空軍パイロットのIS転生記   作:Su-57 アクーラ機

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第75話

「あぁ、畜生・・・まだ喉に違和感を感じる・・・」

 

調理実習室での悲劇の次の日。土曜日。

俺は、まだ感じる喉の違和感に悩まされながら、ラウラと共に廊下を歩いていた。

 

「ウィル、本当に大丈夫なのか?」

 

ラウラが心配そうに聞いてきた。

 

「え?ああ、大丈夫だ。多分直ぐに直るだろ」

 

そう言いながら、缶ジュースを一口飲む。

冷たい感覚が喉を通り、実に心地好い。

 

「しかし、驚いたぞ。まさかウィルがあんなに取り乱すとは・・・。普段なら想像出来ないな」

 

ふふっ。と笑いながらそう言ってくる。

 

「笑うなよ・・・。ヤバかったんだからな?あの肉じゃがを一口食ったらデカイ川の向こう岸で見知らぬじいさんが手を振ってたり、突然舌と喉が焼けるような感覚に襲われたり・・・なんならお前も試してみるか?んん?」

 

少し意地悪く言ってみる。

 

「いや、遠慮しておく」

 

即答された。

 

「まあ、そうだろうな。そう言えば、あの後━━」

 

セシリアの料理はどうなったんだ?と聞こうとしたところで、突然廊下の灯りが一斉に消えた。

廊下だけでなく、教室と、電子掲示板も、全てが一瞬で消えたのだ。

もちろん、昼間なので日光があるため、真っ暗にはならない。━━と、思いきや。

 

「防護シャッターが閉じてるだと!?」

 

ガラス窓を保護するように、斜めスライドの防壁が順番に閉じていく。

ざわざわとそこら中からどよめきが聞こえる中、全ての防壁が閉じて、校舎内は真っ暗になった。

 

「・・・あれから2秒。ラウラ」

 

「分かっている。緊急用の電源にも切り換わらないし、非常灯も点いていない。明らかにおかしい」

 

二人はそれぞれにISをローエネルギーモードで起動し、視界にステータスウィンドウを呼び出す。同時に視界を暗視モードに切り換え、ソナーに温度センサー、それから動体センサー、音響視覚化レーダーを起動した。

 

「ラウラだ。シャルロット、無事か?」

 

ラウラがシャルロットにプライベート・チャネルで安否を確認している。

そこへ、別の回線から通信が入った。

 

『専用機持ちは全員地下のオペレーションルームへ集合。今からマップを転送する。防壁に遮られた場合、破壊を許可する』

 

織斑先生の、静かだけれど強い声。

それは、このIS学園でまたしても事件が発生した事を克明に告げていた。

 

 

「では、状況を説明する」

 

IS学園地下特別区画、オペレーションルーム。

そこに、現在学園にいる専用機持ち全員が集められていた。

俺、ラウラ、箒、セシリア、鈴、簪、更識会長が立って並んでいる。その前には、織斑先生と山田先生だけがいた。

因みに一夏は白式の製造元の研究所へオールメンテナンスの為に外出しており、ここにはいない。

どうやら、この部屋は完全に独立した電源で動いているらしく、そこらじゅうにディスプレイが設置されている。どれも旧式だが・・・。

・・・まるで核シェルターだな。

そう思っていると、山田先生が表示情報を拡大して全員に伝え始めた。

 

「現在、IS学園では全てのシステムがダウンしています。これは何らかの電子的攻撃・・・つまり」

 

「ハッキング・・・」

 

「はい、その通りです」

 

俺の呟きに山田先生が頷いて答える。

 

「今のところ、生徒に被害は出ていません。防壁によって閉じ込められる事はあっても、命に別状があるような事はありません。現状について質問はありますか?」

 

「はい」

 

ラウラが挙手をする。流石、現役の軍人は有事の際に行動が機敏なのだった。

 

「IS学園は独立したシステムで動いていると聞きましたが、それがハッキングされる事などあり得るのでしょうか?」

 

「そ、それは・・・」

 

困った様に山田先生が視線を横に動かす。それを受けて、織斑先生が口を開いた。

 

「それは問題ではない。問題は、現在何らかの攻撃を受けているという事だ」

 

「分かりました」

 

ラウラは質問を終える。

 

「質問よろしいでしょうか?」

 

今度は俺が挙手する。

 

「はい、ホーキンス君」

 

「システムハックを受け、電力も遮断されているという事は、IS学園のエネルギーシールドは?」

 

「おそらく無力化されているだろう」

 

織斑先生がそれに答える。

他に質問者がいない事を確認し、山田先生は作戦内容の説明に移行した。

 

「それでは、これから篠ノ之さん、オルコットさん、凰さん、デュノアさん、ボーデヴィッヒさんはアクセスルームへ移動、そこでISのコア・ネットワーク経由で電脳ダイブをして頂きます。更識簪さんは皆さんのバックアップをお願いします」

 

スラスラと山田先生が告げる。しかし、それに対する専用機持ち達の反応は静かなものだった。

 

「「「・・・・・」」」

 

「あれ?どうしたんですか、皆さん」

 

キョトンとしている山田先生の前に、会長以外の全員がポカンとしていた。

 

「「「で、電脳ダイブ!?」」」

 

「はい、理論上可能なのは分かってますよね?ISの操縦者保護神経バイパスから電脳世界へと仮想可視化しての進入が出来る・・・あれは、理論上ではないです。実際のところ、アラスカ条約で規制されていますが、現時点では特例に該当するケース4である為、許可されます」

 

山田先生の説明が終わったところで、織斑先生はパンッと手を叩いた。

 

「よし!それぞれは電脳ダイブを始める為、各人はアクセスルームへ移動!作戦を開始する!」

 

その檄を受けて、ラウラ達はオペレーションルームを出る。

後に残ったのは、織斑先生と山田先生、そして、俺と会長だった。

 

「さて、お前達には別の任務を与える」

 

「なんなりと」

 

「はい、どの様な任務でしょう」

 

「おそらく、このシステムダウンに乗じて、襲撃が予測される」

 

「敵━━、ですね」

 

「・・・・・」

 

この混乱を引き起こし、その隙にこの学園、もしくは専用機持ち達に危害を加えようとする勢力がいる。織斑先生はそう睨んでいた。その可能性は極めて大であろう。

 

「そうだ。今のあいつらは戦えない。悪いが、頼らせてもらう」

 

「任されましょう」

 

「お任せ下さい」

 

「お前達には厳しい防衛戦になる」

 

「ご心配なく。これでも私、生徒会長ですから」

 

そう言って不敵に微笑んで見せる会長。

 

「ホーキンス。お前にはIS学園の上空及び周囲の防衛を頼みたい」

 

「イエス・ミス。上は任せて下さい」

 

「任せた。30分後に準備を済ませてグラウンドに集合だ」

 

俺達は、「はい」と言って、オペレーションルームを出て行った。

 

 

オペレーションルームから出た後、俺は更衣室に向かい、今はISスーツを装着中だ。

そこへ、一夏が大急ぎで入って来た。

 

「一夏、帰って来てたのか」

 

「ああ。帰って来た途端、千冬姉にISスーツに着替えてグラウンドに集合しろって言われたんだ」

 

「そうか。後で先生から説明されるだろうから、その時に聞くと良い」

 

「そうだな。なんかヤバそうなのは俺でも分かる」

 

「実際にヤバいしな」

 

チャックを締め、ベルトをカチリと固定する。

 

「よし」

 

対Gベストと対Gパンツの固定具合の確認を済ませる。

 

「やるぞ・・・!」

 

「おう!」

 

そう言って、グラウンドへ向かった。

 

 

 

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