男の娘は男性操縦者に入りますか?   作:畑煮丸太

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4話 決定!クラス代表

「ふぅ……一時は冷や冷やさせられましたがさすがは私、安定した勝利ですわ」

 ふと残りSEを見ると残量は40%、思ったより削られていたようだ。

 しかし勝利はおさめた。今や希の意識はなく、メタリックグレーの機体は地球に引かれ落ちゆくのみ。

 踵を返しピットへと向かう。

 ……おかしい。希が落下し、地面に衝突する音が一向に聞こえない。かれこれ4秒が経過している。いくら高所で戦っていたとはいえこれはさすがにおかしい。

 違和感を覚え振り向いたセシリアを何かが打ち据えた。

「何を勘違いしているんだい?」

「ッ!……なぜ!」

「まだボクのSEはゼロじゃないよ」

 そこには気を失っていたはずの望月希が専用機と共に浮遊していた。

 おかしい。すぐに目が覚めたといえばその通りなのだが、それでも早すぎる。

 そしてもうひとつ。彼はあの距離から攻撃を当てたのだ。中距離用の武器を今の今まで隠していたというのか。

「(……ありえませんわ)」

 中距離武器があるのならば状況を打破できるタイミングなんていくらでもあったはず。

 そこから導き出せる答えは一つ。

「まさか、たった今第三世代武装を扱えるように!?」

「その通り。まあ正確には単一仕様(ワンオフ)だけどね」

「(相手の単一仕様の情報はなし。ならば能力を発揮される前に攻め、一気に倒す必要がありますわね)

 いきますわよ、希!」

「来い、セシリア!」

 セシリアは4つのビームビットに加え2つのミサイルビットも動員し、あらゆる方向から同時にビームとミサイルを放った。

 ビームの衝撃とミサイルの爆発。爆発の煙と巻あがった土煙で希の姿は見えない。

 先程までのクトゥルーの残りSEはだいたい15%位だったので、ビーム4発とミサイルを食らって残っているとは思えない。だが何か嫌な予感がする。何故か倒せてない、そんな予感がするのだ。

 しかしそれは自分の攻撃をボロボロの相手が防いだということを示唆しており、セシリアのプライドが追撃を許さなかった。

 煙が晴れ、中の様子が明らかになっていく。

 無傷で浮かぶメタリックグレーの機体と、それを覆うように球形で展開された白銀の薄い膜。

「ふー、危なかった」

「今のを、防ぎますのね

(バリア……スピードタイプ特有の装甲の薄さをカバーするための能力でしょうか。いえ、それですと先程の攻撃が説明できませんわ。……と、いうことは防御と中距離攻撃を補うものと仮定して動きましょう(この間0.3秒))」

「さあ、決闘(デュエル)再開だ!」

 


 

 こっちの世界に帰ってくるのがかなり遅くなってしまった。

 理由?簡単だよ。帰り方がわからなかったんだ。

 そんなことより今の状況だ。一見「これから主人公の反撃だ!」って感じの流れになってるように見えるけど実は違う。

 ボクの頭痛は変わらず続いてる、というかもっと酷くなってる。短期決戦で行きたいのにセシリアはビット2つを使って僕を牽制しながら距離を取ろうとする。

 正直いって状況は最悪だった。

「(SEを10%に指定。残りはバリアとエネルギー弾に!)」

 

 そこからは中距離での撃ち合いとなった。が、さっき使えるようになったばかりの希がこれまで中遠距離戦を主としてきたセシリアに撃ち合いで勝てるはずがなく、遂にバリアがパリンという音を立てて崩れた。

「やばっ!」

「この時を、待っていましたわ!」

 バリアが割れ、無防備となった希に向けて、待機させておいたビームビットと自らのもつスターライトmkIIからビームを放ち、トドメを刺しに行く。

 戦いによる疲弊と頭痛にやられている希は迫り来るビームを前に諦めたように目を瞑り──

 

──右の口角を釣りあげた。

「この時を、待っていた……!」

 偶然かはたまた意趣返しか。その言葉は先程のセシリアと同じ内容のものだった。

「SEを1%に指定、残りは全て擬似ブースターに!」

 希の姿が消えた。そう感じた時には既にセシリアによける術は残されていなかった。

 トドメを刺すために4つのビットを使った強攻撃。それを放ったあとは外れた時のために警戒しているとはいえ、ほんの僅かに気の緩みが発生する。その隙をつくために希はわざと()()()()()()()()のだ。

「ゴッドハンド……クラッシャァァァ!」

 瞬時加速とエネルギーブースターによって過剰に加速された希の拳は確かにセシリアを捉え、勢いを衰えさせることなくアリーナの壁に突っ込んだ。

 観客席から見ると希とセシリアが消えたと思ったら壁から轟音をが響き試合終了のブザーがなっている、そんな状況だ。

「ね、ねぇ……何、今の……」

「流石におかしいでしょこれは……」

「どっちが、どっちが勝ったの?」

 ザワつくアリーナに千冬の凛とした声がアナウンスで響く。

『ブルーティアーズ、並びにクトゥルー、エンプティ。

 この試合は引き分けとする』

 予想外の試合結果に呆然とし、沈黙する観客達。しかしそんなものは内から湧き上がる興奮によってすぐに流される。

 観客席には歓声が満ち、戦い引き分けた2人を称えた。

 

 観客席とは対照的にアリーナの隅っこ、2人の決着が着いた場所はとても静かだった。

 両者戦闘による疲労と最後の衝撃による軽い脳震盪でそれどころではなかったのもあるが、『負けなかったけど勝てなかった』というモヤモヤした思いを抱えているため互いに黙ったままだった。

「うぅ……スッキリしないなぁ……」

「ええ……そうですわね……」

 えらく気の抜けた第一声だった。

「次はぜったいまけないから……」

「ふふ、では期待しておきましょう」

「…………」

「…………」

「ピットに戻ろっか……」

「ええ、そうですわね……」

「いたたたた……あたまがぁ」

 最後まで締まらない幕引きだった。

 

 ちなみにこの後だが希は戦闘に出れないと判断し、少し間をあけて一夏VSセシリア戦だけが行われた。

 結果としては僅差でセシリアの勝利だった。

 

 以下、ダイジェストでお送り致します。

 

「中距離武器?なかった」

「……希もそうでしたけどなんですのその脳筋装備編成は」

 

「オオォォォォ!」

「ハァッ!」

 

「くそ、ビームがなんとかできれば……」

 

「これ……千冬姉の使ってた……これならいける!」

「あれはあいつが調子に乗っている時の癖だ。あの癖が出ている時は大体何かやらかす」

 

「これで、決める!」

「(これは、私の負けですわね……)」

ビーッ!『白式、エンプティ。勝者セシリア・オルコット』

ワアァー!

「え?」

「え?」

 

「クラス代表は織斑とする」

「え?」

 

「なんで俺が?」

「私が辞退したからですわ!」

「え?」

「ボクも辞退したからだね!」

「え?」

 

 以上、ダイジェストでお送り致しました。




一夏「え?」
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