決闘当日
「なぁ、箒」
「何だ?」
「ISの事を教えてくれるって話だったよな?」
フイッと、箒がそっぽを向く。
「あ、目を逸らすな!一週間剣道の稽古ばかりだったじゃないか!」
彼の言う通り、この一週間ISのことには一切触れなかったのだ。
「し、仕方ないだろう!お前はIS以前の問題が山積みだったのだから!」
「ハァ、ここまで来て何をやってるんだか・・・」
溜め息を吐いて二人の言い合いを傍観していると、後ろから声を掛けられた。
「やぁ、ウィリアム君」
「あ、ジョーンズさん。どうも」
彼は“トレバー・ジョーンズ”アメリカ空軍技術中尉だ。
この決闘が初の本格的な実戦なので、急遽来日したのである。
「ウィリアム君、彼がもう一人の男性操縦者かい?」
一夏がこっちに気付く。
「ウィル、その人は?」
「おっと、失礼。僕はトレバー・ジョーンズ。織斑一夏君だね?よろしく」
二人が握手する。
「ジョーンズさんには、俺のISの最終調整とデータ収集のために来てもらったんだ」
「あぁ、そうだった。ウィリアム君、さっそく調整に入ろうか」
「分かりました。じゃあ一夏、また後でな」
そう言って、俺はISの調整をしに向かった。
ISの調整中に館内放送で、一夏の専用機がようやく届いたとの連絡があった。
こちらの調整も終わり、一夏の元に戻ると目の前には白色の真新しいISを纏った一夏がいた。
「それが一夏のISか?なかなか格好いいじゃないか」
「ウィルか。調整は終わったのか?」
「ああ、ついさっきな。それより、そろそろ試合だろ?頑張れよ」
「あぁ、行ってくる!」
▽
結果は一夏の負け。
そもそも、ベテランと初心者という差がある上に相手は遠距離型、対して一夏はブレード一本。
よくやった方だ。
最後の最後でセシリアに肉薄するが、後少しの所でシールドエネルギー切れで終わった。
「あれは惜しかったな・・・」
無意識にそう呟く。
なんと一夏は初期設定の状態で交戦。戦闘中にファーストシフトを完了させたのだ。
俺も負けてられないな。
アリーナのピットに向かうと、一夏が先に帰ってきていた。
「一夏、お疲れ。惜しかったな」
「あぁ、後少しだったんだけどな・・・」
悔しそうにそう言って頭を掻く。
『ホーキンス、30分後に試合だ。準備しておけ』
織斑先生から放送でそう伝えられる。
「分かりました」
そう返事を返し、一夏と向き合う。
「一夏、仇は取ってやるからな」
「あぁ、頼むぜ」
お互いの拳と拳を軽く当てる。
「任せておけ」
ニヤリと笑い、準備に入った。
30分後
『ホーキンス、時間だ』
よし、やるか・・・!行くぞ相棒!
俺は『バスター・イーグル』を展開する。
見た目は戦闘機を背負った様で、他のISよりも一回り大型。そして制空迷彩の
酸素マスクと一体化したヘッドギアには鋭い目と、大きく裂け、牙を覗かせる口、『シャークマウス』がペイントされており、エアインテーク側面には、機体名を示すロゴがマーキングされている。
「すっげぇ・・・」
一夏が感嘆の声を漏らす。
そのままカタパルトに向かい、接続すると無線からジョーンズさんの声が響いた。
「じゃあ、ウィリアム君、簡易チェックを行うよ」
「了解」
そう良いながら、ヘッドギアの風防と一体化したバイザーを降ろし、
シュゴォォォ!という音と共に圧縮空気と電力がジェットエンジンに供給され、甲高い音が鳴り始める。
「じゃあ、ブレーキ、フラップ、スラットの確認を」
左翼と右翼の動翼を確認。それに伴い、翼の前縁部分と
次はエアブレーキの確認だ。
背中でパタンパタンとブレーキのパーツが開閉する。
「チェック」
「兵装システムを確認。HMDバイザーを起動してくれ」
言われた通り起動する。
「グリーンライト確認。機関砲に切り替えを」
目の前に照準マーカーが投影される。
「よし、良いぞ。次はミサイルだ」
今度は『AAM RDY』と出てくる。
「どうだい?」
「完璧です。ミサイルシステムのトラッキング。武装とチャフ・フレアをチェック・・・」
全ての項目のチェックが終了すると同時にエンジン出力も安定してきた。
「よし、兵装及び
ハンドサインで合図を出す。
「まるで、テレビかゲームの中みたいだな・・・」
「一夏、離れてろ!ブラストでバーベキューになるぞ!」
後ろでボーッとしていた一夏が離れたのを確認すると、スゥッと息を吸い込み
「よし、ロックンロールだ!」
その言葉の後、軽い振動と共に後ろで立っていたみんなの顔が遠退いていく。
たった今、鋼鉄の猛禽が飛び立った。