会話する。

 

「まあな。2年や3年の専用機持ちも出てくるんだ。緊張もするさ」

 

ズズズッとコーヒーを啜りながら答える。

 

「ま、全力で挑むだけだ。盛大に暴れてやるさ」

 

ニヤリ、笑い顔を浮かべる。

 

「ふふ、その意気だ」

 

朝の一服を終え、俺達はホールに向かった。

 

 

「それでは、開会の挨拶を更識楯無生徒会長からして頂きます」

 

虚さんがそう言って、司会用のマイクスタンドから一歩下がる。

因みに俺と一夏、のほほんさんも生徒会メンバーなので、虚さんの後ろに整列していた。

 

「ふあー・・・。ねむねむ・・・」

 

「シッ。のほほんさん、教頭先生が睨んでる」

 

一夏がのほほんさんに注意する。

因みに俺は一夏の真横で手本の様にビシッと真顔で立っている。こういう場では気が引き締まるものだ。

 

「ういー・・・」

 

目を凝らして見ないと分からない程、小さくのほほんは頷いた。それを見てまた睨み付ける教頭先生。

 

「どうも、皆さん。今日は専用機持ちのタッグマッチトーナメントですが、試合内容は生徒の皆さんにとっても勉強になると思います。しっかりと見ていて下さい」

 

淀み無く澄んだ声、しっかりとした発音は、まるで一つの美しい音楽のようですらある。

 

「まあ、それはそれとして!」

 

パンッと扇子を開く。そこには『博徒』の文字。

 

「今日は生徒全員に楽しんでもらう為に、生徒会である企画を考えました。名付けて『優勝ペア予想応援・食券争奪戦』!」

 

ガタガタッと俺と一夏がズッコケそうになる。

わあああああっ!と、きれいに整列していた生徒達の列が一斉に騒ぎ出した。

 

「ちょっ!それギャンブルじゃないですか!ここはベガスじゃないんですよ!?」

 

ズッコケそうになるのを必死に耐えて、ツッコミを入れた。

 

「ホーキンス君、安心しなさい」

 

「え?」

 

「根回しは既に終わってるから」

 

ニコッと笑みを浮かべる会長。よくよく見ると、教師陣の誰も反対していない。・・・織斑先生だけは頭が痛そうにしているが。

 

「それにギャンブルじゃありません。あくまで応援です。自分の食券を作ってそのレベルを示すだけです。そして見事優勝ペアを当てたら配当されるだけです」

 

「それをギャンブルって言うんですよっ!」

 

「そもそもそんな企画、一度も聞いてないですよ!?」

 

どうやら、一夏も初耳のようだ。

 

「おりむーもホー君も生徒会に来ないから~。私達で多数決取って決めましたぁ」

 

「くっ・・・。そりゃ確かに最近は整備室にしか行ってなかったけど・・・!」

 

一夏がそう言って頭を抱える。

 

「で、でも確か日本ではギャンブルが法律上禁止されてるんじゃ・・・」

 

「ホー君、ホー君」

 

「な、何だ?」

 

「バレなきゃ犯罪じゃないんだよー」

 

「」

 

どんな理屈だよ!?

屈託の無い笑みでそう言われる。しかも、既に会長は生徒全員のハートをキャッチしている。

・・・ハァ、諦めよう。これがIS学園、これが会長の力なんだ・・・。

 

「では、対戦相手を発表します!」

 

そう言って大型の空中投影ディスプレイが会長の後ろに現れる。

そこに表示されたのは━━

 

「げえっ!?」

 

「Oh・・・」

 

第一試合、織斑一夏&更識簪vs篠ノ之箒&更識楯無━━。

早速本命か・・・。いつぞやのラウラ戦を思い出すな。ま、今回はそのラウラがパートナーなんだけどな。

 

 

「まさか初戦で楯無さんと当たるとはな・・・」

 

「ああ、なんか俺とお前ってこういうの多いよな?」

 

そんな話をしながら、第四アリーナへの道を歩く俺と一夏。俺の出番はまだだが、先に着替えを済ませておこう。という判断で俺もついていっているのだ。

 

「あっ、織斑君、ホーキンス君!」

 

たったかたーっと走って来たのは、黛薫子先輩だった。

 

「どうしたんですか?俺達、ISスーツに着替えに第四アリーナまで行かなきゃいけないんですけど」

 

一夏がそう告げる。

第四アリーナはここからかなり遠回りして行かなければいけないので、かなり遠い。試合前から中距離ランニングと同じ事をさせるとは、部屋割りを決めた人はまさに鬼畜だな。

 

「これこれ、オッズ(予想配当率)なんだけど」

 

「はあ」

 

「どれどれ?」

 

見せられた紙には、ペアの投票率が書かれていた。

 

「因みに俺は━━げっ。最下位・・・」

 

一夏がガックリと肩を落とす。

 

「まあ、更識さんのデータも未知数だからでしょうけどね」

 

俺達の投票率は・・・っと。お、あった。ふむ、5位か・・・。

 

「・・・専用機持ちって結構いるんですね」

 

「そうよ。1年生だけで8人。今年は異常よ、異常。2年と3年合わせても片手で足りるのに・・・しかも、最新型の第三世代が何機いると思ってるのよ」

 

「なんか凄いですねぇ」

 

俺はヒュー。と、口笛を鳴らした。

 

「何呑気な事言ってるの。君達のせいでしょ、君達の!」

 

・・・あ、そうだった。

 

「しかも篠ノ之さんの紅椿に至っては第四世代相当な訳だし・・・」

 

「みたいですね」

 

「って!そんな話はいいのよ!ともかくね、試合前にコメント頂戴!今から全員分行かないといけないから、私忙しいのよ!はい、ポーズ!次、ホーキンス君!はい、ポーズ!」

 

言うなり、カシャッ!カシャッ!とシャッターを切る。相変わらず行動力の塊みたいな人だった。

 

「写真オーケー!それじゃあコメント!」

 

「え、えっと・・・精一杯頑張ります!」

 

「目指すは優勝!くらい言ってよ!」

 

「いや、それは・・・」

 

「うーん。あ、そうだ」

 

何かを考えてから、黛先輩は顎に手を当ててキリリッとキメ顔を作った。

 

「『俺に負けたら恋のハーレム奴隷だぜ』・・・って、どう?」

 

うわぁ・・・それはあまりに痛過ぎるだろ・・・。

 

「なんですか、それ!」

 

「いや、姉さんがそんなような事言ってたから」

 

一夏・・・お前は箒との取材の日に何があったんだ?

 

「あはは。織斑君って本当にからかうと面白いわねー。たっちゃんの言った通りだわ」

 

「やめてくださいよ、本当に・・・」

 

「まあまあ、そう言わずに。それじゃあホーキンス君!一言お願い━━」

 

黛先輩がそう言って近づいてきた時だった。

 

━━ズドォオオオオンッ!!

 

「「「!?」」」

 

突然、地震の様な大きな揺れが襲う。

 

「きゃあっ・・・!?」

 

「危ない!」

 

連続して続く振動に、黛先輩が姿勢を崩す。

壁に体をぶつけそうになる先輩を、俺は反射的に腕を引いて抱き寄せた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「う、うん。それより・・・何が起きているの・・・?」

 

バシャンッ!と派手な音を立てて、廊下の電灯が全て赤色に変わる。続けて、あちこちに浮かんだディスプレイが『非常事態警報発令』の文字を告げていた。

 

『全生徒は地下シェルターへ避難!繰り返す、全生徒は速やかに地下シェルターへ避難!』

 

先生が緊急放送で避難を促す。

続けて、また大きな衝撃が校舎を揺らした。

 

「おい一夏!大丈夫か!?」

 

「ああ、大丈夫だ!それよりも・・・」

 

「ああ。これは・・・!」

 

前世でも一度だけ似たような体験をした事がある。乗艦していた空母が奇襲攻撃を受けた時の状況にそっくりだった。

 

 

「織斑先生!」

 

廊下を走っていた真耶は、やっとの事で千冬を見つけた。

 

「山田先生、状況は?何が起こっている?」

 

「しゅ、襲撃です!こ、この画像を見て下さい!」

 

息を切らしながら、真耶は携帯端末を取り出す。そこには数秒前のアリーナ・カメラで確認された『敵』の姿が克明に写っていた。

 

「こいつは・・・!?」

 

「は、はい!以前現れた無人機と同じもの━━いえ、発展型だと思われます!」

 

その機体は以前襲撃してきたゴーレムⅠとは違って全体的にほっそりしたシルエットに頭部は以前の複眼とは違い、高視野を獲得する為、ラインアイとなっており、額からは羊の角のようなハイパーセンサーがとびだしている。そして、右腕には巨大なブレードが、左腕にはあのゴーレムⅠの意匠を受け継いだ巨腕。その掌には超高密度圧縮熱線を撃ち出す穴がポッカリと開いていた。

 

「数は?」

 

「5機です!待機中だった専用機持ちの生徒が襲われています!それとは別に、二つの機影も確認しました!」

 

「分かった。教師は生徒の避難を優先。戦闘教員は全員が突入用意、装備はレベルⅢでツーマンセルを基本に拠点防衛布陣を敷け!」

 

「りょ、了解!」

 

真耶は背筋を伸ばしてそう答えると、自分の機体を取りに格納庫へと走り出した。

その背中を見送ってから、千冬は思い切り壁を殴りつける。

 

「やってくれるな・・・。何者か知らんが、甘く見るなよ」

 

千冬はその目に怒りの炎を宿しながら、小さく━━しかし、はっきりとした声でそう呟いた。

 

 

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