空軍パイロットのIS転生記   作:Su-57 アクーラ機

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第84話

「敵からの反撃もだいぶ弱まってきているな。まさか、まだターミネーターを隠し持ってたのは驚きだったが、後少しで制圧完了だ」

 

下からの細々とした砲火をヒラリと回避しながら、状況をラウラに伝える。

 

「これだけ損害を出せば敵の勢いも弱まるだろう」

 

「まあな。武器庫に装甲車両、対空砲、ターミネーターにその他の建物etc.・・・向こうからすれば大損害だな」

 

あれからかなりの損害を敵に与え、もういくつ破壊したか数えていない。もともとそんなに大きくない基地なのだから、その中に潜んでいた敵も少なかったようだ。

 

「特に、正門を楽に攻略出来たのは良い事だな。奇襲が成功した後はトントン拍子に事が進んでいく」

 

「確かに奇襲の成功は深く関わってるが、正門を楽に落とせたのはさっきのラウラのアレが主な原因だと思うぜ?っと、一機撃墜!」

 

「アレ?」

 

「ほら、アレだよ。装甲車を切り落とした時の」

 

「?・・・それがどうした?」

 

いまいち分かっていないラウラが頭に「?」を出したように小首を傾げる。

 

「いや、だって。お前が装甲車の砲身切り落とした後、乗員の顔が蒼を通り越して飛んでもない色になって逃げて行ってたんだぜ?いったい何をしたんだよ」

 

「何をしたも何も・・・ああ、確かに外部視認カメラを睨んだりはしたが・・・」

 

何の気なしに答えるラウラだが、その行為が彼らにとってどれ程の恐怖を与えたのだろうか。

その後に砲身まで切り落とされたら、そりゃあ、あんな顔をして逃げて行くのも頷けるか・・・。俺でもチビるかもしれない。

 

「ウィル、黙りこくってどうした?」

 

「いや、ラウラは絶対に怒らせちゃいけないって自分に戒めていた。下手にキレたお前は鬼よりも恐ろしいからな。まさに最凶の一言だ。ハハハッ!」

 

今まで受けたラウラからの制裁を思い出し、攻撃してくるターミネーターを撃墜しながら冗談を口にする。

 

「・・・ウィル、後で少しハナシをしようか」

 

無線から少し低めの声が返ってきた。

 

「え?ま、まさか今ので怒ったり・・・?」

 

「ああ怒った。まさか愛する男にそのような事を言われるとは、私は悲しいぞウィル」

 

ラウラも冗談めかしてそう言ってくるが、声からして明らかに笑ってるようには思えない。

今の彼女の表情が容易に想像出来る。恐らく顔は笑っていても、目は笑っていないだろう。

 

「・・・因みに情状酌量(じょうじょうしゃくりょう)の余地は?」

 

「あると思うか?」

 

「・・・・・」

 

生きて大地を踏むことは出来ても、生きて明日の朝日を拝めるのかが心配になってきたよ・・・。

自業自得で見事にウィリアムは自爆した。

 

 

敵兵士達を回避する為に迂回していた和也達は、格納庫の中を移動していた。

中はもぬけの殻だが、そこら中に工具や配線、発電用のモーターが散乱している。

 

「ここで連中はあのターミネーターと言う兵器の整備をしていたのか」

 

ふと視線を変えると、近くにはもう飛ぶことは二度と無いであろう旧式戦闘機が放置されていた。

よく見ると、それらはパーツの一部が取り外されており、どうやら足りない部品を移植したようだ。燃料配管が剥き出しの機体や、物騒な事に機関砲が付いたままの機体まで置いてある。

 

「置きっ放しとは杜撰(ずさん)だな」

 

「何かを解体するにも費用が掛かるものだ。それが家であれ車であれ戦闘機であれ。そうして後回しにされている内に忘れ去られたんだろう・・・」

 

アーノルドの呟きにアランが答える。やはり、普段から経営などの仕事に携わってきた彼には分かるのだろう。

ルーカスも自分の好きな飛行機の無惨な姿に、悲しそうな顔をしていた。

 

 

 

 

 

ガショッ・・・

 

「「「っ!?」」」

 

突然、外の銃声に混じってどこからか音が聞こえた。

ガショッガショッとその音は規則正しい間隔で鳴り響いている。

 

「何の音だ・・・?」

 

ガショッガショッガショッガショッ

 

音はどんどん大きくなっていき、近くに立て掛けられていたスパナがカランッと高い音を立て倒れたその時だった。

ヌッと伸びてきた白い腕と黒色のマニピュレーターが格納庫のシャッターを掴み、少ししてからその腕の主が現れた。

それは全体的に白く、鳥のような頭を持ち、流線形の胴体には鋼鉄の翼と双発のジェットエンジン、左手には機銃のような物が握られている。

昨日、上空でウィリアムとラウラが撃墜し、その後で教えてもらった機体にそっくりだった。

 

「た、ターミネーター!?」

 

頭部の風防ガラス内部に取り付けられたモノアイ(単眼)カメラがこちらを向き、何かの起動音と共に怪しく光る。

 

「まずい!早く物陰にっ!」

 

バララララララララッ!!

何の躊躇いも無く機銃が発射された。まさに人が乗っていない事を示すような一撃だ。

四人は間一髪のところで物陰に隠れる事でなんとか回避するが、それもいつまでも続ける事は出来ないだろう。

出口へ向かうにはあのターミネーターの視界内を通る必要がある上、それは今もこちらへゆっくりと近付いてきていた。

 

「・・・仕方ない。俺が奴を惹き付ける!少し待っててくれ!」

 

「待って、和也さん!良いこと思い付いた!」

 

物陰から飛び出そうとする和也をルーカスが呼び止める。

 

「良いこと?何か上手い作戦でも思い付いたのか?」

 

「うん!まずね━━」

 

 

 

 

 

「━━て言う感じなんだけど、どう?」

 

「成る程・・・よし、その作戦乗った」

 

「ああ、少し派手だがこれだけ外で騒ぎが起きてれば問題無いだろう」

 

「まったく、我が息子ながら飛んでもない作戦を思い付いたものだ」

 

「よし、時間稼ぎは任せろ!アーノルド、二人を頼んだぞ!」

 

そう言って、和也は物陰から飛び出て行き、目の前の無人機に罵声を浴びせ始めた。

 

「掛かって来い、このポンコツ鳥頭っ!!」

 

「━━━━━」

 

無人機が和也の方を向き、機銃の先を向ける為、左腕を駆動させる。

ガギッ!

 

「━━━━━?」

 

突然腕が固まり、無人機は異常のあった部位を見つめる。その視線の先━━左腕関節の隙間にはナイフが突き立てられていた。

 

「動きが鈍すぎて余裕だぜ!空ではどうか知らないけど、陸ではマヌケだな!」

 

彼がターミネーターの腕関節にナイフを投擲し、見事隙間に刺さったのだ。

軍用ナイフはそこそこ頑丈な為、ちょっとやそっとじゃ割れはしない。

左腕の使用を諦めたターミネーターは突然主翼の角度を変え、翼下に搭載している白い円柱形の何か━━『ハイドラロケット弾ポッド』を向けてきた。

そのポッドを凝視すると、中に小型のロケットらしき物が幾つも格納されているのが見える。

 

「嘘だろ、生身の人間相手にロケットまで使うのかよ・・・!」

 

パシュッ!ボンッ!!

 

「うおっ!?あ、危ねぇ・・・!」

 

無人機から無慈悲に発射されたロケットを和也は紙一重で回避する。

爆発の威力は小さいが、人体に当たればどうなるかは想像したくはない。

 

「━━━━━」

 

「チィッ!」

 

ロケットの標的にならないよう、和也は相手と一定の距離を保ち、物陰に隠れながら無人機の気を惹き続ける。

 

 

アーノルド、アラン、ルーカスは作戦に必要な物の元へと走って行き、その場で立ち止まる。

 

「あった、これだよ!」

 

そう言ってルーカスが指差すのは、先程通り道に無惨に放置されていた旧式戦闘機の内の一機だった。

 

「本当に使えるのか?武装は残ってても弾は・・・ふむ、多少は残っているな。過激派にでも盗まれたりしたら大事(おおごと)だぞ・・・」

 

アーノルドは弾薬庫のカバーを開けて中身を確認し、改めて管理の杜撰さを認識した。

 

「でも、ルーカス。武器が使えても、操作方法は分かるのか?」

 

アランが戦闘機の上によじ登ろうとしているルーカスに問う。

 

「大丈夫だよ、前に図鑑とか動画で見たのを覚えてるから」

 

「ハァ、その熱意を普段の勉学にも反映してくれると嬉しいのだがな・・・」

 

アランが眉間を押さえてかぶりを振って溜め息をつくが、ルーカスはそんな事はお構い無しとコックピットの座席に立ち、いそいそと安全装置のスイッチを解除した。

 

「・・・やった!まだ完全には壊れて無い!これであいつを倒せるよ!」

 

「よし、なら後は」

 

「私達の出番だな」

 

そう言って、アーノルドは腕捲りし、アランは高そうな白いスーツをその場に脱ぎ捨てた。

 

 

このターミネーターの陸戦能力は低いようで、和也の素早さに付いて行けず最初は翻弄されていたが、敵はロケットを狙って撃つのを止め、連射して辺りを破壊しながらじわじわと彼を追い詰め始めていた。

 

「ルーカス君!そっちはどうだ!?これ以上はちょっと厳しい!」

 

「いつでも良いよ!」

 

「よし!なら今からこいつをそっちに連れて来るぞ!」

 

そう周知しながら後ろに無人機を引き連れて所定の位置へと走って行く。

パキンッと歩行の振動でターミネーターの左腕関節に刺していたナイフが抜けてしまった。

 

「ヤッベ!?ルーカス君、後少しでそっちに着くぞぉ!」

 

ターミネーターが左腕を動かし、機銃の先を和也に向けてトリガーを引こうとしたその時━━

ガギギッ!!バキンッ!ガリ、ガリ・・・

和也が残る最後のナイフを相手の膝関節に向けて投擲した。

駆動部に異物が混入してターミネーターの歩行が止まる。

 

「今だ!!」

 

ルーカスに合図を送った和也がターミネーターの近くから飛び退く。

 

「パパ!アーノルドさん!もっと右へ!」

 

「「ぬ・・・おおおおおおっ!!!」」

 

そう雄叫びを上げながら、アランとアーノルドが戦闘機の前輪を押して照準をターミネーターに合わせる。

そして━━

 

「当たれぇ!!」

 

ヴォオオオオオオオオオオオ!!

 

数年ぶりに火を噴いた機関砲が目の前の敵機を鉄屑へと変えていく。

身体中に砲弾を撃ち込まれたターミネーターは金属の軋む音と共に後ろのめりにゆっくりと倒れていき、完全に動かなくなった。

 

「っしゃあ!!」

 

「やった!!」

 

「倒したぞ!!後はここを出て、ホーキンス君達と合流するだけだ!」

 

「良くやった、ルーカス!!お前は自慢の息子だ!」

 

力を合わせて倒した敵を前に、肩を叩いたり抱き合ったりして喜ぶ四人だった。

 

 

「地上からの攻撃もほとんど見えなくなってきたぞ。ラウラ、後一押しだ」

 

「そうだな、ここを制圧した後は下の彼らと合流するだけだ」

 

俺とラウラは下を見下ろし、まだしつこく攻撃をしてくるポイントを探す。

 

「これはリッチモンド氏に美味い魚料理を食わせてもらっても釣りが返ってきそうだ。いやぁ、後が楽しみだな」

 

「ウィル、浮かれる気持ちは分かるが、その前に二人でハナシをするのを忘れてないだろうな?」

 

「その話まだ続いてたのかよ・・・ん?ラウラ、レーダーに反応。数四つ、IFFに応答無し、ここから11時の方角だ。・・・遅刻してきた連中らしい」

 

「まだいたのか?いや、敵の増援か」

 

レーダーの画面には四つの光点が隊列を組み、市街地とは反対の方角からこちらに接近していた。

 

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