フレイヤ・ファミリアでハーレムを築くのは間違っているのだろうか   作:兵庫人

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女神フレイヤ

 オラリオの中央にある巨大な塔バベル。バベルの地下には世界に一つしかない迷宮が広がっており、毎日大勢の冒険者が迷宮へ挑戦すべくバベルにと向かっていくのが、オラリオの日常の光景である。

 

 そんなバベルに、日が出てまだ間もない、他の冒険者達の姿が見当たらない早朝から向かおうとする一人の冒険者の姿があった。

 

 バベルに向かう冒険者はまだ十四、五歳くらいだが童顔のせいでそれより幼く見える少年で、白い髪に赤い瞳をしており、白い髪を揺らしながら走る姿はどこか兎を思わせる。

 

 少年の冒険者の装備は申し訳程度の胸当てと腰にある安物のナイフのみ。その姿はどこから見ても駆け出しの冒険者であるのだが、少年の目には不安や恐怖といった陰はなく、未知への憧れで輝いていた。

 

 少年の冒険者は自分が迷宮で活躍して英雄となる物語を夢見ており、彼の目には迷宮への入り口があるバベルしか見えていない。

 

 ……だからバベルへと走る少年の冒険者は、自分の背中を見送る二人分の人影に気づかなかった。

 

 少年の冒険者を見送ったのは、一目見たら誰でも心を奪われるような美貌の女神と、白い髪と赤い瞳が特徴的な男性の冒険者。女神は頬を僅かに赤くして微笑み、男性の冒険者はどこか心配そうな表情で少年の冒険者が向かったバベルを見つめていた。

 

「あの子が貴方の弟なの? ドム?」

 

「……ええ、そうです。フレイヤ様」

 

 女神がバベルを見つめながら声をかけると、声をかけられた男性の冒険者、ドムは僅かにためらった後に自分に恩恵を授けてくれた女神、フレイヤに答える。

 

 オラリオの二大派閥の一つであるフレイヤ・ファミリアの主神フレイヤと、オラリオで最高位の冒険者ドムに見送られながら迷宮に挑戦しに行った駆け出しの冒険者。彼はこれから先、オラリオで起こる様々な出来事の中心となるのだが、その事を知る者はまだ誰もいなかった……。

 

 

 

 

 

 お祖父ちゃんからの手紙で、目に入れても痛くもないくらい可愛い弟がオラリオに来ると知ってから早数日。しかし弟は一向に俺の前に現れる気配がない。

 

 おかしいな? 俺がフレイヤ・ファミリアに所属していることも、フレイヤ・ファミリアの本拠地の場所も以前送った手紙に書いたはずなんだが?

 

 一体どういう事なんだと考えると答えはすぐに出た。

 

 弟は慎重そうに見えて考えるより先に行動するところがあって、更には一つの事に集中すると周りが見えなくなるところがある。

 

 恐らくはオラリオに辿り着いた弟は念願の冒険者になる事で頭が一杯になって、俺よりも先に自分に恩恵を授けてくれる神様を探す事にしたのだろう。そして何とか恩恵を授けてくれる神様と出会って冒険者となった弟は、今頃は英雄となる子供の頃からの夢を叶えるために迷宮に挑戦していることだろう。

 

 ……そうなると弟が俺のことを思い出すのは、オラリオでの生活と迷宮に慣れた頃だろうな。

 

 そう結論を出した俺は自分から弟を探す事に決めて、オラリオの冒険者達の活動を管理しているギルドに問い合わせた。すると弟は数日前に出来たばかりの、団員が一人だけのファミリアの冒険者としてギルドに登録しているのが分かった。

 

 弟の事を知っているギルドの職員の話によると、弟は朝早くから迷宮に挑戦しているらしい。せっかくだから迷宮での弟の戦いぶりをこっそりと見守ろうと思ったのだが……。

 

「ドム。明日、私とデートしましょ♩」

 

 と、いざ弟の顔を見に行こうと思った前日にフレイヤ様からデートのお誘いが。微笑みを浮かべるフレイヤ様の姿はとても美しいのだが、彼女は今のような笑顔を浮かべる時は何か厄介事が起こるのを俺は知っている。

 

 正直、全力でお断りしたい。フレイヤ様へのデート権はさっきからこちらを睨みつけているアレン先輩や、羨ましそうな視線を向けてくる炎金の四兄弟(ブリンガル)の皆さんにお譲りしたい。

 

 だけどフレイヤ様、一度決めたら絶対に一歩も譲らないんだよなぁ……。

 

 一縷の望みにかけてオッタルさんにフレイヤ様を止めてもらおうと視線を向けると、オッタルさんは俺に視線を返して小さく頷いてみせた。その表情からは「お前なら大丈夫だろう。フレイヤ様を頼むぞ」という信頼が感じられたのだが……何で俺をそこまで信頼しているんですか、オッタルさん? いつものようにフレイヤ様を心配して止めてくださいよ、「猛者(おうじゃ)」様?

 

 結局俺はフレイヤ様に負けて、早朝から彼女とのデートに事に。

 

 それでフレイヤ様? こんな朝早くから一体どこに行くのですか?

 

「ふふっ♩ 冒険者になったっていう貴方の弟の顔を私も見に行きたいのよ」

 

 俺が聞くとフレイヤ様は相変わらず魅力的な笑顔で答えてくれたのだが……一体どこで俺の弟の事を知ったのですか、フレイヤ様?

 

 何だか嫌な予感がしてきて今日のところは弟の様子を見に行くのは止めようと思ったのだが、フレイヤ様を放っておくともっと嫌な予感がしたので、観念して俺はフレイヤと二人でバベルに向かう事にした。すると丁度バベルへと走って行く一人の駆け出しの冒険者の姿が見えた。その姿は間違いなく俺の弟の姿で、思わず弟を呼び止めようとしたのだが……。

 

 ーーーーーーーーーー!!!???

 

 弟に声をかけようとした瞬間、俺はかつてないほどの悪寒を感じた。こんなのは迷宮の深層でモンスターパーティーに遭遇した時でも感じた事はなかったぞ? 悪寒の発生源は俺のすぐ隣で、恐る恐るそちらを見るとそこには……。

 

 

 恋をする乙女のような顔となって頬を赤く染めているフレイヤ様の姿が。

 

 

 ……アカン。これはアカン。これはどこからどう見ても誰かを好きになった顔でんがな。

 

 フレイヤ様は好きになった、気に入った人物(主に男)を見つけたらどんな手を使ってでも手に入れようとする。……そう、どんな手を使ってでも。それが例え他の神様の恩恵を受けた冒険者でも強引に。

 

 そのせいでフレイヤ・ファミリアは今までに何度も他のファミリアと戦争となり、俺も二回ほど他のファミリアとの戦争を経験している。あれは本当に酷い目に遭った……。

 

 一回目の戦争では炎金の四兄弟(ブリンガル)の皆さんの作戦ミスで敵陣のど真ん中に取り残されて敵の集中砲火を受け、何とか全員倒して他の皆に合流すると敵のファミリアの団長との一騎打ちをアレン先輩に押し付けられた。

 

 二回目の戦争ではオッタルさんに「あの程度の奴ら、お前一人で充分だろう」と言われて、俺一人だけで敵のファミリアの団員百人と戦わせられた。

 

 つまり何が言いたいかというと、フレイヤ様がこの様な顔をした以上、俺にとんでもない不幸がやって来るのは間違いなくという事。しかも今回のフレイヤ様の狙いは俺の弟……!

 

 ヤバい。これはシャレにならないくらいヤバい。急いで弟と、弟の主神様にこの事を話して何とかフレイヤ様の対策を……。

 

「ドム? 貴方、今日から一カ月くらい弟との接触禁止ね♩ もちろん弟の主神にもよ?」

 

 っ!? いきなり先手をうってきましたよ、この美の女神!?

 

 ……この日から俺の、弟の貞操を守る為の辛く、先の見えない戦いの日々が始まったのだった。

 

 というか、弟を狙う最大の敵が自分のとこの主神ってどんな罰ゲームだよ?

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