「2組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単に優勝できるとは思わないことね」
「鈴?お前、鈴なのか?」
「そうよ。中国の代表候補生、凰鈴音よ。ざっと宣戦布告に来たってわけ」
ふっ、と小さく口角を上げ不敵に笑う。
本人はかっこよく決めているつもりなんだろうけど……
「お前なに格好つけてんだ?似合わないぞ」
「なんてこと言うのよ!空気読みなさいよバカ!」
ぶっちゃけ違和感が凄かった。一夏の一言で元に戻ってしまうくらいに役が鈴に馴染んでいなかった。
「とにかく!あたしと当たるまで負けるんじゃないわよ!」
「あ。鈴、後ろ後ろ」
「後ろってなによ?……ひゃぁっ!?」
振り向くと織斑先生。ちゃんと言ったのになぁ。
「……そこまで驚くか?もうすぐHRが始まる、早く自分のクラスへ戻れ」
勢いよく返事し、鈴は勢いよく帰っていく。
「まったく、高校生になってまで廊下は走るなと言われないとわからないのか?まあいい、HRを始めるぞ」
教壇に立ちいつものようにホームルームが始まる。さっきまでの出来事が嘘のようにいつも通りの流れ。
「一夏ー、何食べるー?」
いつも通りの流れすぎて気がついたら昼休みになっちゃった。ボク達は基本的に学食でお昼を済ませてる。
「焼肉定食とかにしようかな。午後はまた実習だし」
「そっかー、まあボクはオムライスにするんだけどね」
「ならなんで聞いたんだよ!?」
「一夏!希!」
少し離れたところからボク達を呼ぶ声がする。見るとそこにはラーメン定食を持った鈴がいた。
「あ、鈴じゃん!いっしょに食べよーよ!みんなでさ!」
「おっけー。席、取っとくわね」
「本当に久しぶりね2人とも。……で、ちょっと聞きたいんだけど」
「どうしたんだ?」
「あのね……なんなのよこの大所帯!?え?何人いるの?」
一夏、鈴、セシリア、アイシャ、のほほん、相川さん、鷹月さん。そしてボクの合計8人だね。
「8人!?あたし皆って昔みたいに3人でってことだと思ってたわ……」
「ふむ、少し悪いことをしてしまったかな?」
「いや、多いのが嫌とかじゃないのよ?ただ、その、予想外だったってだけで……」
「ならよかった。遅れてすまない、私はアイズシャルテ=ダリルベルク、アイシャと呼んでくれ」
「わたくしはイギリスの代表候補生、セシリア・オルコットですわ!」
「一夏の幼馴染の篠ノ之箒だ」
「本音だよ〜」
「相川清香だよ。よろしくね」
「鷹月静寐です、よろしくお願いしますね」
「情報量の暴力!」
うがー!と頭を抱えて唸り、ふと頭をあげる。
「あれ?一夏の幼馴染みって、私知らないわよ?」
「ああ、そういえば鈴は箒と入れ替わりで入って来たんだったな」
2人が立ち上がり、一夏の幼馴染であることを強調しながら握手する。
見える見える、バッチバチの火花がね。(倒置法)
箒と鈴、そしてセシリア。セシリアはまだ付き合いが浅いから断言できないけど、多分皆恋愛が下手くそ。いずれ一夏の取り合いになることは明白で、少なからず一夏に火の粉が降かかるのも想像に難くない。
喧嘩せずにみんな仲良くが望ましいけど……
「ほらほら、二人とも早く食べないと午後の授業遅れるよー」
「ああ、そうだな。これからよろしく頼む、鈴音」
「鈴でいいわよ。仲良くしましょうね、箒」
「おぉ、二人ともすっかり仲良しだな!」
一夏は本当にわからないんだろうなー。この天然女たらしめ♪
一夏の二人目の幼馴染、鳳鈴音は一目見た時からわかった、私と同じ匂いがすると。
ライバルといえるような相手が現れたことだし、もたもたしてはいられない。6年間温めてきた想いを行動に移すべきなのだろう。しかし、しかしだ。
もし私が一夏と、こ、恋仲になったとしたら希はどう思うのだろう?
希が一夏に向ける感情は恋愛感情とは別かもしれないが、彼は恋愛感情というか、もっと深く大きいものであるように感じる。
彼のただ二つの大きな心の支え、それが千冬さんと一夏なのだ。はたして彼から一夏を奪うような真似をしてもいいのだろうか。
彼は他人に対して優しく自分を押さえつけてしまうことがある。きっと一夏と付き合っても彼はおめでとうと本心から祝ってくれるだろう。でも、それで彼が心のどこかででも傷ついてしまっては意味がない。
彼は一夏の唯一無二の親友なのだから。
「おぉ、二人ともすっかり仲良しだな!」
違う、そうではないのだ。そろそろ気付いてくれ一夏。
「ねーねーきいてよのほほ~ん」
「んー?どうしたのもっち~」
時は流れ放課後。そして場所も変わり寮の自室。
先ほど起こった、鈴の引っ越しを手伝おうとし、色々あって一夏と鈴が喧嘩……というより鈴が一方的にキレた話をする。
「ってことがあったんだけどさ、面白くない?」
「すっごく面白いよ~。だって『毎日あたしの作った酢豚、食べてくれる……?』って約束を毎日酢豚をおごってくれる約束って覚えてたなんて、抱腹絶倒ものだよぉ」
まあ、筋金入りの鈍感な一夏に毎日味噌汁が伝わるはずないって気づかなかった鈴も鈴だけどね。
「鈴と箒、仲良くできるかなー」
「きっとできるよ~こんきょないけど」
そういえば、と話を変える。
「一夏のクラス代表就任おめでとうパーティー、明日であってるっけ?」
「あってるよ~でも急にどしたの~?」
「いや、一夏って実は○○代表みたいなのはやったことないからちょっと嬉しくて」
「そうなんだ~代表とかなりまくってぶいぶい言わせてるかと思ってたや」
談笑は夕食とシャワーをまたいでも続いた。