この素晴らしい錬金術士に至高のパイを!   作:玄米ほうじ

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 ロロナのアトリエを周回するときはパイエンドフラグを必ず立てます。
 『生きてるパイ』はみんな好きなハズ。ぷにってスライムみたいなもんですよね!

 つまり、ハンスの一部を材料にしたら……(ここで途切れているようだ。)


ロロナとカズマ

 

 

 

 今まででロロライナ・フリクセル程数奇な人生を過ごした者はいないだろう。

 

 

 幼い頃、流行り病に罹ってしまった両親を錬金術士に救ってもらったことを機に、弟子入り。

 

 

 彼女が錬金術を学び始めたのはその数年後。国からアトリエの取り潰しの危機に陥ってからだった。

 

 アトリエが存続する為には、3年間3か月ごとに王国から出される課題をこなさなくてはならず、失敗したら即アトリエは閉鎖となってしまう。

 

 

 王国の課題にやる気がない師匠により、アトリエの所有権がロロナに代わって(押し付けられて)から、彼女の人生は大きく変わった。

 

 

 3年間で課題をクリアでき、ロロナはアトリエでパイ職人になったり、王様お抱えの錬金術士になったりもした。

 どれも短い期間ではあったものの、その後、錬金術を広める旅に出て弟子をとった。

 

 

 

 その弟子と錬金術の学校を立ち上げたりもしたのだが、独特の感性がたたってか長く続くことが無く……というか弟子の方が分かりやすいから先生を代わって!と子供たちから言われて大分へこんだ。

 

 

 30代になる前、何故か師匠から『30代のロロナとか誰が得をするんだ!私は見たくない!!』といった暴論を振りかざした師匠によって8歳にされてしまった。

 

 今までの記憶と、当時の記憶は消されているが、パイ屋さんを経営したことはなんとなく覚えている。確かアールズの宰相御用達のパイ屋にまでなっていたはずだ。いや、最初っからだったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 閑話休題(そんなことよりパイ食べよう)

 

 

 

 

 

 異なる世界での錬金術士、魔術師、賢者、騎士を育成する学校に迷い込んだこともあれば、異世界の辺境の村を発展させる管理官の協力者の一人にもなった。

 

 錬金術に携わってなければ恐らくだが異世界に行く。なんてことも、年齢が変わる。なんてことも、何故か未来の弟子が会いに来る。なんてことも無かっただろう。

 

 

 「今までいろいろあったけど、転生は初めてだなぁ~」

 

 

 

 そんな不思議な経験をしたロロナが転生したところで、動揺なんてするはずもないのである。

 

 

 

 

 

 「でも、なんで(薬飲まされてないのに)若返ってるんだろう……」

 

 全ての始まりである13歳の時の姿になるのも、ロロナの不思議人生にはデフォルトみたいなものなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *******

 

 

 

 

 

 

 

 佐藤和真は頭を抱えていた。金が無いのだ。

 

 

 ファンタジー世界の第一歩としてのギルド登録。それには料金が必要だった。

 金が無ければ何にも出来ない。現代社会と一緒だ。世知辛い世の中である。

 

 

 

 傍らにいる特典の女神は、この世界の通貨なんて持ってないと言う。

 初期費用も持たせないなんてなんて世知辛い世界なのだろうか。カズマ少年は心から嘆いた。

 

 8個のバッジを求めて10歳で1人旅をする少年少女だって3000円以上は持っているのに!!

 

 

 

 

 現代日本。しかも引きこもりしていた彼にとって、初対面の人にお金を借りようなんて難易度は高かった。

 特典(アクア)はプリースト達に話しかけている。

 自身をアクシズ教の女神と名乗り、お金を求める姿は尊敬しなくもないが、胡散臭い言動と、態度で人々から避けられていた。

 

 

 

 

「お金ないの?」

「ん?」

 

 

 声のする方を見れば、カズマより小柄な少女がカズマを見ていた。

 ピンク色の帽子、丈の短いマントを羽織った少女だ。年は大体13、4歳に見えた。

 

 少女が手にしているカゴからは美味しそうな匂いや何故か火薬の匂いもしていた。

 見た目は可愛らしい少女なのだが、危険な匂いがする少女に、カズマはほんの少し警戒する。

 

「登録料払えなくて困っている人、よく見るから。もしかしたらあなたもかなーって」

「あ、ああ。オレと、オレの連れの2人分……」

 

 カズマは未だ他のプリーストにたかっている女神を指さした。

 絡まれているプリーストからは『お前の連れだろ。どうにかしろ』と言わんばかりの表情でこちらを見ているが、カズマは気にしないことにした。きっと気のせいだろう。

 

 

 

「じゃあちょっと付き合ってもらってもいいですか?」

 

「ファッ」

 

 

 

 

  

 

***

 

 

 

 

 

「……って森にかよ!!!」

「ッ!!?どうしたんですか??」

 

 森だ。

 360度、どう見渡しても森だった。

 

 青い、猫型リュックに植物や土、鉱物をどんどん詰め込んでいくピンク色の少女――出発前に、ロロライナ・フリクセルと名乗り、ロロナと呼んでと言っていた――がオレのツッコミに驚いて声を上げた。

 

 

 アクセルの街を出て、草原を越えた先に生い茂る森があった。

 

 道中デカいカエルがいたが、ロロナが貝殻の笛を吹きながら歩くと、カエルは地面に沈んでいった。

 戦の合図を送る法螺貝のような音なのに、音色を聴いたカエルたちは眠っているのである。なんでこんなでっかい音聴いて眠れるんだよ。異世界だから?

 

 

 

 まぁね、ロロナの『付き合って』発言はね、会話の流れ的に男女のお付き合い的なそういうアレじゃないってことぐらいオレにだって分かるんだよ。

 でもさ、夢見たっていいじゃん!かわいい女の子にそんな風に一度言われてみたいじゃん!!!

 

 

「なんかカズマさんからそこはかとなく夢見がちな童貞臭がするわ」

「どーてぇー?」

 うっさい駄女神!!意味の分かってなさそうなロロナにそんなの教えようとするな!

 

「でもロロナ、良いのか?」

 会話の流れを無理やりにでも変える。

 こちらを振り向いて、小首を傾げるロロナ。そんな小動物のような彼女に見せるように手に持っていたバスケットを持ち上げた。

 

 

 

「ただ採取に付き合うだけで爆弾とか薬とか、金までくれるなんてさ」

 

 

 

 

 

 

 そう、それは酒場での『付き合って』発言の事。

 

 説明不足なロロナに代わり、受付のお姉さんが説明してくれたのだ。

このロロナは『登録料が足りない人々にカンタンなお仕事を斡旋している』んだそうだ。

 

 登録されている中でもたった一人しかいない『錬金術士』というジョブについているロロナは、材料を採取しに町の外に出かけたりするのだとか。

 

 

 ロロナが採取している間にモンスターに襲われないよう、護衛をするのが今のオレ等の仕事。

 

 装備品は錬金術で作ったものを一時的に借りている。爆弾や薬はプレゼントなんだとか。

 

 

 

 その上オレ達は依頼料として2000エリス先払いで貰っており、ギルドの登録もすでに済んでいる。

 

 ジョブ?基本職の冒険者だよ。ちきしょーめ。

 ちなみにアクアはアークプリーストになった。知力と運が極端に低いと評価されていたのが気にはなるところである。というか女神なのに人間より知力低いっていいのかよ……。

 ゲームとかでも神サマ系統って人間より賢いってイメージだったんだが実際はそうでもないんだな。

 

 

 

 まあ、そのアクアはロロナからお金を貰った後仮病使おうとしてサボろうとしてた。

 堂々とした契約破棄っぷりにロロナまでもドン引きしていた。結局そんな空気に耐えかねて依頼に参加はしているんだが、これから先この駄女神と一緒でやっていけるのかが不安である。

 

 

 

 閑話休題

 

 

 

「うん!その道具の感想を後で聞かせてくれたらそれでいいよ!今後の改良点が見つかるかもだし」

 

 裏表のない綺麗な笑顔でそういうロロナ。アクアよりロロナの方が女神っぽい。

 

「なによカズマさん。今、なんか失礼なこと考えてなかった!?」

「ソンナコトナイヨ」

 

 そんな追求はスルーに限る。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 端的に言えば、爆弾の殺傷能力は凄かった。

 

 若草色の絨毯のような大地は、何故か赤黒い血痕の痕とモザイクフィルターをかけておきたい物体がちらほらある。

 

 ロロナから支給された『クラフト』と名付けられてた黄色いトゲが付いた爆弾の威力でこうなってしまったのだ。

 転生初日にしてスプラッタな風景にSAN値がゴリゴリ削られている気がする。

 

 アクアが魔法を使ってモザイクや赤黒色を洗い流したりしてくれなければ、どこかで戻してたかもしれない。

 

 

 

 まだカゴには『フラム』と『レヘルン』、『メテオール』とロロナが言っていた爆弾が残っている。

 

 効果の説明も同時にしてもらっていたので、比較的安全そうなクラフトを使ったのだが、結果は上記の通りである。

 他の使うの怖いんだけど!!

 

 早く帰りたいところだけど、ロロナはまだ採集していた。……あれ?モザイク拾ってない?

 ――うん。オレは何も見てないぞー! 異世界の空も青いんだな!

 

「カズくん、アーちゃん、爆弾の音で他の魔物も寄ってきそうだから場所を移動しない?」

「もう『アーちゃん』なんて呼ぶの止めてよね!私、女神よ!高貴なる水の女神アクア様なのよ!そんなと、友達の愛称みたいなぁ~、気軽そうなぁ~呼び方なんて止めてよね!」

「あ、ああ。結構デカい音だったよな……

 ロロナ、他の爆弾もそうなのか?」

 

 今まで友達いなかったのかこの駄女神……

 とても嬉しそうな表情してるんだが。

 

 誰得のツンデレなのか分からないデレ方をしているアクアは放っておいて、オレはロロナに爆弾の音について質問した。

 「う、うん!一番控えめなのがレヘルンかなぁ周囲を凍らせて出来た氷柱を破壊する音が少し大きいと思うけど」

 

 氷柱の大きさによってはレヘルンも音がデカそうだな……

 狭いところでは使えなさそうだ。

 

 

 ロロナはアクアの方をチラチラと見ながら、哀しそうに眉を下げた。

 この反応、アクアの照れ隠しを真に受けてしまった感じか?

 

「あ、あのねアクアちゃん。さすがに女神を名乗るのは良くないと思うの」

「違うわよ!私ほんとーに女神なんだもん!ウソついてないもん!!」

 

 そんな大泣きしながら言うアクアには、女神のような神聖さはまっっっったく無かった。

 人間味しか感じない。

 

 呼び方を変えていることにも気づいていないみたいだ。

 

 

「あああ!ごめんね!アクアちゃん!!イイコだから泣かないで~~!」

 ロロナはパイをアクアに渡し、小さな子をあやすように背中を撫でた。

 

「う"~~~呼び方戻さなくていいのに

 あ、これ美味しい!ねえロロナ!他にもないの?」

 コロッと泣き止んでアクアは次のパイをたかる。

 

 なんだか小さな子をあやす母親のような感じだ。ロロナの見た目はオレより年下そうなのにな。

 

「たかるな! さっさと行かないと魔物が……」

 

 草をかきわける葉擦りの音。荒い呼吸。イヤな予感しかしない。

 振り向く寸前、ロロナが杖を振る。

 

「『エンゼルスピリット』!!」

 

 白い光のようなモノがロロナの杖から発射されて、コボルトに直撃。

 

 反動で仰け反ったコボルトに追撃するように、ロロナは一歩前に踏み出し、カゴの中からトゲトゲしたモノを投げた。

 見た目が栗みたいなソレは、何故か小さく爆発し、オマケとばかりに杖でコボルトを殴った。

 爆弾などの勢いもあってか、コボルトは木に叩きつけられた後、動かなくなった。

 

 流れるような一連の展開にオレはついていけない。

 っていうかロロナさん護衛要らなくない?超強いじゃん。

 

 ロロナは軽い足取りでコボルトに近づき、合掌。そしてオレ等の方を振り向いていい笑顔で言った。

 

 

「今から解体するから周囲を見てて」

 

 血の気がヒュンって引いた。

 

 

 

 

 

 

 あ^~空が青いんじゃあ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 ロロナがロロナのアトリエ時期の年なのは『ロロナだから仕方ない』で済ませます。

 大丈夫、ネルケのアトリエだって13歳ロロナと13歳トトリ、15歳メルルが師弟関係もったまま会話してるから!錬金術士ってすげーや!(すっとぼけ)

 つまりステルクさんもルルアのアトリエ記憶保持のままロロナのアトリエステルク姿で転生ワンチャン……??

 
 ロロナ達ってモンスター討伐の後素材を回収しているから、解体作業お手の物なんだろうな~きっと。
 血で衣服が汚れてないのは錬金術の恩恵なんだろうな~やっぱ錬金術ってすげーや!

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