俺は楽しく神さまになる!   作:火群 鯨

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モンスターではないッ!ボクだッ!!
お久しぶりです。全回言い忘れてましたが、無事テストしゅーりょーです。これは100点取っちゃいましたねぇ。


聖女から魔女へ。そして少女へ。

 

 

一誠は動けない身体をソファに預け、疲労回復の治療を受けながらリアスの話を聞いていた。

 

「本来の悪魔祓いは二通りあるわ」

 

神の恩恵を受けた教会側と、堕天使の恩恵を受けたはぐれ。

 

「けれど…あのフリードって神父は只者じゃない。あんなナリだけど実力は本物。祐斗や朱乃、子猫の攻撃を物ともせずに私の滅びの魔力を無効化するどころか、自分のものにしていた」

 

悲痛に歪んだリアスの顔にはいつもの威厳が欠けているように見えた。一誠はそれにかける言葉がみつからない。一誠はまだ部員のことを何も知らない。その魔力も培ってきた力も。抱えている問題も。

 

「イッセーと仲良くしていた堕天使はそのフリードを圧倒していた。だから、二人とも大丈夫よ…きっとね」

 

(最後にフリードを見た時、自身の左腕が震えていた。それは、俺の神器が警戒したからなんじゃないのか?)

 

危険さを誰よりも知っている者がいる。まだ目覚めてもいないが、その力を誰よりも近くで受けたことがある、伝説の龍。だからこそ、一誠にも感じることができた危機感。

 

「そうっすよね…」

 

しかし一誠は小さく肯定した。

 

▽▽▽▽▽

 

「……っと!イテテテ」

 

一誠の疲労は翌日に治る簡単な物ではなく、足元がおぼつかない。限界地点をたった一時間に満たない間に二度も踏み入れたのだから当然と言えば当然の結果である。

 

「やっぱ、弱いよな俺」

 

前日の戦いは、悪魔vs人であった。一誠は転生により身体能力の底上げはされた。更に神器により、二回の倍加を使った。しかし、フリードを一回も倒し切れてはいない。

勿論、フリードの経歴は朱乃から聞いている。神童で最強と言われていたと。けれども一誠はフリードに拳を叩き込んだ時に確かな手応えを感じたのも確かだ。

まあ、結局の所フリードは人ですらなかったのだが、一誠にそれを知る術はない。

 

「やっぱ、筋トレかなぁ」

 

一誠は腹筋の片鱗すら見せない哀れな腹を見て苦笑う。

アーシアとミッテルトの安否も気になるが、転移後を知らない一誠に出来ることなどない。兎に角、目標は倍加二回の状態を維持できる体づくりと意気込みを持つ。

 

「………イッセーさん?」

 

「アーシア!?」

 

一誠とアーシアは三度目の再会を果たした。

 

▽▽▽▽▽

 

「はうぅ」

 

ハンバーガーショップと言う、余り馴染みがないであろう場所にシスターが居るというのは相当目立った。一誠はレジで右往左往しているアーシアの代わりに注文を通す。

 

「あぅ、情けないです…ハンバーガー1つ買えません」

 

「あはは…ま、まぁアーシアは日本語喋れないから仕方ないって」

 

「そうでしょうか…」

 

一誠は食べ始めるも、アーシアはどうすれば良いのか分かってないらしい。食べ方を説明しながらハンバーガーを食べる。

 

「大変美味しかったです!」

 

「そっか!」

 

大体食べ終わる時に、一誠は聞いた。

 

「えっと、アーシア。あのさ、昨日は大丈夫だったか?」

 

「…はい。あの後は堕天使様が二名現れて、私を助けてくれました」

 

「じゃ、じゃあミッテルトも無事なんだな。よかった」

 

「あ、いえ…私は先に助けて貰ったので、その後のことは…すみません」

 

「あ、いや!大丈夫だって!仲間の堕天使だって来てくれたんだぜ!きっとフリードの野郎もぶっ飛ばしてくれてるさ!」

 

ミッテルトだけでもフリードを圧倒していた事実と、救援として二翼の堕天使が駆け付けたのならと安心した。素人目の危機感とミッテルト達の強さを比べるなら、それは聞くまでもないと一誠は勝手に締め括った。

 

「アーシア」

 

「は、はい」

 

「今日は遊ぼう!」

 

「え?」

 

▽▽▽▽▽

 

「ハァ、ハァ…遊び過ぎた…」

 

「は、はい…私もちょっと疲れました」

 

ただでさえ疲労回復の為の時間を一誠は思い切り遊んだ為、アーシアよりも疲労が見えている。

 

「ッテテ」

 

そんな疲労困憊の中に走ったりした所為か、捻挫する始末。

 

「イッセーさん怪我を?もしかして、先日の傷がまだ!?」

 

「え、あ…その」

 

『かっこ悪い。』

 

一誠は思春期の男子だ。当然、モテたい上に性欲の権化でもある。それが美少女の前ではしゃいで捻挫をした等、口を裂けても言えないのだが、先日の話を出されて泣きそうな顔をされてまで言われたら、仕方あるまい。

 

「イエ、ネンザ…デス」

 

「ぇ……ぷ、ふふふっ」

 

アーシアも気付いたのか笑い始めた。一誠は恥ずかしさで顔を赤くする。

 

「わ、笑うことないだろ」

 

「す、すみません…ふふ。いえ、えっと…な、治しますね」

 

アーシアが手の平を当てる。温かい淡い光が患部を照らし、痛みがなくなる。先日はフリードとの戦いで気付けなかった優しい光は、争いからかけ離れた尊いものだと一誠は思った。

 

「すごいな、アーシアは。治癒の力、すごく力だよ……優しい力だ」

 

「……」

 

アーシアは嬉しそうに笑顔を向ける。そんな美少女の笑顔に一誠は見惚れた。転生する時からかなりの美少女と対面してきたが、それでも見惚れる程の美しさを感じた。

 

「そういえば、イッセーさんも神器(セイクリッド・ギア)を持っていましたね!」

 

「え?あ、まぁな!けど、やっぱりアーシアの神器(セイクリッド・ギア)の方が良いよな!ほら、俺のは戦う為の力だからさ」

 

アーシアは少し複雑そうな表情を浮かべた後、笑う。けれど、その笑みにはどこか悲しさを感じさせた。

 

彼女の口から語られたのは「聖女」として祭られた少女の末路。治癒の力によって教会の「聖女」として崇められた。しかし、少女は人の為になるならと治癒を続けた。何人、何十人、何百人。数え切れない人を治して、感謝を述べられる。それが堪らなく嬉しくて、少女は治癒の力を使った。

 

少女は同時に寂しさも覚えた。「聖女」として人とは乖離された存在に昇華された時から、少女にとって友人となり得る存在が居なくなった。誰もが優しく接してくれる。誰もが大事にしてくれる。それはアーシア個人ではなく「聖女」だからと思ってしまえるほどに。

 

理解はしていた。

 

異質は力は自分達とは別の存在であると思われることなんて。しかし、それでも治癒を続けた。「人を治療する機械」としてでも構わないからと。

 

少女に人生を反転させたのは、たった一つの治癒からだ。目の前で怪我をしていた悪魔を少女が見捨てられなかった。そんなたった一つの治癒から、少女は教会から「魔女」として扱われた。

 

教会の誰もが少女を指差し非難を浴びせた。今まで救ってきた者達ですら感謝を垂れ流した誰もが「魔女」だと唾を飛ばす。

 

誰も庇ってくれなかった。それが少女にとってどれ程のショックだったか。想像に難くない。けれど、たった一人だけ最後まで優しくしてくれた。

 

『……日本にいけ。どんなに厳しくても、辛くても、きっと君にとっての主人公(ヒーロー)が、その手を取ってくれる』

 

その人は教会の誰かだったのは間違いない。神父服にフードをかぶっていたから顔も分からなかったけど、少女はその人の助言で日本まで一人で歩んだ。

 

日本に着いた時、そこでフリード神父と会った。少女に話しかけるその声が、何処かあの時の誰かに似ていて教会へと足を踏み入れた。だが、フリード神父にすら。

 

「けど、後悔はしてません。持って生まれた力ですから」

 

後悔はしていない。そこに間違いはない。神器(セイクリッド・ギア)を持って生まれた以上仕方のないこと。けれど、後悔がないだけで寂しさは残っている。友人が居ない。少女が教会に勤める間にあった唯一の願い。

 

「……俺が友達になってやるよ」

 

「え?」

 

「だから、俺が友達になってやる……いや、もう友達だ」

 

「それは、悪魔のけーーー」

 

「悪魔の契約なんて言うなよ、自慢じゃないが俺は一回だって契約を取ったことはないんだぜ?」

 

だから一誠はその夢を叶えることにした。契約でもないただの宣言。アーシアの了承なんて必要ない。

 

「私は…世間知らずです」

 

聖女は教会に幽閉される様な生活だった。

 

「これから知っていけばいいさ、俺だって世間のことなんて分かんないだ」

 

「私は…日本語が話せません」

 

魔女はその身一つで日本まで来たのだから。

 

「これから知っていけばいいさ、俺は日本人だぜ?エモいからぴえんまで全て教えてやるぜ」

 

「…………友達と何をしゃべっていいのかわかりません」

 

少女には友達なんていなかったから。

 

「アーシアはもう、俺と喋っているじゃないか」

 

「……私と友達になってくれるんですか?」

 

「馬鹿言え、俺等はもう友達だ。アーシア」

 

アーシアは口手で覆い、涙を溢れさせる。そして頷くことで肯定とした。その涙にどれ程の想いがあるのか一誠には分からない。けれど、その涙がとても尊いものであることは理解できる。

 

「無理だな!!」

 

故にそれを拒絶するはぐれ悪魔祓い(エクソシスト)などに邪魔される訳にはいかない。教会にこれ以上、少女を友達の幸せを壊させる訳にはいかない。

 

「そんなにアーシアに幸せをあげたくないのかよ」

 

悪魔祓い(エクソシスト)は光の剣を掲げて迫る。一誠は龍の手(トゥワイス・クリティカル)を知らずに発動していた。

 

「アーシアは俺の友達だ。お前達はアーシアの敵だ。つまり俺の敵だ!」

 

【boost】

 

疲労のことなんて一誠には関係なかった。そんなものは捨て置けるくらいに許せなかった。一誠の中の火は大きくなる。

 

「アーシアの未来はアーシアのものだ!」

 

【boost】

 

二回目の倍加。再度限界地点に入った…。一誠は振り下ろされる光の剣を横から殴り付け粉砕する。

 

【boost!】

 

三回目の倍加。先の戦いは僅か1日前。時間にしては二十四時間も経過していない。一誠はそれでも限界を底上げした。体のスペックは変わらない。疲労だって残っている。しかし、一誠はそれを上回る精神がある。

 

ここだけだ。しかしその精神や根性といった感情面だけでいい。それだけで十二分。一誠はドラゴンと相性がいい所以。

 

「お前がアーシアの未来を否定するなら、手を伸ばす前に先ずはお前をぶっ飛ばす!」

 

「なんだと!?」

 

「うぉぉお!!!!」

 

「グッハッッ!!?」

 

一誠の拳は見事悪魔祓い(エクソシスト)の眉間に叩き込まれた。三回の倍加によって上げられた力は悪魔祓い(エクソシスト)の身体を言葉通りに吹き飛ばした。

 

「「「「「「おのれ、小癪な!!」」」」」」

 

しかし、悪魔祓い《エクソシスト》も一人ではなかった様で、ゾロゾロと現れる。だが、一誠に諦めはなかった。更に握り拳を強くする。

 

「イッセーさん」

 

「アーシア」

 

「助けて下さい!」

 

「ッ!ああ、任せろ!!」

 

向かってくる敵は一誠により確実に一人ずつ倒れ伏す。やはり全員がフリード以下の力しか持っていない。悪魔の身体能力と三回の倍加によって繰り出される拳を避け切れる者は現れなかった。

 

光の濃度が薄いのか、光の剣も弱々しく儚く砕ける。

 

「ーーお、のれ」

 

そして最後の一人が倒れた。一誠もダメージを負ったが、その殆どが擦り傷であり唯一貰った攻撃は鳩尾の蹴りのみ。戦いとして上々と言える結果となった。

 

「私の助けは要らなかったようね」

 

落ちてくる黒色の羽根に、一誠は空かさず上空を見上げた。

 

大人びた美人。しかし、その綺麗な黒髪には見覚えがあった。

 

「夕麻…ちゃん?」

 

「久しぶり、イッセーくん」

 

かつての彼女は堕天使で、今の俺は悪魔として。二人は再開する。

 

 




今回の大きな流れは原作と同じようになりましたね。細かい所に違い等を加えてますけどね…!そして、次回遂にレイナーレの登場。果たしてレイナーレが現れた理由とは?

次回、全て十字架の前に平伏す。

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  • オリ主、誰それ?いりませんねぇ〜
  • は?いるだろバーロー
  • どっちでも良いのでオリ主だせ

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