この素晴らしい錬金術士に至高のパイを!   作:玄米ほうじ

8 / 9
4か月ぶりでございます。お待たせしました!

 感想評価お気に入り、ありがとうございます。感想のお返事返せなくて申し訳ありません!ちゃんと読んでます!誤字脱字すみません。

 このすばの映画見ました。カズめぐよきでした。バニルさんも相変わらずなバニルさんで映画館内で笑いそうになりました。バニルさんすこ。

 あと原作小説に手をまだ付けてなかったので、ぶっころりーさんが脳内補完していた人物と違って普通にイケメーンだったのでびっくりしました。ぶろっこりーっぽい名前だったからアフロ的な天パさんかと思ったらストレートヘアー!マジか!うそやん!!


ロロナとパメラ

 

 

 モンスターのドロップアイテムや爆弾類が陳列している店の奥。来客が居なければ、店主のティータイムに使用されているこじんまりとした休憩室。そこには二人の美女が居た。

 

 1人はアストリッド。もう1人は紫色のウェーブがかった髪を持ったパメラだ。

 パメラは机に伏せており、紫色の髪が広がっていた。アストリッドはそれをただじっと眺めている。

 

 パメラの上半身がゆっくりと上がった。目が微睡んでいるが、表情は晴れやかで、頬はバラ色に染まっていた。

 

 「特定できたわよ~~」

 特徴的な間延びした声。アストリッドはクックと愉快そうに喉を鳴らす。

 「やはりロロナは退屈しないな!パメラ、そこはどんなところだ?」

 「え~~~っとね、ちょっと待っててねぇ~~」

 再度パメラは机に伏せる。

 ロロナに施した発信器。受信機にはロロナが埋葬されている墓地に反応が1つ、朧気でダブったように見える反応が1つある。

 不確かな反応はパメラからの証言の通り、異世界にあるのだろう。異世界。ああ、なんて魅惑的な響きだろう。そこにはどんな面白おかしいことがあるのだろうか。どんな生き物がいるのだろうか。アーランドを長い間旅してきたアストリッドは、未知の領域に心躍らせた。

 次元を渡る事など、《時》の概念が無いに等しいアストリッドにとっては容易いことだ。今のアストリッドに必要なのはその世界の情報のみ。それさえそろえばすぐにでも次元旅行に繰り出す所存である。

 勿論ステルクにも伝えるところだ。幼馴染として、ロロナの師として二人の恋路を見守り、あわよくば弄り倒したいがため。ちなみに後者が9割であることは言わずもながである。

 

 

******

 

 パメラ・イービスは幽霊である。

 驚かせることが好きで、ちょくちょくロロナを驚かせていた。

 今回もそうだ。『秘密バッグ』に憑依したパメラは、一足先にロロナのアトリエの『コンテナ』に先回りした。バッグとコンテナが繋がっているから出来た芸当である。

先回りし、ロロナがコンテナの前に立った時にビックリ箱のように驚かせる予定だ。

 毎回探索から帰ったらコンテナをチェックする習慣を、元同居人であるパメラはバッチリ把握していた。

 元、と言っても同居期間はほんの数週間、数か月くらいだったと思う。パメラの店をアストリッドが作ってくれた後、パメラは店で生活することになったのでロロナとの同居は終了した。

 

 さて、とパメラはアトリエ内を見渡した。短い間だったが、その当時と変わらないような内装のアトリエだ。

もしやロロナったら同じように家を改装したのかもしれない。これがホームシックというやつなのだろう。アストリッドに伝えたらどんな曲解をしてロロナを弄繰り回すのだろうか。そんな二人の絡みを想像し、クスリと笑みをこぼす。

ロロナの反応は驚かせることが本分の幽霊にとって、良い反応をしてくれるのだ。

 幽霊冥利に尽きる友人を持って幸せだなあ。などと思いながら部屋を見渡すと、作業机に見慣れない少女の像があった。聖なる気が感じられ、見てるだけで背筋が凍る気がした。なんだろう、その像から《アンデッドを消す》という凄みを感じる。それを見ているだけで魂だけでしかないパメラの精神はゴリゴリに削られていくのだ。

 

 『え~~こんなのがあるとロロナと楽しく住めないじゃない!』

 人形の肉体があればまだマシなのかもしれない。

どかそうにもポルターガイストの原理で触ろうとすると、体が焼かれるように痛いのだ。

 パメラにとって幸運の女神像は呪われた少女の像であった。

 早いところロロナに住む場所を斡旋してもらわなきゃいけない。何だか懐かしい気持ちになるのだが、原因が原因なだけに、素直に喜ぶことが出来なかった。

 

 

 

 ロロナの鼻歌がドアの外から聞こえた。

 現在は深夜帯であるので、通りは静かだ。静けさも相まって、その声はやけに響いた。

 パメラは計画通りにコンテナに潜む。玄関をじっと見つめた。

 

 ドアが開き、嬉しそうにスキップするロロナ。計算通りにコンテナに近づき、腰を降ろす。――今だッ

 

 

 

 

 

 

 

 ロロナは不貞腐れていた。これ見よがしに頬はリスのように膨らんでいる。

 パメラのドッキリは大成功だった。ロロナは非常に良いリアクションをしてくれた。しすぎてくれたのだ。近所からクレームが入るレベルの大絶叫(リアクション)を。

 諸悪の根源のパメラは終始ご満悦な表情でロロナの頬をつつく。アストリッドへのいい土産話(ネタ)がまた一つ増えた。

 

 『も~ロロナったらそんなに不貞腐れなくってもいいじゃな~~い』

 幽霊スタイルのパメラは貴族の令嬢が着るようなドレスを身に纏っている。胸元が開いて、白のフリルがふんだんにあしらわれた紫のドレスだ。頭には同色のヘッドドレスである。その状態で天井から吊り下がったり、水中で泳いでいるように寝転んで漂ったりとフワフワと浮かんでいた。

 「だってぇ、ほんとびっくりしたんだよ!?お隣さんにも怒られちゃうし」

 ペコペコとお隣さんに謝ったのち、お隣さんから『早く寝ないと大きくなれないよ』と2か所を見つめられた事実はないのである。無いったらない。けしてそれで不貞腐れているわけではないのだ。そんな事実は無いのだから(しつこい)。

 

 『ねえロロナ、ちょっと聞きたいことがあるのだけど』

 「どうしたの?」

 ロロナはコンテナを探る手を止め、パメラを見た。

 『あなたはいままで何をしてたのかしら』

 「んっと~……」

 

 ロロナは顎に指を当て、語った。

 

 死後の世界でエリスと名乗る女神から《異世界転生》を勧められた事。

 その世界には魔王が存在して、倒してほしい事。

 その為に、転生者には何か1つ特典がある事。

 それを、《アーランドの自分のアトリエ》にした事。

 

 そして、このアクセルという街で錬金術士としてクエストをこなしているという事。

 

 「――というわけで、冒険者や錬金術士として働いてるんだ~」

 

 冒険者カードをパメラに見せた。記号のような文字が並んでいて、全く読めない。パメラが唯一分かったのはロロナの似顔絵位だ。

 「ねえパメラ、ルルアちゃんの様子教えてくれない?」

 

 ロロナの瞳が不安そうに揺れ動く。ロロナの養子であるエルメルリア・フリクセル――ルルアも錬金術士である。柔軟な発想力で若くして規格外な錬金術アイテムを作り出した鬼才である。

 

 ずば抜けた行動力を持ったルルアはどうしているのだろうか。もしや雪山にヴィントシュトーネ狩りに行ってるのかもしれない。

 友を助けるために、錬金術を短期間でマスターし、その後も助けられなかった平行世界の友を救うために平行世界に赴き、見事救出したロロナの自慢の娘である。

 平行世界じゃキリが無いのでは?といった疑問も出たが、『時の楔』と言う『事象』を『固定』させるアイテムを一から創りだし、どの世界でも『救った』という事実を残している。

 過去に行く手段を身に付けたら、ルルアはきっとロロナを救出しようとするだろう。

 必要なアイテムを手に入れるために、平気で危険な所に向かうだろう。ルルアは友達に恵まれているから、きっと彼等もルルアの手助けをしてくれる。1人で行動するよりは安心だが、ロロナはルルアを助ける事や様子を見ることも出来ない。それが酷く不安で、胸が苦しく、怖いのだ。

 

 過去に飛ぶためには時空を歪めるための素材が必要である。

 ロロナがパッと脳裏に浮かんだ場所は、外見で判断してはいけない程強力なモンスターが沢山いるところだ。どこか見覚えのある服を着て、爆弾を投げつけるリスなんて強敵だ。何度ネクタル(蘇生薬)を使ったことだろうか。

 そんな場所に娘や、友人たちが行くと想像するだけで全身が震えてしまう。

 

 

 「もしかしてマキナ領域に行ってたりしないよねぇ!!」

 「ん~~あの子ってそこ知ってたかしらぁ?」

 「えっ?……んー私は教えてないけど、トトリちゃんとかメルルちゃんは?」

 あんな危険な場所、必要に駆られない限り教えることは無い。

 けれど、必要なアイテムがあるかもしれない。と誰かが教えたら?一つの疑問が生まれると、不安はどうしても消えない。小さな楔となって残り、徐々に楔は大きくなるのだ。

 「トトリは評議会。メルルはロロナの代理で東の大陸に行ってるってアストリッドが言ってたわよ~~」

 仮にもアーランドの錬金術師として名を馳せたロロナである。そんな彼女が調査中の事故で亡くなったとあっては、各方面に影響が出てしまうのは仕方のない事であった。

 トトリは評議会の仕事をこなしつつ、メルルが請け負っていたクエストも同時進行でこなしていたのである。

 本来はロロナの代理はトトリであったのだが、トトリの代わりに評議会の仕事をこなせる者がおらず、東の大陸はトトリの代理にメルルが派遣された。トトリが東の大陸に来ると待ち望んでいた槍使いの冒険者は酒をがぶ飲みした。

 

 「んー、ひとまずは安心だけど、ルルアちゃん大丈夫かなぁ」

 唸りながらロロナはテーブルにもたれた。

 「生者は死者を悼んで後を追う……なんてよく聞く話よねぇ~」

 「パメラぁ」

 「でも、ルルアはそんな子じゃないって分かってるでしょう?」

 「ぱめらぁ」

 いたずらっ子ぽく笑うパメラにロロナの目からはボロボロと涙が零れているが、顔色はまだ明るい。

 「あなたは自慢の娘をただ信じていればいいのよ」 

 触れることは出来ない手で頭をなでるふりをした。 

 

 

 

******

 

 「定着の具合はどう?」

 「うん。バッチリよ~」

 ロロナの前には透けてないパメラがいた。

 服装も貴族のドレスのような格好ではなく、華美な装飾が付いていないロングタイプのワンピースとカーディガンである。肌の白さと相まって、病弱な令嬢といって出で立ちだ。

 

 人形に乗り移ることで、パメラはようやくロロナの料理を楽しむことが出来た。

 眠気が覚めるような、香りが良い香茶と、プレーンタイプのパイだ。

 「ロロナはこっちでもパイを作ってるのね~~」

 「まぁね!酒場でも私のパイ評判なんだから!」

 鼻高々だ。屈託のない満面の笑みにパメラもつられて笑みをこぼす。

 「変わらないパイ愛で安心したわ~~」

 舌に広がる、懐かしい味。

 「ねぇロロナ、ここでの暮らしは幸せ?」

 「うん。まぁ、ルルアちゃんたちの事もあるから後悔が無いってことは言えないけど……この世界でも大切な友達が出来たの。ウィズって言うんだけどね、あの墓地で一緒にいた子。なんだかほっとけなくって」

 パメラは墓地ではロロナの他に複数人いた事を思い出した。その中の1つがロロナと距離が近かったし会話も出来た。そういえば、ウィズと呼ばれていたはずだ。

 

 「ああ、あの子ね。ロロナを熱心に見てた男の子もいたけど、その子とはどうなの?」

 茶色い髪の、どことなく平たい顔した少年だ。ロロナとウィズがくっついている時に少年の視線は特に強く感じた。彼の周りにいた少女達は全員美少女なのにも関わらず、微かに熱を帯びた視線はロロナに注がれていたのだ。もし色恋沙汰に発展しようものならなんとアストリッドに言おうかパメラは悩む。アストリッドは面白がるだろうか。それとも知らないポッと出の少年を邪険に思うだろうか。確実に言えるのはステルクをからかうネタが1つ増えることである。

 「カズくん?んー友達っていうか、同じ町に住む冒険者仲間?」

 カズロロなんて(そんなフラグ)無かった。ひとまずパメラは安心した。

 ステルク最大のライバルは依然として幼馴染の料理人か幼馴染の首相(百合)のままのようだ。

 

 

 

 

 

******

 

 

 のっそりと気だるげに起き上り、パメラはアストリッドに声をかけた。

 思考の海に沈んでいたアストリッドは数回呼びかけられたことでようやく浮上した。

 

 「ロロナは元気そうだったわよ~」

 まず先にパメラはロロナの様子を告げた。

 魔王率いる魔王軍の侵略と、それに抵抗する冒険者達。ロロナはその冒険者に所属しているが、冒険初心者が集まる街で錬金術士として働いているから危険はそうそう無い事。

 何故か14歳に若返っていたことを話すと、アストリッドが急に立ち上がって店から飛び出しそうになっていたが、そこは必死になって止めた。

 

 「死後の世界でロロナが今いる世界の神様……一番信仰されている女神様が、ロロナに転生を勧めたそうよ~。まぁ危険な世界みたいだから特殊な能力か、特別な武器が一つだけ貰えるみたいなんだけど~~ ロロナったらそれを『アーランドのアトリエ』にしたらしいわよ~~」

 「何!?」

 「えっ、ええ。ロロナったら異世界に行っても寂しく無いようにって選んだのかしら」

 なんか思ってた想像と違っていた。

 パメラは、アストリッドのことだから弄るネタが増えた。と、喜色満面だと思っていたのだが、実際は違った。過去あんまり見た事が無いほど真剣な表情なのだ。何かを考え込むように目は忙しなく動き、くるくると室内を歩き回る。考えをまとめる為かブツブツと小さく呟いていた。

 「何かスイッチを押しちゃったかしら~」

 雰囲気が変わってしまったアストリッドにパメラが思わずつぶやいてしまうのも仕方無いことだ。話しかけるのも戸惑うほどの鬼気迫る表情。薄暗く狭い部屋に、そんな表情でブツブツとなにか呟きながら歩き回る美女。そんな空気に耐えられないパメラは部屋から出たくなった。

 

 

 

 




今回アトリエ組しかほぼ出てない件。

カンタンな紹介です。

・パメラ……だいたいどのアトリエシリーズにも出てくるウェーブがかった紫髪の美人
      アーランドシリーズでは幽霊としてロロナと出会う。
      『ネルケと伝説の錬金術士たち』では世界観が異なる錬金術士達に対して、『ここの私は知らないけど~~』みたいな事を言ってのけるメタ発言する人。
      異なる世界でも『パメラ』がいる限りその世界は知ってる為本作に出した。

・トトリ……ロロナの初弟子。アーランドシリーズ2作目の主人公。漁村出身。
      悪意のない毒舌家。偏見だけどツンデレ娘との百合が多い。
      美人姉妹であり、ゲーム内では未成年だけどいろんなお酒を錬成する。
      漁村の名物酒って事で何故か魚が入った酒を造ることに。
      ヌシ酒を造るイベントでのスチルはCER○判定おかしくない?と一瞬思った。けどリメイク版では納得のCER○判定で安心した。
      感覚派の師匠に対して理論派の弟子。学校をロロナと経営したけど生徒に慕われるのは分かりにくい感覚派の先生より分かりやすい理論派の先生でした。
      ゲーム内ではいなくなったお母さんを探すために冒険者になって3年後では最高ランクの冒険者になった頑張り屋さん。

・メルル……トトリの初弟子。アーランドシリーズ3作目の主人公。アールズ王国のお姫様。
      天真爛漫なキノコ大好き娘。男女問わないハーレムエンドもあったりする。
      ゲーム終了後各地を転々とする放浪娘。
      ゲーム中尋ねてきた幼女がまさかトトリ先生の先生だとは思うわけがない。
      ステルクさんに『一度姫に仕える騎士になりたかった』とか言われてちょっと引く。
      見た目幼女なロロナといい雰囲気になったりするのを見て更に引く。

・ステルク……どのアーランドシリーズにもネルケにも出てくる騎士。
       いつの間にかロリコン騎士、厨二騎士とか朴念仁騎士とか言われてるけどそれがステルクさんだと思ってる。
       アーランドシリーズが続く度にロロナへの想いも増えてるけど本人には決して伝えない。伝えてたらきっとロロナと二人でルルアを養ってたと思うんだけど。だからきっと後悔してる。
       個人的にロロナに次いでゲーム制作陣に色んな意味で愛されてるキャラだと認識。じゃなきゃあんな衣装チェンジせんわ。

・幼馴染の料理人……名をイクセル。恋愛<<<(越えられない壁)<<<料理
          料理人として何故か錬金術士と料理対決。
          ロロナだけでなくトトリにも対決で負ける。
          3作目から一切出なくなった不遇キャラ。
・幼馴染の首相……名をクーデリア。イクセルと同様3作目から出ない。
         でも4作目ではアーランドの首相とお察し。
         ツンデレ娘でロロナ以外から『くーちゃん』と呼ばれたくない。
         でもアストリッドは呼ぶ。その度に切れる。それを面白がられている。
         1作目のクエストで納品の割に高い報酬は大抵この子。

・アストリッド……ロロナの師匠。ロロナガチ勢。敵に回すと多分末代まで祟られる。
         天才錬金術士なのだけど王国の不信感からお仕事しない錬金術士。
         天才すぎて年齢の調整が出来る薬を錬成。ロロナロリ化の犯人。
         次元を超えることもこの師匠なら出来るでしょ。という信頼感がハンパない。
         

・ルルア……4作目の主人公。ロロナの義娘。
      友達の為に過去に飛んだり平行世界の友達も救ったりする行動力天元突破娘。
      きっと色んな救済小説の救世主になる存在。ぜひプレイして。
      ロロナと違ってカレー中毒者。ロロナは賢者の石をパイにするが、ルルアは賢者の石をカレーにぶっこむ。

・ヴィントシュトーネ……4作目に出てくる人語喋るモンスター。羽がキーアイテム
          

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