空軍パイロットのIS転生記   作:Su-57 アクーラ機

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第77話

急げ急げ急げ!!

学園近海から大急ぎで帰った俺は、その足で地下への最短ルートを邪魔するシャッターを潰しながら、マップに指定された位置へと急行した。

 

「着いた!」

 

パネルを操作してドアをひらくと、中には織斑先生と山田先生に会長、それに先程撃墜した亡国機業の戦闘員と見知らぬ男が気絶したまま拘束されていた。

 

「遅れてすいません。その男は?」

 

「ええ。さっき一夏君と裏側の敵を迎撃し終わったところに、墜ちてきたのよ」

 

俺の問いに会長が答える。

 

「さっきのターミネーターのパイロットか・・・」

 

「話は後だ!ホーキンス、直ぐにボーデヴィッヒ達の救出に向かえ!織斑は既に向かった!」

 

「救出!?」

 

「場所はこの先だ。急げ!」

 

「い、イエス・ミス!」

 

クソッ!何が起こってるってんだ!

教えられた部屋の前でISを解除し、中へと入る。

その真っ白な部屋の中には、眠っているラウラ達と、焦燥した顔つきの一夏、狼狽える簪がいた。

 

「ウィル!」

 

「あ・・・ウィリアム、君」

 

「今の状況は?」

 

「ええと・・・」

 

口下手な簪に早急な説明を要求するのはちと難しかったか。

そう思っていると、俺と一夏にメールが着信した。

 

『織斑君とホーキンス君へ。

今現在このIS学園はハッキング攻撃によって無力化されています。コントロールを奪還すべく電脳世界に侵入した篠ノ之さん達も、同様に何かしらの攻撃を受けて連絡がつきません。また、このままでは目覚める事も無いでしょう。そこで、二人には同じようにISコアネットワーク経由で電脳世界へダイブし、みんなを救出して下さい。よろしく頼みます。更識簪より』

 

・・・大体は把握出来た。

 

「それで、電脳世界にダイブってどうするんだ!?」

 

「寝りゃあ良いのか?」

 

「・・・・・」

 

簪が手にスタンガンを持っている。何をする気だ?

 

「おい、かんざ━━」

 

バリバリバリバリバリバリッ!!!

 

「しいいいいいいっ!?」

 

一夏がバタリと倒れた。

 

「っ!?簪、お前何を・・・?」

 

「?眠らせた、だけ。じゃないと、ダイブ出来ない・・・」

 

ご、強引な事をするな・・・。

そう思っていると、簪が俺にゆっくりと近付いてくる。

 

「ま、待て!流石にスタンガンは勘弁してくれ!しかもそれ出力高過ぎだろ!?」

 

「そう。それなら、これ・・・」

 

そう言ってタッパーを取り出し、中身をスプーンで掬って俺の口目掛けて突っ込んで来た。

 

「むごぉっ!?」

 

こ、これは・・・!?

 

「セシリアの・・・肉じゃが・・・?何故、お前が、これを・・・グフッ・・・」チーン

 

俺の意識はブラックアウトした。

 

 

 

「おい!あの肉じゃがはきちんとガラス固体化して地中深くに埋めとけよっ!!」

 

ガバッと身を起こす俺。

━━あれ?

いつの間に横になったのか、そして、目の前に広がる草原は何なのか。

 

「お?ウィルも来たみたいだな」

 

「ああ、一夏か。・・・どうやらここが電脳世界みたいだな」

 

『森の中に急いで。そこにあるドアの先にみんながいる。二人ならきっと出来る筈』

 

簪の声が頭の中に響いた。

 

「「了解!」」

 

俺達は強く頷いて、駆け出した。

 

 

「ここは・・・?」

 

一つ目のドアをくぐると、夕暮れ時の町に出てきた。

 

「間違いない。ここは昔、鈴の中華料理店があった所だ」

 

「そう言えば前に聞いたな。昔、両親が中華料理店を経営してたって」

 

一夏の呟きを聞き取り、クラス代表戦の時の事を思い出す。

 

「と言う事は・・・。ウィル、こっちだ!」

 

「おう!」

 

走る一夏を追って、俺は中華料理店『鈴音』へ向かって駆けた。

 

 

「ここが鈴の両親の中華料理店か・・・」

 

「ああ。まったく同じだ・・」

 

目の前には『中華料理店 鈴音』の看板。

 

「一夏。思い出に浸っている暇は無いぞ」

 

「!そうだな。よし!早く鈴を助けよう!」

 

そう言って玄関に入り、階段を駆け上る。

 

「ここか?」

 

「ああ!昔、鈴の家に何度も遊びに行った事がある。間違い無い!」

 

「オーケー!突撃するぞ!」

 

「っ!」

 

一夏が勢い良くドアを開けた。

 

「てめええっ!鈴に何してやがる!」

 

「マジで何してるんだ!?」

 

「え、え、一夏・・・?」

 

目の前には、学ランを着た一夏?と下着が半分ズラされかけた鈴が立っていた。

 

『ワールド・パージ、異常発生。異物混入。排除開始』

 

「きゃああああっ!?」

 

どこからともなく機械音声が聞こえた後、鈴が頭を痛そうに抱えて、うずくまった。

一夏が目の前の学ラン一夏を殴り飛ばした。

ギョロリ、と。学ラン一夏の目が真っ黒に染まる。

 

「命令遂行。障害排除」

 

無機質な声で、機械のような言葉を放ち、一夏に飛び掛かる。

 

「排除されるのはお前の方だ!」

 

そう言って、俺は学ラン一夏の肩を掴んで壁に投げ飛ばした。

ガシャン!と音を立て、壁に叩き付けられる学ラン一夏。

 

「助けて、一夏ぁっ!!」

 

鈴が泣きながら叫んだ。

その言葉に応じるように、ガシッと一夏が鈴を抱きしめた。

 

「大丈夫だ。俺はここにいる。鈴を━━守る」

 

「一夏・・・」

 

その一言で、鈴が正気に戻ったようだ。

ニセ一夏が再度立ち上がり、構える。

 

「消えなさいよ、偽者!」

 

ギリィッ、と痛みを奥歯で噛み殺しながら、鈴がIS『甲龍』を展開し、最大出力で衝撃砲を放った。

まるでレンガのようにバラバラになるニセ一夏。それと同時に、部屋も崩れ始める。

 

「鈴、ウィル、走るぞ!」

 

「うん!」

 

「走ってばかりだな!」

 

ドアに向かって、俺達は走った。

そして、光に包まれて━━。

 

 

「ここは・・・?」

 

「森の中・・・みたいね」

 

「と言う事は戻ってきた訳か」

 

俺達が出てきたドアは光の粒になって消えた。

残る四つのドアが支えも無く立っているのは、とてもシュールだった。

 

「あ」

 

「?」

 

「どうした?」

 

突然の一夏の反応に疑問を浮かべる。

 

「いや、鈴・・・その格好は・・・」

 

「え?」

 

「おっと・・・」

 

顔を背ける一夏。俺もフイッと顔を背ける。鈴は「?」顔で自分の姿を見た。

 

「きゃああああっ!?」

 

予想通りの反応である。

・・・まったく、あのニセ一夏め。飛んでもない変態野郎だな。

 

「い、い、いい、一夏ぁ!」

 

「待て待て!俺じゃないぞ!俺じゃない!あれは俺じゃないんだから殴ったり蹴ったり衝撃砲を撃ったりするのは━━」

 

「・・・なさいよ」

 

「え?」

 

鈴のやつ、何て言ったんだ?

 

「き、着せなさいよ、服!」

 

・・・・・。

 

「はあ!?」

 

「ブフォッ!?」

 

おい!おいおいおい!何て大胆な事を言うんだ!

 

「あ、あああ、アンタが脱がしたんでしょうが!」

 

それで何故、一夏が着せる事になるっ!?

 

「俺じゃないっつの!」

 

「だ、だって、だって、あんな・・・っ」

 

突然、鈴はハラハラと涙をこぼした。

 

「あんなぁ・・・あんなぁ・・・。うええっ・・・」

 

「ああ、いや、その・・・」

 

一夏、世の中は理不尽な事で一杯だ。強く生きろよ!

 

「鈴」

 

「ひっく・・・ぐすっ。・・・何よ?」

 

「ほ、ほら。着せてやるから。こっち来い」

 

「え、あ・・・。う、うん・・・」

 

キョトンとして、驚いた鈴がショックで泣き止む。

 

「・・・あー。一夏、鈴。そう言うのは、そこの草むらでやってくれ」

 

こんな所で堂々とそんな事をされたら敵わん。

俺の言葉に従い、二人は草むらへ歩いて行った。

 

 

5分後、二人が顔を赤くしながら戻って来た。

 

「「・・・・・」」

 

一夏と鈴はお互いにそっぽを向いて、背中合わせの状態で立っている。

さて、この状況をどうしたものか・・・。

 

「あの・・・!」

 

「「「!?」」」

 

いつの間にそこにいたのか、森の茂みに半分姿を隠した簪がいた。

 

「か、簪っ・・・」

 

「じゅ、寿命が縮む・・・!」

 

「い、い、いたんなら、声掛けなさいよ!」

 

「そう言う・・・雰囲気じゃなかったので・・・」

 

「「う・・・」」

 

「・・・確かに」

 

ガサガサと茂みから出てくる簪。

 

「取り敢えず、一度・・・私は鈴さんを連れて・・・ここを出ます。任務続行は・・・難しいでしょう・・・」

 

「あ、アタシはまだやれるわよ!」

 

「いえ・・・何らかの攻撃を受けた可能性が・・・高い、です。一度、帰還しましょう・・・」

 

冷静な簪の言葉に鈴はしぶしぶ頷く。

 

「分かったわよ・・・」

 

「それでは・・・二人は、他のみんなを・・・」

 

「おう」

 

「了解だ」

 

俺達の返事を聞いてから、簪は鈴を連れて帰って行った。

次のドアの前に立ち、ドアノブを回す一夏。

 

「ん?開かない」

 

「何?一夏、少し通してくれ。む・・・」

 

ガチャガチャ。確かにノブを捻っても開かない。

 

「簪、このドアどうやっても開かないぞ。さっきからウィルが色々試してるが、ビクともしない」

 

押しても引いても、スライドしても、殴っても蹴っても反応しない。

 

『恐らく、さっきの鈴さんの件でロックが掛かったのかと』

 

通信だと言い淀まずにスラスラと喋る簪を、「へぇ」と思いながら俺達は話の続きに耳を傾ける。

 

『その世界にあなた達は異物として捉えられた』

 

「じゃあ、どうすれば入れる?」

 

「俺達だと分からない様にする・・・とか?」

 

『変装・・・』

 

「え?」

 

『変装すれば、入れる』

 

一夏がポカンとしている。

 

『私、真面目に言ってるのに』

 

「お、おう。分かった。信じる」

 

「事実、俺達は顔ばれしているんだから正体を隠すのは効果的だろう」

 

『うん』

 

「じゃあ、どうすれば良い?」

 

『服装データをこちらから書き換えるから、ちょっと待って』

 

カタカタとキーボードを叩く音が回線越しに聞こえる。

それから、いきなり俺達の全身は光の粒子に包まれた。

 

「うおっ!?」

 

『データのインストール・・・完了』

 

「って、これ何だ?」

 

一夏は全身黒ずくめで、ガスマスクをしていた。

肩からはブランと自動小銃がぶら下がっている。

 

『英国特殊部隊SASのミッション・ドレス』

 

「英国・・・セシリアか?なんか、映画みたいだな」

 

『・・・格好いい・・・』

 

「何だって?」

 

『ごほっ、ごほん!・・・何でも無い』

 

そんなやり取りを横に俺は一言。

 

「・・・おい」

 

「ん?どうしたウィル・・・って!?」

 

「・・・今日はハロウィーンじゃなかった筈なんだがな」

 

俺の格好はと言うと、所々に赤黒いシミがこびりついたボロボロのポロシャツとサスペンダー付きのズボンを身に纏い、顔には同じくシミがこびりつき、目元に穴が二つ空いた麻袋を着けていた。

そして、右手には━━

 

ブゥゥン!ブゥゥン!

 

━━伐採用のチェーンソーが握られていた。

 

『それは、某ゾンビシューティングゲームに出てくる初見殺しの強敵。チェーンソー男』

 

「・・・・・・なぁんで俺だけこんな格好なんだよ!?一夏のとか滅茶苦茶格好いいじゃねえかっ!!」

 

『大丈夫。ウィリアムのも格好いいから・・・』

 

簪は本心で言ってるのだが、ウィリアムには聞こえていないようだ。

 

「・・・こんな理不尽があってたまるか、何で俺だけ・・・」ブツブツ

 

さっき一夏に内心で言った事を忘れ、ずっと一人で呪詛のように呟いている。

 

「と、とにかく!ウィル、早く行こうぜっ。な?」

 

「・・・・・」

 

一夏がドアノブに手を掛けると、すんなりと開いた。

 

「行ってくる」

 

『気を付けて。またニセ一夏に襲われる可能性があるから』

 

「大丈夫だ、今回は武器がある。それに━━」

 

「・・・あの肉じゃがを食わされたのも、こんなクリーチャーの格好をさせられたのも、全部あの偽者野郎のせいだ!ゆ゛る゛さ゛ん゛!」

 

ブゥゥン!ブゥゥゥウゥゥン!!

 

「ウィルが凄い殺る気だしな・・・」

 

『・・・・・』

 

俺は禍々しいオーラを纏いながら、一夏と共にドアをくぐった。

 

 

「ここは?」

 

「さあな。どこかの会社か?」

 

ドアの先には執務室のような光景が広がっていた。

 

「とにかくセシリアを探すぞ」

 

「そうだな。あの偽者野郎、見つけたら・・・!ふ、ふふふ!」

 

しばらく歩き続けると、浴室のような所から声が聞こえた。

 

「!ウィル、この声・・・!」

 

「ああ、セシリアで間違いないだろう。行くぞ!」

 

スモークの掛かった窓の前に立つ。

 

「「せーの!」」

 

ガッシャアアアアンッ!

 

「だからお前()は何やってるんだよ!」

 

「イ゛ヤ゛ア゛ア゛ア゛!!」

 

ブィィィィン!!

 

「きゃああああっ!?」

 

窓ガラスを突き破り、一夏が偽者に銃弾を、俺は首から胴にかけてチェーンソーを振り下ろす。

 

「一夏さん!!」

 

『ワールド・パージ、異物排除・・・異物、排除・・・いぶ・・・』

 

ズタズタにされた(主に俺のせいで)ニセ一夏がブツブツと同じ単語を繰り返す。

 

ギョロン、と。目の色が真っ黒に変わった。

 

「一夏・・・さん?」

 

「セシリアから離れろぉっ!」

 

一夏が偽者を銃床で殴り飛ばし、更に銃弾を叩き込む。

ニセ一夏は傷口から黒い粘液を出しながらドロドロに溶けていき、やがて光の屑となって消えた。

 

「あ、あ、あ・・・っ」

 

「セシリア、大丈夫か?助けにきた━━ぞっ!?」

 

「まずい、セシリアのやつ錯乱してやがる・・・!一夏、一度離れるんだ!」

 

突如、セシリアはブルー・ティアーズを展開し、近接用ブレード『インターセプター』で一夏を払い除け、そのまま俺にも振り回してきた。

 

「うおっ!?セシリア、正気に戻れ!」

 

「わたくしの一夏さんが!わたくしの!わたくしだけのっ!」

 

「お、おい、待て!止めろ、バカ!」

 

「バカですって!?このわたくし、イギリス代表候補生、セシリア・オルコットに向かって━━」

 

一瞬、セシリアの動きが止まった。

 

『ワールド・パージ、強制介入』

 

「痛っ!」

 

セシリアが頭を抱える。

 

「う、う、う、わたくし・・・わたくしはっ・・・わたくしはぁっ・・・!」

 

「セシリア!」

 

一夏がガスマスクを取り払い、素顔を見せる。

 

「撃て、偽物の世界を!」

 

「っ!・・・よろしくってよ!」

 

セシリアが天井に向けて『スターライトmkⅢ』を撃つ。

まやかしの世界は、それで砕け散った。

 

 

「まったく、酷い目に遭いましたわ!」

 

プンプンと腕を組んで怒っているのは、制服姿のセシリアだ。

さっきからしきりにロール髪をいじっては、ブンブンと振り払い、そしてまた腕組をしている。

 

「酷い目?それなら俺も遭ったぞ~?」

 

ブゥゥン!ブゥゥン!

 

「ひっ!?」

 

俺の満面の笑みを見て、セシリアが短く悲鳴を上げた。

 

「な、なんにせよ、無事で良かったよ」

 

「・・・無事?無事ですって!?わたくしはあの偽者に体を━━」

 

ギャンギャンとした剣幕で捲し立てるセシリアが、ピタリと止まる。

 

「い、いちか、さん?あの、あなた・・・バスルームに入って来ましたわよね・・・?うぃ、ウィリアムさんも一緒、でしたわよね?」

 

・・・ギクッ。

一番避けたかった所にセシリアの意識が向いた。

 

「わ、わ、わたくしの裸を・・・み、みっ、見ましたわね!?」

 

「せ、セシリア。見ての通り、俺はこの麻袋で視界は悪かったし、戦闘に集中していたから見えてないぞ!それに、一夏の方がお前に近かった!」

 

実際に見てない。本当の事だ、信じてくれ!

 

「うぃ、ウィル!?なんて事を!」

 

「一夏さん!」

 

「お、俺も見てない!見てないぞ!」

 

「うそおっしゃい!・・・ブルー・ティアーズ!」

 

顔を真っ赤にしたセシリアがISを展開し、一夏に向けてズビシッと指を指した。

 

「行きなさい、ビット!」

 

「う、うそだろ、おい!何でウィルの言う事は信じるんだよ!」

 

「ウィリアムさんはそんな事はしないと分かっていますもの」

 

「ま、日頃の行いかな?諦めろ一夏」

 

「そ、そんな!?うわああああっ!死ぬ、死ぬ!死んでしまう!」

 

「わ、わたくしを辱しめておいて!」

 

「俺じゃない!俺じゃないだろ!」

 

「どちらも一夏さんですわ!」

 

「無茶言うな!」

 

ビームが一夏のケツを焦がす。

 

「せ、セシリア・・・!」

 

「聞く耳持ちませんわ!」

 

「きれいだった!」

 

「えっ・・・?」

 

ピタッとセシリアの動きが止まり、ビットも止まった。

 

「その、なんだ・・・きれいだったぞ、セシリアの体っ・・・」

 

「ばっ!お前そんな事言ったら余計に━━え・・・?」

 

「・・・・・」

 

セシリアはISを解除して、急にモジモジとしおらしくなった。

 

「い、一夏さんだけですわよ・・・ご覧になっていいのは・・・」

 

「こ、光栄だ」

 

「それにしても、世界一きれいだなんて・・・」

 

あれ?そんな事言ってたか?

 

「もう、一夏さんったら!」

 

ドンッ!と、一夏を両手で突き飛ばしたセシリアは森の外へと駆けて行った。

 

「ウィぃルぅ?」

 

「ん?何だ、一夏」

 

「何だじゃねえよ!よくも俺を売ったな!?」

 

「悪い悪い。けど実際に俺は見てないしな」

 

「そう言う問題じゃねえ!」

 

「分かったよ、すまなかったな。今度何か奢ってやるから、それで手打ちにしてくれ」

 

「・・・仕方無い。今回はそれで許してやるよ」

 

なんとか治まったようだ。

 

『・・・一夏』

 

簪からの通信が届く。

━━が、しかし、その声はひどく不機嫌そうだった。

 

「簪、次はどうする?」

 

『衣装を転送するから、好きにしたらいい』

 

ブツッと通信が切れる。

 

「な、なんだあ?」

 

訳も分からず戸惑う一夏。

 

「恐らく、セシリアの件だろうな・・・」

 

ボソッと呟いた直後、俺達の真上から巨大な衣装ケースが降ってきた。

 

「おわあっ!?」

 

「な、何ぃぃ!?」

 

ギリギリのところでかわした俺達は、ゴクリと唾を飲む。

 

「お、俺、何かしたか・・・?」

 

「か、完全にとばっちりじゃねえか・・・」

 

ともあれ、残るはシャルロット、ラウラ、箒の三人だ。

 

「いっちょうやりますか!」

 

「ささっとやっちまおう!」

 

俺達は衣装ケースを開いた。

 

 

「なかなか良いじゃないか!」

 

「随分気に入ってるな、その格好・・・」

 

次のドアをくぐり、今度は豪邸の中に出た俺達は次の救助対象のシャルロットを探していた。

因みに俺の格好は、全身をスラッと覆う強化外骨格と、怪しく光るオレンジ色のモノアイ。そして、手には高周波ブレードが握られている。

 

「だってお前、さっきのチェーンソー男と比べたら断然格好いいじゃねえか!」

 

「まあ、確かにな」

 

そう言う一夏の格好は変な仮面にマント、ブーツ、手袋と、『怪盗』だった。

 

「ん?一夏。向こうの方から同体センサーに反応があるぞ」

 

この外骨格、仮称『忍者スーツ』は高性能で、センサーやら何やらが搭載されているのだ。

 

「本当か?よし、行こう!」

 

反応のする方角へと急ぐ。

 

 

「・・・ここか」

 

「ああ。反応はここから出ている」

 

「行くぞ、ウィル」

 

「何時でもオーケーだ」

 

「「とうっ!」」

 

二人で豪華なドアを吹き飛ばし、突入する。

 

「だから!お前は何してるんだよ!」

 

「ったく!何でどの一夏も変態なんだよ!」

 

一夏が叫びながら、ニセ一夏に殴り掛かる。

 

「何だお前達は!」

 

「お前こそ何だ!偽者野郎!」

 

一夏がニセ一夏に怒鳴る。

 

「い、一夏っ!」

 

押さえ込まれたニセ一夏を助けようと、シャルロットは壁に掛けてあった剣を手に取った。

 

「ご主人様から離れろっ!」

 

「うわあっ!?」

 

ビュン、と迷い無い剣筋で放った斬撃が一夏を襲う。が━━

ガギンッ!刃は一夏に届くギリギリ手前で止まった。

俺がブレードで受け止めたのだ。

 

「うぃ、ウィル。助かったよ」

 

「見ていられないぞ一夏。歳をとったな」

 

鍔迫り合いながら一夏に向かってそう言う。

 

「え?と、歳?お前何言って・・・」

 

「スマン。なんか言わないといけない気がしたんだ。とにかく、彼女の説得を続けるんだ!」

 

シャルロットの剣をいなし、一夏の元に飛び退く。

 

「わ、分かった。シャル、目を覚ませ!」

 

「気安く呼ばないで!」

 

「助かったよ、シャルロット」

 

この時、俺はマスク越しにほくそ笑んだ。

・・・この時点で、あの偽者は終わりだ。

 

『ワールド・パージ、強制介入』

 

「ううっ!」

 

シャルロットがうめき声を上げる。

普段から一夏はシャルロットを『シャル』の愛称で呼んでいる。つまり━━

 

「僕、僕は、僕が好きなのは━━シャルって呼ばれる事!」

 

そう言って、ニセ一夏に剣先を向けるシャルロット。

途端に、偽者の目の色が物理的に変わった。

 

「ワールド・パージ、異物排除・・・異物排除・・・いぶ━━」

 

ピウン、と。

ニセ一夏の首が飛んだ。

首をはねたのは、シャルロット。

 

「偽者とはいえ自分の首が斬られるところを見る事になるとは・・・」

 

「ああ、下手なスプラッター映画よりも酷いな」

 

目の前の光景を見て、俺達は静かに呟く。

一番怒らせちゃいけないのはシャルロットなのでは?と心の中で考える。

偽者は血を噴き出す事無く、パラパラと光の屑になって消えた。

 

「よし、脱出するぞ!」

 

「えっ!?」

 

いきなり、ガバッと一夏がシャルロットを抱き抱える。

そして、俺達は偽りの世界から抜け出した。

 

 

「ふう・・・」

 

森の中に帰ってきた一夏が、シャルロットを下ろす。

 

「さて、そろそろお決まりの時間だな」

 

明後日の方角へと体ごと向ける。

 

「きゃああああっ!?」

 

「な、何だ━━ぐあっ!」

 

「み、見ないでぇ!一夏のえっち!」

 

一夏に目潰しが炸裂した。

 

「ぎゃあああっ!?」

 

「ああっ!?ご、ごめん!でも、その、これを着けてって言ったの一夏だし、脱げって言ったのも一夏だし・・・」

 

「だ、だから・・・それは偽者・・・」

 

「そ、そう言う言い逃れするの!?」

 

り、理不尽だな・・・。

思わず苦笑いを浮かべる。

 

「と、取り敢えずこのマントで隠せよ。な?」

 

シャルロットが無言でそれを受け取る。

 

「ほら、そんなに怒ってたら可愛い顔が台無しだぞーっと」

 

「・・・・・」

 

「しゃ、シャル?」

 

「・・・デート」

 

「う、うん?」

 

「だ、たからっ!デート!遊園地デートしてくれたら許してあげる!」

 

「お、おう。じゃあ遊園地ならみんなで一緒に━━」

 

「二人きりが良いの!」

 

しばしの沈黙が流れる。

 

「分かったよ・・・。貯金、下ろすから」

 

「え、うそ!?ほんとに!?」

 

本人もダメ元で言ってたのか・・・。

 

「シャルから言い出した話だろ」

 

「えっ!?あ、うん、そうだけど・・・やったぁ。言ってみるものだね。えへへ」

 

なんとか機嫌は直ったらしい。

 

「それじゃあ、取り敢えずこの世界を出るか。送って行くよ」

 

「その必要は・・・無い」

 

「「「!?」」」

 

またしても森の茂みから、簪が現れた。

突然の事に、軽く飛び跳ねてしまう。

 

「私が・・・送って行くから・・・」

 

「お、おう」

 

「そうだな、ならお願いしておくか」

 

どうやら簪はかなりご立腹のようだ。

声音だけでも分かる。

 

「取り敢えず、シャルロットの・・・制服をダウンロード・・・、完了」

 

パアッと光りに包まれたシャルロットの格好が、いつもの学園制服に変わる。

 

「じゃあっ、一夏っ。僕は一旦戻るからねっ。約束忘れないでねっ」

 

ハイテンションのシャルロットが、軽い足取りで森の外へと向かう。

それを追う直前、簪がボソッと一夏に呟いた。

 

「贔屓・・・」

 

「な、なあっ!?ち、違うぞ、俺は別に━━」

 

しかし、簪はプイッと顔を背けて行ってしまった。

俺はニヤニヤと笑いながら、一夏を肘先で小突く。

 

「な、何だよ」

 

「いんや、別に。・・・ふっ、お前も大変だなぁ。な?色男」

 

「何なんだよ・・・」

 

「気にするな。さて!残るはラウラと箒か」

 

「そうだな。後少しだ!」

 

俺達はそう意気込んで、衣装ケースを漁った。

 

 

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