今回のサブタイどうしよっかなぁ~ってあいつの名前浮かべながら考えてたら「これだ!!」ってなってしまいまして…(笑)
異色タイトルですが内容は至って真面目な戦闘回です(真顔)
ナイトレイドのアジトで一晩泊まる事となった夜中。遅い時間までナジェンダさんと談笑してお開きにした後、俺は宛てられた客室へと彼女に案内して貰っていた。
「こんな手狭な部屋ですまないが……」
「いえ、うちよりは広いんでこのくらいで充分ですよ」
宮殿での暮らしに比べて狭い部屋を紹介されたが、むしろ広過ぎると落ち着かなくなっていると付け足すと「大分外に染まってるみたいだな」と笑われた。
そしてナジェンダさんにおやすみの挨拶をして別れ、室内に入った俺はベッドの縁に座ってコートを脱ぐ。睡眠の為にクローステールも外すと、一息付けた安心感のせいかここ暫くの疲れが一気に出てきて眠気に誘われ、もうそのまま夢の世界に旅立てそうだった。……が、
「__ッ!!?」
背後に、人の気配。煙のように現れた刺客が、俺が振り向くよりも先に首に何かを刺してきた。
いつ、どこから、どうやって。そんな思考を回してる暇はない、早く反撃せねば。そう身体に命令しても何故か言う事を聞いてくれず、痺れて動かない俺の身体は重力に従って倒れベッドに沈む。
「て、め…っ、なに……しやがっ、た…!?」
「けひひっ!今お前に刺したのはスタイリッシュ様特製の麻痺毒。特級危険種にも効く強力な毒だから抵抗したって無駄だぜぇ!」
「!!スタイ、リッシュ……だと…!?」
そんなバカな、もうバレていたというのか…!間に合ったと思っていたのに、まさか泳がされていただけだったとは。ここまでの痕跡も消してきたつもりが、僅かな形跡だけで追って来れるなんて想定外だった。完全にやられた。毒で喋る事さえも苦しく、その男の言っていた通り抵抗出来ずに抱えられてしまう。
「こ、のっ…!どこ、に……連れてく、気だ…!?」
「もちろんスタイリッシュ様のところだ。あのお方は皇帝一族の身体に特に興味があるらしいが、今の皇帝には手を出せないからな。だが犯罪者のお前なら帝国より先に捕まえてしまえばこっそり実験し放題。しかも索敵の役割を持つ厄介な帝具使いを最初に潰せて一石二鳥だぜ!」
「くっ…!」
気持ち悪い笑い方で目的を喋り余裕ぶってるそいつはクローステールも一つ一つ忘れずに回収し、俺を抱えたまま窓から外に脱出する。昔からそうだったがスタイリッシュの野郎は未だに皇帝一族に……いや、
「けひひっ!スタイリッシュ様!このトローマ、ご命令通りあの魔皇を捕まえてやりましたぜぇっ!糸の帝具も一緒ですよぉ!このままワイルドハントもナイトレイドも一網打尽だぁ!!」
くそっ、やっぱりこいつらナイトレイドも狙ってやがる。このままじゃ俺のせいであいつらまで芋吊る式で捕まっちまう。こうなったら、奥の手その壱を使うしかない。
自分の責任は、自分で取る!!
口の中に隠していた
「ガッ!!?な、にぃ…!?」
油断していたそいつへの反撃は成功。よろめいた拍子に拘束から逃れ、落とされたクローステールも即座に取り返した。
「貴様…!毒は全身に回っている筈…!一体どうやって動いて…!?」
「どうやらてめぇらはうちのメンバーを把握し切れてなかったみてぇだな。今俺が動けるのは、超優秀な錬金術師が作った強化薬を使ったおかげさ。借りは返させて貰うぜ!!」
痛みに悶える敵が立ち上がろうとする間に帝具の装着を終え、瞬時に糸で首をへし折る。
これでまずは一人目。強者揃いのワイルドハントとナイトレイドが集まっているとわかってて突入したという事は、恐らく敵はまだ数多く居る筈だ。だがさっきの話が本当なら、こいつらの襲撃は帝国の命令ではなく独断。自己中心的なあのオカマ野郎なら充分有り得る。
「こいつが行こうとしていたのは風上の方角か……。スタイリッシュめ、安全な場所から毒ガスでも撒くつもりなんだろうが、そうはさせねぇ!」
俺を運ぶ間に他の奴らにぶつけて戦かわせているのか、周辺に張った糸の結界に集団の反応はない。でも多くの死地を潜り抜けてきたあいつらの心配はいらないだろう。ならば俺の役目はただ一つ。このまま司令塔であるスタイリッシュのところに行きぶっ殺す。
「ッ!!スタイリッシュ様!トローマを倒した魔皇が異常な速さでこちらに向かっ__」
標的発見。垂直の崖の上に糸を伸ばし、その先にある木に絡めてから戻す事で一気に登って護衛兼偵察班と思われる三人をさっきの男と同様に絞め殺す。残るはスタイリッシュのみ。
「よぉスタイリッシュ、久々の再会だってのによくも毒なんざ盛ってくれたなぁ?この魔皇様に喧嘩売った代償、てめぇ自身に払って貰うぜ!!」
「う、嘘でしょ…?アタシの毒が全く効いてないなんて…!あんた、どこまで化物なのよ!!!」
薬物投与の影響で覇気を身に纏う俺を目にして狼狽するスタイリッシュは、血迷った様子で何かの液体が入った注射器を自分に射つ。
「おいおい……そんなんありかよ…?自分の身体を危険種に変えたってのか…!?」
スタイリッシュの身体が突如肥大化し、みるみると姿を変えていく。その歪な姿はまるで怪物のようで、そいつは周囲に倒れた自分の仲間……否、実験体の死体を食べてしまった。
「これぞ究極のスタイリッシュ!!アタシ自らが危険種になる事で化物のアンタを吹き飛ばす!!」
「化物はそっちだろ……。でも、的がデカくなったおかげで狙い易いぜ!」
気色悪い見た目に変わったスタイリッシュの拳を躱し、その巨大な身体に糸を巻く。だが、
「こんな細い糸、全部千切ってしまえば関係ないわ!!」
「何っ!?」
外見だけでなく筋力もこちら以上に大幅に上がっているようで、巻かれた糸はいとも容易く千切られてしまう。こりゃ簡単には倒せそうにねぇな。
「でもまだまだこの大きさじゃ足りないわ!
「……高望みばっかしやがって。お前は本当に昔から懲りねぇ奴だな」
「どうせそっちの薬の効果はもう切れそうなんでしょ?その前に決着付けようとしてるのはバレバレよ!」
「チッ、流石にバレてるか。でも……嗚呼、良いねぇ。この緊張感、堪らねぇぜ…!!」
「…ッ!!」
どちらが死ぬかわからぬ命を賭けた死闘の楽しさに歪んだ笑みを浮かべると、自分の方が優位だと勘違いしていたスタイリッシュはビクリと怯えた。
感覚はなくとも手癖のみで糸の槍を素早く編み出す。そして巨大な拳や身体から生えた注射器のような針の攻撃を掠めながらも、崖を登った時と同じように他の糸を駆使してその巨体を駆け登り、頭部に居る本体へと突進する。
同時に掠り傷からの出血も酷くなっていくが、急所への攻撃は全て槍で弾いているのでそんなものは関係ない。むしろ毒で血が流れていく感覚と痛みを失ってるせいでスリルが物足りないくらいだ。
「な、なんで怯まないのよ!?攻撃は確かに当たっているのに!!」
「それはてめぇが仕込ませた毒のおかげで痛みがねぇからだよ!自慢の薬が逆手に取られて残念だったな、スタイリッシュ!!」
「ッ!!く、来るなああぁーーーッ!!!」
絶叫が響いた刹那。ザシュッ、と首を斬り落とした音が耳に残り、赤い飛沫が飛んでいく光景が目の前に広がった。
「……処刑完了。一思いに死ねた事を感謝するんだな」
血を払って槍状の糸を解き、次は他の奴らの援護に行かねばとおぼつかない足で移動しようとする。だがその時、頭がクラッとして視界が歪んだ。意識も朦朧としている。その原因には心当たりしかなかった。
「ああ、そうだ……俺、貧血気味だったの忘れてたわ……」
ここ最近続くドロテアへの報酬で常に血が足りない状態だったのに更に出血で減らして、もはや失血死しても可笑しくない事を失念していた。強化薬の効果やドバドバに溢れていたアドレナリンも切れて、ボロボロになった身体が遂に限界を告げる。
痛覚がないのってこんなに不便なんだな、初めて知ったよ。なんて遠くなっていく意識の中で他人事のようにぼやいてたら、いつの間にか気を失ってぶっ倒れていた。
魔皇様無双。実はこのサブタイの『キメる』は『勝利を決める』と『薬をキメる』を掛けてます。てか薬で強化ってドロテアさん居るだけで魔皇軍超強くね…?魔皇じゃなくてドロテアさんが凄い説。
あとあれだね、魔皇様は人間関係とかに関しては相変わらず臆病だけど戦いでのスリルが大好きです。おかげで原作と違って前線でガンガン攻めていく猪突猛進タイプ。ブドー達に鍛えられたせいか意外と血の気が多い(笑)
ただ、素手の格闘技も得意ですが特化型のシュラさんとメズには劣ってます。リーチの長い糸の槍で戦いながら余った糸も状況に応じて使うのが彼の基本スタイル。血気盛んな割には原作みたいにちゃんと冷静なところもあります。