ラブライブ!~アウトローと9人の女神~   作:弐式水戦

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リメイク版です。

前作では原作入りが遅くなり、そのくせNFS要素ばかり出していたために批判の的になってしまいましたが、本作ではその部分を出来る限り纏めました。


プロローグ~アウトローは2度目の高校生活を始める~

 4月───

 それは、新たな生活の始まりの月と言われており、多くの学生や新社会人が、これから始まるであろう新しい生活に、期待や不安を抱いている事だろう。

 他にも花見の時期であり、桜が咲き乱れる公園等では、花見に来た者達の笑顔で溢れている。

 また、出会いの季節でもあり、この春に新たな出会いを経験し、そこから人間関係が生まれていくのだ。

 

 そんな明るいイメージを持たれている4月だが、この年は1人だけ、明るさなどまるで感じられない、憂鬱そうな表情を浮かべる者が居た。

 

「はぁ………遂にこの時が来ちまった」

 

 ある日の昼下がり、路肩に停めた車から降りたその青年は、視線の先に建つ建物を眺めて深い溜め息をついた。

 門から建物へ向けて真っ直ぐ伸びる煉瓦の道は桜のトンネルの下を通っており、まるで青年を出迎えているようにも見える。

 そして門へと目を向ければ、この建物の名前を示す札が張ってある。

 

 『国立音ノ木坂学院』、それがこの建物の名前であり、この青年、長門 紅夜(ながと こうや)の新たな生活の舞台だ。

 普通の人間なら、新たな生活の舞台を目の前にすれば期待に胸を弾ませるものだろう。しかし、紅夜は違った。

 彼の表情はどんよりと曇っており、今すぐにでも帰りたいと言わんばかりの表情を浮かべていた。

 

「全く、何が悲しくてこの歳で2度目の高校生活をしなきゃならねぇんだよ………はぁ、今からでもアメリカに帰りたいぜ」

 

 此所まで自分を乗せてきてくれた愛車、Nissan Skyline GT-R BNR34のルーフに突っ伏し、弱々しく呟く紅夜。

 

 年齢は19歳で、今年8月で20歳を迎える彼は、どう考えても学生として高校に来るには場違いな存在だ。

 ならば何故、彼がこの学校に足を踏み入れようとしているのか、それを語るには、今から3カ月前に遡らなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 元々、紅夜はとある事情で7年前から家族の元を離れ、父、長門 豪希(ごうき)の友人が住むアメリカで暮らしていたのだが、その時は家族との間で決めた『年に2回は日本に帰ってきて、家族や日本の幼馴染み達と過ごす』という約束もあり、日本に戻ってきていた。

 中学2年の夏からこの約束を実行するようになり、早いもので12回目。その時も、里帰りは普段通りに終わるだろうと誰もが思っていた。

 そう、その時までは………

 

 

「お帰り紅夜。帰宅早々悪いんだが、ちょっと良いか?」

 

 里帰り期間も残り僅かとなったある日の夜。幼馴染み達と遊び終えて帰宅すると、何やら神妙な顔を浮かべて待っていた父にリビングへと連れていかれる紅夜。

 彼等がリビングに入ると、今度は彼の母親と思しきショートヘアーの緑髪を持つ女性ともう1人、ロングヘアーに伸ばされたグレーの髪を持つ女性に迎えられる。

 

「お帰りなさい、こうちゃん。取り敢えずその椅子に座ってくれる?」

「あ、ああ………」

 

 何が何だか分からないままに、言われた通り椅子へと腰を下ろす。

 すると間も無く、その女性が口を開いた。

 

「先ずは紹介するわね。彼女は南 雛(みなみ ひな)、お母さんの後輩で、今は私達が通っていた学校で理事長をしているの」

「よろしくね、紅夜君」

 

 そう言って右手を差し出してした雛に、紅夜は警戒するような眼差しを向けながらも同じように右手を差し出し、握手を交わす。

 

「それでお袋、その南さんって人と俺に、どういう関係があるんだ?」

「ええ、それはね……」

「待って先輩、私が説明します」

 

 紅夜に説明しようとする母を制止した雛は、真面目な表情で口を開いた。

 

「実は……」

 

 それから語られた内容は次の通りだ。

 

 先ず、彼女が理事長を務める学校、国立音ノ木坂学院だが、年々減少している生徒数に頭を悩ませているのだそうだ。

 今年度の新3年生が3クラスなのは未だ良いとして、新2年生は2クラスと1つ減り、そして新1年生に至っては、1クラス分作るのがやっとと言える程に少なく、過去最悪の入学希望者数なのだと言う。

 これについては、数年前から理事会に指摘されており、雛自身もこの状況を打破しようと策を巡らせたが何れも上手くいかず、その結果が今年度の新入生の少なさに出ている。

 そして先日の理事会において、このまま生徒数の増加が見込めなければ、廃校もやむを得ないと言われてしまったのだ。

 勿論、それで大人しく廃校を受け入れる訳にはいかない。

 そのため、雛は最終手段として残していた共学化を本格的に考えるものの、元々女子高だったのをいきなり共学にするのは、あまりにもリスクが高すぎる。

 そのため、紅夜に音ノ木坂学院の共学化にあたっての試験生をしてほしいと言うのだ。

 

「……と言う訳なのだけれど、どうかしら?」

「いや、どうって言われましても……」

 

 紅夜は反応に困った。

 母親の母校とは言え、はっきり言えば自分とは全く関係の無い話だ。

 当然、早く廃校になってしまえと思う訳ではないが、その逆も然り。廃校になろうがなるまいが、紅夜にとってはどうでも良いのだ。

 

「(それに、よりにもよって俺を試験生に選ぶなんてな……お袋の、長門 深雪(みゆき)の息子とは言え、この俺を………)」

 

 内心そう呟いた紅夜は、試しに親の意見を聞く事にした。

 

「一応聞くけど、親父とお袋はどう思ってるんだ?この件について」

 

 そう訊ねるものの、内心では否定的な意見が出るだろうと予想していた。

 自分が昔やった事や、今アメリカでやっている事を考えれば、どう考えても賛成するような意見は出ないと思っていたのだ。

 だが結果は、紅夜の予想とは正反対なものだった。

 

「俺は、別に受けても良いと思ってる」

「私もよ」

「……は?」

 

 両親の予想外の反応に脳内処理が追い付かず、呆気に取られる紅夜。そして暫くの沈黙の後、紅夜は椅子を蹴り倒す勢いで立ち上がった。

 

「ちょ、ちょっと待て!2人共正気かよ!?俺が昔何やったのか、そして今何やってんのかは知ってるだろ!?」

 

 豪希と深雪を交互に見ながら、紅夜は怒鳴る。

 もう夜も遅く、上の部屋で妹の(あや)が寝ているが、お構いなしだ。

 

「あの時はずっといじめられたせいで暴走したとは言え、俺は主犯や取り巻き共を病院送りにした上に教室も半壊させたんだぞ!?そんな俺を試験生にするなんて、正気の沙汰じゃねぇ!」

 

 マシンガンの如く言葉をぶつける紅夜だが、豪希達の態度は変わらなかった。

 

「ああ、そうだな。確かにお前がやった事は、被害者だったとは言えやり過ぎだ。あんな事をしたお前を試験生にするのは正気の沙汰じゃないってのも頷ける」

 

 それどころか豪希は、紅夜の言う事を全面的に肯定する。

 

「だがな紅夜、それはもう過去の話だ。今は違う。それにお前には、未だ人としての心が残ってる。俺も深雪も、それに賭けてるんだ」

「いや、人としての心なんか言われても知らな──」

 

 尚も言い募ろうとする紅夜だが、豪希はそれを遮るように言葉を続けた。

 

「それに今回の話は、お前にもメリットがあるんだ………だよな、南さん?」

「ええ」

 

 ここで豪希は、先程まで黙っていた雛にバトンタッチする。

 

「紅夜君、貴方の事は先ぱ………いいえ、お母さんから、既に聞いているわ…………辛かったわね」

 

 そう言って紅夜に近づき、優しく頭を撫でる雛。

 

 これまで触れてこなかったが、紅夜は普通の人間とは少し異なった姿をしていた。

 黒髪黒目を持つ豪希と、緑髪に赤い目を持つ深雪の間に生まれたのだから、どちらかの性質を引き継いで生まれるのが普通だ。

 だが、彼は先天性白皮症、所謂アルビノという病気を持っており、その肌や髪は色素が失われて雪のように白く、おまけに目は、右目が赤で左目が青のオッドアイである。

 これ等の特異な体質が原因で小学校ではいじめを受けていた紅夜だが、ある日、遂に我慢の限界を迎えて暴力事件を起こしてしまったのだ。

 それが原因で、彼は多くの人間から化け物扱いされ、これまでいじめられていた事もあって人間不信になり、一時は身内や、味方をしてくれていた幼馴染み達すら拒絶するようになっていた。

 今はアメリカでのステイ先の家族の協力もあって和解を果たしたが、彼等以外の存在、つまり赤の他人へ向ける行き過ぎた警戒心は未だに健在なのだ。

 

「あんな事があったんだから、もう家族や他の親しい人以外と関わりたくないって思うのは分かるわ。でもね、世の中そうはいかないの。嫌であろうがなかろうが、赤の他人と関わらなければならない時が、何時かきっと来るわ」

「………………」

「だからね、コレを1つのチャンスだと思ってほしいの。過去のトラウマを乗り越え、他人とも上手く付き合えるようになるための、ね」

 

 真剣な眼差しで語る雛。勿論、このままではいけないという事は紅夜自身も理解している。だが、それでも彼の反応は変わらなかった。

 

 実は、彼が試験生を拒む理由はこれだけではなかった。

 

 彼は、現在居候として住んでいる町、ベンチュラ・ベイにて、そこで出来た仲間と共にストリートレーサーとして活動しているのだ。

 ストリートレーサーとは、その名の通り町中でレースを行う者達の事を指すのだが、勿論それは違法行為だ。

 スピード違反や対向車線をはみ出しての逆走、ドリフト走行といった危険走行は当たり前で、警察に見つかれば、彼等を撒くか捕まるまで続くカーチェイスが幕を開ける。

 しかも彼は、先日ベンチュラ・ベイから北東に進んだ先にある町、フォーチュンバレーにて、その町の富を独占しようと企んでいた裏組織に喧嘩を売り、壊滅させたばかりだ。

 そこらのチンピラ達が可愛く見えるような事をしている自分が、果たして試験生なんて学校の運命を左右するようなものを引き受けて良いのだろうか、いや、良い訳が無い。

 

 紅夜はその事も付け加えるが、雛達の意見は変わらなかった。

 

 結局、紅夜がどれだけ否定しても大人3人に丸め込まれてしまい、更にはそんなに信用出来ないならと雛が交換条件として出した、『車通学の許可』に心が揺らいだ隙に、紅夜の試験生としての入学が決定してしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

「おまけに、レナ達にも勧められちまったしな………」

 

 アメリカに帰り、ステイ先の家族にその事を伝えた時の事を思い出し、またしても溜め息をつく紅夜。

 試験生の話を持ち出すと、ステイ先の家族は豪希達と同じように『是非やるべきだ』と勧め、他の走り屋仲間に話しても同じ反応だった。

 

 こうなってしまえば、紅夜としても腹をくくるしかない。

 あれよあれよという間に準備を進め、今、こうして音ノ木坂学院の前に居るという訳だ。

 

「まあ、此所で何時までもウジウジしてたって始まらねぇし、どうせたった1年の短い試験生だ。無難に過ごせば良いか」

 

 そう呟いた紅夜は、ポケットから小さく折り畳まれたメモ用紙を取り出す。

 

「えっと、今日は理事長室で説明を受けて制服や教材を受け取るだけ、と………」

 

 予定を確認した紅夜は再び愛車へと乗り込み、エンジンを掛ける。

 そしてゆっくりとアクセルを踏み、学校の敷地内へと入るのだった。




次回、μ'sの1人が登場します。
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