「はい、それでは
よく晴れた朝、妙に張り詰めたような空気の教室に女性の声が響く。
「皆さん初めまして!私はこの『一年一組』の副担任の
「よろしくお願いしまーす!」
クラスの中でボクだけが先生に挨拶を返す。反応してあげないと先生が可哀想だとは思うけど、同時にまあ仕方ないかなとも思う。
今このクラスには世界に
そしてここからがちょっと前の話。一夏とボクはこの学校、IS学園の入学試験会場に迷い込み、女性にしか反応しないはずのISを起動させてしまった。このことにより一夏は世界初の男性IS適応者として大々的にニュースに取りあげられた。
あとはまあ、みんなの想像してる通りだと思うよ?一夏は急遽IS学園の入試を受けさせられ、ボクもついでに受けさせてもらった。そして合格し、今に至るってわけ。
ボクと一夏は小さい時からの幼馴染みで、一緒に
「……くん!織斑くん!」
「は、はいっ!」
しまった、ついぼーっと回想に耽ってしまった。今は何してるんだろう?
「出席番号順に自己紹介してもらってて次織斑くんの番なんだけど……自己紹介、してくれますか?」
「は、はい。します」
「ホントですか!?お願いします!」
やっぱり先生にとっても世界初の男性パイロットは珍しく映るようで、緊張で変なテンションになってしまっている。
「えーと、織斑一夏です」
クラス中の皆が1日に期待の眼差しを向ける。きっと何か面白いことを期待しているんだろうね。でも残念な事に今の一夏にこの手の期待に応えられるほどの余裕は無い。
「……以上です」
クラスのほぼ全員がズッコケるように机に突っ伏す。
スパ──ンッ
子気味良い音が響き、名簿帳で叩かれた一夏が痛みにうずくまる。
「げえっ、関羽!?」
パァンッ!
「誰が三国志の英傑だ馬鹿たれ。まったく、貴様はまともに挨拶も出来んのか」
「あ、千冬ねぇ!久しb──あうっ!」
久しぶりに見た顔に嬉しくなってしまい、立ち上がって話しかけたボクにはペンが高速で飛来し、おでこにヒットした。先がでてないからセーフ?んなわけないじゃん、めっちゃ痛いよ。
「学校では織斑先生と呼べ」
「「は、はーい……」」
「はぁ……すまんな、山田先生。いきなりクラスのことを任せてしまって」
「い、いえいえそんな!」
千冬ねぇは教壇に立ち、生徒の方に向き直す。
「私が担任の織斑千冬だ。私の仕事は15歳の諸君を16歳までに強くすること。私の言葉には逆らってもいいが、逆らうならそれ相応の覚悟をしてもらおう」
かなり高圧的で上からな態度。普通の学校なら嫌われて当然のような教師の態度だけど、ここは普通の学校ではなく、また千冬ねぇもただの教師ではない。
一拍置いて教室に黄色い声援が響く。
「千冬様よ!」
「本物だわ!」
「綺麗!かっこいい!美しい!」
「この学校に来てよかったー!」
etc.....
彼女はモンドグロッソ(3年に1回開かれる、世界最強のISパイロットを決める大会)の第1回大会で優勝し、初代『ブリュンヒルデ』の称号を得た最強の代表格。彼女に憧れてISパイロットを目指す少女を少なくないどころか多いと言っても過言ではないだろうね。
「ええい、静かにしろ鬱陶しい。そら、自己紹介の続きをするぞ。織斑の次の奴からだ」
「はい!
そんなこんなで進んでゆく自己紹介。そしてついにボクの番が回ってきた。
「ボクは
「…………」
あれ?次の人がいつまで経っても立ち上がらない。体調でも悪いのかな?
「あのー、元谷さん、大丈夫ですか?」
山田先生が心配して話し掛けるも、反応がない。それどころかクラスのほとんど全員がさっきから全く音を出していない。
「…………え」
「え?」
なんだろう、何が言いたいのかな?
「「えええええええええええええええ!?!?!?」」
「うわっ!」
やばい、鼓膜破れるかと思った。それほどの大声を出すほど彼女たちは驚いていた。
確かに2人目が見つかったとは聞いていた。
2人目もこの学校にいることをわかっていた。
でもまさかもう1人も同じクラスだったなんて。ましてやこの華奢で可愛くて、
「え、男子!?」
「うん!」
「その綺麗な長髪は!?」
「えへへ、お手入れ頑張ってるんだ!」
「身長体重は!?小柄過ぎない!?」
「146.3cm43.6kg!」
「スリーサイズは!?」
「71/55/72!」
男子であることを確かめるための質問のはずがただの質問タイムになってしまっている。楽しいからいいけど!
その後千冬ねぇによって事態は収束し、時間内になんとか全員が終わった。
授業が始まる前の少しの休み時間はボクにとっては怒涛の質問タイムでしか無かった。久しぶりに箒と話したかったんだけど仕方ないか。
授業が始まり参考書を取り出す。『IS理論基礎』は内容が凄まじく多く、下手したら電話帳よりも分厚いかもしれない。ちなみに一夏は電話帳と間違って捨てちゃったらしい。 あ、千冬ねぇに怒られてる。
「…………」
内容としてはどのようにしてISが動くのか、どうやって宙に浮くことが出来るのかなどなどISの基礎的な部分について学んだ。
僕は元々ISについて色々姉さんから聞かされていたから分かるけど、千冬ねぇは逆に一夏にISのことを一切教えてこなかった。多分一夏がISに関わるのが嫌だったんじゃないかな。
わからない内容に頭を抱える一夏をよそに授業は進んでいく。
「織斑くん、何かわからないことはありますか?」
「え、えーと……全部です……」
あーあー、山田先生涙目だよ。仕方ないなー、後で教えてあげようっと♪
一夏 は 山田先生 に よる 補習 が 決定 した !
一限が終わり、授業疲れでぐでっとしている一夏と慰めるために一夏の席の近くにいるボクに金髪の縦ロール、いや、あれは最早金髪ドリル(さっきの自己紹介によるとセシリア・オルコットというらしい)が近づいてきた。
「ちょっと、よろしくて?」
「へ?」
「ふぇ?」
ものすごく見下してくる。身長的に見下ろす形になるのは分かるけどこれは違う。明らかに見下している。
「聞いてますの?お返事は?」
「お、おう。それで、なんの要件だ?」
「まぁ、そのお返事はなんなのかしら!一般人が私に話しかけられるというだけで幸運だと言うのに!」
「いや、だって俺君のこと名前しか知らないし」
「なんですって!?私を、ご存知でない!私は「イギリスの代表候補生だよ一夏」あら、貴方はきちんとご存知ですのね。このような男の友人というものですからてっきり貴方も無知なものかと」
見下していた事実を隠しもせず謝りもせずにただただ上から話しかけてくる。
「このような、ねぇ……」
「はい?何かおっしゃいまして?」
「別に」
ボクは一夏が好きだ。さっきそう公表したはずなのによくボクの前で一夏を「こんな男」呼ばわり出来るね。逆に尊敬するよ。見習いたくないけど。
ISが登場してから世の中には極端なまでの女尊男卑の空気が流れ出した。
理由は簡単。世界で最強の兵器であるISは女性にしか扱えない→ISが扱えない男性は弱い→女性は強いといった思想が流れたのだ。
このセシリア・オルコットも多分その類なのだろう。
「なるほど、それで1つ聞いていいか?」
「はい、なんですの?」
意を決したように一夏は無知ゆえの爆弾を投下した。
「代表候補生って、なんだ?」
「は、はぁぁぁ!?」
「ちょっと一夏、それは流石に……w」
驚天動地ってるイギリス代表候補生が面白い。自分が自信満々に自慢した事を相手が一切知らない時の侮辱された感で歪む顔が最高に可笑しい。
「イギリスのw国家代表のwパイロット、その候補生だよw」
笑いすぎてきちんと喋れない。多分傍から見たらただの変人みたいなんだろうなぁ。
「ああ、なるほど」
「簡単なことほどw見落としやすい、wwでしょ?www」
「ちょっと貴方、いつまで笑っていますの?」
「ごめん、だってww一夏が…ww」
2限目の授業が始まることを告げるチャイムがなり、それぞれの席へと戻っていく。
「フ-ッ……フーッw」
ちょっとずつ笑いも落ち着いてきた時、千冬ねぇが教室に入ってきた。
「それでは授業を始める。望月は早く呼吸を調えろ。
今回は実習で扱う武器の特性について講義を行う。……ああ、その前にクラス代表を決めないといけないな」
思い出したように彼女が発した言葉にクラス中の女子が色めきたつ。
「さて、クラス代表の希望はあるか?自薦他薦は問わん」
「はーい、ボクは一夏がいいと思うなー!」
「私も織斑君を推薦します!」
「私も織斑君がいいと思います!」
「ふむ、候補は織斑だけか?」
「え、俺!?」
慌てて立ち上がり、周りを見渡すと返ってくるのは「やってくれるよね?」という期待の視線。
「いやいやいや、俺はそんなのやらな──」
「席につけ織斑、自薦他薦は問わんと言っただろう。他薦された者に拒否権など無い」
「そんな〜」
クラスのほとんどが一夏をクラス代表にしたがっている。それを感じたのかはたまたただ諦めただけなのか席につき大人しくなる一夏。
「それでは他に希望がないようなら無投票当選だが……」
「納得がいきませんわ!!」
バンッ!と机を叩きセシリアが憤慨する。
「わざわざこんな何もない島国まで来たというのに代表が男なんて恥さらしもいいところですわ!このわたくしセシリア・オルコットにそんな屈辱を一年間味わえとおっしゃいますの!?」
周りの目を気にする余裕もないのか、ひたすらに上から畳み掛ける。
そして「私がこんな辺境に来たのはISの技術を会得するためであって不出来な極東の猿の曲芸を見に来たのではありませんわ!」という発言に3人目が立ち上がった。
「ちふ……先生。
「いいだろう。それでは候補は織斑、オルコット、望月の3名で締切だ。決定方法は3人による決選投票で──」
「先生。私はオルコットとの決闘を希望します」
この時希はかなりキレていた。自分の前で一夏を散々バカにされ続け頭の中で何かが弾ける音が聞こえた気がした。
「貴方、本気で言ってますの?」
「クソマズ郷土料理女は黙ってて。私は今千冬ねぇと話してるの」
「クソマズ郷土料理女ですって!?貴方、今私の祖国を侮辱しましたわね!?」
「うるさいなぁさっきからいちいち島国だの田舎だの猿だのうざったい」
人が変わったように険悪な態度をとる希に気圧され静まる教室。千冬だけが涼やかな顔をしている。いや、厳密には面倒そうな顔だ。
「それで、クラス代表の決定方法は1対1の試合形式でいいのか?」
「そんな、この私がこのような男と決闘ですって!?冗談じゃありませんわ!」
「そうだね。全勝を守るためには
あからさまで見え見えの挑発。しかし相手はプライドエベレストな貴族令嬢、どうなるかは火を見るより明らかだった。
「なんですって……!いいですわ、そんなに私に叩きのめされたいのなら応えてあげますわ」
「では試合は来週の火曜日、特活の時間を利用して行う。各自調整等はそれまでに済ませておくこと。分かったな?」
「「はい!」」
「はぁ……」
そうしてクラス代表を決める戦い(1部私怨)の鐘が鳴った。
1話が短くなりがちという短所を克服するため2話分繋げてみました。
なんかグランドオルフェンズが書けなくなったので1時避難のようなものです、すみません