「今日はISの基本的な飛行操縦をしてもらう。織斑、望月、オルコット、実践してみせろ」
ある日の授業中、千冬ねぇの指示に従いクトゥルーを展開する。かかった時間は0.7秒。ここまで短縮するのにはだいぶ時間を食われた。
「まだ遅いな、望月。0.5秒でできるようになれ」
手厳しいなぁ……1秒の壁を越えるのにどれだけ頑張ったことか。
「 な れ 。いいな?」
「はい!」
出席簿で脅されるこの気持ち、わかるかな……
周りを見るとセシリアは既に展開済みで一夏はまだだった。
「遅い、望月同様0.5秒だ」
ようやく展開出来るが当然のごとく厳しい目標値が下される。
千冬ねぇって一夏に対してすっごいスパルタなんだよね。まあ愛故っていうのは知ってるんだけどね。
「ふむ、望月。貴様も一度くらいは出席簿を受けてみるか?」
「いえ、すみませんでした!」
……読心術持ちなのかな?
「よし、飛べ」
一斉に飛び上がる。
クトゥルーとブルーティアーズが先行し、白式がフラフラとあとをついていく。
「速いな、2人とも」
「当然ですわ!」
「直線加速は1番練習したからね!」
『何をしている織斑。スペック上の出力はブルーティアーズよりも白式の方が高いぞ』
「目の前に角錐を浮かべるイメージ、だっけ?……分かりにくいなぁ」
「テキストに書いていることは所詮一例。自分のイメージしやすいやり方を見つけた方が建設的でしてよ」
IS基礎理論の教科書ってやけに小難しい書き方してるんだよね。目の前に角錐とか、意味わからんじゃん。
「そう言われてもなぁ。そもそも空を飛ぶ感覚すらあやふやなんだよ。ほんとどうやって浮いてるんだこれ?」
「えー、めっちゃ難しい話になるよ?」
「ええ、反重力力翼と流動波干渉のお話ですから、とても長くなりますがそれでもよろしくて?」
「わかった、話してくれなくていい」
「ふふっ、残念ですわ」
心底嫌そうな一夏と微笑むセシリア。その笑顔はこれまでのような侮蔑の籠ったものではなく、心の底から楽しい、そんな感じだった。
「ええと、一夏さん、その……」
セシリアの凛としたイメージとは程遠くえらくモジモジしている。……ははーん。分かっちゃった〜(上機嫌)
「時間があるようでしたら個人的にレッス『一夏ァ!そんな所でなにをしている、早く降りてこい!』むぅ…」
下を見ると山田先生が箒にインカムを奪われてワタワタしていた。
「ISのハイパーセンサって凄いな。箒のまつ毛まで見えるぜ」
「地上では制限がかかっていますが、元々宇宙で何万キロも先の光を捕えるためのものですもの。でも、その……」
「覗きはするなってさ」
「誰がするか!」
セシリアはたぶん私なら覗いてもらっても……とか考えてるんだろうな。わかりやすっ。
『はぁ……よし、3人とも急下降と完全停止をしてみせろ。目標は地上10cm以下だ』
「それでは、お先に失礼しますね」
急速に降りていき、地面スレスレで停止する。やはり代表候補生、慣れている。
「上手いもんだなぁ……」
「代表候補生は伊達じゃないっことだね」
セシリアに対抗心を燃やし急下降の準備をする。
「じゃあ次はボクが行こうかな」
「おう」
下降を始める。教科書によると『ジェット噴射を上に向けて直前で元に戻すイメージ』らしい。
グングンと地面が近づいてくる。そして体勢を整え体を起こし──
ズゥ……ン
「タイミングが遅いな。早い分には後でカバーできるが遅い分にはそうはいかないからな、すぐに修正しろ」
「はーい」
「今の私は織斑千冬ではなくて織斑先生だ。その態度はやめろ」
「はい!」
そんな会話をしていると一夏が降りてきた。
いやー、いい感じに着地したね。……肩口から。
え?それは着地ではなく墜落?その通りだよ。
「……誰がグラウンドに穴を開けろと言った」
見学している他の生徒を巻き込んだりしなくて良かったが、呆れたような千冬ねぇの言葉や周りの生徒の視線でたぶん一夏は瀕死だ。
「鐘も鳴ったし今日はここまでだ。織斑、きちんと片付けておけよ」
「はい……」
「ボクも手伝うよ、一夏」
「私も手伝おう」
「サンキューな」
箒と共にものすごくしょんぼりした一夏を手伝う。今日の授業はこれで終わりなので終わったら荷物をとって寮に直帰する予定だ。
説明してなかったけど一夏とボクは部屋が違う。普通男2人は部屋一緒にすると思うんだけどなぁ。
ちなみに一夏は箒と、ボクは布仏本音って子と同室。一夏と箒は元々仲がいいし、ボクと本音はすぐに打ち解けて今では「のほほん」「もっちー」と呼び合う仲だ。
一夏と箒が同室な事について不満はない。けど1つ心配なのは一夏がラッキースケベとかを起こして箒に木刀で撲殺されないかって事なんだよね。
箒って素直じゃないしすぐ手が出ちゃうから。好きな相手に恥ずかしい姿を見られた!とかだったら確実に木刀で殴りかかってしまうだろうね。
さて、片付けも済んだし、早く寮の部屋に帰ってのほほんと──ん?
「どうしたんだ?希」
「ごめん、更衣室に忘れ物したっぽい。先に帰ってて」
「わかった。遅くならないようにしろよ?」
「うん、ありがとう」
踵を返し元来た道をもどる。──フリをして一夏から見えないところに移動する。そして
「やあ。久しぶりだね、鈴」
「……気づかれるとは思ってなかったわ」
そこにいた人物、もとい凰 鈴音は箒が転校していく時に入れ替わるように転入してきた、いわばセカンド幼馴染みでこっちも一夏に惚れている。幼なじみになってしまったら最後、一夏には惚れるしかないのだ。(あくまで個人の意見です)
「受付はあっち、あと20分しかないから急いでね」
「え、あ、ありがと」
「それじゃ、また明日ね」
ウィンクして早めに切り上げる。話したいことはいっぱいあるけど時間とっちゃいけないしね。
そっかぁ、鈴もIS学園に来るのか……
寮へと引き返す足取りは、傍から見てもわかるほど弾んでいた。
「忘れ物は見つかったか?」
「うん!」
「そりゃ良かった。そういや何忘れてたんだ?」
「んー、昔の縁?」
「(´・ω・)ワカンネ」
「ふふ、今はわからなくてもいいよ」
「そっか、それじゃまた後でな」
「おっけー」
廊下の丁字路で一夏と別れる。一夏の2025号室と僕の住む2054号室は逆方向にあるからね。
「なんか嬉しそうだね〜もっちー」
「まあね〜ふふ、のほほんには教えちゃおっかなー」
「なになに〜?」
「実はね……」
「なんと、今日はこの1組に転校生が来ています!」
「転校生?こんな時期にか?」
「……」ウズウズ
「それじゃ、入ってきてくださーい!」
「今日からこのクラスで世話になるアイズシャルテ=ダリルベルクだ。よろしく頼む」
「は?」(一夏)
「え?」(希)
「はい?」(セシリア)
「ん?どうした、こっちを見、て……」(箒)
クラスの大半が目を疑った。何故なら教室に入ってきたのは髪と目の色以外が誰かに酷似していたからだ。
「「「「…………
このタイミングで新キャラ登場って、大丈夫かな?大丈夫だよね、大丈夫だとも(希式三段活用)