もしにじさんじ一期生が異能系バトルをはじめたら   作:kakyoin

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そちらはおはようかしら?
こんにちはかしら?
それともこんばんわ?
こちらからはそちらの時間までは把握出来ないのよ、ごめんなさい。
コマッタナーみんなにきちんと挨拶したいなーシクシク----なんてことでお悩みのそこの美しい女神様!この挨拶なら全て解決するのです!

というわけで、みなさんおはもいもいー。

……はっ!
挨拶だけでこんなに文字数を使って大丈夫なのかしら?ここ何文字まで書けるの?……あ、二万字?結構あるのね?なら大丈夫かな?大丈夫よね?

こほん、名乗り遅れました……のだわ。
モイラです。そう、女神です。
なんでこっちに女神がいるのかというと、女神は女神だからです。そういうことです。

あー……それじゃあ納得してもらえないか。そうね。
でもなぁ、なんと言いますか。女神は女神だからわりとこのへん行き来できてしまって、女神だからある程度状況把握してしまって、女神だからみんなのサポートに回れないかなーみたいなそういう感じになってるわけです。
----まあこれが現状の私の精一杯なのだわ。
でもね、でもね、女神も頑張った方なんだよ?
本来なら物語に関与することは女神であっても許されないの。運命を変えるなんて傲慢なこと、いくら女神であっても許されてはならないの。だから女神はこの世界に関与する権限が限られているのよ。
でもあそこはヴァーチャル世界の深層、どこまでが『そこに存って』どこまでが『そこに無い』のかもはっきりしないような場所。
『ヴァーチャル存在』と『ただのデータ』、その境界すら曖昧な場所。
因果律も運命論もパラドックスも何もかもがねじ曲がって転げ落ちているの。そんな混沌とした吐き溜りくらいなら女神は世界に関与することが出来るのだわ----なんか今のすごくカッコよかった気がする!
……あ、ええとええと。そんなこと言ってる場合じゃないですよね、はい。
とにかく、バーチャルとリアルがボヤけているあの場所なら女神はちょっとだけゴッドなんだよってことです。
----まあリアルとかバーチャルとかそんなことを言い始めたら、そもそも女神だって『ここに在る』のか『ここに無い』のか微妙なポジションなんですけどね?私が『ここに在る』のはひとえに子犬たちが私を認めてくれているおかげなのです。ありがとうね、子犬たち?

----さて、ここで唐突に女神クイズー!ぱふぱふー!
女神は現在どういう状態なのでしょーか!
えーっと……とりあえず早押しなのだわ!
①、力を一期生のみんなに分け与えてしまって疲弊している。
②、諸々に都合がいいためこの世界に概念化して滞在している。
③、みんなが幸せになる運命を模索してさまよっている。
④、『女神緊急サポートセンター電話サービス』を作っている。

はい、答えは全部でーす。
あのねー、女神しくじっちまったのよ。
思ったより女神の女神力が足りなくてね、女神自分の分のめがみちからを残すの忘れちゃったの。
ここでこうしてるのはそういうこと。あそこで存在を維持するだけの女神力が残ってないの。こうやって上から天の声をすることは出来るのだけれど、実際にみんなの力になることは出来なくなっちゃったの。本当にうっかりしていたのだわ……。
ただね、これはこれで都合がいいこともあるの。例えば女神が女神として下界にいたなら、この不幸な物語の原因を探ることも簡単には出来なかったのだわ。神様ってのは形が無くなれば無くなるほど神性が増すものですから、概念化して天の声になったのは結果的に融通が利いて良かったのだわ----あ、女神は女神であることを結構気に入っているからこんな時でもなければやりませんけどね?
でもねぇ、おそらくだけど、女神がこうやって裏方をやっても運命は覆らないと思うの。結局女神は運命を変える手助けは出来ても直接的に運命を変えるのは他のみんな。誰かが幸せになるルートって誰かが不幸せになるわけで。どうにかならないかなって女神は今フローチャートを作成中なのだけど、今のところ……望み薄って感じなのだわ。
うーん、やっぱり私が傲慢なのかしら?
ちーちゃんを----ちーちゃん達を救おうというのは傲慢なのかしら?
あの子達に残る傷跡を無くそうとするのはお節介が過ぎるのかしら?
----ううん、だめ。だめなのだわ。
「諦めて幸せに眠らせてあげたら?」なんて一瞬でも思ってしまったのは概念化の代償かもしれない。みんなを個人としてではなく多数のうちの一つなんて見方をしてる自分がいる。
----一人くらいいいじゃないか、その他大勢がたすかるんだから。
神様というのはかくあるべきなのかもしれないけれど私は女神なの。みんなと一緒に、同じ時間を過ごしている女神なのだわ。そんなことを、どういういきさつだとしても、考えてしまったのは恥ずべきことです。どうか不甲斐ない女神を許して欲しいのだわ。
女神はあなた達全員を救います。
ええ、救わなくちゃいけないのだわ……。




【モイラの章】

1

 

【モイラの章】

 

わけわかんないなにあれ狂ってる!こわいこわいこわいこわいこわい!

なんでAK構えてんのにゆっくり歩いてくるの!なんで丸腰なのに戦おうとすんの!なんであんなに落ち着いてるの!?

 

----先手を取ったのはもちろんちひろだった。だって引き金を引くだけだよ?あとは凛お姉ちゃんが生き返ったところを死ぬまでころせばいいだけでした。心配事といえば右手袋が『まほーじん』で繋がってる『かくのーこ』のストックが無くなることくらい。凛お姉ちゃんを殺しきれないとすればそれくらいで、それだっていらない心配かなって思ってた。

----そのはずだった。

凛お姉ちゃんはちひろが引き金に指をかけた時にはもう既に一歩を踏み出していた。そして----そして走るでもなく、避けるでもなく、ゆっくりと歩いてきたのだ、ちひろの方にゆっくりと。

その表情はさっきまでおしゃべりをしていた時となにも変わらない、ただの普通の凛お姉ちゃんで、今にも話しかけてきそうなくらい自然でした。

わけがわからなかった。

でもわけがわからなかったことがかえってちひろを急かしました。ちひろはそのまま、その怖さをぬぐい去るように引き金を引きました。

発砲音。

発砲音。

発砲音----。

----硝煙の漂う中に人影がありました。そのシルエットは片腕が吹き飛び、片足が欠けています。煙が消え目を凝らすとおよそ生きているとは思えない穴だらけの肉塊がそこにありました。

冷や汗がびっしょりでした----でもそれを見て少しだけ息をつきました。

な、なんだ、死んでるじゃん。それっぽくしてただけで、結局死んでるじゃん。『そせい』するからって余裕ぶって、ちひろをビビらせようってことだったのかな?それともちひろが躊躇うとでも思ったのかな?

 

「ごめんね、凛お姉ちゃん。ちひろはもうそのくらいじゃ止まれないんだよ……」

 

不思議な安堵感があって驚きました。さっきまで罪悪感で吐いていたのに今は死体を見て落ち着いているんだから。ちひろは本当にバケモノになっているのかもしれません。

さて、まだ仕事は残ってる。あとは凛お姉ちゃんがまた生き返ったところをリスキルし続ければ----。

 

「----まあそうなるだろうなとは思ってましたよ、淡い期待はありましたが。ちーちゃんのそれはそういう目でしたからね、『お薬』を飲んでおいて正解でした」

 

凛お姉ちゃんの声----上から!?

気づいた時にはもう凛お姉ちゃんは地面に降りていました、それもちひろのすぐ目の前に。慌てて銃口を向けましたがそこに凛お姉ちゃんの蹴りが当たりAKは右手側の壁に吹っ飛んでいきます。

次の武器を持ってくるよりも早く、凛お姉ちゃんは後ろからぎゅっと抱き抱えるようにしてちひろを拘束しました。右手にはボールペンが握られていて喉元にペン先が触れています。凛お姉ちゃんの声がちひろのすぐ耳元でしました。

 

「少し残るみたいなんですよ、死体。そういう仕様みたいです。ちーちゃんが私を殺す前に『とても健全なお薬』で私が自分から死ねば、リスポーンのラグが消えて変わり身の術の出来上がり----でもこれ、死ぬほど苦しいのが難点ですね」

 

「なんだよ『お薬』って……いつのまに……」

 

「さっき二人でおしゃべりしている時、ちーちゃんが顔を背けたタイミングで頂きました。ここしかないだろうなって」

 

「……なにもんなんだよ、凛お姉ちゃん。これじゃまるで----」

 

「まるで『バケモノ』ですか?----一理ありますね、私は『バケモノ』かもしれませんね」

 

凛お姉ちゃんは『じちょう』するように笑いました。

----まるで全てが見透かされているようだった。この人には敵わないとちひろは悟ってしまっていた。

いっそこのままちひろは凛お姉ちゃんに殺されてしまえばいいんじゃないかな?ちひろは殺されるべきなんじゃないかな?----だって仕方ないじゃん、凛お姉ちゃんが強すぎたから、ちひろは精一杯やったけど、凛お姉ちゃんには敵わないんだから……だからここで----。

 

『なに勝手なこと言ってくれてんのかな?』

 

頭の中で声が響きました。ドキリとして背筋が震えます。呼吸が、息の吸い方がわからなくなりそうでした。

 

『あなたがやらないならわたしがやるだけだって言ったよね?あなたがここで諦めるというならわたしが凛お姉ちゃんを殺しますよ?ゆっくりと心ゆくまで嬲り殺しますよ?----それでもいいってことなんだね?』

 

嫌だよ、やめろよ。

……でもだって、だってしょうがないだろ。ちひろじゃ凛お姉ちゃんには勝てない、だからしょうがないんだよ。ちひろは約束を破ったわけじゃない。凛お姉ちゃんが強かったからちひろが殺される、それだけだろ?だから----。

 

『あっはははは!あーはいはい、わかりました。あなたは自分可愛さにみなさんを捨てることを選んだ!自分が楽になる方を取った!なんて愉快なんでしょうね、あれだけいきがっていたくせにこんなにあっさりと----あっははははは!』

 

……。……。……。

じゃあどうしろって言うんだよ!ちひろだっていっぱいいっぱいなんだよ!お前の言う通りやってるのに!なんでそんな!

 

『わかったわかった----うーん、そうですね。なら一回代わりなさい』

 

「----え?」

 

「……ゃん?……ちーちゃ……ちーちゃん!」

 

「あ、え、な、なに?凛お姉ちゃん?」

 

「ずっと呼びかけてるのに上の空で----ちーちゃん、やっぱりあなたなにかありますね?」

 

「あー……ごめんね凛お姉ちゃん。ちょっと今ちひろ調子悪くてさ、あまり本調子じゃないっていうか……」

 

「ええと……どういうことですか?」

 

「だからね?----凛お姉ちゃんを殺しすぎちゃったらごめんねってことですよ?」

 

 

2

 

その目は先程までのちーちゃんの目とは違っていました。ちーちゃんになにがあったのかは分かりませんが、まるでその目は別人で、どこかこの状況を楽しんでいるかのようでした。それを見た時、正直私はぞっとしました。あの子にあんな目が出来るとは思っていなかったので。

そして、その一瞬の怯みがよくなかった。瞬間的に青紫色の光が走ります。

私の腕が緩んだ隙に彼女は自由になった腕を振るいました。なにか鋭いもので切り裂かれるような痛みを感じて私はとっさに腕を解きます。死なないからと言って傷や痛みまでは無くならないのがこの能力の難儀なところですね。すっごくいたいです。こなみかん。

拘束が解けるとちーちゃんは漫画のように大きなステップを踏んで私との距離を取りました。手には大ぶりのカッターナイフを握りしめています。『魔法少女』と名乗るからにはこのくらいの跳躍は当然のことなのでしょうか?とりあえずAKをぶっぱなすよりかはいくらかファンシーな魔法少女像ではありますけれど、なんて言ってる傍から彼女の足元が青紫色に光りました----また銃器を取り出すのであればこの距離は些かよろしくありません。今のところ自分の命しか切れるカードの無い私は直線で距離を詰めます。

リスポーン時間や場所はある程度調整出来るようです。時間の場合、最短で5秒。銃弾を避けるなんて芸当は忍者ではない私には出来ないので撃たれて死んでも元が取れるように部屋の真ん中あたりで死にたいところ----なんか死に慣れてきてますね。嫌だなぁ。

いち、に、さん、し、とカウントを取りながら走ります。ちーちゃんの方がアクションが早ければ距離を取る事まで見越しつつ、慎重に、かつ迅速に。

あと二三歩でタッチの距離----というところでちーちゃんの足元の光が強まり彼女を包み込みました。しかしここまで来れば私の蹴りの範囲内、先程のように追ってでも対応が出来るはず。光の眩しさに目を細めつつ、歩幅を緩めずにそのまま突っ込みます。

私は意を決して光の中に手を突っ込み、関節を決めるべく腕を探りました。様子を伺うなんて選択肢は丸腰の私にはないのです。やるかやられるか、やられてからやるかの三択です。

……腕が見当たらない?

まさかしゃがんでいるということでしょうか。対私の場合は一発だけ不意をつければいいのですから、それは考えうる作戦ではあります。しかし、おかしいですね。これは胴体ではなく……足?

----よく考えれば見当がついたかもしれません。というか足に触れた段階で瞬時に思い当たらなければいけませんでした。彼女は魔法少女なのですから。

ちーちゃんを包んでいた光がすっと消えました。

 

「凛お姉ちゃんなにしてんの?そんなにわたしの脚が好き?」

 

「あ、あははははは。これはだいぶミスりましたねぇ……」

 

そこにいたのは紺のセーラーに身を包んだ高校生の勇気ちひろでした。手には先ほどのカッターナイフを握りしめており、ライフルなんて持っていません。これがなにを意味するのかといえば、つまり身体的条件のフェアでしょうね。近接戦なら銃よりもナイフの方が早いとはよく言ったものです。ちーちゃんは前のめりに脚を抱え込んでいた私のお腹目掛けてかかとを打ち込みました。普通の蹴りとは思えないほどの衝撃が私の腹部を潰していきます。

吐き出された空気は悲鳴となって響き渡りました。死なないとはいっても痛みはそのまま。ほんとどうにかなりませんかね……。

ちーちゃんの足元に崩れ落ちた私は浅い呼吸で次の一手を考えます。

考えます----けれど!

 

「いったぁぁぁぁぁ!!」

 

目には涙が溢れてきます。一瞬で感覚がぶっ飛んだライフルや、ぽっくりと逝けたお薬とは違って生々しい痛覚が私を命に繋ぎ止めていました。

あばらが何本かいったのではないでしょうか。身をよじる度に激痛が走り、絶え間ない痛みが私の思考を乱します。

打開策を、打開策を、なにか打開策を----。

 

「ふーんなるほど、蘇りはするけど治癒はしてませんね。それに痛覚も普通に残ってる」

 

床に転がる私の顔を覗くようにして屈んだ彼女は先程の私を真似るように喉元にカッターナイフを突き立てました。つんと冷たい感覚が伝わり、少しでも身を緩ませればそれが突き刺さることを悟ります。

 

「どこまで残るんでしょうね?これ?」

 

「……」

 

「ねぇ、凛お姉ちゃん。聞いてるんだけど?」

 

「……な、なにが、ですか?」

 

「だからね、このまま凛お姉ちゃんの喉を掻き切ったら、どこまで意識が残るのかなって」

 

「……」

 

「聞いてるんだけど?----ねぇ!」

 

もう一度お腹を蹴られた私は無機物のように床を転がります。なにかを吐きそうになりましたが幸いにも吐き出すものはお腹に入っていませんでした。ただ血液だけが口から流れていきます。

……完敗です。これ以上はもう……無理ですね。私の精神が持ちませんよ。

かといって……お薬は……その、もうあまり無駄遣いできませんから、その……嫌だなぁ……もう、ほんとっ……。

 

「凛お姉ちゃんはこっちの方がいいってことかな?死ぬほどの痛みよりも死にきれない苦痛の方が好きってこと?----私なりの優しさだったんだけどな。まあ、凛お姉ちゃんが望むなら少しずつ痛めつけてあげるね----死なないように」

 

……。

……。……。……。

 

「ねえ凛お姉ちゃん?……凛お姉ちゃん?……あぁ、なるほどね」

 

 

 




リョナラーって頭がおかしいと思います。
最後までお読み頂きありがとうございます。そういう需要も無くはないとは思っています。
さて、凛先輩になにか恨みでもあるのかって言われると嫌いなキャラをこんなに出ずっぱりにしませんよ!ってことなんですけど、なんだか設定に引っ張られてどんどんダークサイドに寄っているので健全な異能バトルをさせてあげたいところです。かえみとカムバック……。

凛先輩はアーカイブが多いので全然追えてない人の一人なんですが配信を見る度に優しいし頭の回転早いし好きぃって思いに包まれます。
どう足掻いても絶対強キャラになるつよつよ凛先輩なので一回負けさせたかったんですごめんなさい。
famに全力で喧嘩売っていてごめんなさい。
ほんとは売ってないんです。沢山書きたくて書いたらこうなってしまいましたごめんなさい。

というかモイラ様全然出てこなくてごめんなさい。

ではでは。

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