魔皇が裁く   作:96ごま

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漸くあいつらと接触。

あちらの作品では視点が変わる毎に『○○side』って書いてましたが、正直邪魔かなって思ったんでこっちではこないだの回想回のように一人称にルビ振ってそれで判断して貰う事にしました。無駄な文字数を減らせたど~!


暗殺者と魔皇の邂逅

帝都から離れた小さな村の集落。その近辺にある地方軍の基地に警戒しながら変装姿でそこに侵入した(タツミ)と姐さんは、帝国軍よりも先に魔皇軍ワイルドハントを探す事に専念していた。

 

「なぁ姐さん、本当にこんなところに魔皇軍が現れるのか?パッと見ただの平和な村にしか思えないんだけど……」

 

「さぁ?でも奴らが潰してるのは帝国の指示に従ってる集落ばかりらしいから、帝都に物資を送ってるここも襲われる可能性はなくはない筈だ」

 

「そっか……。けどその物資を運ぶ作業って村の人達が無理矢理やらされてるだけなんだろ?だったら魔皇軍より先にここの役人達を暗殺するのもアリなんじゃねぇの?それなら村人達が殺される事も……」

 

「タツミ、ボスの話を聞いてたか?奴らは一度協力したって理由だけで民間人を虐殺したんだぞ?裏で糸引いてる悪人がもう死んでようが死んでなかろうが関係ないよ。そいつの処理は今夜するけど、日中は魔皇軍が出てくるまで監視だ」

 

旅人を装うマント姿でひそひそと小声で話す俺達二人は、ボスの命令通り今夜狙う標的を見付け、こっそり気配を消して後を付けている。……なのに、

 

「やる気満々なところ悪いけど、お前らの獲物は今からこのメズ様が頂くぜ!」

 

「「ッ!!?」」

 

突然背後から聞こえた声に振り返ると、そこには仮面を付けた褐色肌の少女が笑っていた。しかしその少女に何者かと問う前に、彼女は標的へと駆けて行く。

 

「疾い!!?」

 

「あの仮面は…!もしかしてあれが魔皇軍の…!?」

 

魔皇軍の特徴の一つと言われた仮面とフード付きの長いローブ。そして真っ先に標的へと向かい、護衛も全て速やかに殺していく鮮やかさ。間違いない、あれはワイルドハントの一員だ。

 

「タツミ、追うぞ!」

 

「了解!」

 

周囲で一般人の悲鳴が上がる中、獣化した姐さんと一緒に魔皇軍と思われる少女の追跡を始める。

 

……が、なんだか都合が良過ぎる気がする。こんなにあっさり標的を見付けられるものなのか?頭の隅でそう考えている間も少女を追い続けていると、一瞬脚に違和感を感じた。

 

「…!!伏せろタツミ!!」

 

「えっ?」

 

何かを察知した姐さんが俺に突進し、一緒になって前に倒れる。するとちょうど俺の居た場所に、どこからかナイフが飛んできた。違和感の正体はどうやらこれを起動する為のトラップワイヤーに引っ掛かってしまった事によるものだったようだ。

 

「あ、あっぷねぇ…!ありがとう姐さん、助かった!」

 

「礼は良い。それよりマズいぞタツミ、この村全体に罠を仕掛けられてる!下手に動くと危険だ!」

 

警戒して周囲を見回す姐さんの目には無数に張り巡らされた糸が映っているらしく、俺達が侵入する前から準備されていたと悟る。まるで蜘蛛の巣みたいだ。これでは先程の少女を追えない。

 

「はい、二名様確保~♪俺らと同じ標的を狙ってたって事は、あんたらが噂のナイトレイドかな?」

 

「「ッ!!?」」

 

突然聞こえた声の方へ視線を向けると、そこには宙に浮いた少年が。トリックがわからず一瞬困惑するが、よく見ればその足下には何重にも張られた糸があった。少女と同じ仮面に緑のコートを着た少年は愉快げに笑って上から俺達を眺めている。追い詰めてやるつもりが逆に罠に填められてしまったようだ。

 

「お前、いつからそこに…!?」

 

「初めまして、革命軍の暗殺者さん。俺は魔皇軍ワイルドハントのリーダー。あんたらが鮮血の魔皇と呼んでいる大罪人のラバックだ」

 

「「!!」」

 

自ら名乗り、仮面を外したのは俺達が探していた魔皇本人。まさかいきなり大本命が出てくるとは思ってもみなかった。

 

「あんたが魔皇か。そりゃ好都合だ。悪いけど、このまま私らに従って貰っ……」

 

「もちろんどうぞ。そちらの縄張りに連行してくれるなら拘束するなりなんなりして俺を捕虜にでもしてくれちゃって構わないよ」

 

「……は?」

 

場にそぐわぬにこやかな笑顔で捕虜にしてくれと自ら志願する魔皇に、思わず間抜けな声が出る。いくらなんでも怪し過ぎる、こいつは一体何を目論んでるんだ?

 

「あ、やっぱ怪しいって思う?よく胡散臭いって身内にも言われてるもんなぁ、そりゃそうか。でもね、俺はあんたらのボスとお話がしたいだけなんだ。そっちから攻撃を仕掛けて来ない限り、戦う気はないよ」

 

友好アピールをしてくる魔皇は本当に戦う気がないようで、敵意は一切感じない。でも、

 

「じゃあさっきのナイフはなんだよ。あれは確実に殺意があったろ」

 

「ん?ああ、ごめんごめん。あれは帝国側の奴ら用に準備してた罠でね。直前まであんたらがどっち側の人間なのかわからなくて回収出来なかったんだ」

 

そう言って、申し訳なさげに謝罪する魔皇。なんというか、魔王って呼ばれてるからもっと高圧的なイメージがあったんだけど、意外と飄々とした軽い口調でフレンドリーに接してくるからどことなく親近感がある気がする。……本当にこんな奴が殺戮を繰り返してるのか?

 

「とりあえず、あんたらがナイトレイドだって確信出来たし、そこら辺の糸は回収するぜ。あ、でも仕事の邪魔はすんなよ?今大事な作業中だから」

 

「!!仕事って、まさか本当に住民達を…!?」

 

罪のない民間人を巻き込んでる噂は本当だったのかとショックを受けた俺に、そいつはクスリと冷笑を浮かべた。

 

「ふっ、ああそうさ。なにせ俺達はこの世の全ての敵、魔皇ぐ……」

 

「ラバック様!!この度は我々を助けて下さって本当にありがとうございます!ワイルドハントの皆様のおかげで、この町の住民全てがもう悪政に苦しまずに家族と平和に暮らせます…!」

 

悪そうな表情をした魔皇が何かそれっぽいキメ台詞を言おうとしたその時、彼の元へと走ってきた住民らしき男性が土下座をしながら心の底から感謝の言葉を叫んだ。

 

「あっ、いや…………ん゛ん゛っ!……礼などいらんと言っただろう。さっさと行け」

 

「ですが、この感謝の気持ちだけはお伝えしたくて…!このご恩は一生忘れません!我々でも何か手伝えそうな事があればいつでもお呼び下さい…!」

 

予想外な事態だったのか魔皇がかなり動揺した様子で咳払いし、その後手でしっしっと追い払う仕草をすると男性は再び頭を何度も下げてから同じ道を戻って行った。

 

「「…………」」

 

「……なんだよその顔は」

 

「いや、魔王キャラ作るの大変そうだなぁって」

 

うわぁ、言っちゃったよこの人。流石姐さん、勇気がある。同情の目で言われた魔皇はというとカァーッと顔を赤くし、羞恥で身体を震わせていた。

 

「う、五月蝉ぇ!!キャラなんか作ってねぇよ!!」

 

「いやいや、明らかに作ってるっしょ。だって今のが素なんだろ?ただのガキじゃん」

 

姐さんが更に煽るとキッ!と睨まれた。あれ?こいつ煽り耐性低くね?パッと見た感じ俺と同年代っぽいし、姐さんに弄られてる様子を見てると益々親近感が沸いてきた。なんて思ってたら彼と目が合ってしまった。

 

「お前今失礼な事考えてたろ…?」

 

「うえっ!!?い、いえ、なんの事でしょうね!?」

 

「嘘下手くそか」

 

「お前もな、魔皇サマ」

 

どもった俺に指摘するもまたしても姐さんがおちょくって怒らせる。姐さんめ、遊んでやがるな。これじゃあ話が全く進まないじゃねぇか。

 

「と、とにかく!さっきの見た感じじゃあ、住民を殺してたのはあんた達じゃないんだな?」

 

「残念、その答えはYESでありNOだ」

 

「あ?なんだそれ、とんちか?」

 

「殺してはいないが殺したように見せかけていた、ってのが正解。要するに、今まであんた達が民間人だと思っていた死体は全部ダミーなんだよ」

 

「「ダミー!!?」」

 

衝撃の真実を暴露した魔皇の言葉は信じ難かった。本部から届いた報告書では原形を保っていないと聞いているとはいえ、死体は全て人の形をしていて血も大量にあったと記述されていたから。その怪訝を読み取ってか、魔皇は更にこう続ける。

 

「うちには西の国に伝わる錬金術っていう奇怪な技術を持つ部下がいてね。新鮮な危険種の死体を媒体にして分解し、人っぽい形に再構築すれば簡単に作れるらしい。だからそれを使って住民達は死んだ事にして、今はシュラ兄……うちの参謀的な奴の帝具で厳しい法律のない無人島に移して楽しく生活させてるよ」

 

種明かしを披露するように両手を広げて話す彼はニコニコしていて、正直でたらめにしか聞こえない。でも、本当にそうだとすればその人達は帝国の悪政に苦しまずに済むと思うし、さっきの男性の言っていた事とも辻褄が合う。

 

「信用されてないのは承知の上。てなわけで証拠を見せたいから一緒に来てくれない?」

 

宙に張られた糸から華麗に飛び降りてきた魔皇に、付いて来いと促される。しかしその先から騒ぎを聞いてやって来た帝国軍の兵士と遭遇してしまった。

 

「チッ、さっきから邪魔が多いな。イゾウ、江雪の飯にしてやれ」

 

「承知」

 

俺と姐さんは咄嗟に身構えたが、魔皇が指を鳴らした瞬間、変わった風貌の男が俺達の横を通り抜け、複数居た兵士達を一瞬で斬り殺した。

 

「あの数を一瞬で…!?あいつも帝具使いか!?」

 

「いいや、イゾウが使っているのはただの斬れ味の良い刀。でもあいつは刀への強い愛情のみで帝具使い相手に互角で戦える剣豪だ」

 

信じられない。今のを帝具無しでやったってのか?さっきの女の子もだが疾過ぎる。一振りしかしてないように見えたぞ…!?

 

「紹介しよう。こいつは妖刀江雪を恋人と言って愛する人斬りの剣豪、イゾウ。未だに俺が帝具を持たねぇかっつっても固くなに聞いてくれねぇんだぜ。面白い奴だろ?」

 

「ラバック殿こそ、そんな拙者を理解し友として認めてくれたでござろう?面白いのはお互い様でござる」

 

「そう?一番面白いイゾウに言って貰えるだなんて光栄だねぇ。因みにさっきあんたらが追い掛けようとしてたのは俺の姉みたいな幼馴染みのメズ。あいつもイゾウと同じで帝具は持ってないぜ」

 

こちらから聞いたわけでもない情報もペラペラ喋って教えながら、魔皇は目的地へと移動しようとする。どうするべきか少し迷ったが、姐さんと頷き合ってとりあえずは付いて行く事にした。

 




こっちは可愛いラバじゃなくてイケラバことイケメンなラバを目指して真面目な話を書いてるつもりだから、ワイルドハントメンバーが登場した辺りから書けたギャグ要素がなんだか久々に感じる。やっぱ振り回されるラバは可愛いな((

今のところ一番のギャグ要員はもちろんチャンプ。あっちの作品のシュラさんと似たポジションだからあのデブが出てくる時はギャグいっぱい書けるぞやったね!(※暴言を吐いてますが作者は彼を嫌ってるわけではありません)

っていうかアカ斬るに嫌いなキャラは一人もいないんですよね、僕。どうしようもねぇクズ共が最後までブレずに悪を貫いてくれたからこそあの素晴らしい原作のシナリオが成り立ってるって思ってるし。舞台装置扱いしてないか?って言われたら否定は出来ないけどね。過去に色々あって同情する部分のある奴は尚良し。でもオネストみてぇな同情の余地もねぇクズ野郎も好きだぜ←
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