─蓮side─
─一花に連れられてはや三十分が経過していた。俺には何故初対面の一花に連れられているのかがよくわからなかった。
「...たまには息抜きもいいか」
学校生活に私生活。ほとんど休みのなかった俺にとってこんな息抜きの時間は特異的で、でもなかなか充実したものであった。
『お宝は、我々が頂戴する!』
ショービューには最近話題と化しているとあるドラマであった。怪盗が特異的な能力であるものを盗み出す...といったありきたりなもののように感じ取れるが学校では妙にリアリティがあるとかで話題から消えない名作のシリーズになっているようだ。
「...」
一花「蓮君?」
「ん?どうかしたか?」
一花「急にビューをじっと見てたから何かあるのかなって」
─一花に見ていたことがバレていたようであった。
「何も無いよ。ただボーッと眺めてただけだから」
一花「ふーん、そうなんだ。」
そう言いながら一花は俺を生温い目で見る...
「用件は終わったのか?」
一花「だいたい片付いたよ」
だいたい...買いたいものはたいてい買い終えたはずだが...
一花「帰るまでがデートでしょ?」
「冗談は程々にな」
何がデートだ。今日あったばかりでしかもお出かけとしか言ってない
一花「.....蓮くん」
「何だ?」
一花は少し静かに口にする
一花「私に言いたいことあるでしょ?」
「.........まぁな」
やはり一花は危ない人物なのではなかろうか...
一花「なに?」
「俺についてなにか聞きたいことがあるんだろう?」
意趣返し...と戻れる発言を俺はする
一花「...どうして?」
「俺なら初対面の人と出かけようなんて普通なら言わないから」
一花「それもそうだったね...」
「...俺も一花のことを知りたかったからいいんだけどね」
一花「私の事?」
「あぁ。今日のおかげでよく知れた」
一花「今日だけで?」
一花は驚きの表情をうかべる。通常であれば一日で...それもこの短時間だけで人を理解するということは無謀に等しい行為だが...人間観察を日常的に繰り返している俺は造作でもないことであった
彼女は本質的に人...妹想いである。この買い物だって自分のために買うものより妹のために買うものの方が多い...そして彼女もまた俺のように人間観察を日常的にする口であること。そして最後に─
「芸能活動をしていることもな」
一花「えっ─」
二の句が告げられないでいる一花を後目に俺は
「しきりに携帯を開いていただろ?それもディスプレイに映っていたのはいつでもLINEやTwitterではなくただのメール。そんな仕草を示すのは会社にいる社員位...そして一花は学生。学生がそこまで露骨にメールを意識するのは少しばかり異常だからな」
俺が言い切ると一花はにへらっと笑みを浮かべる─
一花「妹達にもバレてないのに初対面の君に見破られるなんて...私って結構演技が下手なのかな?」
「その是非はあずかり知らぬことだが」
一花「酷いなぁ、お姉さんの真剣な悩みなのに」
「人の悩みを聞いてやれるほど自分に余裕がある訳では無いから。買い物が終わったんなら帰るぞ」
.....一体何処からどこが演技なのかさっぱりわからない俺だった
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─一花side─
─時間が経つ事に彼の情報が加速度的に入り込んでくる。だが本質的なものは未だ触れることすらままならない...彼を知るほど彼の人間としての奥深さを解らされる。あの仕事で培ったとも言える観察眼も彼の前では無意味...かえって邪魔にすらなってしまっている。
蓮「そういえば俺を呼んだ理由聞いてなかったな」
パッと蓮君が私も忘れていたことを思い出す。
「私も蓮君のことが知りたかっただけだよ」
蓮「俺達...案外似た者同士...なのかもな」
隣にいる蓮君がほほ笑みかける...慈母のようなそれは私を魅了するには十分で─
蓮「...妙さん!?」
─その顔がフッと消えた
「蓮君!?」
蓮君の走る方へ振り返るとそこには簡単にすると集団ナンパにあっている一人の女性がいた...なんというか刺激的な服装の人で...容姿も含めて魅惑的な人だった。
─あの人も...どこかで見た気が...
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─蓮side─
俺の目の前に広がっていたのは男の群がりと中心にいた紅一点だった。そしてその紅を俺はよく知っている─
「待った?」
眼前の女性に対して声をかける...彼女も俺の姿を視認するなり俺の言葉の意図を汲み取り─
妙「女を待たせるのはどういう訳?」
その言い草に俺は思わず苦笑を浮かべる
─この状況が気に入らないナンパ男達は
「あ?なんだてめぇ、俺達の邪魔をしようって訳?」
「俺達の狙ってる女なんだけど」
複数人のうち2人が口を開く...心底くだらない
「狙ってる?それなら悪いがコレはもう俺のモノだ。」
キッパリ言い切ると男達は煽られた影響もあってか突如として怒り出す。
「決めた。こいつをブチのめしてこの女を頂くぜ」
そう一番ガタイの良い奴が口にすると皆がみなナイフやら何やらの凶器を手にした─
「アニキの言ったことは絶対だ。大人しくくたばってもらうぜ」
...どうやらことは穏便に進むことは決してないようだ。俺は背面にいることを視認した一花に対して─
「一花、警察に通報を入れておけ。それと妙さんと固まっておけ」
サッと指示を入れる...すると一花からは
一花「もう通報してるよ!!」
─...随分と行動が早い事で...久々だが動き甲斐があることに巻き込まれたな─
「It’s show time !!」
いつものフレーズを口にして集団を睨みつけた
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─一花side─
妙「あーぁ、始まった。」
真横にいる女の人─彼が妙さんと言っていた人がため息混じりに言葉にする
「始まった?」
妙「私と彼が居る時はこういう事、よく起こるのよ。」
非日常的ソレを妙さんは当然のように口にする
「危ない!!」
蓮君に対して凶器が振り下ろされる─そんな光景がもう何度も繰り返されているというのに妙さんは顔色ひとつ変えずに...むしろ楽しいショーでもあるかのように楽しそうに見ている。
妙「心配なんてするだけ無駄よ。十中八九彼に踊らされるだけだから。」
そう妙さんが言うように蓮は巧みな動きで男達を躱す...ただただ躱し続ける
妙「それにもしもの時は私がいるから」
...わざと不明瞭に喋る妙さん。首を傾げる私を見てクスクスと笑っている...
妙「ごめんごめん。私、これでも本業は医者なの」
─そこでようやく余裕を持ってみている理由もわかってきた。
妙「彼が負けることなんてまぁないわ。だって彼は─」
一呼吸置く妙さん。惹き込まれる喋りにどんどん聞き入ってしまう
妙「切り札─他の誰にもできないジョーカーだから。」
──ますます頭がパニックに陥る一言を落とされるのであった。
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