感想、お気に入りありがとうございます!
書くに当たって、vita版のロロナ・トトリ・メルルのアトリエで撮ったスクショを見たんですが、ロリナ先生、可愛いですね。ペロキャンの杖とか似合いすぎでしょ!パイの帽子を着せてみたけど、ロロナ先生の為にある帽子でしたね!
前回、出てきた錬金術アイテムの笛なんですが、あれ、あとから調べたら味方に使える状態異常回復のやつでした。
あ~、ハリ○タのフラッフィーみたいな特性もちってことにしてください、お願いします!
冒険者の始まりの街として知られるアクセルには、一軒のアトリエがある。
傾いたフラスコをモチーフにした看板には『ロロナのアトリエ』と書かれており、小さな丸い窓からは大きな釜が見える。
アトリエの煙突からは、モクモクと煙が上っており、日によって様々な色に変化していたり、香ばしいパイの匂いやむせ返るほどの火薬の匂い、時たま爆発音がしたりもするような、ごくごく普通のアトリエである。
そんなアトリエの主、ロロライナ・フリクセルは、錬金釜をかき混ぜる手を止め、額を拭った。
以前、汗が錬金釜に入った際に発生した爆発を彼女は生涯忘れることは無い。
というか、爆発に巻き込まれた師匠の説教・嫌がらせがトラウマになっているのだが、それは割愛しておこう。
今日作っているのは、酒場や屋台に納品するパイである。
住む世界は変われど、ロロナのパイに対する愛は変わらない。
世間のロロナに対する印象も『パイの人』であることは不動であった。
唯一無二の『錬金術士』という称号を持っていながら、ロロナ=パイの図式には当人も大満足である。『あ~、あの錬金術士の人ね』と言われるよりもいい笑顔をしているのは、最早さすがであるとしか言えない。きっとロロナの大部分はパイで出来ているのだろう。
『うにパイ』『トードパイ』『シーフードパイ』『ミートパイ』『シュワパイ』『よっパイ』etc.
お酒のつまみにも、食事にもピッタリなロロナのパイは大人気商品だ。
よって発注数も多く、テーブルの上に複数の山が出来あがっている。勿論、正体はパイだ。
「これくらい作れば大丈夫だよね」
ロロナはいそいそとそれらをコンテナの中に入れ、ほんの少しのパイをカゴの中に入れた。カゴの分は友人の食料である。
井戸の傍にアトリエを構えたロロナの友人は、繁華街に店を構えているアクセル一の売れない魔法具店を経営していた。
名前はウィズ。今は引退しているが、昔は有名なアークウィザードだったのだそうだ。
魔法の才能はあるものの、商品を見る目の才能はからっきしな彼女は、いつも赤字に苦しめられてきた。そう、ロロナが常連になるまでは。
ロロナにとって変わったものを取り扱っている店は、錬金術の素材の宝庫。現在はアールズに店を構えているかつての友の面影をウィズに映した。
おっとりしたところとか。変わったものを取り扱っているところとか。店の経営が悪いところとか。一度死んでいるところとか。
ウィズの扱っている魔法具は様々な効果があって見ていて楽しいのだが、安心して使えるモノは残念ながら無い。
様々な特性を引き出すための素材としてロロナはウィズの店を贔屓にしていた。
値段が高いモノはお財布事情で購入できないので、いつか金持ちの収集家が来店することを祈るばかりである。
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「……はい、確かに受け取りました!」
一応ギルドの納品クエストに属するので、出来上がったパイはルナに渡した。
可愛らしい青い猫型のリュックから、ソレよりも大量のパイを取り出していく様に、偶然見てしまった冒険者の目が見開き、何度もリュックとパイの山に視線を移動させた。
「(分かるわ……何度見したくなるその気持ち、分かるわ)あら、このパイは新作ですか?」
その冒険者の視線に唯一気づいていたルナは、ロロナのリュックの性能の良さに物欲が生じた。冒険者たちや商人たちにとって、あのリュックはなんとしても欲しい。だが、デザインが……その、ファンシーなのだ。
強面の冒険者が持っていたら、窃盗を疑われてしまうくらいには。
ルナだって欲しい。だけど猫型のリュックは、なんかこう、抵抗感があるのだ。
ロロナのような、可愛らしい、小さな少女が背負うなら似合う。と思う。
違うデザインで作ることは出来ないのだろうか。
「はい。これはお酒を使ってないんですけど、食べたら酔っ払った気分になれるパイなんです!」
「酒場も併設しているので、お酒を飲めば良いのでは……?」
「まぁそうなんですけど、ほら、私みたいな人たちって、お酒を頼んだりすると止められちゃうじゃないですか」
言いたいことは分かった。
デリケートな話題になってしまうため、ルナは言いたいことを察しつつも、大人な対応をする。
「確かに、妊婦の方や子育て中の女性にはお酒は厳禁ですからね。さすがです、ロロナさん」
「ぇえ!?
……あ。そうなんですよ!お酒が好きでも飲めない人たちの為に!わたし、作ってみたんです!!」
アハハハーと乾いた笑い方をするロロナ。なんとか幼い少女の傷口を抉らずに済んだことにルナはホッとした。
「ところで、ロロナさん。そのリュックなのですが……」
「これですか?」
今までパイが入っていたリュックを持ち上げるロロナ。開け口からパイの匂いと何故か火薬の匂いがした。
「え、ええ。見た所、たくさんの量が入るようなんですが、それも錬金術で作られたのですか?」
ロロナのみが属する『錬金術士』というジョブ。彼女は錬金術というスキルを使ってギルドの納品クエストを、一時期全てこなしてきた。
今ではロロナのみを指名した納品クエストが発注されるまでの人気があるのだ。
依頼主のフワッとした抽象的な要求にピッタリと合うモノを造り上げる錬金術。ヘタな魔道具よりも魔道具らしいソレは、見た目だけでは性能はまったく分からない。
湖の水質調査をしたい。という依頼に、何故か飴を納品したこともある。
性能を聞いたら、『これをなめると水中で長時間活動できる』だとか。
依頼主も思ってたものと違うことに驚いてはいた。
しかし、他にはない実現不可能とされてきたモノだったので、依頼主はニッコリである。
「そうですよ~。この『秘密バッグ』は私のアトリエのコンテナと繋がっているんです!」
「(エ、ナニソレ原理分からない)それって複数納品することは出来ますか?」
ルナは深く考えるのを止めた。何故バッグとコンテナが繋がっているのかの原理を聞いたところで、頭が痛くなることは明白だからだ。
事実、ウィズとロロナの魔道具談義を耳にした冒険者が居た。数時間後、『ぐーるぐーる、ぐるぐるぐるぐる、ぐつぐつぐらぐら、ぐるっぐるっ♪』と意味の分からない擬音語しか喋れなくなっていた。とりあえず寝かせ、2時間後、目が覚めた彼は静かに涙を流した。
ちなみに、その冒険者は魔道具談義の記憶が根元からゴッソリと消えていた。
「できますよ! ただ、自宅にコンテナとか、倉庫とかがある人にしか納品できないんですよ。
あと、『秘密バッグ』とリンクしないとただバッグになるから直接納品した方が手間がかからないと思いますよ」
よくは分からないが、テレポートの登録と同じようなものなのだろう。と無理やり納得し、ルナはデザインについて聞いてみた。
「ちなみになんですが、デザインを変えることは出来ますか?
男性の方にも需要があると思いますので」
ロロナの表情が曇る。
「そうなんですよね……故郷の人にも言われたんです。可愛すぎて使いづらいって。
……でも、他の鞄を見ながら作っても、念じながら作っても、全部。全部」
沈んでいくロロナの表情を見て、結果を察せない者がいるだろうか。いや、居ない。
「全部、同じなんですね……」
ルナの結論に、ロロナは小さく頷いた。
ウィズとパメラはどことなく似ている気がする。
酔った気分になれるけどアルコールが入った食品は全く使ってない摩訶不思議なパイ。それがよっパイ。ロリナ先生考案。
シュワパイはシュワシュワを使ったパイです。アルコール度数そのままでパイにしました。熱を加えてもアルコールは飛ばないという仕様。錬金術ってすげーや!
うにパイ……さんまが畑で採れるなら、うにが木に生ってもいいじゃないという精神で生まれたオリジナルパイ。アトリエ世界の『うに』がどうみても『栗』にしか見えない。
トードパイ……ジャイアントトードのパイ。
シーフードパイ……本日収穫したさんまのパイ。
ミートパイ……先日モザイク処理になった魔物のパイ。
です。ゴマフアザラシ様、パイネタありがとうございました!